機装女戦記ガンプラビルドマスターズ   作:ダルクス

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 アルティメットXの自我の目覚めをその身に感じたレイナ。
 参加していた大会を早々に切り上げ、ソウシに連れられてきたのは人気の無い空き地だった。
 そこでXの自我を目覚めさせることになったが、果たしてそれは元のギラーガと同じ存在なのだろうか……?

 一方、ブルーコスモスで開かれているガンプラバトル大会では謎の女ガンプラビルダーが猛威を振るっていた。


第21話:「破滅の風」 ※オリジナル機体紹介あり

「早く! こっちだこっち!」

 

 店の外に出ると、路地裏への入り口でトモヒロが俺達を手招きする。レイナの手を引っ張る俺は走ってその路地へと入る。俺とレイナの後をトモヒロがしんがりを務め、人が来ないか後ろを見ながら走る。今にも人化ガンプラとして覚醒してしまいそうなこの“アルティメットX”……それをこんな人通りの多いところで人間の姿にさせるわけにはいかない。そのまま路地裏を通って人気の無い空き地に向かい、そこで覚醒させるつもりでいた。

 

「悪いなレイナ、そんな恰好のまま連れ出しちゃって」

「……ううん、仕方ないこと」

 

 そんな格好、というのは今のレイナの恰好のことだった。何故ならガンプラバトルの後すぐに連れ出してしまったため、今のレイナはガンプラバトル用のパイロットスーツ姿のままだった。

 

「後でアベさんとこに返さないとな」

「あ……これ、自分の……」

「え……?」

 

 それを聞いて俺は思わずレイナの方を見てしまう。アベさんの店でガンプラバトルをする際、俺達はいつも店でレンタル用のパイロットスーツを着てガンプラバトルに臨んでいる。が、今レイナが着ているパイロットスーツは、確かにあの店にあったスーツにしては見覚えが無い。下地を黒とし、赤い発色をあしらったオリジナルカラーのスーツだった。色の配置的には、“機動戦士ガンダムZZ“の登場人物、「プルツー」の着ているパイロットスーツと似ている。さらにこの配色、どこか見覚えがあるパターンだ。

 

「それって……もしかしてギラーガを意識したスーツなのか?」

「うん……」

 

 と、レイナは俯き加減に小さく頷いて答えた。やっぱりそうだ、道理で見覚えがあるカラーリングだと思った。おそらく、あいつの復活を願って同じ配色デザインにしたのだろう。

 

「いいと思うぞ、似合ってる」

「えうっ……あ、ありがとう……」

「あのー、お二人さん。そういう会話は後でしてくれよな」

 

 と、レイナの後ろにいたトモヒロがジトっとした視線をこちらに向けながら呆れ顔で言った。確かにそうだ、こういう話は後で落ちついてからした方がいい。

 今は、このアルティメットXをどうにかしなくては。

 

 

 

 

 

―――――第21話:「破滅の風」―――――

 

 

 

 

 

「あ、きたきた! おーい!」

 

狭い路地を抜けると、日があまり当たらず薄暗く、雑草の生えたじめじめとした地面の空き地に出る。そこでは先にこの場所に着いていたタクオとオトメが待っていて、オトメが俺達に手を振っていた。厳密に言うと、ここは売り地なのだが、四方が建物で囲まれていて日当たりも悪く、何か店を建てるにしても人などほとんど入ってこられない場所なので長年買い手が付かず、俺達が小さい頃からよく遊び場として利用していた場所だった。逆に言うと、ここでなら人の目も届かないため、人化ガンプラ達を思い切り解放できる……ということだった。

 

「どうでござる? ギラーガの……アルティメットXの様子は?」

 

 タクオがレイナに聞く。レイナは、ずっと固く握りしめていたアルティメットXを、皆がよく見えるように掌から開ける。

 

「……さっきより、鼓動が速くなっている……今にも人化しそう……」

「じゃあもうここで人化させちまおうぜ。人目もねーし、大丈夫だろ?」

 

 トモヒロが言うように、確かにここでならアルティメットXが人化しても何の問題もないように思える。だが俺は何か嫌な予感がする……本当に人化させてしまって良いものだろうか……?

 

「どう思う? ファントム」

『……私達が決められることではありません。遅かれ早かれ、彼奴は新たな人化ガンプラとして覚醒します。だとするならば、こういう場所の方が余計な問題を起こさずに済みます』

 

 ファントムの意見は最もだといえる。となれば、ここでアルティメットXの覚醒を待つことにしよう。仮に俺の嫌な予感が的中してしまったとしても、それが街中でなんてまっぴらごめんだからな。

 ファントムの言葉は皆にも聞こえているらしく、レイナは自分の手の中にあるアルティメットXを静かに地面に立たせる。そうして俺達はその周りを囲み、じっと見つめる。

 

「聞いていいか?」

「……なに」

 

 レイナの隣に立つ俺。視線をXから離さずにレイナに問う。

 

「今日の大会、なんで俺にだけ声をかけなかったんだ?」

「…………」

 

 しばしの沈黙の後、俺と同じくXから目を離すことなくレイナは答える。

 

「……貴方とは……戦いたくなかった」

「え? どういう意味だよそれ?」

 

 相変わらず必要以上の言葉を喋らないためその真意を知ることができない。それがどういう意味なのか確かめるつもりで尚も追求する……が、その時だった。

 マスターではない俺にでもわかるほどに、Xが発している鼓動が強くなった。

 

「な……なにこれ?」

「まるで……叩きつけるかのような……!」

「油断すんなよみんな! 来るぞ!」

 

 どうやら俺以外の三人もこの強力な鼓動を感じ取っているようだ。そして改めて地面に置かれているXに目を向ける。

 

「なっ……!」

 

 思わず驚愕と感嘆の声が漏れた。鼓動に合わせて、アルティメットXのシルエットが残像のように大きくなっているような……そんな錯覚感が俺達を襲う。これが人化ガンプラ誕生の瞬間なのか……? ファントムの時には俺は寝ていたが、もしかしたらその時もこんな感じだったのかもしれない。

 

「……くる」

 

 レイナの言葉の直後、眩い閃光が俺達を包み込む。思わず目を瞑り、腕で光を遮る。光は一瞬で止んだものの、チカチカと目の前が点滅してしまい、うまく物を見ることができない。だが、先ほどまではっきりと感じ取れていたあの激しい鼓動は止んでいた。

 目をパチパチと数回瞬きをし、ようやくマトモに目が見えてきた。ぼやける目であのアルティメットXが置いてあった位置に視線を向ける。が、そこにはアルティメットXのガンプラは置かれてはいなかった。代わりに「シュー」という蒸気音と共に白い煙が上がり、何者かが前かがみになって立っている。腕で目を擦り、その人物が何者なのかしっかりと見据える。

 

「ギラーガ……なのか……?」

 

 ファントムの声がすぐ傍らで聞こえた。見ると、すでにファントムはガンプラの状態から人の状態への変身を終え、臨戦態勢でその場に佇む。

 アルティメットXがギラーガの改造機体であるならば、当然あそこに立つ人物もギラーガと呼ぶべき人物である筈。だが、彼女の外見的特徴はギラーガだった頃とはかなり異なっていた。

まず、ギラーガだった頃には無かった頭部の横から生える無機的な流線型な二本の角と、額から生えた赤い角……全身を覆う西洋の騎士を彷彿とさせる、刺々しくも美しさを引き立たせる真紅と金色の装甲……バックパックには大型ブースターと、赤い布のように風にはためくマント……掌がヴェイガンハンドとなり、肘の先まで一貫して機動鎧で覆われている両腕……両足の鋭い鉤爪……と、ここまではガンプラの時に見ていたアルティメットXの外見的特徴とほぼ同じだ。

だが、その真紅と金色の装甲の隙間には人の肌があった。しかも俺達や人化ガンプラ達のように普通の肌色ではなく、褐色の肌だ。そして頭部からは紫色の髪が生えている。髪は長く背中の中間あたりまで伸びているが、所々機械的なパーツが編み込まれながら結われており、その先端は鏃のような鋭い切っ先の金具で留められている。

ギラーガが人間体だった時も、褐色の肌に紫色の髪だったが、髪はここまで長くはなかった。さらに心なしか背も少し伸び、大人びた印象になっている。

そして最大の特徴なのが、その顔……彼女の顔はヴェイガン機特有のバイザー状の仮面で覆われておりその素顔を窺うことはできない。だが、薄いピンク色の唇と全体的な顔の輪郭から、なかなかの美形だということがわかる。

……が、彼女は小さなガンプラの状態からようやく人間体になったというのに、前屈みの姿勢のまま全く動こうとはしない。

 

「お、おい……動かないぞ?」

 

 トモヒロがこちらに目配せを送る。誰がどう見ても、人化は成功しているはずなのにXは動こうとはしない。まだ意識が覚醒してないのだろうか……?

 

「…………」

「お、おいレイナ……!」

 

 そんな俺達の不安をよそに、レイナはすたすたと歩き始める。歩む先はもちろん、人化したアルティメットXの元だ。俺を含め、他三人も不安そうな視線を送りながらもレイナとアルティメットXとの接触を、固唾を飲んで見守る。まさか自分のマスターに手をあげるなんてことは無いとは思うが、それでも万一の事に備えてファントム達は各々の鞄の中で待機している。何か異常事態があればすぐに飛び出すことができる。

 そうこうしている内にレイナはアルティメットXのすぐ傍まで歩み寄る。

 

「ギラーガ……」

 

 レイナが、かつての相棒だったガンプラの名前を呼びながら、Xに手を伸ばす。やはり、あの「アルティメットX」という名前はガンプラバトルに参加する際に使った単なる仮名に過ぎないようだ。レイナの中ではいつも、あのガンプラの名は「ギラーガ」らしい。

 伸ばした手が、Xの顔を……赤い装甲やバイザーに覆われていない、褐色の肌に触れようとする。

 が、その時。レイナの手がXの顔に触れようとしたまさにその瞬間、Xの左腕が俊敏に動き、その金属質の腕でレイナの手をガシッっと掴んだ。

 

「……っ!?」

「なっ……!?」

 

 突然の事態に驚きを隠せないレイナ。それを見守っていた俺達も同様だ。

 そしてXの頭部がぐるりと不気味に動き、レイナの方を向く。バイザーのスリットに緑色の光が灯り、「ピピピピピピ……」とヴェイガン機特有の不気味なセンサー音が木霊する。

 どうやら彼女が……アルティメットXがとうとう覚醒したようだ。

 

………………

…………

……

 

『……創主よ』

「なぁに? 今いいところなんだから」

 

 「機動戦士Vガンダム」に登場する架空の地、〝ポイント・カサレリア″。連なる山々や谷、草木が生い茂った深い森が特徴的なこのガンプラバトルステージで、カゲツキとその創主(マスター)は森の中に隠れながら言葉を交わす。

 

『件のマシンソウルが目を醒ましたようだ』

「あらそう? ま、あの状態じゃしばらく暴走するかもだけど、あの子らがなんとかするでしょ」

 

 その時、ガサガサと何者かが草をかき分けてくるこちらに向かってくる音が聞こえる。姿を現したのは、巨大なガトリング砲を装備したネオ・ジオンの主力モビルスーツ、“ギラ・ドーガ”だった。ギラ・ドーガは赤いモノアイを森のあちこちに向けながら注意深く進んでいく。どうやらカゲツキ達の存在には気が付いていないようだ。

 

『しかし、未熟な彼女らに抑えきれるかどうか……』

「いい経験になるでしょ。……あ、見つかっちった」

 

 ギラ・ドーガのモノアイが森の中に隠れるカゲツキ達をしかと捉えた。カモフラージュが見破られたのか、それともガンプラビルダー特有の殺気を察したのか、いずれにしてもギラ・ドーガは巨大なガトリング砲の銃身をカゲツキ達に向けると躊躇いなく引き金を引く。銃身が回転し、銃弾が断続的に発射される。銃身が右から左へと方向を変え、巨大なガトリング砲はその大きさと相まって破壊力も凄まじく、前面の景色全てをまるで一薙ぎするかの如く森の木々を木端微塵に破壊していく。もちろんその凶弾はカゲツキ達の元にも飛ぶ。だがギラ・ドーガのビルダーはカゲツキ達が正確にどこにいるかまでは把握していないようだ。無差別に、広範囲に降り注ぐ銃弾がそれを物語っている。銃弾が届く寸前、カゲツキは地面に敷き詰めた落ち葉の隠れ蓑から素早く飛び上がる。

そして回転を止めるガトリングの銃身。どうやら弾が尽きたらしい。銃身から白く煙をあげるガトリング砲を下げ、周囲を策敵するギラ・ドーガ。仕留めたのだろうか……? それとも逃げられたのだろうか……?

だが、そんなギラ・ドーガのビルダーの不安は杞憂に終わる。

背後に忍び寄った黒い影が両腰から二本の刀を引き抜いたかと思うと、十文字に刻み込まれる斬撃。ギラ・ドーガの本体は四つの部位に切り裂かれ、無残に地面に転がる。

それを見届けると、二丁拳銃のガンマンのように手にした刀をくるくると器用に回し、両腰の鞘に納める影……二つのツインアイが光り、紫色のフレームに黒い装甲……改造のため細かい違いはあるものの、その全体的な風貌はガンダム作品を知る者ならば一目で何の機体かわかる筈だ。王道を外れし者……“ガンダムアストレイ”たるその風貌で。

 

「手応えないわねぇ。ま、この地域ならこの程度かしらね」

『ゆめゆめ油断されぬよう』

「わかってるって。じゃこのままとっとと他の機体も倒しちゃいましょうか。あと何機残ってるっけ?」

『3機でござる』

「ふーん、じゃあ3分っていったところかしらね」

『いや……』

 

 カゲツキはそこで一拍置いた。それとほぼ同じタイミングでセンサーが警告音を鳴らす。反応があった方にカメラを向けると、モビルスーツの編隊3機がこちらに向かってきている。光の翼を広げたV2ガンダムに、MA形態のカオスガンダム、グフフライトタイプの3機だ。

 

『3分は長すぎる』

 

 カゲツキのその言葉に、彼女はニヤリと嗤う。次の瞬間、黒いガンダムアストレイはその3機の方へと飛び去っていった。

 

………………

…………

……

 

 

 

 ―――ここはどこだ……?

 

 ―――私は何故ここにいる……?

 

 ―――お前は……誰だ?

 

―――私は……誰だ……!?

