機装女戦記ガンプラビルドマスターズ   作:ダルクス

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 ギラーガと天ミナとの激戦から数日後、いつもと変わらぬ様子のレイナに若干の違和感を感じるソウシ。そして他のガンプラ達は、ギラーガは現在“改造”を受けていることを知る。
 そんな中アベ店長の模型屋で大規模なガンプラバトル大会が開催されることになった。
 レイナの新機体の実力とは、果たして……?

※今回、感想欄で登場希望の意見があったガンプラを自分流アレンジを加えて制作し、登場させてみました。


第20話:「究極の“X”」

 あれから数日が経った。五日間に渡る試験も無事終わり、毎日が比較的平凡な日々として過ぎていった。あれから天ミナの一行はもちろんのこと、シャドームーンも全く俺達の前に姿を現す気配は無い。だが今の俺には、それよりも更に気になるころがあった。

 そう……天ミナとの一騎打ちで傷つけられたギラーガ。そのギラーガを治そうと、おそらく躍起になっているキサラギ・レイナのことだった。

 

 

 

 

 

―――――第20話:「究極の“X”」―――――

 

 

 

 

 

「おはよう、レイナ」

「おっはよぉ~う♪」

「……おはよ」

 

 少し肌寒くなってきたこの季節、俺とオトメはアパートの玄関から出てきたレイナに朝の挨拶をし、学校の方へと歩き出す。

 キサラギ妹との一件以来、俺とオトメとレイナは毎朝こうして一緒に登校している。約束したし、特に断る理由もないから毎日が大体こんな感じの挨拶で始まる。レイナは気だるそうに、対照的にオトメは朝からテンション高めで、だ。そうしていつも並んで登校する。オトメがまた同人活動関連のしょうもない話をして、俺がそれに付き合って適当な相槌をうつ。レイナはあまり話に加わろうとはせず、無言で俺達の話を横で聞いているだけ。今日ももちろんそんな感じなのだが、ここ最近はそんなレイナの様子が不審でならなかった。

 ギラーガが傷ついて戻ってきたあの日、レイナは間違いなく激しい悲しみと怒りの感情が沸き上がっていた筈だ。しかし、その翌日にはこうやって迎えに行くとそこにはいつもと変わらぬ様子のレイナが居て、それは今日までずっと続いていた。普通あそこまで相棒のガンプラが傷つけられたらとても冷静ではいられない……少なくとも俺は。キサラギ妹との一件でギラーガとの絆が深まったというのは俺の勘違いだったのか……もしくはレイナが怒っているなんて感じたのも俺の思い過ごしだったのか……。

 と、俺はそこでちらりとレイナの方を横目で見た。少しサイズの大きい制服の袖に、レイナの手が少し隠れている。前にオトメにこういったものを“萌え袖”というものだと聞いたことがあるが、なんてことない。ただ制服のサイズが大きいだけじゃないかと、俺は特に興味も示さなかった。同じ袖なら、ネオジオン残党軍の“袖付き”のモビルスーツの方が俺の関心を惹く。

 とその時、その袖の方を何気なく見ていた俺は、レイナの指先部分がちらりと見えた。その指先は、ところどころに絆創膏が巻かれており、さらに赤い液体が手に付着していた。それを見て驚いた思わず俺は声をあげた。

 

「おい、レイナ! お前その手どうしたんだ!」

 

 思わずレイナの手を握ると、袖をまくってその手をまじまじと見る。そんな俺の突然の行動に流石のレイナも面喰った様子で、目をまん丸くして何か言いたそうだが言葉がでてこないといった様子だ。

 

「あ……あれ? これって……」

 

 だが、その手をよく見てみると、赤い液体は血かと思ったのだが、全く違うものだということに気がついた。これは……プラモデル用のアクリル塗料……?

 

「えうっ……は……離して……」

「あっ……」

 

 ようやく口が回るようになったレイナは、(何故か少し頬を赤らめて)俺から目線を逸らしながら小声で呟くようにそう言った。レイナの言葉に俺はハッと我に返る。ふと隣を見るとオトメが鞄を両手で胸元に持ったまま口を半開きにし、アホ毛がピンと空の方に伸びてびっくりした顔で俺を見ているし、通学・通勤中の通行人も俺の方をじろじろと見ている。見ようによってはこの状態、俺が嫌がる女の子の手を引き寄せてどこかに連れて行こうとしている様子に見えなくもなくもないような……。

 

「あ……あああっ! ごごごごめん!」

 

慌てて謝りながら掴んでいたレイナの手首を離すと、少し力が強かったからだろうか、レイナが掴まれた方の手を擦りながらまた無言で歩き出した。もしかして……機嫌悪くさせちゃった……?

 

「あーあ、ソウシ君……」

 

 そんなレイナの様子を見て、オトメがじとーっとした目で俺を見る。レイナは気にしてないのか、それとも怒って無視しているのか、また静かに歩き出す。

 

「い……いや本当にごめん! でもさ、絆創膏巻いているし、そこに赤い液体が付いていたら誰だって血だと思うだろ?」

 

慌ててその後を追って俺とオトメも歩き出す。それでもレイナは無言のままだ。

 

「もしかして……ギラーガを直していたのか?」

 

 その言葉にレイナはピタッと一瞬歩みを止める。が、一瞬の後また何事もなかったかのように歩き出す。どうやら図星らしい。

 

「あ、そっか。だからそんな手をしてるんだね」

 

 オトメもレイナの手の事に気付いたようだ。大方絆創膏はデザインナイフで誤って自分の指を切ってしまった跡で、アクリル塗料は家を出るつい先ほど塗装を行っていたという証だろう。ということは……結構大がかりな作業になっているらしい。それはそうだろう、俺が最後に見たギラーガの姿はボロボロだったからだ。

 でも、それで俺は少し安心した。もしかしたらレイナはもうギラーガの事を見限ってしまったのではないかと思ってしまったからだ。この調子だと、俺達に余計な心配をかけさせないようにわざといつも通りの様子を振舞っていたのかもしれない。何にしても、塗装段階に入っているということは、もう完成間近ということだろう。

 

「また元気になるといいな、ギラーガ」

 

 俺は純粋に、レイナを元気づけるつもりでそう言っただけだった。

 だが、レイナから返された言葉は、俺の思っていた言葉とは全く違うものだった。

 

「……もう、ギラーガじゃない」

「……え?」

 

その言葉がどういう意味合いなのか……俺には全くわからないがレイナはもうそれ以上言葉を紡ぐことは無く、すたすたと学校への通学路を歩く。俺とオトメは互いに顔を見合わせるが、困惑しつつもレイナの後に続いた。

 

………………

…………

……

 

「レイナの言っていた言葉……一体どういう意味なんだ……?」

 

 学校の休み時間、することも特にないが俺は適当に校舎内をぐるりと回ってその言葉の意味を考えていた。つまり……今作っているガンプラはギラーガじゃないってことか? じゃあ……あの時ボロボロになったギラーガは……?

 

「おい、ソウシ!」

「あっ……」

 

 俺を呼び掛ける声でふと我に返る。いつの間にか、俺は校舎内を一周して自分の教室に戻ってきていた。そして戻ってくるなり、トモヒロに呼びとめられたのだ。

 

「どうしたんだよ、いつもボーっとした顔を余計にボーっとさせちまって」

「なっ……いつもは余計だ!」

「冗談だ。それより聞いてくれ! 今度アベさんの店で大規模なガンプラバトルの大会をやるみたいなんだ!」

 

 俺の肩を掴んで激しく揺さぶりながらトモヒロは嬉々とした表情でそう言った。

 

「なに……大会?」

「そう! 今度の土曜! 10時から! 詳しいルールはまだわからないんだが、人数は多いほど楽しいらしんだ! もちろんお前も来るだろ? 来るよな!? よし来い!」

「ちょっ……ちょっと待て! 落ちつけ! 大会があるなんて俺初めて聞いたぞ。一体誰からの情報だ?」

「何だ、お前聞いてないのか? レイナちゃんだよ。レイナちゃんが直接教えてくれたんだ」

「レイナが?」

 

 それは意外な答えだった。何故なら、レイナといえば大抵自分から誰かに話しかけることなどほとんどなかったからだ。俺ならまだわかるが、それがまさかトモヒロにレイナが自分から……。

 

「あ、それなら僕のとこにも来たでござるぞ」

「私も私もー!」

「お前らも!?」

 

 まさかのトモヒロだけでなく、タクオやオトメのとこまでもレイナは話しかけに行ったらしい。今までの余計な隔てりが俺以外の奴らに話しかけることを避けていたのかもしれないし、これはむしろ喜ばしいことなのかもしれない。だけど、気になるのはなぜ俺にだけその話をしてくれなかったということだ。

 

「もしかしたら、今朝のことまだ気にしてるのかもねぇ?」

「うっ……」

 

 オトメがニヤニヤしながらアホ毛をぴょこぴょこさせ、口元に手を当てて口を「ω」みたいな形にしてそう呟く。非常にウザくてムカつく顔だったのでとりあえず頭をひっぱたいておいた。

 

「それにしても妙でござるな。いつも世話になっているソウシ殿は誘わず、僕らだけを誘うとは」

「どうするソウシ、お誘いじゃないってんならお前は大会には参加しないか?」

 

 確かに変な話だった。レイナの方からこいつらに話しかけたということは勿論として、そこに俺が含まれていないということも……。オトメの言うとおり、今朝のことをまだ気にしているからかもしれない……。でも。

