「そっちの事情なんて知ったこっちゃないわ!」
再び響いたベルカの大声に、忍び寄る注射針の動きが止まる。
「私は最初グウィンに舌を抜かれる予定だった!でもそれだと話が続かないからやめた!殴られるシーンも歯を折られるシーンも耳を裂かれるのも下半身血まみれになるシーンも何か思い出しちゃいそうで嫌だったから全部やめた!本当は絵画世界を作るために生贄にされる予定だった!でもそれだと話が続かないからボツになった!ここでいろんな実験受けてめちゃめちゃにされてメイドインアビスみたいな扱いされて役に立たなくなって廃棄物として大穴から捨てられる予定だったけどそれだとギャグが作れなくなるからやめた!おかしくなったまま聖堂で赤ちゃん工場にされるはずだったけどそれもギャグにならないからやめた!いい!?私をおかしくするってことは私の意思を消すってことはこの話を群像劇にするってことだよ!?あんた群像劇書けるの!?群像劇の難しさ知ってる!?オルフェンズでさえあんなに炎上したのに!?この作者がそんな魅力ある話書けると思ってんの!?しかもいまこんな状況だよ!?みんな死ぬほど一生懸命頑張って働いて心の余裕なんかこれっぽっちもないんだよ!?こんな状況で、こんな作者の作品で、キャラの性格いちいち把握して「なるほど、ここでそのフラグが」とか思えるわけないじゃん!それ無視して私壊しちゃうの!?じゃあそれでもいいよ!でもね、仮にいくら私を壊して研究して成果を得たってね、発表しなきゃ成果がないのと同じなんだよ!あんたが何やってるかは知らないけどね、あんたが得た成果はこの筆っ足らずの作者がいなきゃ外に出ないんだよ!あんたこの作者がどんな人間かわかってんの?こいつはあんたが思ってるほどお人好しじゃない!殺したいときに殺す!それがjamchaってやつなんだ!!あんたがどんだけ賢いか知らないけどね、こいつが今何考えてるのか当ててあげるよ!『ベルカを解剖したが何も得られずアン・ディールも死にました。終わり。』とか平気でやるようなやつなんだよ!伝説の竜と契約した勇者を、『契約した帰り道に崖から足を踏み外して主人公は死にました。終わり。』とか平気でやるようなやつなんだよ!なんでってそっちのほうが面白いと思ってるからだよ!狂ってんだよこいつは!そんな狂った世界で私壊すの!?メイドインアビスみたいに内臓潰してグチャーとか顔の皮剥いでウゲェーとかあんたはボルボンドみたいなことをやってあんたは満足するかもしれないけどね、こいつはそんなの書かないよ!誰も知らないところであんたは私を壊して自己満足だ!いや、自己満足すらできないよ!この作者がいなきゃあんたは何もできないんだからね!!こいつがやらないかぎりあんたが何をしたか誰にも知られないし何も得ないままあんたは朽ちるんだ!朽ちる場面すらこいつは書かないけどね!ここで何調べてるか知らないけど自分の身体を研究にささげてまで完全にムダな人生でしたね!何もわかんないままくたばりやがれ!ざまあみろバーカ!ざまあ!ざまあ!ハッハッハー!バーカ!!バーカ!!」
「ボルボンドじゃなくてボンドルド」職員の一人がつぶやいた。
静寂が辺りを支配している。
「…だと思います」
「…」
「…顔も剥いでないよね」「…多分」
「…」
沈黙を破ったのはナヴァーランだった。「とりあえず牢に入れておくか」
ガシャン!
ぜー、ぜー、と肩で息をするベルカ。鍵をかけられ窓もない牢の中で、何とか生き延びられた、助かった、と思った。
「だれ?」
牢屋の隅から、しょぼくれた声がベルカに話しかけた。「さっさと出ていきなよ。君みたいなのには、ここはくだらないところだよ」