 

 

 

 レイナの腕を掴んだままXはセンサーを光らせ、周囲の物を観察する。彼女の被るバイザーには、自分が見たあらゆる物がこと細かなデータとして表示されているのだ。

 まず彼女は、自分が腕を掴んでいる少女……レイナを見た。不安そうに怯えた表情をしているが、Xはそのセンサーを介してで彼女の生体データのスキャンをし始める。

 

 心音・脈拍……共に上昇。著しい発汗作用が確認できる……恐怖心を感じているためと推測される。武器の所有……無し。危険度はDと判断。

 

 バイザー内にこだまする電子音と共に、目の前に様々なスキャンデータが文面によって表示される。それらを読み取り、Xはレイナが自身に対する危険度は低い存在であると判断し、手を離す。

 手を離されたレイナはその場に思わず尻もちをついて倒れる。

 

「レイナ!」

 

 ソウシが駆け寄り、レイナの肩を抱く。だがレイナの視線はXに向いたままだ。先ほど同様、恐怖を感じて怯えてはいるが、アルティメットXは自分が創りだしたガンプラ……自分でどうにかしなければいけないという感情とせめぎ合っていた。

 

「あいつ……一体何がしたいんだ……? レイナの事がわからないのか?」

「そうなのかもしれない……まるで無機質な……機械みたい……」

 

 思わず不安を口にするレイナ。対するXは、今度はソウシの生体データを取り出す。だが、先ほど同様にソウシも危険度は低いと判断され、すぐに視線を離し、Xは周囲を見回す。

 

「マスター! レイナ! ここは一旦退いて様子を見ましょう!」

 

 その時、Xはその声の主の方に視線を向ける。声の主はファントムだ。ファントムの方を見た途端、先ほどまでとは雰囲気が変わった。

 

 

 

 MS(マシンソウル)反応……有り。対象者……捕捉。所有武装……ビームライフル、ビームガトリング、レーザー重斬刀、斬機刀。危険度はAと判断。自身に重大な脅威となり得る存在。

 

危険

危険

危険

 

排除せよ

排除せよ

排除せよ

排除せよ

排除せよ……―

 

 

 

 Xの見るバイザー内に赤い警告ウインドゥがいくつも表示され、同時にその警告が脳内に直接フィードバックされる。その指示が彼女の身体を動かす。

 電子音と共にスリット部の走査線状の光が一際大きく光る。次の瞬間、彼女は機械化された右腕をファントムの方に向ける。

 掌の部分から銃口が突起し、一瞬光が瞬いたかと思うと断続的な射撃音と共にビームの銃弾が発射される。

 

「なっ……!」

 

 ファントムもその様子がおかしいことにいち早く気が付き、既に肩のシールドを前面に向け、ビームバルカンの攻撃から身を隠す。だが、弾丸がシールドに直撃する度に、着弾の衝撃でファントムの姿勢が揺らぐ。

 

「なんだこの威力は……! ただのビームバルカンではないのか!?」

 

 Xの放つビームバルカン……ギラーガだった頃にも装備されていたものだが、その威力と貫通度はケタ違いだ。おそらくレイナの改造によって威力が数段パワーアップされているらしい。元になったブレイズザクファントムのキットのものをそのまま使っているファントムのシールドでは、撃ち抜かれるのも時間の問題だ。

 

「ファントム! 交戦を許可するからこいつを止めてくれ!」

「し、しかしマスター達がその位置にいては……!」

 

 言われて、ソウシ達は今自分が置かれている状況に気が付いた。ソウシとレイナは今、Xのすぐ足もとにいる。ここにいてしまっては、ファントムが思うように反撃できないのは明らかだった。

 

「離れなきゃ……! おいレイナ! 立てるか!?」

「うっ……あっ……!」

「どうした!?」

「う……動けない……」

 

 ソウシはレイナの体を抱きかかえ、立ち上がろうとするが、確かにレイナの体は思うように動かない様子だ。どうやらXの迫力に気圧されてしまい、腰が抜けてしまったらしい。

 そうこうしているうちに、Xはビームバルカンでは決定打にならないと判断し、別の攻撃方法に切り替える。

 バルカンによる攻撃が止むと、腕を曲げて下段に構える。肘のあたりにビームサーベルが出現し、掌を大きく開いて構える。

 

「あれは……さっきの? いや……違う!」

 

 一瞬、先ほどレイナがガンプラバトルで見せた“ライトニングパイク”だと思ったが、モーションが違う。曲げた腕を前方に大きく突き出す、と同時に肘から生えたビームの棒は腕の内部を通って掌の銃口部分に出現し、突き出しの加速と共に“光の矢”となって掌から射出される。

 

「ビームの……矢だと……!?」

「閃光の鋭矢……“ライトニングアロー”……!」

 

 レイナの口から出た言葉。それは、あの武器の名を指しているものだった。

 射出されたライトニングアローはその名の如く、光の速さでファントムに迫る。その速度に満足な防御態勢も、回避行動もとれないファントムは構えたシールドでそれを受け止める他なかった。だが、ライトニングアローの衝撃と貫通能力は予想を遥かに超えている。シールド表面に耐ビームコーティングが施されているのが唯一災いし、ビームの威力は多少低下させることはできたため、ファントムにまで届くことはなかったがその衝撃までは殺しきれなかった。

 

「ぐわっ……!? かはっ……!」

 

 ファントムの体は宙を舞って吹っ飛ばされ、背後の廃ビルの壁に叩きつけられ、地面に倒れ込むと苦しそうな呻き声をあげる。右肩のシールドは粉々に砕け散り、もはや見る影もない。

 

「ファントム! な、なんて威力だよ……!」

 

 眼前で目の当たりにしたライトニングアローの威力に、ソウシはただただ唖然とする。自分の目の前でファントムが痛めつけられているというのに、気持ちは今すぐファントムの元に駆け寄りたい一心だというのに、体が動かない。レイナ同様、ソウシもXの圧倒的な戦闘能力を眼前で見せ付けられ、体の力が抜けてしまったのだ。

 

「……あんな武器は……私は想定していない……」

 

 レイナの口から出た言葉に、ソウシは思わず我が耳を疑った。

 

「なんっ……!? おいレイナ! それは本当なのか!?」

「……うん……掌のビームサーベルは最初からパイルバンカーとして使うことを想定して、肘部分にサーベル基部を取り付けたけど……矢として使うことは考えていなかった……」

「じゃあなにか……? あいつは自分の武器の性能を正確に把握し、創造主ですら思いつかない方法で最良の攻撃方法を生み出すって……つまりは……学習しているっていうのか!?」

 

 こんなことは今までの人化ガンプラではなかった事例だ。どのガンプラも、あらかじめ自分に装備された武器を活用し、今までそれで戦ってきた。トモヒロとゴッドのように自身でオリジナルの技を繰り出したこともあったが、ガンプラだけが自身の判断でのみオリジナルの攻撃方法を習得するというのは、これが初めてだ。

 Xが有しているのは圧倒的な戦闘能力だけではない。優れた知能も持っている。その事実を知り呆然とするソウシ達だが、また背後から大きな熱を感じる。振り返ると、今度は左腕に先ほどと同じモーションでXが肘にビームを発生させていた。

 

「あいつ、またあれを撃つつもりか!」

 

このライトニングアロー、貫通能力は高いが連射が効かないのが欠点だ。その証拠に右手の銃口は赤く白熱し、白い煙が上がっている。銃身の冷却が追いついていない証拠だ。

だが、機械化された腕は両腕分ある。片方が使えなければ、もう片方で撃てばいいだけのこと。Xは冷静にそう判断すると、左手を開き、銃口を少し下げて地面に転がるファントムに向ける。ファントムは先ほど受けた衝撃が大きく、体が痺れて思うように動かすことができない。このままでは確実のファントムの体がビームの矢によって射抜かれてしまう。万事休すか……と思ったその時だった。

 

「やらせるかよおおおおおおお!!」

 

 その雄叫びと共に、Xの体が横に押しのけられ、銃口の照準がズレる。狙いの逸れたまま発射されたライトニングアローはファントムには当たらず、全くの見当違いの場所へ飛んでいき、ビルの壁に当たって穴を開ける。

 

「ゴッドか……!?」

「大丈夫か!? 俺に掴まれ!」

 

 Xを突き飛ばしたのはゴッドだった。突き飛ばされたXが起き上がらないうちに、ゴッドはソウシとレイナの手を握ると、一気に飛びあがってトモヒロ達のいる空き地の隅に降り立つ。

 

「あ、ありがとうゴッド」

「礼はいい。お前はファントムのところに行ってやれ。それに、やっこさんの方はまだやるつもりらしいぜ」

 

 ゴッドが背後を振り返って見ると、地面に倒されたXがちょうど起き上がるところだった。カチャリ……カチャリと、不気味な音を立てて立ちあがるX。両脚の鉤爪が地面に擦れて耳障りな金属音を響かせているのだ。

 

「あの状態ならまだ反撃はできない筈だ。みんな! 今のうちにやっちまおうぜ!」

 

 その呼びかけに応じ、タクオとオトメの持つ鞄の中から何かが飛び出す。それは小さな状態から人の姿へと瞬時に変わる。ザクⅠとサバーニャに姿だ。

 

「二人とも、わかっているとは思うでござるがあれはレイナ殿のガンプラなのでござるから……―!」

「わかっておるお兄ちゃん!」

「動きを止めるだけなら、私のビットでどうにかなる筈!」

 

 二人はあくまでXを大人しくさせることを名目として攻撃するつもりらしい。その宣言通りに、サバーニャはライフルビットを展開してX目がけて銃撃する。ザクも腰に装備しているハンドグレネードを投げつける。一瞬の炸裂の後、爆発場所が煙で覆われる。煙幕弾で相手の視界と攻撃を封じるつもりらしい。

 

「よし、このまま一気に!」

 

 ゴッドがゴッドスラッシュを両手に構え、バーニア全開で煙幕の中へと切り込む。ビームサーベルが赤い軌跡を描いて煙幕の中に消えていく。だがサーベルが煙幕の中心部、Xがいると思われる箇所に振り下ろされるも、その斬撃は何かに弾かれ、その衝撃でゴッドの体が宙を浮き、後ろへ吹き飛ばされる。

 

「がああっ!? くっ……!」

 

 呻き声を上げつつも脹脛のバーニアで姿勢を取り、しっかりと踏みしめるかのように受け身を取って着地する。そして煙幕の方を見るゴッドの表情は、先ほどとは一変して険しいものに変わっている。

 

「ちっ……そう簡単にはいかねぇか」

 

 煙幕が晴れ、Xの状況が明らかになる。そこには、先ほどまで布状にはためいていたマントが前面に巻きつけられ、球状の黄色いバリアで覆われているXの姿があった。しかもその場所からは一歩も微動だにしていない様子だ。そしてこのバリア……これは先ほどのガンプラバトルでレイナが見せた“電磁フィールド”そのものだった。

 

「あのバリアがある限りこちらの攻撃が届かないようですね……」

「ならば、あれの出番じゃ! お兄ちゃん!」

「りょ、了解でござる! ふんぬっ!」

 

 トモヒロの鞄の中から細長いガンプラパーツを取り出すと、それをザクの元に放り投げる。ザクがそれをキャッチすると、そのパーツは瞬く間に人間が持てるほどのサイズまで肥大化し、ザクは両手で構えてスコープを覗く。HGジ・オリジン版のシャア専用ザクⅡに付属している対艦ライフルだ。戦艦の装甲をも貫くその威力ならば電磁フィールドも貫通させることはできるかもしれない。

 

「これで一点突破じゃ!」

 

 バリアを張るXに対して銃口を向け、照準を絞る。そして響き渡る渇いた射撃音。対艦ライフルによる銃撃を開始するザク。が、放った銃弾はバリアフィールドの力場によって弾道を曲げられてしまい、X本体までには届かない。Xの命を奪わないよう、足や腕といった部位に集中して攻撃をしているが、そこはバリアフィールドがちょうど球状に弧を描いている部分であるため、軌道が逸れやすいのだ。

 

「私達も援護します!」

「バァァァルカンッ!!」

 

 サバーニャとゴッドもライフルビットとマシンキャノンでザクの援護射撃を行う。が、この二人の射撃武器ではバリアフィールド自体を突破することがそもそも難しい。それでも、少しでも、バリアフィールドを破るための力になればとXに攻撃を浴びせ続ける。

だがその時、Xが動きを見せる。頭部センサーがザクの方を向き、フレキシブルアームで接続された尾を、Xは右手で構える。その尾はヴェイガン機特有のビームライフルになっており、銃口はザクの方を向いている。

 

「くっ……!」

 

 自分が狙われていることを悟り、対艦ライフルの照準を中央に向ける。ザクも最早なりふり構ってはいられないということらしい。重傷を負わせる覚悟でXの腹部に照準をつける。だが対艦ライフルから銃弾が放たれるよりも先に、Xのライフルからビームが放たれる。

 

「うわっ……!? うわああああああっ!!」

 

 直後、ビームがザクへと直撃し、その威力でザクは後方へと引き飛ばされる。

 

「ザクきゅん!?」

 

 その光景を見ていたタクオがザクの元へと駆け寄る。機動鎧に守られているとはいえ、Xのビームライフルは威力が桁違いだった。胸部装甲は半壊し、その下にある黒いバイオスーツがむき出しになっている。だが幸いにもビームの威力はそこで止まり、生身の方にはほぼダメージが行っていないようではある。

 

「ワシなら……大丈夫じゃ、大事ない」

「よくもザクさんを! ライフルビット、展開!」

 

 激昂したサバーニャが両腰のホルスタービットからライフルビットを放出する。合計10の砲身がサバーニャの周りに展開されると、その照準の全てがXを捉える。

 

「サバーニャ、乱れ撃ちます! いっけぇ!」

 

 掛け声と同時に10の砲身から中心部にいるX目がけてGN粒子のビームが浴びせられる。四方八方から、切れ目が無いよう交互に撃ち、Xを追い詰めていく。対するXは、両手の拳からビームシールドを発生させ、ビットから次々と放たれるビームを防ぐ。その時、Xのバックパックに接続されている細長い六つの鋭利な突起物が隆起する。続けてXが両手を広げると、六つの突起物はバックパックから離れて、Xの手の動きに合わせて空中を駆け巡る。その突起物の切っ先はメタリックなグリーンで塗装されている。グリーンのパーツ……見覚えがある。

 次の瞬間、Xを取り囲んでいたライフルビットが次々と爆発を起こしていく。突然の事に面喰うサバーニャ。破壊されたビットの爆煙の中から現れたのは、あの突起物だった。

 

「あのパーツは……まさか!」

「……そう……Cファンネル」

 