 

「いや……俺も出るよ、その大会。別にレイナの許可が必要なわけでもないし、俺の意思で勝手に行かせてもらう」

「お? 自分だけ誘われなかったからちょっとご立腹かな?」

 

 トモヒロが茶化すようにそんなことを言ってきたのでとりあえず脛を蹴飛ばしておいた。

 レイナが今朝の事を気にしていると言えばそうかもしれない……でも、俺はレイナがあんなことぐらいで俺の事を無視するなんてちょっと思えなかった。きっと何か他に理由がある。それもその大会とやらに参加してみればわかる気がした。

 

………………

…………

……

 

「今日、皆に集まってもらったのは他でもない」

 

 キモト家の一室、客間には央のテーブルにファントムが手を組んで座り、そこを中心にしてゴッド、サバーニャ、ザクⅠ、サザビーがソファーに座っていた。ただし、機動鎧(モビルアーマード)は着込まず、皆自分のマスターから与えられた普通の衣服を着てこの場にいる。

 したがって、ここにいる全員が実はガンプラの人化体など、事情の知らない普通の人が見たらそんなことは夢にも思わないだろう。だが当然のことながら、この場にギラーガの姿は無い。ついでに言うと、カルナは奥の和室でお昼寝中だ。

 

「ギラーガさんのこと……ですか?」

 

 緑色の縦セーターを着たサバーニャが憂いを帯びた表情でギラーガの名を口にした。

 

「そうだ。実は今日、マスター達が学校に行っている間にザクにレイナの部屋まで偵察に行ってもらったのだ」

 

 そう言ってファントムは視線をザクに向ける。パーカー姿のザクは小さく「うむ」と呟いてから離し始める。

 

「レイナ殿のアパートの向かいのビルの屋上からスナイパーライフルのスコープを通して部屋の中の様子を見て来たのでござる」

「お前、そんな覗きみたいな真似を……」

「みたいな、というか完全に覗き魔(ピーピングトム)だな」

「まぁ……お嬢様の部屋は覗かないで下さいね?」

 

 ゴッドとサザビーとサバーニャがちょっと引きぎみになりながらザクの座っている場所から少し間を空ける。

 

「なっ!? お、お主ら! 誤解するでないぞっ! わ、ワシはただ本当に偵察のためだけに覗いたのであって! けっ、決して卑しい思惑があったわけでは……!」

 

 と、顔を真っ赤にして反論するザク。その姿はとてもかわいらしいと誰もが思ったが、今はそれどころではない。

 

「ザク、いいですから詳細をお願いします」

「う、うむ……」

 

 本人も内心納得できていないのだろうが、ファントムに圧されてザクは渋々ポケットの中から一枚の写真を取り出す。スコープ越しに撮影したレイナの部屋の様子だということがわかった。だが、ビルの高い位置から低い位置にある部屋を写したために窓縁と僅かに引かれたカーテンによって、机の端と緑色のカーペットぐらいしか部屋の様子はわからない。

 

「これではよくわからんな……」

 

 レディーススーツ姿のサザビーが顎に手を当てながら写真に目を近づけて凝視する。

 

「そう思って、拡大した写真があるでござる。ほら、ここ」

 

 ザクがもう一枚の写真を取り出す。今度は僅かに見える机の端と、引かれたカーテンの部分を写した拡大写真だ。その一部にザクは指をさす。そこには、カーテンの影に隠れているが、そこからはみ出すような形で赤い色の“足”が映っている。そして、カーテンの方もよく見ると何かが立っているような、黒い影が映っていた。

 

「これって……ガンプラですか?」

「しかも赤い……ってことは!」

「うむ、ギラーガ殿のものだと思われるぞ」

 

 皆に写真を見せてザクはちょっとドヤ顔をしてみせた。

 

「なるほど、塗装したてだから窓際に置いて乾かしてるってところか」

「ということは、彼女の修復はもうほとんど済んでいるということかね?」

「まずそう見て間違いないだろう。だが、私は気になることがある」

 

 拡大写真を見たファントムは腕組みをし、少し顔をしかめる。

 

「この脚は完全なギラーガ本人のものではない」

「えっ、そうだったか? ってかあいつ、以前はどんな脚してたっけ?」

 

 この季節にデニムショートパンツにティーシャツ1枚という格好のゴッドが拡大写真を顔にくっつくぐらい近づけて、何故か天井の電灯に透かしながらしかめっ面で言う。

 

「ゴッドさんはあまりギラーガさんと接点ありませんでしたからね」

 

 その姿が可笑しかったのか、サバーニャが口に手を当てて微笑する。

 

「とにかく、ギラーガの足にしては少しばかりパーツが多い気がする。これは私の予想だが……」

「ギラーガが改造されている……かね?」

 

 ファントムが次の言葉を紡ごうとした時、サザビーが呟いた。そして皆その言葉に息をのむ。確かに考えられないことではない。あそこまで傷つけられてしまっては、元の姿に修復するよりも別のガンプラのパーツと組み合わせ、俗に言う“改造”を施した方が手っ取り早いうえ、直接的な性能向上にも繋がる。

 だが、それは“普通のガンプラ”のみに限った話である。

 

「おいおい……まさか俺らみたいな意識を持ったガンプラを……改造したってのか……? 何の躊躇いもなく……?」

 

 ゴッドの手から写真が零れ落ちる。流石のゴッドでもこれには動揺を隠せない。

 そう、改造……言うなれば彼女らのように意志を持ったガンプラ達の身体を切り刻み、別の部品と結合させて新たなガンプラとして生まれ変わらせるのだ。それにどれほどのリスクがあるのか……。試そうと思ったものはおらず、誰もわからない。

 ガンプラ状態に戻っている間は痛覚・視覚等の体感覚は無いとはいえ、別のガンプラと結合することにより、人格が変わってしまわないのか……? もしくは……人格そのものが消えてしまうのではないだろうか……? という不安があった。

 そういったリスクを考え、各々のマスターは今まで自分の人化ガンプラが戦いで負傷しても、簡単な修復だけで済ませ、または彼女らが本来持ち合わせている驚異的な治癒能力に任せ、明確な改造は施さなかった。

 しかし、ギラーガのマスター、キサラギ・レイナはそれをやってのけた。だがまだギラーガの改造体は完成には至っておらず、意識は宿っていない様子だが……。

 

「ギラーガは薄々気づいていたのかもしれないな……私達の限界を」

「限界とは……どういうことじゃ?」

「以前、ここで集まった時に私はマスターに言ったな、『私の身体を改造してほしい』と」

「ああ……」

 

 確かにファントムはカルナと天ミナ達が始めて現れた時、アストレアの圧倒的な強さに手も足も出ず、ソウシに自分を改造してほしいと懇願したことがあった。その時、ソウシは改造することを拒んだ。それは、おそらく今のファントム達が抱いている不安を誰よりもいち早く察知していたからなのかもしれない。

 

「あの時、私はゴッドやザクの言うとおり、己を鍛え、自分の長所を伸ばした戦いをしようといろいろと模索した。おそらく、その場にいたギラーガもそうしたのだろう。だが、今回のギラーガと天ミナとの戦いで私は確信した。いかに自分を鍛え、長所を伸ばしたところで奴らには勝てないと」

 

 ファントムの言葉はその場にいた誰もが抱いていた不安そのままだった。

 

「つまり……今度あの人達が襲ってきたら、今の私たちではどうあっても太刀打ちできないと……?」

「だから自分の限界を超えるために、改造か……」

「だがそれで、本当にギラーガの力が以前の能力を上回ったのかはまだどうかはまだわからんのだろう? ならばおそらく、本格的に活動的になる前にガンプラバトルでその能力を発揮することになるはずだ」

 

 サザビーが推理する。確かに少し武器を換装する程度の改造ならば、ファントムやザクも度々行ってきた。だがそれとはまた違う。言うなれば自分の身体そのものが以前とは違うのだ。それを馴らすためにもまだまだ時間はかかるはずだ。となれば、まずはガンプラバトルでマスターに操縦してもらい、体の動かし方を共に習うのが必定か。

 

「考えてみよ、少年少女達よ。これでもしギラーガの改造が万事うまくいき、以前とは比べ物にならないほどの強力な力を手にしたのならば、君達にだってパワーアップのチャンスはあるじゃないか」

「それは、そうですが……」

「ウチのご主人じゃそこまで上手く改造してくれなさそうだしなぁ……」

 

 サバーニャとゴッドは、マスターであるオトメとトモヒロがまだまだガンプラ初心者であるためか、あまり強化については期待してなさそうだった。

 

「ともかく、情報によれば今度の休日にアベの店で大規模なガンプラバトルの大会があるらしい。当然レイナはギラーガの改造体を持ってその大会に出場する筈だ」

「まずはそこで肩慣らしってわけか。面白ぇ!」

 

 ゴッドが平手と拳を合わせ、関節をポキポキと鳴らす。

 

「ガンプラバトルでならワシらも傷つくこともないしのう」

「そういうことだ。十中八九君達のマスターも参加することになるだろう。存分にその力を見定めてきたまえ」

「あれ? サザビーさんは参加しないんですか?」

 

 サザビーの口調がまるで自分は参加しないような口ぶりだったので、サバーニャが問う。

 

「ああ、その日は私のマスターに用事があってな、参加することはできないんだ。それに、カルナちゃんの面倒も見なければならないだろう?」

「それもそうですね……ちょっと残念です」

「まぁご主人達の前でならともかく、一般大衆の面前であの格好されるのも痛すぎるけどな」

 

 ゴッドの言う“あの格好”とは、もちろん独先生が自分の正体を隠すために行った奇妙なコスプレ……もとい、“緋色の彗星(カーディナル・アーク)”としてのあの格好のことだ。

 

「何にしても、今週末にはすべてがわかる……か」

 

 ファントムが床に落ちた写真を見ながら呟いた。

 

………………

…………

……

 

 土曜日、アベの店はいつもとは比較にならないほどに多くの来店客で賑わっていた。

 今日はここで大規模なガンプラバトルの大会が開催される。それを聞きつけた近所のガンプラビルダー達が集まってきたのだ。そのため、客の誰もが自分のガンプラをこの場に持ってきており、ある者は他の客と自分のガンプラを見せ合い、またある者は大会が始まるまで何を持ってきたのかを明かさず、鞄やケースの中に仕舞ったままの者もいる。

 その中の一人、キサラギ・レイナは後者の立場だった。特に意識しているつもりはないのだが、周囲に気配があまり悟られない彼女は、男性が大多数のその人ごみの中で年齢の割に背の低い自分の姿が隠れてしまいそうになりながらも、片開き式のアルミケースの取っ手部分を両手でしっかりと握っていた。

 いつもはクールで感情を表に出さない彼女だが、今回は握った部分に汗を滲ませ、うつむいた顔は少し強張っている。改めて考えてみると、自分の実力をこんなにも大勢の中で発揮するのは初めてのことだ。当然緊張もする。人と接することを苦手とする彼女にとって、見知らぬ人とガンプラバトルをすることは結構ハードルが高い。

 だが、それでもレイナには明確な戦う意思がある。それは自分のガンプラのこと……今はまだ眠っている“彼女”が、もう一度自分の前であの見とれるような強さを発揮するために。

 

「えー、ただいまよりガンプラバトル大会の受付を始めまーす! 参加者の方は一列にお並びくださーい!」

 

 店員の声が店内に響き渡る。それを聞いて、雑談をしていた客達は会話を止め、自分のガンプラを鞄の中に仕舞い込み、店員が用意した名簿の前に一列になって並び、自分の名前を書き始める。

 当然レイナもその列に並ぶ。レイナはその列に割と最初の方に並べた。最初の5人が名前を書き終えると、自分の名前を名簿に書く。書き終わったレイナは列を退き、後ろの方を見てみる。不思議といつものあのメンバーは来ていない。声をかけた筈なのだが……と、疑問に思いながらもレイナは店の隅に行き、大会が始まるのを静かに待つ。

 

………………

…………

……

 

「タクオ! てめーのせいで遅れたんだぞ! もっと早く走れ!」

「ふひゅ……ふひゅう……そ、そんなこと言われても! 土曜日の朝は“ハピネスチャージ!ジェムペット”と“プリティカツドウ”略して“プリカツ”を見なければいけないのが僕の鉄則であり、法則であり、戒めであり、呪いなのでござるよ!」

「なにわけのわかんねーこと言ってやがる!!」

 

 走りながらトモヒロがタクオの尻に蹴りをかます。それを見ながら俺達も必死で走る。大会の受け付けは午前10時からだというのに、タクオが9時から毎週見ている女児向けアニメを二本分見て来たために遅れるはめになってしまったのだ。別に俺達だけで行ってもよかったのだが、タクオがしつこく「待っていてほしい」と言うものだからこんなことになってしまったのだった。

 

「アニメなら録画しておいて後で見てもよかったんじゃない?」

 

 オトメがもっともな意見を言う。が、タクオは。

 

「ダメでござる! リアルタイムで見て実況スレで盛り上がる! これが僕の休日の朝の過ごし方なのであり……―」

『皆の集、すまんのう。お兄ちゃんに悪気があるわけではないのだが……』

 

 延々と持論を述べるタクオの変わりに、ガンプラ状態のザクが俺達の脳内に語りかけ、変わりに謝る。面倒なマスターを持つと、ガンプラも大変なものだな。

 

『……』

 

 その時、何も言葉を発していない筈なのに、何故かファントムの意識が脳裏を横切った。なんというか……落ち着きがなく、はやる気持ちを押さえつけているような……。ということはまさか、ファントムはガンプラバトルに参加できなくなってしまうことを心配している……?

 

「どうしたんだ、ファントム?」

『いえ……。自分でも気付かぬ内に、私は思ってしまっていたようです』

「なにを?」

『ギラーガの……新しい姿と、その力を早く見てみたいと』

 

 その言葉は少し衝撃的なものだった。周知の通り、ファントムはあまり好戦的な性格ではない。そのはずなのだが、自分から改造されたギラーガの実力を見てみたいと言いだした。それはつまり、ファントムにとってギラーガという存在が明確な好敵手という位置づけに置かれているということに他ならない。以前、ギラーガは言っていた。「自分達は戦うために生まれてきた存在だ」と……。つまりそれは、ファントムも例外ではない。

 ということは……今ファントムは戦いたがっている……?

 

『マスター……?』

「……なんでもない、急ごう」

 

 何を考えているんだろうな、俺は。そんなことは杞憂に過ぎない。ファントムに限ってそんなことある筈は無い。無理矢理に考えを振り払って、俺はアベさんの店へ走った。

 

………………

…………

……

 

「やっと着いたぁ~~~……」

 

 店に着くなり、俺達は息も絶え絶えに現在の時間を確かめる。10時10分……受け付けは終わってしまったのだろうか? 店内はいつもより多くの客がひしめき合っている。普段この店で見かける客といえば二人か三人程度なので、ここまでガンプラを作ってる人たちがこの界隈にいたことに正直驚きだ。

 だが驚いてばかりはいられない。客が密集し合うその向こう側、レジのあるカウンター側に店員が受け付け用の名簿を見ながら紙に何か書いているのが見えた。

 

「すいません! 大会の受付ってまだできますか!?」

 

 慌ててそこまで走っていき、店員に掛け合う。

 

「あぁ、受付希望の方ですか? すいません、もう大会参加者の人数が上限に達してしまいましたので受付は締め切らせていただきまして……今対戦表を作っていたところなんですよ」

 

 カウンターの上を見ると、確かに店員が書いていたのは対戦表だった。全ての対戦枠が埋まってしまっており、俺達が参加できる枠は無さそうだ。

 

「そ、そんなぁ……」

 

 その言葉を聞いてへなへなと力が抜けた。せっかくここまで走ってきたというのに……。

 

『えー! 出られないんですかぁ!?』

「もう! タクオ君のせいだよぉ!」

「覚悟できてんだろうなぁ、てめぇ!」

『ご主人、やっちまおうぜ!』

 

 オトメがタクオの首襟を掴んでぶんぶんと振り、トモヒロが指をぽきぽきと鳴らす。

 

『これには流石のワシも擁護できんのう……お兄ちゃん、覚悟を決めようぞ』

「ぼ、僕は悪くないでござる! 僕は悪くないでござるぅぅぅ!!」

 

 その後、タクオの叫び声が聞こえたが……正直、気落ちしてしまってタクオのことなんかはどうでもよかった。

 

「はぁ……出鼻を挫かれたなぁ。どうする? ファントム」

『出られないのであれば仕方ありません。レイナとギラーガの試合だけでも、私は見てみたいです』

「確かになぁ、このまま何もしないで帰るってのも癪だし、観戦だけでもしてくか」

 

 元よりファントムは生まれ変わったギラーガの力にだけ興味があったようだし、観戦の場でその力の全てを見ることができるかもしれない。俺は後ろで乱闘している3人にもそう言い、観戦を勧めた。

 

「まぁ……私、今日は大会出るつもりで予定空けてきちゃったから別にいいけどさ」

「タクオ、今日はこれくらいで勘弁してやる。次はねぇからな?」

「ふ……ふぁい……」

 

 ちょうどその時だった。アベさんが店の奥から現れて集まっている客達に呼び掛けた。

 

「えー、ではこれより我が“ブルーコスモス”主催のガンプラバトル大会を始めたいと思う! ルールを説明しよう!」

 

 先ほどまで騒がしかった店内がアベさんの説明を聞きのがすまいと水を打ったようにしんと静まり返る。俺達も同様にアベさんの言葉に耳を傾ける。

 

「今回、参加者人数が36人と予想よりも多かったために、対戦方式はバトルロイヤルルールで行う!」

 

 その言葉に静まり返っていた店内が途端にざわつく。

 

「ウチの店にはGポッドがモビルファイター用のものも含め、一度のバトルで最大6基の稼働が可能となる。そこで、5~6人の対戦者が5回、ないしは6回に分けてバトルロイヤルで戦ってもらい、その勝負に勝てた者が決勝トーナメントに進める、という方式をとらせてもらう」

 

 店内から「おぉ……」という感嘆の声が漏れる。

 

「対戦ステージはランダム、使用機体は各自の自由とする。ただし、モビルファイターのガンプラを用いる場合には事前の確認が必要なのでそのつもりで」

「くっそぉ……俺が出られたらMF用の枠もらってたのによぉ……!」

 

 トモヒロが悔しそうな表情を浮かべ、タクオが心底申し訳なさそうな顔をする。

 

「今回は我がブルーコスモス第1回のガンプラバトル大会として、加えてこれほど多くの参加者が参加してくれたということで優勝賞品も豪華に用意してある!」

 

 そう言ってカウンターの前に店員が台車を押しながら何かを持ってきた。赤い布が被せてあるが、それをめくると……現れ出たのはHGUC『ゴールデンアッガイ』! HG『ハイネ専用デスティニーガンダム』! HGUC『ジム、ジャック・ザ・ハロウィン隊セット』! HGAGE『Gサイフォス』! BB戦士『貂蝉キュベレイ』! モビルスーツ戦国伝『武者頑駄無』! 1/144『ガンダムLOブースター』! 1/144『フルアーマーZZガンダム』! さらにこれまで発売されたあらゆる書籍付録のガンプラパーツセット一式! そしてこの店で使える3000円分の商品券だった!