 レイナが呟いた言葉……“Cファンネル”。それは機動戦士ガンダムAGEの世界におけるビット兵器の一種だ。ブレードが装備されている遠隔操作兵器であり、射撃を行う代わりにブレード部で対象物を切り裂くことに特化している。ガンダムAGE本編において、その武装を持っているモビルスーツがキオ・アスノの駆るガンダムAGE-FXのみであったが、レイナはそれを独自解釈でヴェイガンタイプのXにも装備させたようである。

 展開したビットの全てがあっという間に破壊されたサバーニャは、もはやGNミサイルによる攻撃しか対抗手段が無かった。しかし、今更そんな武器でXを倒せる筈が無いのは彼女も承知している。

 

「それなら……いけっ! ホルスタービット!」

 

 腕を振るうと、両腰に装備されている10基のGNホルスタービットが宙を舞う。それが2枚ずつペアを組んで連結し、5組のGNシールドビットとして機能をし始めた。それらはXの周囲を取り囲み、距離を狭めていく。シールドビットの壁の中にXを閉じ込めようとする算段らしい。

 自分の周囲に張り巡らされ始めたシールドビットに対し、XはCファンネルを誘導しその切っ先をシールドビットに突き立てる。Cファンネルが斬りつける度に火花が散る。だが、シールドビットは強度が高く、細長い形状のCファンネルでは貫くことができないらしい。算段通り、シールドビットはXの周囲を取り囲む。

 

「やった! これで動きを……っ!?」

 

 完全に動きを封じたと確信したが、Xに新たな動きが見えた。体を屈ませ、直後腕を振るってまるで咆哮するかの如く天を仰ぐ。その動作により、Xの背部バーニアから二つの突起物が出現する。クリアグリーンで彩られたそれは、ビットを発生させるための“Xトランスミッター”だった。

 クリアグリーンのトランスミッターが発色し、小さな光球が数多出現する。ギラーガやガンダムレギルスが武装として使用するタイプのビットだ。Xは再び腕を掲げ、振るってビットとCファンネルに指示を送る。指示を受けたビットとCファンネルがシールドビットに攻撃を繰り出す。

さらにXは自分の前で両腕をクロスさせ、掌と肘のカバーパーツ裏からビームバルカンの銃口を突出させ、自身を取り巻くホルスタービットに向けて銃撃し始める。

内側からビットとバルカンのビーム攻撃、外側からCファンネルによる斬撃。その猛攻にシールドビットに皹が入る。

 

「ビットが持たない……!」

「ならビットが破れると同時に、俺があいつに一撃喰らわす!」

 

 ゴッドがサバーニャのフォローに回るために、今にも破られそうになっているビットに接近し、構えをとる。既に皹の隙間にはCファンネルの細い剣先が侵入し、隙間を作っている。Xがその隙間に爪を立て、引き剥がそうとしている。メキメキと音を立てて拉げていくシールドビット。そしてついに、Xを封じているシールドビットが破られ、Xがその中から姿を現す。

 

「今だ! 爆砕! ゴォォォッド!! スマァァァァッシュ!!」

 

 Xが姿を現したその瞬間、ゴッドが“ゴッドフィンガー”を発生させた状態の右拳を握り、右ストレートとしてXに放つ。強烈な燃える拳の一撃がXの眼前に迫る。

“爆砕ゴッドスマッシュ”はゴッドが考え付いたオリジナルの技だ。ゴッドフィンガーが発動している状態でそれを握りこみ、強力なパンチとしてお見舞いするというコンセプトだ。これにより、「掴む」という攻撃方法のゴッドフィンガーよりも破壊力は格段に上がっている。

 

「……バスター……ナックル!」

 

 対してXはその瞬間、小さく何かを呟いた。瞬間、Xの右手を緑色の何かが纏い、それを握ると自身の眼前に思いっきり突き出す。直後、ゴッドのゴッドスマッシュがXの拳とぶつかり合う。

 

「なにぃっ!?」

 

 ゴッドが面喰ったのも無理はない。今まで拳を用いた肉弾戦は自分だけの専売特許だと思っていたのだが、このXも自分の拳を用いて戦っている。激しくぶつかり合う赤い拳と緑の拳。力が勝ったのは……緑の拳だ。

 

「浅い」

 

 そう呟くと、Xはぶつかり合った拳を殴りぬけるように振るう。拳を弾かれたゴッドは大きくバランスを崩す。その隙にXは左の拳にも同様に籠手のビームシールドを拳に纏い、ガラ空きになったボディに思いっきり叩きこむ。

 

「がっ……はっ……!?」

 

 メリッ……という嫌な音と共にゴッドが呻き声と共に口から血を吐き出す。勢いはそれだけでは止まらず、そのままゴッドの身体を後方へと吹き飛ばす。吹っ飛ばされたゴッドは、遠く離れた廃ビルの壁に叩きつけられ、その衝撃で壁がクレーター状に凹む。ゴッドの鮮やかなトリコロールの鎧は見るも無残に崩れ落ち、鎧の下の腹部の肌が露わになる。大きな青痣になっているのが痛々しさと、その衝撃の強さを物語っている。ゴッドは、壁にめり込んだまま、意識を失ってしまった。

 

「ゴッドさん! くうっ……GNミサイル発射ぁ!!」

 

 残された胸部のGNミサイルのハッチを開き、サバーニャが叫ぶ。と同時に発射されるGNミサイル。だが、その発射されたミサイルの全てがXのビットによって撃ち落とされる。

 

「温い」

 

 直後、6基のCファンネルの猛攻がサバーニャを襲う。最早武装の残っていないサバ-ニャには、その攻撃を止める手立ては無かった。

 

「きゃあああああっ!!」

 

 6基のCファンネルはそれぞれ独立した軌道を描いてサバーニャを斬りつける。その斬撃にサバーニャの緑色の装甲が一つ、また一つと剥がれ落ちていく。最早防御力と呼べるもののほとんどを失ったところで、Xの胸部が光る。ビームバスターの攻撃だ。

 閃光と共に放たれるビームバスターはサバーニャに命中し、攻撃を受けたサバーニャは吹き飛ばされ、気を失う。全身が切り傷やビームによる火傷でボロボロだ。

 と、その時。サバーニャの窮地を救うかの如く、一発の銃声と共に弾丸がXの右側から迫る。が、Xは右の方向を目視で確認することなく右手を自分のこめかみあたりに伸ばすと、迫る弾丸をなんと指でキャッチしたのだ。

そして、弾丸が放たれた方を見る。そこには、満身創痍で息を荒げながらも、重そうな対艦ライフルを構えるザクⅠの姿があった。先ほどの攻撃で完全に意識が飛んだわけではなかったらしい。

 

「はぁ……はぁ……ははっ……う、嘘じゃろ……?」

 

 その化け物じみた動体能力を目の当たりにし、もはや恐怖を通り越して薄ら笑いが出てきてしまうザク。だがそれでも、諦めずに重い手取りで対艦ライフルをもう一度構え直す。

 

「甘い」

 

しかしXは、その攻撃を悠長に待ってはくれる様子は毛頭無い。Xは短く呟くと、その手に摘まんだ弾丸をまるで土くれの塊のように二本の指ですり潰すと、尾のビームライフルを、ボールジョイントを介して右側に動かし、コネクター部に自分の掌を装填させる。銃口の先には、対艦ライフルを構えるザクがいる。それはビームバルカンとコネクターを直結させてのチャージショットだ。先ほど放った通常威力のビームライフルとはけた違いの貫通度と命中精度を誇る。

 

「ワシの意地を見よっ!!」

 

その言葉を皮切りに、ザクが発砲する。と同時に、Xもビームライフルを放つ。二つの弾道はほぼ同じ。即ち、ライフルの弾とビームがそれぞれ同じ地点を通過するため、ぶつかり合うということだ。しかし、ザクが放った弾丸はビームに飲まれ、まるで水の中に入れられた砂糖の塊のように溶けて消える。勢いのついたビームはそのまま対艦ライフルの銃口に入り込み、ライフルの内側が暴発した。

 

「ぐあっ……!」

 

 短い悲鳴をあげ、吹き飛ばされるザク。ほぼ自分の目の前で銃が暴発したのだ、ただでは済まない。先ほどのダメージも相まって、今の衝撃が決め手となったのか、地面に倒れ意識を失った。

 

「み……みんな……! そんな……!」

 

 辺りに広がる惨劇の光景を目の当たりにして、ソウシは絶望的な表情で呟く。強力な戦闘能力を誇る人化ガンプラが4人がかりでも、あのXには全くと言っていいほど太刀打ちができない。しかも当のXは、全く本気を出していないようにも見える。トモヒロ、オトメ、タクオの3人はそれぞれの気絶した人化ガンプラの元に駆け寄って声をかけたり、体を揺すったりしているが、ソウシはファントムの元に向かう気力すら起きなかった。

恐怖で体が動かない……そうしたらいいのか、頭が廻らない……。ただひたすらに、一人で混乱しているしかなかった。

 そうこうしているうちに、Xが静かに歩み始める。

 

 

 

カキッ……カキッ……カキッ……カキッ……

 

 

 

歩む度につま先と踵の鉤爪が地面に触れ、不気味な金属音を響かせる。その冷たい視線の先に捉えたのは……壁に打ち込まれ、身動きのできない状態でいるファントムだった。

 

「あいつ……まさか!」

 

 身動きのとれないファントムに歩む理由……その理由をソウシは悟り、声を張り上げて叫ぶ。

 

「逃げろ! ファントム!」

 

 もしかしたらXは、まだ意識が残っているファントムにトドメを刺すつもりなのかもしれない。あいつの目的が自分と同じ人化ガンプラの排除だとするのならば、きっと命を奪うことをも厭わないだろう。ファントムは霞む意識を必死に繋ぎとめ、コンクリートの壁にめり込んだ自分の体をもがかせ、その場から離れようと奮闘する。だが怪我を負い、満足に動かすことのできない体にそれは酷なことだった。万が一それができたとしても、あの恐ろしいまでの戦闘力を誇るXの追撃を振り切ることは不可能だろう。だがそうしているうちに、Xの不気味な足音が段々と迫ってくる。

「最早これまでか……」と、ファントムが覚悟を決め、目を硬く閉じた。

 

 だが、Xの足音がそこで止まった。

 

 その理由は、Xがこの4人とは他に、別の場所で、また別の“マシンソウル”反応を感知したからだった。それによってヘッドギアから送られてくる指示の優先順位が書き換えられた。

 

 

 

新たなマシンソウル反応を感知。

新規ターゲットを最優先攻撃対象に変更。

目標地点へ移行。

 

 

 

 電子音と共に、目の前のヘッドディスプレイに次の指示文章が表示される。それを読み取り、Xは現在の行動を放棄し、速やかに次の行動へと移る。

 ファントムに背を向けると、風にはためいていたマントが一瞬にしてその形状と材質を変える。それは風の向きに逆ってなびき始め、次にまるで生物のように蠢き始める。すると、先ほどまで布状だったマントは骨張ったドラゴンのような翼に変わり、Xはそれを2回、3回とはためかせると脚部とバックパックのスラスターを起動させ、上空へと跳び上がる。その後、ウイングを駆使して加速し、あっという間にソウシ達の目の前からその姿を消した。

 

「……彼女はどうして飛んで行ってしまったの……?」

「なんだっていい! とにかく今はファントム達を回収しないと!」

 

 Xのあまりに突発的な行動の変換に戸惑うレイナだったが、ソウシの言うとおり今のうちに傷ついたファントム達を回収することが先決だった。

 それぞれのマスターがガンプラの元へと駆け寄り、その状態を普通のガンプラへと戻す。

 

「申し訳ありません……私はまたマスターを……」

「いいから、ガンプラの状態になって少し休んでいろ」

 

 ソウシが声をかけると、ファントムは何も言わずにガンプラの状態に戻った。壁から零れ落ちたファントムを、ソウシは両手でそっと受け止めた。

 

「ゴッドとサバーニャとザクは無事か?」

「うん、なんとか……傷が酷くて、気絶しているみたいだけど……」

 

 俯くオトメの両手には、装甲が剥げ、切り傷だらけのガンダムサバーニャがあった。他のガンプラも同様に、ゴッドの腹部は大きくへこみ、ザクⅠに至っては黒く焼け焦げた痕がある。

 

「みんな、自分のガンプラの手当てをしてあげたいとは思うが……」

「わかっているソウシ、あのXをこのままにしておくわけにはいかないんだろ」

 

 トモヒロはXが飛び去っていった方向を見上げながらそう言った。

 

「まだ昼間だ……このままじゃ、多数の目撃者が出るだろう。それだけじゃない。あのXの力は危険だ。このまま放っておいたら、街にかなりの被害が出るかもしれない」

「しかし、僕らのガンプラではあいつに太刀打ちできなかったのでござるぞ!? どうすれば……!」

 

 タクオの言うとおり、俺達が持ち合わせる人化ガンプラの4人がかりでもXには傷一つ負わせることはできず、それどころか全員が返り討ちに遭ってしまった。それでもあいつを止めなければならない。となれば、頼れるのはただ一人……。

 

「あいつさえ……シャドームーンさえいてくれたら……!」

 

………………

…………

……

 

 ほぼ同時刻、模型屋『ブルーコスモス』で開かれているガンプラバトル大会はついに佳境に入っていた。決勝戦は1~6回戦のそれぞれのバトルロイヤル戦を勝ち抜いた猛者達による最後のバトルロイヤル戦の最中だった。ステージは“ソロモン宙域”。宇宙要塞ソロモンを中心とし、ファーストガンダムにも登場した場面を忠実に再現している。

 まさに猛者達の激戦を飾るに相応しいステージなのだが、何故か煌めくビームの光も、瞬く閃光も無く、今はただしんと静まり返っている。その様子はバトルの中だけでなく、モニター越しで観戦している客達も同様に静かだ。店長のアベですら、固唾を飲んでその様子を見守る。しかし、決してバトルが終了しているわけではない。客たちは一瞬も目を離すことなくモニターを凝視する。

 

「はぁ……はぁ……て、敵はどこに!?」

 

 その静寂の中、息を荒げて呟く者が一人いた。バトルロイヤル1回戦において、劣勢だった状況から一発逆転し勝利を手にしたあの“ドム・トローペン(ツヴァイ)”のビルダーだった。彼の乗機は陸専用のドム・トローペンをベースに改造されているため、空間戦闘には不向きな機体だった。

したがって、ソロモンの岩場に隠れて宇宙(そら)の様子を窺っていたのだが、つい先ほど4つの光が瞬いたかと思ったら、他の2~5回戦を勝ち抜いたガンプラビルダー達の反応が消失したのだ。つまりは、6人目のガンプラビルダーに倒されたとみてまず間違いない。

その次の標的はもちろん、自分になる。事実、つい先ほど不意な一撃を貰ってしまい、左腕に装備したガトリングシールドは腕ごと切り落とされ、切断面から火花を散らしている状態だ。

 そして現在は、ホバー機構を全開にして姿の見えぬ敵から全力で距離をとっている。

 

「まだ始まって5分と経ってないってのに……!」

 

 6人目のビルダーは6回戦目のバトルロイヤルも同様、最初のギラ・ドーガを瞬殺した後、迫り来る3機をものの10秒で切り捨て、バトル開始から僅か1分30秒で試合を終わらせた実力者だった。

 

「ええいくそっ! 一体どこにいるっていうんだ!」

 

 思わず悪態をつきながら周囲を見回す。その時、黒い影が疾走しながらドムのスピードに追い付き、横に並ぶ。だがブースターやバーニアは使用している様子は無く、またドムのようにホバーで走行している様子はない。あくまで“自分の足”で走って追いついてきたのだ。タッタッタッという断続的な疾走音が木霊する。

 

「なっ、なんだこいつ!? これでもくらえ!」

 

 面食らいつつも右手に持った90mmマシンガンの銃口を黒い影に向け、発砲する。黒い影はその攻撃を避けようとはせず、腰に差している鞘から小太刀を引き抜くと、逆手に持つと放たれた銃弾の全てを弾き飛ばした。

 

「うっ、うそぉ!?」

 

 その人間離れした業前に思わず驚愕するドムのビルダー。ならばと上半身の向きを変え背部のビームキャノンの照準を合わせると引き金を引く。実弾が弾かれるのならば、ビームで攻撃すれば防ぎようはない、という考えだった。

 だが、黒い影はその瞬間、自身を煙のように忽然と姿を消した。対象を失ったビームはそのまま何もない空間を突き抜け、岩場に当たって四散した。

 

「ど、どこに!?」

 

 思わずその場に立ち止まり、モノアイを動かして辺りを見回す。だが、黒い影はすでにその背後に、二本の指を顔の前で立てて忍び寄っていた。

 

『我古来忍頑駄無、心刀一閃……』

「斬り結ぶ電磁刀よ、風を纏いて雷に変われ!」

 

 通信越しに呟く声と、その機体の腰に携えてある鞘から漏れ出す閃光と火花。それに気が付き、後ろを振り向こうとするが時、既に遅し。

 

「電磁抜刀……“電光雪華(デンコウセッカ)”!!」

 

【挿絵表示】

 

 それは一瞬の出来事だった。刀が鞘から引き抜かれようとする瞬間、稲妻が迸った。それが果たして本物の稲妻だったのか、はたまたそう見えた何かだったのだろうか、とにかく、一瞬の電撃が瞬いたかと思った次の瞬間、先ほどまで背後にいたはずの黒い影がドムの目の前に、背を向けて刀を構えた状態でその場にいるのが見えた。

一方ドムのビルダーは、急に自身の視界が斜めになっていることに気がついた。その状態がどういう意味なのか……理解するのに少々の時間がかかった。だが次の瞬間、ドムの上半身が崩れ落ち、ドムのビルダーは全てを理解した。あの一瞬でドムを真っ二つに切り裂いたのだ。

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

「は……速い……!」

 

 自分の目や、センサーにも捉えられないほどの速度で加速すると同時に、斬撃を喰らわせる……。その常人の領域を遥かに凌駕した技に、見る者は心奪われ、言葉も忘れるほどに見惚れてしまっていた。斬撃が起こる瞬間は流星が瞬くかの如きに儚くも美しく、斬られた機体の断面からは雪花のようにきらきらと欠片が飛び散り、その鮮やかな切断面にガンプラバトルシステムですら機体が斬られたことを認識できず、しばらくドムの機能を生かしたままだった。

 

『お命、頂戴』

「切り裂き……御免♪」

 

 刀を鞘に納めると同時に、黒い影を操るビルダーは陽気な素振りで言葉を紡ぐ。その直後、まるで呆けていたシステムが思い出したかのように機体の破壊を認識し、上下を切り分けられたドムは爆発四散した。

 

「ふぅ……電磁抜刀術まで使っちゃって、ちょっとサービスしすぎたかしら?」

『創主殿』

「なぁに?」

 

 ガンプラバトルが終了し、スキャナーからガンプラを取り出してGポッドを出た長い茶色の髪の女性。通常のレンタル用パイロットスーツではなく、黒い革状のライダースーツを着込んでおり、屋内であるにもかかわらずサングラスをかけている。傍から見れば謎の女性ガンプラビルダーといった印象である。

 

『件のマシンソウルが移動をし始めたようだ』

「……そう、ちょっとマズいわね。急ぐわよ」

 

 バトルルームを出て階段を降りていると、店中で観戦していた客達がワッと押し寄せてきた。

 

「す……すげぇ! さっきのガンプラ、生で見せてくれませんか!?」

「あんな技どうやって編み出したの!?」

「弟子にしてください!」

「彼氏いるの!?」

 

 次々と質問を投げかける客達。あれだけの活躍を見せればこの反応はむしろ当然といえるのだが、それでもこれだけの数の客達が一気に詰めかければ階段前は大きく混雑する。

それを見て謎の女性ビルダーは心底面倒くさそうに「はぁ……」と深いため息を一つし、階段の中頃辺りで軽く足を踏みしめると膝を曲げ、次の瞬間大きく跳躍し、客達の頭上を一回転して店の中央に片手片膝をついて着地する。その様を見てまたも周囲の客達は「おおっ!」と驚きの声をあげる。

 

「はいはーい、質問には答えてあげたいんだけど、生憎お姉さん忙しいの。店長さん、優勝は私ってことでいいのよね?」

 

 手を叩いて客達に静寂を促すと、店長のアベに質問を投げかける。

 

「あ、あぁ。今表彰の準備を……―」

「ごめんなさーい、ちょっと時間無いからそこらへん省略してもらって賞品だけ貰っていくわね。そことそことそことそこの坊や達、これ私の単車に乗せて頂戴」

 

 突然のことに戸惑っているアベを余所に、女ビルダーは先ほどの決勝戦で自分が倒した2~5回戦の勝者達を指さし、店の掲示板前に置かれている賞品の数々を、店前の駐車場に停めてある黒く大きな単車のサイドカーに運ぶように指示する。指さされたビルダー達は、戸惑いながらも言われるがまま、賞品を運び彼女の単車のサイドカーに次々と積み込む。

 

「ごめんなさいね店長さん、せっかくの大会なのに急かしちゃって。これ渡しておくから、また機会があったらいつでも連絡頂戴。じゃあね~ん♪」

 

 そう言って女ビルダーはライダースーツのジッパーを胸の中頃まで開けると、その谷間の中から一枚の紙を取り出し、アベに投げ渡す。(当然周囲の男ビルダー達の視線は胸元に釘づけだった)

 そして彼女はヘルメットを被ると単車に跨り、エンジンをかけ爆音を立てて発進し、すぐに加速しあっという間に姿が見えなくなってしまった。

 

「結局何者だったんだ? あの人……」

 

 彼女の単車が見えなくなってから、ドムのビルダーは一言呟いた。

 

「こ、この名刺は……!」

 

 彼女から渡された名刺を見てアベは驚愕する。そのアベの驚愕ぶりを不思議がり、多くのビルダー達が周囲に集まり名刺を覗き込む。

 

「参加表に書かれた名前……どこかで見たことがあると思っていたが、そういうことだったのか……!」

「どういう意味です? 店長」

「うむ……彼女こそ、数々のガンプラバトル大会で連覇を達成し、その賞金・賞品の全てをかっさらっていくという、通称“Gの賞金稼ぎ(バウンティハンター)”と呼ばれる伝説の女ガンプラマイスター……」

 

 “ガンプラマイスター”……それは、プラモデル文化の伝承を目的としたプロモデラー達の総称である。通常は専門店において展示用のガンプラ制作やイベント等を開いて集まった客に制作指導を行っているのだが、あの女ガンプラマイスターはそれらとは少しばかり血色が違うようだ。

 そしてアベは、彼女の名を呟く。

 

「“サラ・シノブ”……そうか、彼女がこの街に来たのか」

 

………………

…………

……

 

「カゲツキ、目標はどこに向かっているかわかる?」

 

 バイクで疾走しながら、女ガンプラマイスター……“シノブ”は愛機のガンプラ、“カゲツキ”に問う。彼女の脳裏に、カゲツキの言葉が木霊する。

 

『彼奴は新たに出現したマシンソウルの反応を追って町はずれへと向かっているようだ』

「町はずれね……わかったわ。ちょっと飛ばすわよ!」

 

 アクセルをふかし、さらにスピードをあげるシノブ。法定速度以上の速度が出ている筈だが、今はそれに構っている余裕はない。裏道を利用し、なるべく人目にはつかず、最短距離で町はずれを目指す。

 

「新たに現れたマシンソウル……もしそれが“テックジーニアス社”の手の者だとするなら……十中八九、狙いはあの女の子ね。カゲツキ、貴女のマシンソウルを開放していいから先に行って足止めしておいて頂戴。武器の使用も許可するわ」

『承知!』

 

 カゲツキの声が脳裏を過った瞬間、サイドカーから光が迸り、その光は瞬時に数多の武器を纏った人の姿になるとビルの合間を縫うように飛び越え、走り去っていく。その者こそ、幾度となくこの街の人化ガンプラ達の危機を救ってきた自称『月よりの使者』……〝シャドームーン″その者であった。

 

………………

…………

……

 

「ふぁ~……やれやれ、ご主人さまも面倒なことを押しつけてくれたよねぇ……いくら僕が暇してたからってさぁ」

 

 町はずれの上空、欠伸をしながら空を漂うのは、天ミナ一派のメンバーの一人、“リボーンズガンダム”だった。赤い粒子を両腕の疑似太陽炉から撒き散らしながら、両手を頭の後ろに組んで昼寝のような形で器用に空をプカプカと浮いている。緑色の短髪が特徴的なこのリボーンズは、外見からはその性別が男なのか女なのか判別するのかはほぼ不可能であり、本人も自分の性別を他者には頑なに明かそうとはしない。たとえそれが自分の主人と呼ぶべき人物であってもである。(そのモデルとなった機動戦士ガンダムOOに登場するイノベイドの特徴を受け継ぎ、中性ではないかと周囲の者達は認識しているが)

 そのため女性にしては長身であり、男性にしては高い声の持ち主であるこのリボーンズは、本部で暇を持て余していたところ、主人に任務を任されたのである。その任務とは、数ヶ月前に本部を脱走し、この街に逃げ込み、そのままこの街のガンプラビルダー「キモト・ソウシ」に保護されることとなった少女の監視である。

 

「ま、のんびりやりましょうか。……ん? 何か来るね」

 

 このまま昼寝をしながらのんびりと目的地に向かおうとしていた矢先、リボーンズの脳裏を何かが過った。自分と同類の存在……“マシンソウル”を持つ者がこちらに近づいてくるのを感じ取ったのだ

 

「僕がここに来たのを感付かれた……? ステルスは完璧なのに、この町のガンプラに僕を捉えられる筈が―……っ!」

 

 発した言葉を最後まで言い終わらないうちに、前下方から黄色のビームがこちらに伸びてくるのが見えた。狙いは正確にリボーンズを捉え、明らかに攻撃の意志があるということを示している。

 

「くっ……! シールドとライフルを!」

 

 虚空の中からGNシールドとGNバスターライフルを出現させ、シールドを前面に構えてビームの攻撃から身を守る。次の瞬間、構えたシールドに閃光と共に衝撃が伝わる。シールドの防御力でビームを霧散させることができたが、予想よりも高出力なそのビームの威力に思わず体勢が揺らぐ。

 

「こんな強力なビームを撃てる奴はあの連中のなかにはいなかった筈……もしかして新手のマシンソウル!?」

 

 身を隠したシールドをずらし、攻撃された方向を見るリボーンズ。そしてその襲撃者は姿を見せた。大翼を広げ、こちらに迫る赤いシルエット……“X”であった。ビームライフルとなっている尾部分が前方を向き、砲口から白い煙が一すじ上がっている。リボーンズを狙ってビームを撃ったというのは明らかであった。

 

「君かい? 僕を撃とうなんていう馬鹿はっ!」

 

 シールドを下げると同時にGNバスターライフルを放つ。圧縮されたGN粒子のビームが放出され、Xへと迫る。だがXはその攻撃を避けることなく、左腕にビームシールドを発生させるとそれを目の前に突き出し、攻撃を防ぐ。

 

「へぇ~、 高い火力と防御力か……なら! いけっ! フィンファング!!」

 

 リボーンズが声を上げるとバックパックに接続されている四つの突起物がせり上がり、本体から射出される。リボーンズガンダム用の遠隔無線誘導兵器、“GNフィンファング”だ。フィンファングは四方に飛び、ビームを発射しながらXを追い込む。対するXもバックパックブースターに接続されている六つのCファンネルを射出し、フィンファングの迎撃に当たらせる。

 

「へぇ、そっちは六つも持っているのかい。でも残念」

 

 腰とシールド縁に赤いGN粒子が放出され、小型のフィンファングが八つ、本体とシールドから分離する。

 

「こっちはさらに八つ持っているんだよねっ!」

 

 小型GNフィンファングはビームサーベルを形成すると、Xへと迫る。Xもまた、Cファンネルを駆使してそのブレード部でファングのサーベルを受け止める。だが、受け止められるのは六つまで。残る二つの小型フィンファングと、先に放出された大型フィンファングは止められない。

 その身を小型ファングに切りつけられ、続けざまに大型ファングの砲撃を浴びせられる。両手のビームシールドでダメージを緩和させるが、その衝撃は大きい。

 

「こいつも持ってきなよっ!」

 

 さらに追い打ちをかけるように、リボーンズはGNバスターライフルを高出力で2発放つ。一瞬の爆発の後赤い煙塵があがり、Xの姿はその煙に隠れてしまう。爆発を確認すると、リボーンズは射出したファングを自身に再び装填する。

 

「ふははっ、君確かギラーガって奴だろ? その姿からしてなんか改造を施されたみたいだけど、そんな付け焼刃の改造をされたところで、この高出力のバスターライフルの攻撃をまともに喰らってはひとたまりも―……」

 