 それを見てついに店内で爆発のような客達による歓声が沸き上がる。どれもこれも高価で、今では手に入りにくい限定や絶版のキットばかりだ……! もちろん俺も喉から手が出るほど欲しい。くそっ、あんなの手にできるチャンス、もう無いかもしれないのに……!

 

「それでは対戦表はここに貼り出しておくので一回戦目の対戦者達は2階のバトルルームでさっそくバトル開始だ! 各員の検討を祈る! あ、それから対戦者以外の者は店内モニターでバトルの様子を観戦してもらっていて構わないぞ」

 

 カウンター横の掲示板に先ほどの対戦表が貼り出される。5~6人の名前が6個のグループに別れており、そこから線が引かれ決勝トーナメントの枠へと伸びている。最初のグループの名前を見てみると……。

 

「おい、これレイナちゃんの名前じゃないか?」

 

 トモヒロが指さす場所、最初のグループの5人目の枠に“キサラギ・レイナ”の名前があった。

 

「本当だ。あいつ、こんな最初の方に名前書いてあったのか」

「どっかの誰かさんとは意識が違うみたいねー」

「うっ……ご、ごめんでござるって……」

 

 そういえばレイナはどこにいるんだろうか? あいつ、背がちっこいからこの人ごみじゃわからないかなー……。

 

「おい! そろそろ一回戦が始まるみたいだぞ!」

 

 その時、客の誰かがモニターを見て叫んだ。その言葉に誰もが店に3台設置されているモニターに視線が釘付けになる。なんだ、もう試合が始まるのか。ということは、レイナはとっくに2階のバトルルームに行って準備をしているということか。俺達に一言あってもよかったのに……。

 ともあれ、俺達もモニターの前に集まる。出撃枠は6つ、MF用も含めて今回はフルに活用しているようだ。さてさて、レイナ以外にはどんな奴が出ているのか? モニターには出場者達のガンプラの詳細データが表示される。一機目の機体名には“ドム・トローペン(ツヴァイ)”とある。

 

【挿絵表示】

 

 

「へぇ、ドム・トローペンのカスタム機か。メイン武装はグフカスタムのガトリングシールドにゲルググキャノンのキャノン付きバックパックか……同じジオン系でまとめてあるだけに、よく完成されたフォルムになっているなぁ」

「おっ。おいゴッド、“マスターガンダム”が出てるぜ! 師匠って呼んだ方がいいんじゃないか?」

『そいつが相応の使い手だったらな』

 

 マスターガンダムは機動武闘伝Gガンダムにおいて、東方不敗マスターアジアの駆るネオ香港代表のガンダムだ。劇中ではかなりの強敵だったが、ガンプラバトルではどうだろうか。

 

「その次が“ゼータプラス”でござるかぁ、ガンダムタイプが続くでござるなぁ」

 

 ダークグレーのその機体は、ガンダムUCに出てきたタイプのゼータプラスだった。

 

「あっ! “モンテーロ”も出てるよ! あとこっちは“ガンダムデュナメス アームアームズ”だって」

『わっ、すごい! 武器がいっぱい付いてますねぇ~』

 

 オトメの言ったデュナメスを見てみる。カラーリングは通常の緑からグレーに変え、そして機体の至る所に様々な武器がフレキシブルアームで連結されている、重武装タイプのガンダムデュナメスとなっている。なるほど、GNドライヴの効力で重力化のステージだったとしても、この武装でならそれに関係なく活動できるわけだ。だが、こんなにたくさんの武器を付けてしまって、果たしてビルダーは上手く使いこなせられるのか? というのが疑問に残る。

 パッと見でみると素組みの状態からディテールアップ機や改造機まで、幅広いステータスのガンプラが出そろっていて見応えのあるバトルになりそうだった。さて、レイナのガンプラはっと……。

 

「……ほぅ」

 

 その姿に俺は思わず感嘆の声を漏らし、他の3人とガンプラ達も思わず言葉を慎む。

 

 全身を覆う鮮やかな真紅。

 

 それと相まって輝く金色のライン。

 

 大空を駆け抜ける様を容易に想像できる大型のブースターと畳まれたウイング。

 

 全体的に刺々しく、荒々しいシルエットでありながらも、騎士を彷彿とさせる高貴な印象……。

 

 ベースとなったギラーガのフォルムをあまり崩さずに完成されたその機体は、まさに“後継機”と呼ぶに相応しいものだった。

 

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「ギラーガをベースに、色々なヴェイガンタイプのガンプラをミキシングしてあるのか……」

「ミキシング?」

 

 オトメがアホ毛を「?」の形にして聞いてくる。

 

「ミキシングってのは、いろいろなガンプラのパーツを組み合わせて改造することを言うんだ。ガンプラ改造にとっては最も一般的な改造方法といえるな」

「ふーん、でも確かに強そうだし、かっこいい……!」

「こりゃ見応えのあるバトルになりそうだぜ!」

「で、でもこのガンプラの名前……」

 

 タクオが指さすのは詳細データの登録ガンプラの名前の欄だった。

 

「アルティメット……X?」

 

 そう、レイナの作ったギラーガの改修機。その名前欄には“アルティメットX”という名で登録されていた。正直、この名前には違和感しかない。ここまで徹底してヴェイガンタイプの特徴を織り込んであり、完成度も高いのにこの名前は如何なものか……。

 

「アルティメットって、英語で“究極”って意味だったよな? またえらく大きく出た名前をつけたなぁ」

 

 トモヒロが苦笑しながらそう言う。そしておそらく“X”というのは“機動戦士ガンダムAGE”の世界において、脳内にあるX領域を用いて近未来視や反射速度の向上、ビット兵器の操作能力などの力を発揮できる能力を持った特別な人間…… “Xラウンダー”のことを示すと思われる。つまり、その意味合いを込めて直訳すると、このガンプラは“究極のXラウンダー専用機”といったところか。

 

「究極のXか……ファントム、何か感じるか?」

 

 他の客に気付かれぬよう、俺は小声で鞄の中に入っているファントムに問いかける。

 

『……正直に申します。現在、ギラーガ……いえ、アルティメットXの意識を感じ取ることはできません』

「なに? じゃああいつ、まだ意識が戻ってないってことなのか!?」

『そうだと思われます』

 

 あのアルティメットXは人化ガンプラとしての意識が宿っていない……つまり、普通のガンプラと全く同じ状態なわけだ。ということは、レイナの操縦技術で勝敗の全てが決まるわけだ。チーム戦ならいざ知らず、最悪の場合一人で複数の敵を相手にしなくてはならなくなるかもしれないこのバトルロイヤルルールでの戦い……果たしてどうなるか。

 

「……“究極”の名が伊達ではないということを見せてもらうぞ、レイナ」

 

 バトル開始のアナウンスが流れ、いよいよバトルロイヤル第1回戦が開始された。

 

………………

…………

……

 

 バトル開始と同時に各機体一斉に発進し、それぞれ6方向からバトルフィールドの中央部に向けて飛び立つ。今回のバトルフィールドは“新機動戦記ガンダムW”において主人公、ヒイロ・ユイの乗るガンダムヘビーアームズと、そのライバルであるゼクス・マーキスの乗るトールギスとが1対1で決闘を行った南極のステージだ。

 しかし、ただの氷と雪だけのステージではない。今回は猛吹雪が吹き荒れ、20メートル先も見えないような猛ブリザードの設定となっている。オマケに足元は氷で滑り、空を飛ぼうにも凄まじい風速でコントロールが効かない、玄人向けのステージだ。

 劇中では正々堂々とした決闘の場だったが、地上に降り立った機体が片っ端から足を滑らすという、混戦が予想されるステージだった。

 だが、そんな不安定な立地条件でもそれをものともせず、ホバーで地面を安定して移動する“ドム・トローペンⅡ”。重装備ながらも、増設されたバーニアやホバーユニットにより機動力は全く衰えない。この吹雪の中、目視による策敵はほぼ不可能に近いが、レーダーは機能している。それによると、ドムの進行方向に敵が一機いることがわかる。

 

「俺の最初の相手はっと……お前か!」

 

 まだ目視できる距離ではないが、吹雪の中のシルエットでどの機体かはなんとなく判別がつく。頭部はガンダムタイプ、そして前面を2枚のシールドで覆っている……ということは。

 

「ガンダムデュナメスアームアームズ……ならば!」

 

 バックパックのビームキャノンの砲身を前方に向け、放つ。瞬間放たれた黄色いビームはデュナメスのシールドに直撃するが、もちろんそれだけではデュナメス本体にはダメージは及ばない。それでも、体勢を崩すことには成功した。デュナメスは着弾の衝撃と滑る地面のせいでその場に膝をつく。

 

「もらった!」

 

 ドムがガトリングシールドを乱射しながら迫る。

 