 次の瞬間、煙塵を突き破り、突出されたビームパイクがリボーンズの頬を掠め、虚空の彼方に消える。突然のことに薄ら笑いを浮かべたままの表情で固まってしまったリボーンズの頬からは、赤い血が一すじ垂れる。

 そして、煙塵を切り裂くかのように腕を振るい、姿を現したX。両掌にはビームサーベルを発生させている。

 

「なっ……なぁっ……!? ど、どうして!?」

「笑止。この程度か」

 

 予想していた事態とは全く逆の状況に陥ってしまったためか、リボーンズの口から出たのは疑問の言葉だった。実はリボーンズの放ったバスターライフルのビームが命中する直前、Xは自身を中心とした電磁フィールドを発生させて攻撃を防いだのだが、当のリボーンズはそのことを知る由も無い。

 そうこうして慌てふためいているうちに、Xは翼をはためかせ両掌のビームサーベルでリボーンズに斬りかかってくる。

 

「くっ……!」

 

 若干悔しみの混じった声を漏らすと、左手で背中にマウントされているビームサーベルに手を伸ばし、素早く引き抜くとビームの刃を発生させ、Xと組み合う。

 

「薄ら笑いはどうした」

「っ……!?」

 

 互いのビームサーベルが交錯し合い、火花を散らすさなか、Xが唐突に口を開いた。

 

「少しは余裕が無くなってきたか」

「だっ……黙りなさいよっ!!」

 

 リボーンズの怒号と共に小型GNフィンファングが再び分離し、Xにサーベル刃を突き立てようと迫る。が、ファングがサーベルを突き立てるよりも先にXの背部ブースターからクリアグリーンの突起物……“Xトランスミッター”が出現し、黄色に光り出す。

 

「あの時もそうだったな……貴様らはまるで自分達がこの世の中で最強の存在であるかのように振舞い、我々を愚弄した」

 

 次の瞬間、トランスミッターから黄色の光球、“ビット”が放出され、Xの周囲に無数に出現する。そしてXを中心にして全方位に配置され、迫りくるフィンファング群に対してビームを放つ。その熱量と光量に思わずリボーンズは思わず顔をしかめる。その一瞬の瞬きと共に、小型のGNファング群は全滅していた。

 

「そ、そんな……!」

「だが最早、この私は無力なまま貴様らに弄ばれるだけの道化ではない!」

 

 Xの右つま先と踵に装備されているヒールクローが稼働し、猛禽類の爪のような形に展開される。その爪でリボーンズの腰を掴みあげ、ぐっと力を込めて引き寄せる。

 

「ぐはっ……!?」

 

 自分の腹部へかかった衝撃でリボーンズは苦しそうな声をあげる。引き寄せられた次の瞬間、Xはその脚を大きく振るい、遠心力により加速したところを見計らい、爪を離し、リボーンズを後方へと投げ飛ばす。投げ飛ばされたリボーンズは空中でスラスターを噴射し、なんとか踏みとどまり、体勢を立て直そうとする。しかし、Xはその隙を見逃すことはなかった。

 Xが両拳を握り、籠手のビームシールド発生基部を胸の前で合わせると、ビームバスター発射口に接触させる。「ガチンッ」という金属音と共に、緑色の閃光がビームバスター発射部から漏れだす。

 

「終焉の焔をその身に受けて、消え去るがいい!! ≪トライデント・デトネイタァァァァァ≫!!」

 

直後、胸部に収束した閃光が一気に放出され、轟音を立ててリボーンズに撃ちだされる。ビームバスターの威力を、両拳のビームシールド発生基部からビームを放出し、それと合わせてビームバスターの収束率を高めているのだ。その威力は通常のビームバスターとは比較にならないほどに強大であり、リボーンズはその大出力のビームを前にして動くことすらままならない。

 

「うっぐっ……! ぐああああああっ!!」

 

 自身の周りにGNフィールドを張り、加えてシールドを構え、二重の防御でビームの放出から身を守る。が、ビームの威力はそれだけでは完全に防ぎきれず、あっという間にGNフィールドを突き抜け、構えたシールドも融解してしまった後、大出力のビームが直にリボーンズの身を焦がす。それでもGNフィールドとシールドのお陰でいくらかビームの出力を弱めることができ、数秒晒しただけで済んだ。が、その身に受けた衝撃は大きく、リボーンズは意識を失い後方に吹き飛ばされる。受けたダメージでバーニアもスラスターも破損し、姿勢制御もできぬまま上空から地面へと落ちていく。

 

「逃がさん!」

 

 リボーンズに止めを刺すべく、Xもまたリボーンズを追って地上へと降りていった。

 

………………

…………

……

 

 休日の公園は子供達の遊び場としてとても賑わっていた。遊具で遊ぶ子供たち。鬼ごっこやだるまさんが転んだをして遊ぶ子供たち。ベンチに座ってトレーディングカードを交換したり、携帯ゲーム機で遊ぶ子供たちもいる。その大多数が小学生くらいの年齢の子だ。

しかし、そんな子供たちは先ほどから自分達の遊びを止め、ずっと空の方を見上げていた。何故なら、しばらく前からずっと空の上で大きな光が点いたり消えたりしているからだ。

 

「あ、今の光大きかったね」

「なんだろうあれ……彗星かな?」

「違うよ、彗星はもっとバーって動くよ」

 

 一際大きく光が瞬き、子供たちがその正体をあれやこれやと推測し始めた時だった。空から何かが降ってきた。人間の姿のようにも見えたそれは、猛スピードで落下すると公園の林の中へと落ちた。

 

「なにか落ちてきたよ⁉」

「UFOじゃない?」

「行ってみようぜ!」

 

 興味本位で子供たちが林の方へと向かう。後に残されたのは、砂場で遊ぶ、幼稚園児くらいの年齢の、まだ物心つくかもわからない幼少の男の子が一人だけだった。その子は他の子供たちがずっと空の上を眺めているのを気にもとめず、黙々と砂場で山を作り続けていた。

だがその時、不思議な音がこちらに近づいてくるのが聞こえた。音が気になった幼児が空を見上げる。すると、墜落したリボーンズの後を追ったXがその砂場に降り立った。降り立った衝撃で砂の山は崩れてしまったが、幼児はそれよりも目の前に突然現れた不思議な赤い鎧の女性に興味が向いていた。

 一方のXも、この幼児を正体不明の対象者と認識し、腕部のビームバルカンの銃口を幼児に向ける。同時に電子音を響かせて頭部のセンサーを起動させ、目の前にいる幼児のスキャニングデータをとる。眼部のヘッドユニットに対象者が赤いシルエットで表示され、生体データのスキャンが始まる。

 

 

 

 心拍・脈拍……共に正常。所有武器……プラスチック製のスコップ、殺傷力はランクD以下。総合危険度はDと判断。

 

 

 

 どうやら自身に対して全くの無害であるということがわかったらしく、データのスキャンが終わると、Xは銃口を掌内に収納し、ゆっくりと腕を下ろした。

 

「おねえちゃん、あたらしい仮面レイヤーのてききゃら?」

 

 幼児は不意にそんな言葉を呟いた。どうやらこの子は、目の前にいるXが日曜日の朝に放送している特撮ドラマ、“仮面レイヤーシリーズ”の新しい敵キャラクターだと勘違いをしているようだ。一方のXは、“仮面レイヤー”という単語の意味が理解できず、軽く首をかしげる。 “仮面レイヤー”……後ほど詳細なデータを調べようと、幼児の発言を録音データとして記録し、ヘッドユニットのメモリーバンクに保存した。

 

「うわぁ~~~!!」

「宇宙人が起き上がったぁ!!」

「みんな逃げろぉーーー!!」

 

 その時、叫び声とともに林の中に落ちた謎の物体を追いかけた子供たちが、慌てふためいた様子で草むらの中から飛び出してきた。

 子供たちの後を追うようにして草むらの中からふらふらとリボーンズガンダムが現れた。落下の際、木の中に入ったおかげで大事には至らなかったようだが、緑色の鮮やかな色の髪は薄汚れ、形がぐしゃぐしゃに崩れて木の枝や葉っぱが突き刺さっている。加えて、空中でのXの攻撃と落下の衝撃で、装甲の伝導部や各種バーニア部、そして背部に接続されているフィンファングから時折煙と火花が上がっている。おそらく、ファング類はもう使いものにならないだろう。

 

「はぁ……はぁ……だ、誰が宇宙人よ! 僕はリボーンズガンダ……いけねっ⁉」

 

草むらから姿を現すや否や、Xがそこにいることに気が付き、顔面蒼白で口元を抑えるリボーンズ。次の瞬間、Xは交戦途中だった目標を再度補足するとブースターに火が入り、瞬時に加速してリボーンズとの距離を一気につめる。

一方のリボーンズは、「ヤバいヤバいヤバいヤバい!!」と何度も呟きながら疑似太陽炉を起動させ、助走をつけて飛び立つ。スラスター類が不調のため、勢いをつけて飛び立つ必要があったのだ。が、飛翔しようとしても思うように加速できず、上昇もできない。低空を低速で進んでいるだけだ。蓄積したダメージが、疑似太陽炉に重大な負荷を与えているのは明らかだった。そんな状態でXから逃れられる筈もない。

ふと、リボーンズは自分の周りが暗くなるのを感じた。太陽の光が後方から当たっているはずなのに、突然それが遮られたかのように暗い。嫌な予感を感じつつも、リボーンズは後方を振り返る。そこには、緑色のアイセンサーを不気味に輝かせ、リボーンズを覆い隠すかのよう大翼を広げ、今まさに右掌から発生させたビームサーベルを突き立てようとするXの姿があった。

 

「ひ……ひぃ!」

 

 その姿に畏怖を覚え、思わず涙目になったリボーンズが恐怖の声を漏らした時だった。自分の左肩に、熱い何かが差し込まれる感触と、金属と肉が焼ける匂い……そしてそれらが灼けつく嫌な音が、自分のすぐ耳元で聞こえた。

 

「ぎ……ぎゃあああああああっ!!」

 

 絶叫をあげながら地面に墜ちるリボーンズ。Xが自分の左肩にビームサーベルを突き刺したのだ。サーベルは貫通し、リボーンズの左肩は装甲ごと貫かれ、大きな穴が開いた。悶えるほどの激痛をその身に受け、リボーンズは左肩を押さえて嗚咽を漏らしながら地面の上でうのたうち回る。

 その様子を遠目で見ていた子供たちもまた、悲鳴を上げてその場から逃げていく。突然のことにきょとんとした表情の幼児も、年長の小学生の手にひかれて公園から逃げていく。そうしてその公園に居るのはもう、Xとリボーンズの二人だけとなった。

 

「お……お前……! 僕にこんな仕打ちをして、ただで済むと思っているんじゃ……っが⁉」

 

 リボーンズにも、自分の能力がこの街のガンプラ達よりも優っているという一種のプライドがある様で、反抗の意思を言葉にしてXに言い放つ。だがXは無言のまま、爪先のクローを用いてリボーンズを蹴り上げる。蹴られたリボーンズは地面を転がり、うつ伏せの状態にされる。それを追ってXがリボーンズに向かって歩み寄る。

 

カキッ……カキッ……カキッ……カキッ……

 

 歩を進めるたびに踵のヒールクローの刃が地面に擦れて金属音を響かせる。その音がよりリボーンズの恐怖心をかきたて、表情にもそれが現れ始める。

 

「ひっ……! や、やめてっ……こっち来るな……! なんで来るんだよおおおおお!!」

 

 ずりずりと地を這って後ずさりをしながらXから逃れようとするリボーンズ。だが、痛みと恐怖で足腰が立たないらしく、走って逃げることができない。

 

「そ、そうだ! じゃんけんで決めよう! いや! もう僕の負けでいいからさ! ねぇ!? 聞いてる!? おいぃ!?」

 

必死でXに対し必死で攻撃の停止を促すリボーンズ。だがXはそんな戯言を聞き入れるつもりは毛頭無いらしい。そんなリボーンズを前に、Xは自分の尾を可動させるとビームライフルになっている先端の銃口部分をリボーンズの方に構え、接続部に自分の掌を固定させる。エネルギーの収束が始まり、チャージしたエネルギーがライフルに蓄積されていく。

 

「うあっ……! 顔はやめて顔はっ!」

 

 最早これまでと、顔を伏せ身構えるリボーンズ。今まさに、銃口からビームが放たれる……その時だった。

 不意に回転する巨大な円盤状の物体が二人の間に割って入り、その直後Xがビームを放つ。が、ビームはリボーンズに当たることは無く、その円盤に直撃した。だが、円盤は轟音を立てて地面を抉りながら回転し続ける。それに当たったビームは、散り散りになり霧散していく。

 それをXが確認すると、これ以上のビーム攻撃は無意味と判断し、ビームの照射を止め、銃口を下げる。すると、回転する円盤はそれと同時に何処かに引き戻されていく。それを、Xは先ほどまでリボーンズにのみ向いていた視線を、戻っていく円盤に向け、さらにその円盤を引き戻す者にも向ける。

 小高い木の上からこちらを見下ろし、伸ばした左腕にその円盤が再装填されると、その者……“シャドームーン”こと“カゲツキ”は腕を組んでポーズを整える。

 

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあ……―」

 

 だがお馴染みの口上が言い終わらない内に、Xは先ほどのビームライフルをシャドームーンに構え、放つ。その攻撃はカゲツキに当たったかに思えた。しかし、ビームが当たったカゲツキは霞となって消え、別の木の陰から本体のカゲツキが姿を現す。

 

「むぅ、名乗り口上を邪魔して攻撃してくるとはなんという失礼千万! 言語道断! 大断罪!」

 

 カゲツキがこんなにも怒った態度を見せるのは珍しかった。というのも、彼女が登場の度に行う名乗り口上は一種の己を鼓舞するための儀式のようなものなのであり、それを邪魔されたとなれば当然戦い方にも支障が出てくる。

 

「なれば致し方あるまい。今日の拙者は忍なれども不忍(しのばず)……暴れさせてもらおう!」

 

 少々荒い口調のカゲツキがそう言うと、背中にマウントしている銃を両手に構える。その銃は、形状的にガンダムアストレイレッドフレームが装備するMS用のマルチツール、“カレトヴルッフ”を彷彿とさせるものだった。事実、それを改造した銃なのだろう。元のカレトヴルッフはあくまで工具であるのに対し、カゲツキが装備するその武器は完全に銃としての機能を追求している。形状は火縄銃を彷彿とさせ、上部には狙撃用のスコープまで備わっている。その名を“駆煉刀雷威銃(カレトライフル)”という。