「なめてもらっては困る!」

 

 デュナメスのビルダーが叫ぶと、アームの先に取りつけられたガトリングガンとビームガトリングがドムに向かって放たれる。攻撃の姿勢から一転、バーニアの向きを変えてその攻撃を避ける。

 

「なかなかやるじゃん!」

 

 ヒットアンドウェイの要領で吹雪の中に姿を隠したり、また現れたりしながらデュナメスを追いたてる。

 だが、そのすぐ近くでは別の戦いが幕を開けていた。マスターガンダムの放つマスタークロスがゼータプラスの足を掴み、動きを止める。だが、そこにモンテーロが介入しビームジャベリンを振り上げてゼータプラスを両断しようとする。だが、ゼータプラスは逆にマスタークロスを自分の方に引き寄せ、自機をモンテーロの狙いから逸らす。と同時に、狙いの逸れたビームジャベリンの刃先はマスタークロスを斬り裂き、ゼータプラスは自由の身となった。

 ゼータプラスはビームライフルと腰のビームキャノンを構えて他の2機に照準を合わせ、モンテーロもまた2機からの同時攻撃に対応できるようジャベリンを分離し、マスターガンダムは袖部分から新たなマスタークロスを出現させて、構えをとる。

 それぞれがそれぞれの対戦相手を選出し、思い思いの戦いの様を描いている最中、突如として“それ”は戦場に忍びよる。

 

 

 

 カキッ…………キィ………カキッ…………キィ………カキッ…………キィ………カキッ…………キィ………―

 

 

 

 その場にいるガンプラビルダーの誰もがその音に気が付き、戦いを止める。このブリザードの中でもはっきりとよくわかるほどに、それは今まで彼らが聞いたことのない、不気味な音だったからだ。

 まるで軽い金属の蹄で地面をゆっくりと歩き、その後に黒板を鋭利な刃先で軽く擦るような音……。

 

「なんだよ、この音……」

「足音……?」

 

 対戦者の誰かが呟く。そう、それは確かに一歩一歩と、地面を踏み締めながら歩み寄る足音のようにも聞こえた。その証拠に音はだんだんと大きく、はっきりと聞こえてくる。近づいてきている証拠だ。

 そして……ついにその足音の主は、吹雪のカーテンにそのシルエットが映るほどに、近くまでやってくる。

 

 

 

 カキッ…………キィ………カキッ…………キィ………カキッ…………キィ………カキッ…………キィ………カキッ

 

 

 

 足を揃えてその場に制止したガンプラ。

 真紅の機体色に、マントを彷彿とさせる巨大なウイング、ヴェイガンタイプ特有のシルエット、そして頭部センサーが緑色に光り、「ピピピピピ……」と特有の電子音が鳴る。

 間違いない。それは6人目の参加者……名を、“アルティメットX”。

 

「こいつ、生意気に足音なんか鳴らして……ふざけているのかぁーっ!」

 

 デュナメスアームアームズのビルダーが叫ぶ。確かに、ガンプラバトルにおいて足音など、すぐ敵に居場所を察知されやすい。特にこのステージのように視界がほぼゼロに近いような場所ではなおさらだ。パーツの装着が緩いという状態ならばすぐ修理するべきなのに、意図してこうして音を鳴らせているのだとしたら、その理由はよくわからない。

 アルティメットXの脚部を見てみると、そこには2本の鋭い爪が伸び、踵にも半月のように反った爪が凍った地面に刃を突き刺していた。あの軽い金属が地面にぶつかるような音はこの2本の爪が地面を叩く音、そしてその後の地面を引っ掻くような嫌な音は踵の爪が地面を引っ掻く音だったらしい。なるほど、これなら爪が登山靴のスパイクの役割を担ってくれて、氷の地面も滑ることは全く無さそうだ。

 それでもデュナメスのビルダーはそのキザったらしい登場演出が気に入らなかったらしく、身に付ける火器という火器の照準をアルティメットXに向ける。だが、アルティメットXは全く動じず、ピクリともその場から離れようとはしない。

 

「ファイヤァ!」

 

 デュナメスのガトリング、ビームガトリング、バズーカ、ビームバズーカ、ビームライフル、GNスナイパーライフルから弾丸やビームが雨あられの如くアルティメットXへと迫る。

 その時だった。アルティメットXのマントのような赤く、巨大なウイングが起動した。本体との接続部を軸として、大翼が後方から前方へと、まるでアルティメットXを包み込むかのように可動する。そして着弾するビームと数多の弾丸。それは吹き荒れる吹雪と積もった雪と凍った地面を溶かし、着弾地点は水蒸気と雪煙のカーテンに覆われる。アルティメットXの姿が隠れてしまい、デュナメスの狙撃用カメラでも状態が確認できない。

 

「……やったか!?」

 

 状態が確認できなくとも、デュナメスのビルダーは確かな手ごたえを感じていた。これだけの火力を一斉に浴びせて、それらが全て命中している筈。無事でいるガンプラなどそうそうありはしない。ましてやあんな華奢な機体など一たまりも……―

 

「なっ……!?」

 

 だが勝利の確信から一転、デュナメスのビルダーが次に見せた表情は驚愕のものだった。何故なら、着弾地点の雪煙が晴れ、デュナメスのカメラをズームで向けると……そこには先ほどと同じく微動だにせずその場に止まっているアルティメットXの姿があったからだ。注ぎ込まれた火力によって地面の雪と氷は溶け、地肌が露わになっているにも関わらず、その鮮やかな紅いボディにはもちろん、全体を覆うように纏った翼にも傷は一つもついてなかった。

 

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………………

…………

……

 

「あ……あれだけの攻撃を食らっておいて無傷かよ……!」

「でもどうして……?」

「……ん? 見ろ、翼の表面からエネルギーフィールドのような力場が発生している」

 

 俺がモニターに映し出されているアルティメットXの翼部分を指差す。それは吹き荒れる吹雪をもよせつけようとはせず、本体を球体状に守っているのがわかる。

 

「あの翼の形状的に元はバクトのものか。だとするなら、あれはおそらくバクトの持つ電磁装甲の特徴を受け継いでいるようだが……それをこれほど強力にするとはな」

 

 “バクト”は機動戦士ガンダムAGE本編において、初期のフリット編に登場したUEと位置づけされるMS群の一機であり、堅い電磁装甲を纏っている重装甲タイプだ。本編ではガンダムAGE-1ノーマルのドッズライフルのビームをも寄せ付けなかったという活躍を見せたが、それでもこれほどまで強固ではなかった筈だ。

 ファントムはこれをどう思っているのかと、意識を鞄の中へと集中させてみるが、意外なことに特にこれといって何も思っていない様子だった。大会が始まる前はあれほどまで強化改造されたギラーガの実力に興味津津だったというのに……。

 もしや、あのアルティメットXはまだ意識が覚醒してないから……それでなのか?

 

………………

…………

……

 

「このっ、このっ……このぉっ!!」

 

 尚もデュナメスアームアームズは持てる火器の全てを用いてアルティメットXを撃滅しようと奮闘する。だが、本体を守るように覆われた翼から発生する電磁シールドにその攻撃は一切通用しない。

 そしてひとしきり攻撃を受けきった後、ついにアルティメットXが動き出した。一歩、また一歩と歩みだし、デュナメスアームアームズに迫る。

 

 カキッ…………キィ………カキッ…………キィ………カキッ…………キィ………カキッ…………キィ………―

 

「く……来るなよぉぉぉ!!」

 

 またもあの気味の悪い足音を立てて歩むアルティメットX。それに恐怖を感じたのか、デュナメスのビルダーは絶叫しながら攻撃し、デュナメスを後方へと後退させる。だが、通用しない。全くと言っていいほどアルティメットXにはダメージを及ぼすことも、歩みを止めることもできないでいた。

 やがて、どの火器からもビームも銃弾も出なくなった。ガトリングはカラカラと虚しい音を立てる。デュナメスのビルダーはモニター端に表示されている自機の残弾数を確認する。

 

「残弾ゼロ!? ビーム兵器は砲身がオーバーヒート!? くそっ!」

 

 デュナメスのビルダーが悪態をつく。だが、それと同時に好機も訪れた。アルティメットXが電磁シールドを発生させるためのウイングがまた後方へと仕舞われたのだった。どうやらあの電磁シールドも無限に使えるわけではないらしい。ある程度のエネルギーを消耗し、再度使用するには幾分かのチャージが必要なのだろう。

 ならばとデュナメスのビルダーは作戦を変更した。使えなくなった武器はアームを駆使して後部へと収納し、変わりにアームに接続されたヒートソードを2本前方に展開する。

 

「こうなったら接近戦で!!」

 

 本来、ガンダムデュナメスは接近戦には不向きな機体だが、他の武器が使えない以上は仕方がない。なによりも、バトルロイヤルというルールであるにも関わらずたった一機に対して持てる火力の全てを注ぎ込んでしまった。せめてこのアルティメットXだけでも仕留めなければ割には合わない、そういった心境だった。

 デュナメスはソードを大きく左右に広げて、足音を立てながら接近してくるアルティメットXに迫る。そして目標をヒートソードの攻撃範囲内に捉えた瞬間、左右のアームをクロスさせるように斬撃を見舞わせる。

 そこでアルティメットXはまたも動いた。

 左右から振るわれるヒートソードが自身にその刃を突き立てる瞬間、両掌から黄色いビームサーベルを発生させ、素早く両手を振るってヒートソードを受け止めたのだった。面喰らってデュナメスのビルダーはそこで動きが止まった。その隙をレイナは見逃さなかった。そう、現在デュナメスは自分の真正面に無防備で立っている。起動した照準器は中央にデュナメスを捉えていた。

 

「……射貫け」

 

 Gポッド内で小さくそう呟くと、トリガーを引く。その瞬間、アルティメットXの胸部が輝き、緑色の高火力ビーム砲……“ビームバスター”が火を吹く。デュナメスはGNフルシールドを前方に展開しようとするが、時すでに遅し。

 

「うげっ……!?」

 

 デュナメスのビルダーの最期の断末魔の後、ビームバスターに貫かれたデュナメスは爆発四散し、このバトルロイヤル最初の脱落者となった。

 

 

 

「な……なんて防御力と火力だよおい……!」

「う~ん、そんなにガンプラが盛んじゃないと思っていたこの界隈にも、あんな実力者がいたなんてなぁ」

 

 先ほどまで三つ巴の戦いを繰り広げていたマスターガンダム、モンテーロ、ゼータプラスのビルダー達は、アルティメットXの戦いぶりにすっかり夢中になってしまい、いつの間にか戦いを忘れて見入ってしまっていた。

 

「けどさ、今だったらあのガンプラ、バリア張れないんじゃね?」

 

 ゼータプラスのビルダーがふと呟く。その言葉に他の二人も一瞬黙りこくる。どうしようか一瞬考えた後、その答えはおのずと出た。

 

「っしゃあ! 3機同時攻撃といくか!」

「おう! ……でもちょっと卑怯じゃない?」

「何言ってんのさ! バトルロイヤルってのは元来一人を集中的に狙ってくもんでしょ!」

 

 ゼータプラスのビルダーの言葉に、それは違うのではないかと他の二人は思ったが、それでもやはりここはまず強敵に集中攻撃して脱落させるのが一番適正だと判断した。3機はそれぞれウイングやスラスターを起動させ、アルティメットXとの距離を詰める。

 まずはマスターガンダムがマスタークロスを振り回しながら正面から接近、続いてモンテーロとゼータプラスは回り込んで2方向から接近し、三角形状にアルティメットXを取り囲んだ。

 

「そらっ!」

 

 掛け声と共に後方のモンテーロとゼータプラスがビームライフルを乱射し、アルティメットXの動きを止める。そこへマスターガンダムが、布状だったマスタークロスが刃状に形状を変化し、ウイングの加速も使ってアルティメットXへと突き立てる。

 

「3対1で負けるわけがないだろうが! もらったぁ!」

 

 撃墜を確信したマスターガンダムのビルダーの声が響く。

 だが、突如としてマスタークロスが何かによって阻まれ、本体まで届くことはなかった。バチバチと音を立てながら、ビーム状の布が、まるで徐々に削りとられていくかのように赤いビーム片となって零れ落ちていく。

 

「び……ビームシールドだと!?」

 

 モニターが眩く点滅する先にあるもの……それは、アルティメットXの手の甲から発生されている緑色のビームの盾、“ビームシールド”だった。アルティメットXは自身の目の前に手の甲を向け、ビームシールドを発生させることによりマスタークロスによる攻撃を防いでいたのだった。

 

「……まだ目覚めない……のね」

 

 マスターガンダムの攻撃をビームシールドで受け止めながら、レイナはGポッド内で密やかに呟いた。そう、彼女は尚もギラーガの意識が戻って来ないことに、若干の不安を感じていた。だが、こうして自分が戦っていればギラーガの意識が戻ってくるのかもしれないと考えていた。

 

「なら……仕方ない」

 

 右手で固く握るレバーを力強く前に倒す。それに伴って電脳世界でのガンプラも同じように大きく腕を振るい、マスタークロスを弾く。

 

「……仮面砕けるまでの付き合いってわけじゃないけど……貴女の過度な期待に応えてあげる」

 

 その振るった腕で、今度はマスターガンダムの頭部を掴む。マスターガンダムは逃れようとじたばたと暴れるが、レイナは構わずマスターガンダムの頭部を掴んだまま持ち上げる。地面から足が浮き、ミシミシと音を立てて皹が入るマスターガンダムの頭部。

 アルティメットXの、マスターガンダムの頭部を掴んだ方の腕……その肘部分が輝き出す。そこからビームが放出されていたからだ。そのビームはサーベル……というには少し短めのピック状で、何故か掴まれた掌部分からも熱を感じた。

 

「ま……まさか……!」

 

 アルティメットXの掌のドアップがモニターに大きく表示されているのを見ながら、マスターガンダムのビルダーは嫌な予感を感じ取った。確か、ほとんどのヴェイガンタイプのMSには、掌部分にビームバルカン兼用のビームサーベルが備え付けられていた筈……。

 

「ということは……!」

 

 次の瞬間、肘部分に出ていたピック状のビームが消え、同時に掌部分からマスターガンダムの頭部めがけてビームが照射される。しかし、射撃によるものではない。むしろ照射というよりかは打ちつけるような激しい衝撃がGポッド内に響き渡る。その一撃でマスターガンダムの頭部に入っていた皹がより一層大きくなり、衝撃の後また肘部分にピック状のビームが出現する。

 その時、マスターガンダムのビルダーは気が付いた。

 あのピック状のビームが、“肘から腕の内部を通って掌部分から出現している”のだとしたら……? それが一種の加速装置で、ビームの射出速度と貫通力を上げているのだとしたら……?

 

「やばっ……―!」

 

 だが言葉を発するよりも早く、目の前のモニターに皹が入る描写が表現され、Gポッド全体が再度激しく揺れる。アルティメットXのビームの槍がマスターガンダムの頭部に打ち付けられたのだ。皹の入ったモニターには赤い警告文が表示され、警報音もけたたましく鳴る。

 モニターのダメージチェックを見ると、『頭部半壊』とあり、ダメージ箇所が赤く表示される。ビームの槍は奥まで貫通することなかったらしい。だがおそらく、次はもう無い。ビームの槍はまた腕内を通り、装填位置に戻る。

 

「……ガンダムファイト国際条約第一条」

 

 接触回線でレイナの声がGポッド内に響く。

 

「と……頭部を破壊された者は……し、失格となる……!」

 

 それに対しマスターガンダムのビルダーは表情を強張らせて答える。

 

「……正解」

 

 次の瞬間、更に勢いを増したビームの槍が掌から射出され、轟音と衝撃と共にマスターガンダムが後方に吹っ飛ばされ、氷の壁に叩きつけられる。頭部はビームが打ち出された衝撃で爆散して無くなった。そしてそれっきり、機体が動くことはなかった。機動武闘伝Gガンダムに登場するモビルファイターは、頭部に機体のポテンシャルが詰まっている。よって、それを破壊されれば機体はもう使えない。それはガンプラバトルでも同じことだ。

 

「……“ライトニングパイク”……ビームをパイルバンカーみたいに打ち出すなんて……斬新だと思ったけど……もうちょっと貫通力を上げなきゃダメ……ね」

 

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 打ちだしたビームの槍を静かに腕内に戻すと、今度は空を一瞥した。空には、援護することも忘れてアルティメットXの一方的な攻撃に言葉を失い、ただ傍観するだけとなったモンテーロとゼータプラスがいた。

 

「ウイング……オープン」

 

 レイナが呟くと、背中で畳まれていたアルティメットXの一対の翼が開く。翼に使用しているパーツはガンダムレギルス、ダナジン、そしてバクトと、ヴェイガンタイプのモビルスーツのものばかりだ。そしてそれだけのパーツを使用していれば、必然的にウイングのサイズは大型のものとなる。

 完全に開ききる大翼……西洋のドラゴンを彷彿とさせるそれは、安易に“ウイング”と呼ぶよりも、文字通り“翼”と呼んだ方が相応しい。畳まれていた時には想像できなかったが、開くと片方だけでも自身の全長並みのサイズを誇るそれは、叩きつける吹雪をものともせず、今まさに飛び立たんとしている。

 

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 後部と脚部にある帯状のスラスターが音を立てて起動し始める。大翼が飛び加減を確かめる用に一回、二回とその場で羽ばたかせる。そして……。

 

「……ゴー!」

 

 掛け声と共にレイナは両手に握るスロットルレバーを思いっきり前に倒す。それと共に大きく地面を蹴り、空へと羽ばたくアルティメットX。その姿にようやく危機感を覚えたのか、モンテーロとゼータプラスはビームライフルを乱射してアルティメットXを撃ち落とそうとする。だが、当のアルティメットXはビームの軌道を読むかのように、悠々と避けて2機に接近する。まずはモンテーロからだ。

 

「なんっ……!? こ、こっちに来るのかよ!?」

 

 突然こちらに狙いを絞られたモンテーロのビルダーは、面喰ってビームライフルによる攻撃を思わず止めてしまう。その隙をついて後方のブースター部分に装着されている“何か”を二つ射出し、それはアルティメットXの両手に装着される。

 

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「あれは……!」

「どうした、ソウシ?」

 

 アルティメットXが装着した武器を見て、俺は思わず声を漏らした。今までウイングの一部だと思っていたそれは、半月のように反りかえって鋭い切っ先をしているクリアグリーンの刃……間違いない。

 

「あのブレード……“シグルブレイド”だ!」

 

 シグルブレイドとは、機動戦士ガンダムAGE本編において、主にガンダムAGE-1スパローやGバウンサーといった連邦系のMSに装備されている、ビームサーベル以上に鋭い切れ味を持つ高周波振動ブレードだ。

 だが、劇中に登場したシグルブレイドはどれも小型の短剣状のものばかりであんな大型のものは無い筈だ。ということは、おそらくレイナの自作……モニター越しでもわかるくらいに、あんな高精度のシグルブレイドを自作するなんて……!