 カゲツキはそれを構えると、Xに向けて発砲する。当然そのような見え見えの攻撃はXには通用しない。手の甲からビームシールドを展開するとそれを目の前に突き出して攻撃から身を守る。しかし、それはカゲツキにとっては予測済みの行動だった。

 カゲツキが銃を撃つと、突然その姿が消えた。Xが周囲を見回すと、今度は木の上から地上のXに向けて攻撃が来た。防御行動が遅れ、肩部に一発被弾する。瞬時に照準を木の上に定めるも、もうそこにはカゲツキの姿はない。今度は林の奥から銃撃。また姿が消え、次は背後の公園から。その次は真横の林の中。と、カゲツキは一発撃つとすぐさま姿を晦まし、全く別方向から攻撃する、ヒットアンドウェイの戦法をとりながら、じりじりとXを攪乱していく。

 対するXは、シャドームーンが自分のヘッドギアが下す指令よりもはるかに速い行動をとるために、全く反撃ができないでいた。それにより、自分の周囲に電磁フィールドを張り巡らせ、防御に徹するのに精いっぱいだ。しかし、いつまでも防御にばかり徹することもできない。電磁フィールドは長くは維持できないのだ。

 

「はぁっ!」

 

 カゲツキは掛け声とともに、Xの背後に現れると駆煉刀雷威銃の銃身下部に収納してある銃剣(バヨネット)を開き、それでXを切り付ける。予想外の場所からの攻撃によってついに電磁フィールドが破られてしまい、Xは全くの無防備な状態になってしまった。

 やむを得ずXは戦法を変える。先ほどまで自身を覆っていた翼を開くと、羽ばたき、一気に上空へと加速する。あの黒いマシンソウルは、見たところ飛行用の装備は持ってはいない。つまり、上空からの攻撃であれば敵は手も足も出ないと、そう判断したのだ。

 

「フッ……甘く見てもらっては困るぞ」

 

 カゲツキがマスクの下で、鼻で笑うと左腕を上に突き出す。左腕には、先ほどXとリボーンズとの間に割って入らせた、レドームとシールド両方の機能を持つ回転するビーム刃の出る円盤……“スピアホイール”が備え付けられている。そのスピアホイールから、四方にビームの刃が展開される。それを頭上に構えると、ホイールは勢いよく回転しだし、カゲツキの体が宙に浮く。回転するホイールは勢いを増し、同時に周囲には空を裂く轟音が響き渡る。それにより辺りに旋風が巻き起こる。それはまるで、ヘリコプターがこれから離陸しようとしているかのような様子だった。

 そう、あのスピアホイールは「機動戦士Vガンダム」の世界において、主にザンスカール帝国系のモビルスーツに装備されている攻防一体型のフライトシステム、“ビームローター”を応用した武器である。そのため、高速回転するホイールを進行方向に向けると、カゲツキの体は信じられないようなスピードを出し、Xの後を追いかけて行った。

 

「え……? た……助かったの……?」

 

 その後姿をただただ呆然と見ているしかできなかったリボーンズは、誰も居なくなった林の中で一人呟いた。

 

「い、今のうちに逃げないと……!」

 

よろよろと立ち上がり、あの二人に自分の姿が認知されないよう林の中へと入っていく。空を飛ぶことができなくなってしまったため、そこで救援を呼び、他の仲間に迎えに来てもらう算段なのだ。

 

「この街のマシンソウルがまさかあれほどの力をつけていたなんて……これは一刻も早くマイマスターにお知らせしないと……!」

 

…………………

…………

……

 

空に飛びあがった二人は、上空で対峙する。といっても、カゲツキの方はビームローターの制御に回しているため左手はほとんど使用できない状態にある。その状態でこの理性を失った暴走状態のマシンソウルを止めなくてはならない。少々困難な任務だった。しかし、受け持った任務は必ず己の命を賭してやり遂げる。それがカゲツキの信条……“忍たる者”としての使命だった。

Xが背部ブースターのパーツの一部となっている大型のシグルブレイドを両手に装備すると、その剣先をこちらに向ける。次の瞬間、脚部のスラスターで一気に加速し、シグルブレイドを大きく振りかぶってこちらに斬りかかってくる。

その猛加速は目で追いきれぬ程に速い。対して、こちらはビームローターというプロペラによる飛行。スピードでは到底敵う筈もない。機動性においては圧倒的に相手側にアドバンテージがある。

しかし、カゲツキにはその劣勢を覆すほどのいくつもの“業前(ワザマエ)”を持っていた。

迫るXの斬撃。だが、カゲツキはその攻撃を避けようとすることは無く、右手の人差し指と中指を顔の前で立て、簡易的な印を結ぶ。

 

「月影忍法、“幻影空蝉の術”!」

 

 カゲツキが己の持つ秘技の一つを叫ぶ。すると、肩と脹脛の装甲のダクト部が開き、何かが周囲に散布される。だがその直後、Xのシグルブレイドがカゲツキを一刀両断する。装甲もろとも、カゲツキの胴体が真っ二つに裂ける。が、Xはその攻撃に違和感を覚えた。手ごたえが無い……。その正体はすぐにわかった。二つに切り裂かれたカゲツキの体が、霞のように消えてしまったからだ。

 偽りの分身を作り出し、己の姿を消す術……カゲツキが最も得意とする忍法だった。それらは全て、“機動戦士ガンダムSEED”および“SEED DESTINY”に登場する特殊装備、“ミラージュコロイド”によるおかげだった。ミラージュコロイドとは、可視光線や赤外線を遮断する特殊な微粒子であり、これを自身に定着させることで、姿を消し、肉眼やセンサーでも捉えられなくさせる機能のことだ。主にはそういったステルスとしての機能なのだが、そらにそれを広域散布することで、超高機動と同時に周囲の空間上に自身の残像を……つまりは分身を形成することができる。それがカゲツキの扱う忍法の正体だ。

一方のXも、カゲツキが分身を生み出して自分を攪乱しているのだという結論を出した。だが本体を探し出すよりも先に、カゲツキの反撃が背後より来た。

 

「走れ、“月風魔”!」

 

 左腕のスピアホイール“月風魔”を脇下に構えると、ビームローターの回転度がより増す。脚部のバーニアにより一気に加速すると、高速回転する月風魔を下段から上段に伸ばし、Xがこちらを振り向くと同時に斬りつける。斬撃は見事Xを捉え、切削の音と火花を散らしながら胸部のビームバスターから左肩にかけての装甲を抉り取る。金属と皮膚の焼ける匂いと音が一瞬聞こえた。だがそれにより、カゲツキは自らの攻撃がXに対して絶対的な手応えを持っていることを確信した。事実、これでもうビームバスターを撃つことはできない。

 

「まだまだぁっ! 月影忍法、“影の輪廻舞”!」

 

 その確信を頼りに、間髪入れずカゲツキは追撃を叩き込む。今度は回転するビームローターを水平に構え、Xの脇腹を切り裂く。血が噴き出し、カゲツキのマスクを赤く染める。先ほど同様の手応えと同様に、この攻撃が確実にXに効いていることは確かだった。

さらに今度はXの頭上より、電磁忍者刀を構えたカゲツキの分身二体が降ってくる。その二体の分身は落下のすれ違いざまにXの翼と本体の接続部分を切り付ける。翼は切り落とされ、Xは高速飛行と制御能力を失う。だがさらに三体の分身が月風魔を構えてXを三方向から取り囲み、中央のXに迫る。高速回転する月風魔の攻撃に、為す術無いXは直にその身を攻撃に晒してしまい、火花と共に尾は切り落とされ、更にXの全身の鮮やかな装甲が次々削ぎ落されていく。

 そして一連の攻撃が終わると、カゲツキの分身体達は本体のカゲツキへと収束していく。だが、攻撃はこれで終わりではない。Xの背後に回ると、右腕に備え付けられている籠手をXの方に向ける。籠手部分が開き、その中には三発の手裏剣が装填されている。

 

「手裏剣も付けるぞ!」

 

 物体が高速発射される独特の射出音が三回にわたって木霊する。手裏剣が装填されている部分は小型のリニアカタパルトとなっており、それにより手裏剣は超電磁の力を得て回転と速度が増し、目標に対してより深手を負わせることができるのだ。カゲツキはこの手裏剣をXのバックと脚部にあるメインスラスターに向けて射出する。見事、手裏剣はメインスラスターを破壊し、破壊された個所からは爆発が起こり、煙が上がる。これにより、全ての飛行能力を奪われたXは無情にも上空から地面へと墜ちていく。

 

「全ての判断をセンサーと脳内の演算処理に任せた索敵と攻撃……確かにそれにより、正確な敵の詳細データの把握と適切な攻撃行動が行えるだろう。しかし、それを実行するまでには脳内から発せられた命令信号が体に一連の行動を伝達する処理を終えるまでの間に、タイムラグが必ず生じる。マシンソウルが不完全な其方ならば猶更、その処理は遅い。ならば、拙者がその処理が終わらぬうちに俊足の攻撃を繰り出したのならば、判断処理が追いつかず、反撃一つマトモに行えまい」

 

 墜ちていくXを見下ろしながら、ビームローターで飛行しているカゲツキは独り言のように呟いた。

 

「ほとんどの反撃手段を潰した筈ではあるが、念には念を入れて……」

 

 尚も警戒心を緩めずに、カゲツキはXの後を追って地上に降下した。

 

………………

…………

……

 

「はぁ……はぁ……こ、この辺りだよな?」

『はい、間違いありません。微弱ですが奴の……Xの波長を感じます』

 

 高層マンションが立ち並ぶ団地内、そこにある公園の入り口で、ガンプラ状態のファントムはソウシの脳裏に語り掛ける。

突然飛び立ったXの後を追って、ソウシ達5人はこの町はずれにある団地内の公園に来ていた。Xの姿が誰にも見られない内に事態を終息させなければならないと必死で、皆息を切らせながらXの姿を探す。ゴッド、サバーニャ、ザクの3人は先ほどの戦闘で意識を失ったままなので、Xの追跡にはファントムの協力が不可欠となっていた。それを頼りにここまで来たのだが、いくら周囲を見回してもXの姿はない。

 

「でもよぉ、仮に見つけたとしても……俺たちだけで止められるのか?」

「確かに……人化ガンプラ4人がかりでも抑え込めなかったものを、ただの人間の僕らだけというのは……」

「やっぱり、シャドームーンさんを先に探した方がよかったんじゃない?」

「いや、あの人はいつも俺たちのガンプラがピンチの時に助けに来て、窮地を救ってくれた。もしかしたらもう先にXと戦っているのかもしれない」

 

 確信があるわけではないが、ソウシは今までのシャドームーンの行動パターン的に、そういった行動に出ているものではないかと推理した。

 

「だけど、いくらシャドームーンっていってもあのアルティメットXを前にしちゃ勝てるかどうか……」

「……そうとも限らない。見て」

 

 トモヒロの疑問に、レイナがとある一点を見つめながらそう答えた。言われるままに俺たちはレイナが見ている林の方向を見る。

林の中から出てきたのは、Xだった。しかし、先ほど見せた姿とは打って変わって、全身を覆っていた赤と金色の鎧は見るも無残に砕け散り、巨大な一対の翼は切り落とされ、胸や肩などいたるところに痛々しい斬撃の跡があった。かなり血を流していて、息も上がっている。見るからに満身創痍といった状態だ。

 

「あいつ、なんであんな姿に……!」

「……っ」

 

 そのXの姿を見て、レイナの表情が変わった。視線が鋭くなり、口元をぎゅっと結ぶ。今は暴走状態とはいえ、二度も自分のガンプラが重度のダメージを負っている姿を見てしまったのだ。その内に沸き立つ感情は……ソウシには計り知れなかった。

 

「ギラーガ! もう止めろ! ここにはお前と戦う奴なんかいない! そんな姿になってまで戦う必要は無いんだ!」

 

 無駄だと思いつつも、レイナの気持ちを考えると、ソウシはXに向かってそう叫ばずにはいられなかった。到底こんな言葉で暴走が止まるとは思えない。それでも、彼女の奥底に眠る理性の一万分の一にでも届けばと、声を張り上げた。

 すると、意外なことに返答が来た。

 

「……わ、私の使命は一族の繁栄……そのために邪魔なマシンソウルは排除する……」

 

 Xの口から途切れ途切れに出たその言葉に、ソウシ達は疑問に思った。

 

「はぁ? な、なに言ってるんだ?」

「ねぇ、今“一族の繁栄”って言ったけど……なんのこと? ギラーガさん、他にもいっぱい家族がいるってこと?」

「……そんなわけ……ない……」

「それに、マシンソウルって言ったぜ……? あいつ、本当に一体何を言っているんだ?」

 

 ソウシ達が不思議に思っている最中、Xのセンサーがまた起動しだす。それは、ソウシの鞄に向き、その中を透視する。そしてガンプラ状態となって待機しているファントムの姿を見つけ出すと、腕のビームバルカンの銃口をソウシへと向ける。

 

「危ない!!」

 

 Xがビームバルカンを放った間一髪のところでファントムが再び人化し、ソウシを押しのけバルカンの照準からズラす。標的の無くなったバルカンは、空しく虚空に消えていった。

 

「あ、ありがとうファントム……助かったよ」

「マスター、今は議論している場合ではありません。どうにかして彼奴を止めなければ」

 

 ガンプラ状態のままで少々休んだのが功を奏したのか、先ほどの戦闘で受けたダメージはほとんど回復し、ファントムはソウシの前で仁王立ちすると斬機刀を鞘から引き抜き、それを両手で構えるとXの前で対峙する。

 

「私一人でどこまでできるかはわからないが……マスターを守るためならば、この命、惜しくない!」

 

 意気揚々とそう宣言し、Xの攻撃に備えるファントム。だが、Xはまたも予想外の行動に出た。

 

「ミ……コト……?」

「な、なに……?」

「貴様……スメラギノミコト……? なぜ貴様がここに……!」

 

 Xの口から出たのは、またも意味不明な言葉だ。覚醒したばかりの時のXとは明らかに様子が違う。暴走する過程の中で、徐々に自我が目覚めていったというのだろうか。しかし、それにしては言っている言葉が支離滅裂すぎる。さっき言った“一族”や“マシンソウル”という単語もそうだが、今度はファントムのことを“スメラギノミコト”と呼んだ。一体何のことなのか、当のファントムにすら戸惑いの表情が見える。

 

「い、一体何のことだ! 私はファントム、ザクファントムのファントムだ。お前はアルティメットX、ギラーガだった者だろう!?」

「アル……ティメットX……? ギラーガ……? 違う、私は……わ、私は……っ!」

 