 

「す……すごい……!」

 

 思わず声色を震わせて口元が少し緩み、堅く握る拳に汗が滲む。無意識に俺は興奮している。あんな武器でどのように戦う様を見せてくれるのか、もう一瞬たりともモニターから目が離せない。

 

 

 

「……断て」

 

 右手に装着された大型シグルブレイドを大きく振るうと、まるで紙切れのようにモンテーロのビームライフルの銃身が両断され、爆散する。

 

「くっ……ビームジャベリンを!」

 

 モンテーロのビルダーはウイングの下部に収納しているビームジャベリンを二つ繋ぎ合わせる。それを右手でくるくると回転させながら先端部分からビームワイヤーを発射する。発射されたビームワイヤーはアルティメットXを捕縛しようと伸びる。だが、それをレイナはもう片方のシグルブレイドで軽くあしらう。いくらビーム状のワイヤーといえども、ビームサーベルよりも鋭い切れ味を持つシグルブレイド相手には意味を成さない。構わずレイナはシグルブレイドでモンテーロに斬りかかる。

 

「やるやるっ! だけど!」

 

 モンテーロのビルダーもただでやられるわけにはいかない。アルティメットXの攻撃をシールドで受け止めると、ビームジャベリンでアルティメットXの胸部を狙う。これが決まれば致命的となるが。

 

「こっちはジャベリンなんだよぉ!」

 

 雄叫びをあげながら突っ込むモンテーロのビルダー。だが、レイナはそこで全ての推力を右方向にまわす。それにより、機体は大きく右回転をし、モンテーロの狙いがずれる。それだけでなく、アルティメットXの尾部にある尾のようなビームライフルが大きく振るわれ、モンテーロに叩きつけられる。

 

「ぐげっ!?」

 

 ビルダーが呻き声をあげて、後方に吹っ飛ばされるモンテーロ。吹っ飛ばされながらも腰部のミサイルを発射して反撃する相手も流石の執念だ。だがその執念の攻撃も、手甲のビームシールドによって防がれてしまう。完全に打つ手の無くなったモンテーロに、レイナは両手のシグルブレイドでトドメを刺すのだろうか?

 だが、レイナのビルダーとしての発想は俺達の予想の遥か斜め上をいくものだった。

 右側のシグルブレイドの基部から、伸縮式の棒状のものが出現する。直径はおよそ3mm、ガンプラにおいて様々な接続穴に差し込めるのと同じサイズだ。それを左側のシグルブレイドの基部に差し込んだ。

 それを見て一気にざわつく俺達を含む観衆。そしてアルティメットXは、今度は持ち方を変える。その棒状部分を掴み、ブレード部分の角度が少し直角に近い角度となる。そうしてできあがったのは、二つのシグルブレイドを上部と下部に兼ね備えた、巨大で長い槍状の武器だった。

 

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「あれって……槍でござるか?」

「いや……でもジャベリン……じゃないし、スピアやランスって感じでもないな。形状はナギナタに近いが……」

 

 俺は顎に手を当てて考える。あの形状、あの刃の大きさ……既存する槍状の武器で例えるのなら……そう。

 

「グレイヴか……!? 両刃式のグレイヴだ!」

 

 グレイヴとは槍の穂先を剣状にした武器だ。用途はだいたい薙刀と同じだが、これらは中央の欧州で使われていた。そして、今アルティメットXが2つのシグルブレイドを結合させて装備した武器はまさしくそのグレイヴだった。しかもただのグレイヴではなく、上下に刃を持つ特有の物だ。ただでさえ刃が大きく扱いが難しいグレイヴを両刃式に……いくらレイナであってもあれを使いこなすのは至難の業……。

 ……いや。

 だが俺は思い出した。あのアルティメットXが元となった機体、ギラーガは……元々、“両刃型の槍使い”だということ。

 

 

 

 アルティメットXは巨大な両刃式のシグル製のグレイヴを片手で回す。ヒュンヒュンと音を立てて空を裂き、その場所だけ吹雪の風向きが変わる。その様子を見て、モンテーロのビルダーは確信した。「自分ではこいつには勝てない」……と。

 

「こ……こなくそおおおおお!!」

 

 だがそれでも、彼もガンプラビルダーの端くれ。せめて一矢報いようとビームジャベリンを振りかざし、斬りかかる。それをレイナは“シグルグレイヴ”で受け止める。回転によって勢いを増したグレイヴの刃先でそのままビームジャベリンを受け止めたのだ。結果としてグレイヴのシグルブレイド部分は受け止めたビームジャベリンに食い込み、レイナが少しスロットルレバーを前に倒す。すると、まるで飴細工を切るように、いとも簡単にビームジャベリンは切断できた。

 

「なっ……!? じ、ジャベリンなのにぃ!?」

 

 その切れ味の鋭さに彼は思わず声を漏らす。シグルグレイヴはモンテーロの左肩あたりを貫き、そのまま両断すると同時に、足でモンテーロを蹴って機体を後方へ吹っ飛ばす。

 

「……フルスロットル」

 

 レイナの目つきが鋭くなり、手元のスロットルレバーを操作する。すると、アルティメットXがグレイヴを両手に持ち替え、ウイングが後部に伸びるように可変し、背部スラスターの出力が上がる。グレイヴの切っ先には勿論、モンテーロがいる。

 

「光の速さで射貫け……“アクセルグレイヴ”!!」

 

 そのまま最大加速で突っ込むアルティメットX。クリアグリーンのシグルブレイドが輝き、その刃でモンテーロを突く。だが猛攻はそれで終わりではない。勢い余って機体はモンテーロを通り越す。だがそこでつま先を前方に向けると足裏のスラスターで急ブレーキをかけ、後ろ向きでグレイヴを構えたまま後ろ向きに突っ込む。そう、グレイヴは両刃式、“後ろにも刃がある”のだ。後ろ向きのシグルグレイヴはモンテーロをしかと捉え、そのまま機体を両断する。

 

「こ……こんなの勝てるわけが……!」

 

 モンテーロのビルダーのその言葉を最期にして、モンテーロは爆散した。

 

「……次」

 

 撃墜したモンテーロには目もくれず、レイナは次の相手を選定する。その視線の先に居るのは……ゼータプラス。

 

「いぃ!?」

 

 アルティメットXに睨まれ、思わず恐怖の声を漏らすゼータプラスのビルダー。機体を反転させ、ウェイブライダー形態に変形すると、バーニア全開でその場から逃げようとする。だが、吹雪が向かいから吹き付け、思い通りのスピードが出せない。

 アルティメットXはそんなゼータプラスをあえて追いかけようとはせず。自分の手に持つシグルグレイヴの構えを解く。すると、アルティメットXはグレイヴの柄から手を離し、刃の後ろ側に突出している持ち手を掴む。

 

 

 

「あんなところに取っ手があったの?」

「何をするつもりなんだ……?」

 

 オトメも俺も、そしてモニターを見るビルダー全員が固唾を飲んでその後に何が起こるのかを見守る。

 すると、先程伸ばしたグレイヴの柄部分が縮んでいき、両端のシグルブレイドの基部同士が合わさり、双方のブレイド部分も比例するように角度が少し曲がる。そして出来上がった新たなシグル製武器、あれは……あの形状は……!

 

「今度はブーメラン……だと……?」

 

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 そう、それはブーメランだった。ただし、ソードストライクやデスティニーガンダムに装備されているような小型のものではない。二つの巨大なシグルブレイドを組み合わせた特大サイズのものだ。言うなれば“シグルブーメラン”とでも呼ぶべきだろうか。

 レイナは結合したシグルブーメランを片手で掴み上げ、大きく振りかぶると、それを思いっきりゼータプラスの方へと投げ飛ばした。投げ飛ばされたシグルブーメランは回転する刃で空を裂き、吹き付ける猛吹雪を蹴散らし、轟音を立てながらゼータプラスに向かっていく。

 

「ひえっ……!?」

 

 ゼータプラスのビルダーが気付いた時にはもう遅かった。シグルブレイドの抜群の切れ味と高速回転の威力、そしてその巨大さから生まれる物量と純粋なスピード、それらが合わさったブーメランはゼータプラスの機尾から機首にかけて、まるで生魚をおろすように真っ二つに切り裂いた。

 爆散の後、ブーメランはアルティメットXの手元に返ってきた。それを片手で受け止めると、二つに分離し、元のブースターの一部としてバックパックに結合した。

 

「残るは……一機」

 

 ここまで四機の敵機を倒し、残る敵機はドム・トローペンⅡのみ。そのドム・トローペンⅡの方向へとカメラを向ける。と同時に、こちらに向かって何かが4つほど投げ込まれる。手榴弾(ハンドグレネード)だ。レイナは慌てず両手のビームシールドを起動させて正面を守り、翼で機体の横側を覆った。まだ電磁フィールドは張れないが、これにより衝撃を少し緩和させることができる。