 自分の方に話を振られると、突然Xは頭を押さえて戸惑いだす。

 

「私は……何者だ……!? 教えろ……! 誰なんだ私は! 私は……私わあああああああああああっ!!」

 

 両手で頭を押さえ、錯乱しだしたかと思うと、突然両掌からビームサーベルを展開し、ファントムの方に突っ込んでくるX。突然のことに気圧されてしまったファントムだが、両手で構えた斬機刀を、弧を描いて刻まれるビームサーベルの軌道に沿わせ、サーベルを受け止める。

 

「しゃあ”あ”あ”あ”あ”っ!!」

 

 だが、Xが奇声を上げながら、もう片方のサーベルを横薙ぎに振るい、ファントムに向かって切り付けようとする。咄嗟にファントムは刀から片手を放し、その手でXの手首を掴み、サーベルの侵攻を止める。

 

「止めろと言っている! 急にどうしたというんだ!?」

「ぐぐううううううっ!!」

 

 ファントムの呼びかけにも応じず、Xは歯を食いしばり、その口から尚も獣のような唸り声を上げる。押さえつけられた左腕には更に力がこもり、そこから伸びるビームサーベルが、ファントムの脇腹に当たるか当たらないかという距離まで来ている。

 

「ぐぅっ……!」

 

 あと数ミリで皮膚に届くといった距離。その距離では、超高温のビームサーベルは、直接皮膚に接触していなくても皮膚を焦がすには十分だ。サーベルの熱量で、ファントムの脇腹を覆っている黒いバイオスーツに穴が空き、露わになった皮膚が段々と赤くなっていく。これでは、掻っ捌かれてしまうのも時間の問題だ。

 

「ど、どうすれば……!」

 

 慌てふためくソウシたち。だが救いの手はすぐに伸びてきた。ファントムがXを抑え込むそのXの背後、何者かが空から降りてきて、膝をついて着地する。そしてその状態のまま、両手の指で様々な形を作ったり、両指で結び合わせたりしている。

 

「しばしその状態で持ちこたえよ! 拙者がそやつの動きを封じる!」

「な、何者だ……?」

「月よりの使者、シャドームーン! 拙者の印結びが終わるまでのしばしの辛抱でござる!」

「な、なんだかよくわからんが……早くしてくれ! もう持たな……あ“ぁっ!」

 

 ついにXのビームサーベルがファントムの脇腹に触れる。ファントムが苦痛の声をあげると同時に、シャドームーンの印結びは完了した。

 

「月影忍法、“地縛影縫いの術”!!」

 

 忍法名と同時に右脹脛に装備されている3本のクナイを投げつけ、Xの影に突き刺す。すると、Xの動きが突然止まった。

 

「と……止まった……のか?」

 

 Xの猛攻が止まったことを確認すると、先ほどまで全身に力が入っていたファントムが息を吐きながらその場にへたり込む。力が抜け、先ほど回復した体力もほとんど消耗してしまったのだ。ビームサーベルが掠めた脇腹からは、少量だが出血をし、サーベルを押さえつけていた手はがくがくと震えている。

 

「ぐううううっ……! が”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!」

 

 しかし動きを封じられてもなお、Xは怒り狂った獣のように叫び続け、手や足を動かそうと奮闘する。

 

「その縛りはちょっとやそっとじゃ解けぬ。この公園の周囲にも結界を張った。まぁ、これでしばしの間話ができるというものだ」

 

 叫ぶXを余所に、カゲツキは腕を組んで極めて冷静な様子でソウシ達の方に向き直る。彼女がシャドームーン……。ソウシはその姿をようやくまじまじと見ることができた。その素顔は、口元が黒いマスクと赤いマフラーで隠れてしまい、確認することはできないが彼女がどんなガンプラがベースになっているのかは見当がついた。頭部に象った二本の角と、肩アーマーはおそらくブリッツガンダムの物を使用しているのだろう。しかし特徴的なフレームディテールを再現した紫と黒を基調としている内部装甲と外部装甲……それは一目見ただけでどのガンダムなのかすぐに判断できた。

 

「アンタ……ガンダムアストレイの人化ガンプラなのか……?」

 

 その言葉にカゲツキはソウシに視線を向ける。心の底まで見透かされてしまうかのような鋭い視線だ。その視線に気圧されてしまい、ソウシは思わず一歩後ろに下がる。

 

 

 

「そ、私が作ったガンプラ……シャドームーンは仮の名前、真の名前は“ガンダムアストレイシャドゥフレーム・カゲツキ”っていうのよ。仲良くしてあげてね♪」

 

 

 

 ソウシたちの背後から何者かの声が聞こえた。澄んだ大人の女性の声だ。だがソウシはなぜか、その声をどこかで聞いた覚えがあった。

 

「こ、この声は……」

「まさか……!」

 

 どうやらその声に聞き覚えがあるのはソウシだけではないようだ。トモヒロも同様に聞き覚えがあるらしく、背後を振り向く。

 

「ハァイ、お久しぶりね。愚弟たち♪」

 

 手でサイドカー付の黒い大きなバイクを押しながら、こちらに手を振る茶髪のライダースーツの女性……。その女性は、かけていたサングラスを取り、にっこりとこちらに向かって微笑んだ。

 

「や、やっぱりそうだ……帰って来たんだ」

「姉貴! なんでこんなところに!?」

 

 青ざめた表情をするソウシと、驚きの表情をするトモヒロ。トモヒロの口から出た言葉を聞いて、オトメ、トモヒロ、レイナの3人もまた驚愕した。

 

「えっ!? と、トモヒロ君のお姉さん!?」

「トモヒロ殿! お主にはこのような美人の姉がいたのでござるか!?」

「あれ? 言ったことなかったっけ?」

「……初耳」

 

 どうやらトモヒロは、自分に姉がいたことを隠していたわけではなく、ただ単に言ったつもりになっていただけのようである。

 

「創主よ、少し遅かったのではないか?」

「あら、ごめんなさいね。ちょ~っと急いでバイクのスピード上げたら警察に見つかっちゃって。振り切るのに時間がかかっちゃったのよねぇ」

 

 カゲツキの質問に対し、シノブはさらっととんでもないことを暴露した。だがそれよりも、ソウシとトモヒロは二人の意外な関係に驚きを隠せなかった。

 

「えええっ!? ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!? あの……姐さんとシャドームーンの関係って……?」

「ん? マスターと人化ガンプラの関係に決まっているじゃない。私が創って」

「拙者が創られた」

 

 と、二人はソウシの質問に対してまたもさらっと答えた。

 

「ちょっ、ちょっと待てよ姉貴……いきなりいろんなことが起こり過ぎて頭の中が整理できないんだが……」

「いろいろ考えるのは後にしなさい。とりあえず、今はアレをどうにかしなきゃね」

 

 シノブが視線を送る先には、カゲツキの影縫いにより尚もその呪縛を解こうと奮闘するXがいた。獣のような叫び声はだんだん大きくなり、このままでは誰かに聞かれて通報されるのも時間の問題だ。それよりなによりも、心身共にボロボロな状態なこのXが、これ以上暴れ続ければ当人の命にも関わるかもしれない。実際、身体を動かそうと力を込める度に、全身に受けた傷の至る所から血が噴き出ている。

 

「どうにかって、どうすれば……あいつ、まだファントムに拮抗できるほどの力を持っているんですよ?」

「なら、シャドームーンさんに止めてもらえば!」

「しかし無力化しようにも、あんな状態でこれ以上攻撃を加えたら命に関わるかもしれないでござるぞ……」

 

 タクオの言う事は最もだ。当のカゲツキも、これ以上はお手上げといった様子で腕を組んで目を閉じてしまっている。

 

「つーかよ! なんでいきなりこいつは暴れだしたんだよ! ガンプラバトルの時もラストでシステムに異常が起きたし!」

「あれはガンプラバトルシステムの異常なんかじゃないわ」

 

 トモヒロの言葉に、先ほどまで笑みを浮かべていたシノブの表情が一変し、ソウシ達も見たことがないような真面目な表情になった。

 

「シノブ姐さん、それってどういう……アンタ一体何を知っているんだ?」

「それは今話すことではないわ。……貴女がキサラギ・レイナちゃんね?」

 

 シノブはレイナの元に歩み寄り、腰を落として背の小さいレイナに目線を合わせる。一方のレイナは初対面の人に話しかけられたのが不安に思っているのか、シノブに視線を合わせようとはしない。が、シノブの質問に対しては無言の頷きで意思表明をした。シノブはそのまま話を続ける。

 

「一つ聞かせてもらっていいかしら?」

 

 シノブの質問に対し、レイナはまたも無言で頷く。

 

「貴女は彼女を……アルティメットXと名付けた彼女を作る際に、どんな気持ちを抱きながら作ったのかしら?」

「どんな……気持ち……?」

 

 無表情だったレイナの顔が、疑問感を抱く顔に変わる。それはそうだろう。いきなりガンプラを作っているときにどんな気持ちになっているかなど、普段から気にする人はまずいないだろう。しかしシノブのこの真剣な表情。それを見る限り、この質問がただの戯れで問われたものではないということを、この場にいる誰もが察した。

 そしてそれは当然レイナも同様だ。だから彼女は、X制作時に自分の気持ちをぽつりぽつりと語り始めた。

 

「私は……彼女が負けて戻ってきたとき……とても苦しかった……怖かった……そして……―」

「……悔しかった」

 

 レイナが最後に言おうとした言葉。その続きを紡いだのは、ソウシだった。自然と皆の視線が、ソウシへと向く。

 

「……どうして」

 

 それがわかったの? と言わんばかりに、レイナは不思議そうな表情でソウシを見つめる。

 

「あの時、傷ついたギラーガを連れて行くとき、お前の目から涙が流れるのを見たんだ。それはきっと、ギラーガを傷つけられたことに対する悲しみの涙だっていうのはわかった。でも、その時のお前の目……悲しみに染まっている時のものじゃあなかった。あれはきっと、悔しさを堪える怒りの目だったと、俺は思ったんだ」

 

 ソウシの言葉に、レイナは驚いた様子で手を口元に当てる。まさかあの時のソウシが、それほどまでに自分のことをよく見ていたとは思ってもみなかったようだ。

 

「驚いたわね。ソウ君、昔からよく気の回る子だと思ってはいたけど、まさかそこまでとはね……でも、それでようやく合点がいったわ」

「どういうこと? 姐さん」

「マシンソウル……あなたたちが“人化ガンプラ”と呼んでいる存在は、実はとても不安定な存在なの。その存在を、彼女たちは生まれる寸前に主人から授かる二つの物で安定させているのよ」

 

 “マシンソウル”……それこそがソウシたちが生み出してきた、人化ガンプラ達の正しい呼び名……。何故シノブがそのようなことを詳しく知っているのかを、ソウシ達は当然疑問に思ったが、今はそれどころではない。後で問いただそうと思いとどまり、代わりにオトメが別の質問を投げかける。

 

「なんですか? その二つって」

「一つは、マシンソウルの本懐……人格と精神意識を構成する“ソウル”よ。制作時の主人の感情によってその存在が左右されるのよ。穏やかに、純粋な気持ちで作ればソウルは正しく宿り、反対にマイナスの感情で組み上げればソウルは宿らず、仮に宿ったとしても極めて不安定なものになるわ」

 

 Xのあの激しいまでの破壊衝動……つまりそれはレイナが彼女を制作時、抱いていた悲しみと怒りの感情がレイナを通じてガンプラに宿り、あのように不安定なマシンソウルを生み出してしまったということになる。

 

「じゃあ……どうしたらその不安定なマシンソウルを安定させることができるんです?」

「その前にレイナちゃん、貴女が彼女に授けた“アルティメットX”という名前、あれって仮の名前よね?」

「……」

 

 シノブの質問に対し、レイナはまたも視線を地面に落とす。その様子を見る限り、図星らしい。やはりソウシが当初思った通り、レイナはアルティメットXという名前をそのまま使うつもりではなかったようだ。

 

「……長い間考えていた……けど、結局大会が始まるまでにどんな名前にすればいいのか、思いつかなかった……だから……」

「それで究極のXラウンダー専用機(アルティメットX)ね……」

 

 またも何かを納得した様子で、シノブは数回頷き、もう一度レイナに視線を合わせようと腰を落とす。

 

「いいこと、レイナちゃん。マシンソウルは、所有する主人が授ける名前によって存在が左右されるといっても過言ではないわ」

「名前……?」

「そう、それこそがマシンソウルに授けるもう一つのもの……“名前”よ」

 

 小声で問い直したレイナに対し、シノブは悠然と答える。

 

「彼女を鎮めたいなら、貴女が今抱いているマイナスの感情を消し去り、純粋な心を以って接するの。そして新たなる、正しい名前を彼女に授けなさい」

「急に……そんなことを言われても……」

 

 思わずうろたえるレイナ。その気持ちはわからなくもない。急に名前を付けろと言われても、どのような名前にすればいいのか……困惑するのは当然といえる。

 その場でXの新たな名前を考え出すレイナ。だが、考える時間はそう長くななかった。

 

「ぐおおおおおあああああああっ!!」

 

 背後より、影縫いによって束縛されているXの一際大きな雄叫びが響いた。その瞬間、Xの影に突き刺さったクナイに皹が入る。

 

「なんという奴だ……拙者の影縫いでも、彼奴の動きを完全に封じることはできないか」

「……一つ聞きたいんだが、あのクナイが壊れればどうなるんだ?」

 

 嫌な予感を感じつつも、ソウシはカゲツキに問う。

 

「当然、奴はまた動き出すだろう」

「なっ……!? ならすぐに代わりのクナイを刺せば……!」

「生憎、あの3本しか拙者は装備していない」

 

 と、シャドームーンはいやに落ち着き払った様子でXの影に刺さったクナイを顎でしゃくった。そうこうしている間にも、クナイに入る皹は大きくなり、その度にXの体の一部がピクリと、僅かにだが動き出す。

 

「もう時間はないわ。レイナちゃん、いける?」

「……」

 

 レイナはまだ答えが出せない。おそらくはXの正式な名前を、その頭の中で何度も何度も巡らせているのだろう。シノブにマシンソウルの本意を話された以上、適当な名前を付けるわけにはいかない。あくまでも、今暴れているこのマシンソウルを鎮めることができ、そしてこの赤いモビルスーツを模した機装少女を今後日常の生活において呼ぶに相応しい名前……そんなネーミングセンスが求められる。それは正直、少女一人で答えを出すには難しい問題だとは誰もが感じている。