 地面に落下すると同時に炸裂する4つの手榴弾。爆発によって雪は舞いあがり黒煙と炎に包まれる。衝撃もかなりのものだが、その程度では今更このアルティメットXに傷を付けることはできない。翼を振るい、爆煙を吹き散らすと手榴弾が投げ込まれた方向に改めてカメラを向ける。雪煙を撒き散らしてホバー走行をしながらこちらに接近する1体の重MSの姿があった。最後の対戦相手、ドム・トローペンⅡだ。

 

「すげぇビルダーだ……! あんな相手と戦えるなら、こちとら本望よぉ!」

 

 ドム・トローペンⅡのビルダーは先ほどの3人のようにグループを組んで攻撃するような姑息な真似はせずに、単機でこちらに向かってくる。レイナもその姿勢に敬意を表してビームシールドを解除すると、右掌のビームサーベルを構える。

 

「うおおおおおっ!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 雄叫びをあげながら背中のビームキャノンと右手の90mmマシンガン、左手のガトリングを乱射しながらアルティメットXに接近するドム・トローペンⅡ。だが、今更その程度の攻撃に苦戦するようなレイナではない。アルティメットXは氷上を走り、素早い機動でドムを翻弄するように攻撃を華麗に避ける。また走ることにより、先ほどまで不気味に響いていた足音は対照的に小刻み良く氷の上に跡を刻みながら鳴り響く。

 

「だ……ダメかぁ……! いやっ、これでっ!」

 

 射撃では倒せないとわかり、一瞬諦めが脳裏を過ったが、それでも一か八かに賭ける。マシンガンとシールドのガトリング部を捨てて機体を軽くし、シールドの裏からヒートサーベルを取り出して構えるドム・トローペンⅡ。既にアルティメットXとの距離は目と鼻の先。アルティメットXがどちらかというと格闘戦は得意ということはわかっている。

 だが、それでも、たとえこれで負けたとしても、その力の全てを剣を通じて自分のガンプラで、自分の手に感じたいとドムのビルダーは考えていた。そう、今彼は勝ち負けよりも全力でガンプラバトルを楽しんでいた。

 

【挿絵表示】

 

 

「……もらった」

 

 ドムがビームサーベルの攻撃範囲内に入った。対するドムもまた、シールドを胸の前に当て、ヒートサーベルを振りかざす。無論アルティメットX自身もドムのヒートサーベルの斬撃範囲内に入っているが、それでも確実に振るわれるまでにタイムラグができる。一方のこちらはビームサーベルを突き立てるだけの攻撃……ラグは無い。確実にこちらの攻撃の方が優先的に勝っている。即ち……。

 

「これで私の……」

 

 勝ち……とまで言いたかった。しかし。

 

 

 

 ドクンッ……。

 

 

 

「っ……!?」

 

 突然心臓の鼓動のような脈動が、レイナの内から響いたような感覚を感じた。次の瞬間、途端に機体の動きが鈍くなる。アルティメットXの頭部センサーから光が消え、ビームサーベルも消失し、走る速度も落ちていき、やがてその場に制止する。

 

「えっ!?」

 

 戸惑いの声をあげたのはドムのビルダーだった。既にヒートサーベルを振り下ろす構えをとっていたため、勢いを止められず、そのまま直上からヒートサーベルが振り下ろされる。振り下ろされたサーベルは難なくアルティメットの真紅のボディを斜め方向に、上半身と下半身に切り裂いた。

 

 

 

 ―ドム・トローペンⅡに撃墜されました―

 

 

 

 一同が唖然とする中モニター映し出されるレザルト画面。それはあまりにも予想外で、あまりにも呆気なさすぎる結末だった。

 

「ど……どういうことでござるかこれは!?」

「レイナちゃん、わざと負けたの?」

「あいつに限ってそんなことをするわけないだろ!」

 

 とは言ったものの、これは本当に意味がわからなかった。確かにほんの数秒前まで、俺達はレイナの……アルティメットXの勝利を確信していた。それが、いきなりアルティメットXの動きが止まり、トドメを射す筈だったドムの攻撃を逆にマトモに受けてあっさりと撃墜された……。一体何が起きたのか? レイナがわざと負けたのではないとすると、ガンプラバトルのゲームシステムの不備かなにかだろうか……?

 

『……ようやくか』

「ファントム、どうした?」

 

 先ほどまでずっと無言だったファントムが、バトルが終わってようやく言葉を発した。

 

『あのバトルが終わる瞬間、奴の……ギラーガの意識が覚醒したのを感じました』

「えっ!? それじゃあ今レイナが持っているあのガンプラは……!」

 

 いつ人の姿になってもおかしくはないということか……マズいな、こんなに大勢の人がいる中でそんなことになったらパニックになるどころの騒ぎでは済まない。

 その時、ちょうどバトルに参加していたビルダー達が2階から1階の売り場へと降りて来た。もちろん、その中にはレイナの姿もある。手には、あのアルティメットXをまるで周囲の視線から隠すように手で覆いながら持っている。

 

「おい! あんたのドムすげぇな!」

「あの状況から一発逆転しちまうなんて……すげぇ実力持ってるんだな!」

「え!? えっ……へへへっ、そんなことないっすよ~」

 

 しかもおあつらえ向きに、観戦者達の注目は無双しまくっていたレイナよりも、そこから奇跡の逆転劇を見せたあのドムのビルダーへと集まった。これならなんとか周りに気付かれずにレイナを外に連れ出すことができそうだ。

 

「レイナ、手に掴まれ」

「ソウシ……!?」

 

 人でごったがえす中、俺は必死にレイナに手を差し伸べる。レイナは俺がここにいることに驚いているようだった。やはり、俺をこの大会に誘わなかったのは故意だったようだ。

 一瞬の戸惑いの後、レイナは俺の手を軽く握り返す。俺はその手をしっかりと掴んで自分の方へと引き寄せる。

 

「お前も感じたか?」

「えうっ……う、うん……」

「何赤くなってんだよ? まぁいい。すぐに店を出るぞ、みんなも店の外で待ってる」

「うん……」

「それと、なんで俺をこの大会に誘わなかったのかも後で理由を聞かせてもらうからな」

「……うん」

 

 またも小さく短い返事を返すと、レイナは俺の手を先ほどよりも強く握り返し、もう片方の手にアルティメットXをしっかりと胸元に抱きよせて持っていた。

 そしてレイナの手を通して俺も感じた。

 確かにこのガンプラ……“アルティメットX”からは、強い脈動……一種のシグナルのようなものを発しているのがわかる。

 それは執拗に俺達に自己主張の如く語りかけているようにも感じる。

 

 その意味合いはこう感じ取れる。

 

 「早くここから出せ」……と。

 

………………

…………

……

 

「ふぅん……あのガンプラ、“リバイバル”に成功したみたいね」

 

 店の奥、ソウシ達が出ていった店の出入り口から見て対極に位置する場所から、一人のサングラスをかけた女性が壁に寄りかかりながら、ソウシ達が出ていく後ろ姿を見て、周囲の客達に聞こえぬよう小さく呟いた。

 

「でもあの状態じゃまだ6割程度……不安定な状態で覚醒してしまうわね」

『よろしいのですか? あの者達だけで不安定な“MS(マシンソウル)”を抑え込むのは役不足かと』

 

 彼女の手の中にあるガンプラ……黒いガンダムアストレイタイプの改造ガンプラが語りかける。その口調、その声色……まさしく、ゴッドやギラーガの窮地を救ったあの忍者のようなガンプラであることは明らかだった。

 

「そうね、いよいよヤバくなったら私達の出番ってとこかしら。でも今は……」

 

 彼女の視線は入口から優勝賞品の方へと向く。

 

「あっちの方に興味向いちゃってるかな♪」

 

 と、サングラス越しでもわかるくらい、少女のような無邪気な笑顔が零れる。それを聞いて黒いアストレイは小さくため息を漏らす。この人らしい優先順位だな、と悟った感じだ。

 

「ただいまより2組目のバトルロイヤル戦を行います! 出場ビルダーの方は2階バトルルームの方にお願いしまーす!」

 

 店員の告知を聞くと、彼女は寄りかかっていた壁を離れて2階に向かって歩み出す。

 

「さぁ行くわよ“カゲツキ”。“ガンプラマイスター”の実力、見せてやろうじゃない」

『御意』

 

 “カゲツキ”と呼ばれたガンプラは短く返事をし、サングラスの彼女は階段を上ってバトルルームに入った。

 

 ―続く―

 

 

 

 

 

~オリジナルガンプラ紹介~

「ドム・トローペン(ツヴァイ)

 

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【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

【武装】

90mmマシンガン

3連装ガトリング砲

ガトリングシールド

ビームキャノン

拡散ビーム砲

ハンドグレネード×4

吸着爆弾×4

 

【機体説明】

 読者である暁尚さんよりオリジナルガンプラ登場希望の御意見がありましたので、自分なりのアレンジを加えて制作し、登場させて頂きました。ありがとうございます!

 本編では吸着爆弾の出番がなかったのが残念…。

 またどこかで登場させるかも?




今回は読者の方の登場希望のガンプラを自分流に作って登場させるという方式をとらせていただきました。
今更ながら暁尚さん、こういうのって大丈夫だったでしょうか…?
やはり意見を頂いただけあって、かっこよく仕上がったと思っております。

そして新機体はもう1機、ギラーガをベースにしたアルティメットXを登場させました。
実はこの名前、まだ仮名であり本命は次回明らかになります。
まだまだ明かしてない武器や技がありますので、次回の活躍や紹介を楽しみにしていてほしいです。
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