 

「わ、私たちも一緒に考えてみようよ! 少しでも力になれれば……!」

「そ、そうだな! え~っとサチコにキヨミ……」

「なんでそんな普通の名前でござるか!? モビルスーツなんだからそれっぽく片仮名二文字で、ブグとザフとかそんな感じで……―」

「いや、みんな待て」

 

 自分たちも名前の案を出そうと躍起になっている三人に対し、ソウシは止めに入る。

 

「ここはレイナ一人に任せてみたいんだ」

「なんでだよ!? そんな悠長なこと言っている場合じゃないだろ!?」

「そうだけど……あいつは、Xはレイナが創ったガンプラなんだ。ましてや付けた名前によってマシンソウルが安定するかどうかなんてことを言われちゃ、なおさら創った本人が考えなくちゃいけないことだと思うんだ」

「あら、流石ソウ君、よくわかっているじゃない。貴方の言うとおり、マシンソウルは創った主人……“創主”によって名付けられてこそその真価を発揮するの。他者から与えられた名前なんかじゃ意味が無いわ」

 

シノブはそう言って頷き、ソウシの言った言葉を肯定する。その言葉で他の三人は途端に口を噤んだ。

 

「じゃあ……私たちにできることはもう無いんだね……」

「いや、そんなことはない。名前を考える手伝いはできなくても、ここで見守ることぐらいならまだできるはずだ。みんなでレイナが立派な名前が考え付くように祈ろう」

 

 落胆するオトメに、ソウシはそんな提案をした。

 

「……ああ、そうだな」

「それでこの騒ぎが治まってくれるなら、お安い御用でござる!」

 

トモヒロとタクオもその意見に賛同した。4人は視線をレイナの方へと向け、両手を握ったり、平手を合わせたりして心の中で必死に願う。共に名前を考えることはできなくとも、友を信じることはできる。今はそれだけを信じ、無言で、心の中で祈りを捧げる。

 

「ザクファントムよ、まだ動けるか?」

 

 カゲツキはXとの接戦で体力を消耗したファントムに問いかける。ファントムは肩で息をしながら、刀を地面に突き立て、それに体重を預ける体勢でカゲツキの方に目配せする。

 

「影縫いはもう持たない。だが、彼奴を抑え込むには拙者では少々“やり過ぎてしまう”やもしれん」

「……なにが言いたい?」

「拙者の代わりに彼奴を見事封じてみよ。今動けるのはそなただけだ」

 

 そう言ってカゲツキは腕を組み、その場でじっと微動だにしないまま無言の姿勢となる。動く気配は全く無い。これは遠回しに、ファントムは自分が非力な存在だということを諭されているのだとわかった。胸の内には、悔しいと思う感情が渦巻き、奥歯をぎゅっと噛み締め、刀を握る手にも力がこもる。だが、数秒の後、ファントムは呼吸を整え、体を起こすと、姿勢を整え、Xの正面に立って刀を両手で握って構える。

 

「いいでしょう、シャドームーン……いえ、カゲツキ。貴女の力を借りずとも、私は彼女を……ギラーガを止めてみせる!」

 

 決意を新たにしたファントムの目はしっかりと正面を見据えている。これはきっと自分に課せられた使命だと感じていた。その眼差しを見て、カゲツキはマスクの下で静かにほくそ笑んだ。

 そうこうしているうちに、Xの影に刺さった三本のクナイは皹が大きくなり、ボロボロと金属が砕ける音を響かせながら砕けていく。そしてついに……“バキンッ”と一際大きな音を立ててクナイの一本が砕け散り、同時にXの動きを封じていた暗示の一部が解ける。右腕が自由の身となり、Xは大きく腕を振るう。その反動により、残り二本のクナイも続けざまに砕ける。ついにXの動きを封じていた戒めの全てが解かれ、Xの身は完全に開放された。

 

「ハァア”ア”ア”ア”ア”!!」

 

 開放と同時にXは雄叫びをあげながら上へとジャンプし、両足の6本のヒールクローを隆起させ、刀を構えるファントムに向かって飛び掛かる。

 “ギィンッ”という重々しい金属同士のぶつかり合う音と、火花が飛び散る。Xの全体重をかけたジャンプを、ファントムは斬機刀を振り上げることで受け止めたのだった。

 

「ぐっ……ううっ……!」

 

 両手で構えた刀に、Xの全体重がのしかかる。少しでも力を緩めてしまえば、今頭上に迫っている6本の鋭い鈎爪に切り裂かれてしまう。ファントムは歯を食いしばり、足を踏みしめ、その状態から更に両腕に力を込め、刀を振り上げる。

 

「うっ……おおおおおっ!!」

 

 振り上げることにより、Xを振り落とす。落とされたXは地面に着地するが、その瞬間に僅かに体勢が揺らぎ、怪我を負った箇所からまた出血する。だが、そんな状態であるにも関わらず、Xは未だに唸り声をあげ、闘争本能むき出しの状態で今にも飛び掛かってきそうな状態である。

 

「……まだ戦うというのか」

 

 ここでファントムはいくつか気が付いたことがあった。先ほどまでXはビームサーベルやバルカンなど、モビルスーツとして自身に備わった武器を駆使して戦っていたはずである。しかし、それらの武器が残されているにも関わらず、それらを使って戦おうとはしない。あくまで己の腕力や脚力、そして武器としては比較的原始的で扱いやすい爪といったものでしか攻撃してこない。事実、XにはまだCファンネルやビットも残されている。それらを駆使すれば、ファントムに勝つことなど容易である筈なのに。

更に、つい数刻前までは普通に言葉を発していたにも関わらず、現在は雄叫びや唸り声をあげたりと、まるで獣のそれである。

 

「まさか……!」

「ふむ、不安定なマシンソウルを長時間宿したためか、本能が退化していっていると見える」

 

 カゲツキが口にした言葉は、ファントムが心の内で考えていたことそのままだった。

 

「じゃあ、このまま退化し続けると……どうなるんだ?」

「……おそらくだが、正しき名を与えられたとしても、人としての本能は戻らず、あのように血に飢えた野獣のような闘争本能が収まることはあるまい」

 

 それを聞き、ファントムは危機感を覚えた。となれば、残された時間は幾ばくも無い。一刻も早くXの動きを止め、その間に名を与えなければ。

 

「しかし……一体どうすれば」

 

 悩むファントム。すると、その答えは意外なところから来た。

 

「……ファントム」

「レイナ……?」

 

 意外なことに、レイナがファントムの名を呼んだのだ。これまでレイナに名を呼ばれたことがなかったファントムは、思わずXから目を離し、レイナの方に視線を向けた。

 

「……ギラーガの弱点を伝える」

「なにっ!? あのギラーガに弱点などあったのか!?」

「その弱点が今も活きているのかはわからないけど……伝える。彼女のバイザーを狙って!」

 

 そう言われてファントムはXにと視線を戻す。バイザー……それはヴェイガンタイプのモビルスーツ全般に備わっている目を覆っているスリットの入ったセンサーのことである。当然Xにもそれは備わっている。彼女のバイザーは、スリットの隙間から赤い光を放ちながらこちらをギラギラと睨みつけている。

 

「あれか、ならば!」

 

レイナの言葉が確かなのだとして、何故あのバイザーが弱点なのか理由はわからない。だが今は、その言葉を信じるしかない。

両手に握った刀を下段に構え、ファントムはXに向かって駆け出す。Xの眼前で、下段に構えた刀を振り上げてセンサーのみを切り落とすつもりなのだ。しかし、一歩間違えればXの命を奪いかねず、また相手に見せる隙が大きくなるので逆に返り討ちに遭ってしまう危険性もある。だが、ファントムはこの可能性に賭けることにした。他の方法を考えている余裕はない。一刻も早く勝負を着けるために。

 

「はぁああああああっ!!」

 

 声を上げながら徐々にXとの距離を詰めていく。一方のXは、両手を前に突き出し、尚も唸り声をあげながらファントムの方に襲い掛かる。両者が駆け出し、その距離は一気に詰まっていく。互いの雄叫びが交錯し合う中、ついに両者の相対距離はファントムの持つ斬機刀の切っ先部分にまで狭まった。

 

「今だっ!」

 

 この瞬間に自分の持つ力量の全てを込める。そのつもりでファントムは刀を振るった。か細いつむじ風が巻き起こり、ファントムとXの間を吹き抜ける。その場にいる全員の視線が、Xの顔へと向けられる。

 “ピキリッ……”と、僅かな音を立ててバイザーに亀裂が入った。そして次の瞬間、“パキンッ”と軽い音を立ててバイザーは真っ二つに割れた。

 

「や、やった!」

 

 その光景を見ていたソウシは思わず歓喜の混じった声をあげた。レイナの告げた弱点を、ファントムは見事破壊した。これでXの攻撃は止む筈……。

 一方、バイザーの割れたXの素顔を皆は初めて見た。ファントムとソウシは、ギラーガとの初めての戦闘の際に、その素顔を半分だけ見たことがあったが、その全容を見るのは初めてだった。

 前髪は短く揃えられ、瞳が髪に隠れない程度に。気の強そうな少しつった目に、その瞳の色は金色だった。だが、鮮やかな金色というわけではない。少し曇ったような、瞳の奥には光が宿っていない、濁った色をしている。暴走状態であるためなのだろうか? なんにせよ、これが未だ正気の状態ではないのは確かだ。

 

「ううっ……うあっ……! ああああああああっ!!」

 

 バイザーを破壊された途端、Xの様子が急変する。両手で顔を覆い、苦しみ悶える声をあげる。

 

「ギラーガ!? 正気に戻ったのか!」

 

 明らかに先ほどまでの暴走状態ではなくなったXの様子を見て、ファントムは思わず笑みがこぼれる。そして悶えるXを気遣い、その肩に触れようとした時だった。

 

「さ、触るなあああああっ!」

 

 手を振るい、刺し伸ばしたファントムの手をはたくX。何故はたかれたのかファントムにもわからない様子だが、それでも今、Xは確かに人の言葉を話した。ということは、人としての理性が戻りつつあるということだ。

 

「ギラーガ、さぁもうこんな戦いは終わりにして……―」

「わ……私の顔を見るなぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 それでもXを気遣い、その様子を見ようと顔を覗き込もうとした時だった。Xは急に顔を真っ赤にして慌てふためき、背部に残されていたCファンネルを起動させる。

 

「なっ……!」

 

 突然の反撃に面食らうファントム。理性を失い、獣のような様子だった時のXは、ファンネルを使う様子は見受けられなかったために完全に油断をしていた。今のファントムには、もはやファンネルの多次元的な攻撃に対応できるほどの体力は残されてはいない。呆然と、その攻撃に身を晒すしかなかった。Cファンネルが三つ、弧を描いてファントムに迫る。為す術のないファントムが、思わず目を伏せた。

 だがその時。黄色い閃光が三つ瞬き、迫るCファンネルをファントムの眼前で撃ち落とした。

 

「い……今のは……?」

 

 突然自分の目の前で爆発したCファンネルに呆気にとられ、それを撃ち落としたビームの出どころを探す。宙を見ると、3つの赤い円筒状の物体が4枚の羽根を広げて空を漂っていた。

 

「これで君に貸し一つだ」

 

公園の外側からソウシ達のいる方向に向かって歩み寄ってくる赤い影が二つ。その一つ、赤い重装甲のマシンソウルの姿に、先ほどの三つの円筒状の物体……“ファンネル”が、背部のファンネルコンテナに装填される。

 

「サザビー……! 来てくれたのか!」

「遅くなってすまない。我がマスターの用事につき合わされてしまってそれが長引いてしまってな」

「独先生の用事って、もしかしてお見合いでござるか?」

 

 タクオの放った余計な一言が気に障ったのか、サザビーの横を歩く彼女のマスターであり、シャアの仮面を付けた赤いスーツで金髪のウィッグを被った(自称)謎のガンプラビルダー……“カーディナル・アーク”こと本名ヤマナカ・ユリ先生は無言でタクオの頭に拳骨をお見舞いした。

 

「うおぉっ……せ、せんせぇ……死ぬほど痛いでござるぞ……」

「坊やだからよ」

「せんせ……じゃなくて、カーディナルさん。どうしてここに?」

 

 痛みに悶絶するタクオを尻目に、ソウシが質問する。

 

「あなた達がピンチだと知って、急いで駆けつけてきたのよ。そう言えば君の気が済むのだろう?」

「いや……先生、キャラ作っているのはわかりますけどそんな無理やりシャアやクワトロのセリフ使わなくてもいいですから」

 

 マスクをしていても若干ドヤ顔で、息を吐くように決め台詞を言うカーディナル・アークにちょっと嫌気がさし、辛辣な一言を告げるソウシ。それを聞いてカーディナルはあからさまにしょんぼりした様子になるが、今はそんなことにいちいち構っている暇はない。

 Xの方はというと、なんとその場でしゃがみ込んで顔を両手で覆っている。その姿はまるで、意地悪をされて泣きじゃくる小さな子供のようだ。とても先ほどまで獣のように咆哮し、狂戦士のように暴れまわっていたのと同じ人物とは到底思えない。

 

「あれで止まった……のか?」

「うん、そうらしいけど……」

「いいえまだよ。あれは弱点を突かれて一時的に行動停止になっているだけに過ぎないわ。マシンソウルを完全に安定させるには、この間に正しき名を与えなければならないわ」

 

 シノブの言葉に、ソウシ達はまだ安心できないのだと悟った。

 

「だそうだ。どうだレイナ? いけそうか?」

「……うん」

 

 先ほどまではずっと無言でXの真名を考えていたレイナ。今ようやくその名を決め、真名を告げるためにXの元に静かに歩み寄る。ファントムも、カゲツキも、ソウシ達も、固唾をのんで見守る。ファントムとサザビーに至っては、Xがまた暴走状態に陥った際に、レイナを守れるように臨戦態勢をとっている。

 そしてレイナは、Xの傍らまで近づき、うずくまる彼女の肩にそっと手を触れる。それに対し、Xが攻撃する姿勢は全く見られなかった。ただ、触れたレイナにこそわかるが、Xの体は小刻みに震え、口からは嗚咽にも似た苦悶の声が漏れていた。

 それを見たレイナは、まるで本当に子供が泣いているかのように思え、Xのことが何故かとても哀れに思えてきた。次の瞬間、彼女は無言でXを抱きしめた。

 それを見ていたファントムやサザビーは気が気ではなかった。が、ソウシ達はその様子をなぜか安堵した気持ちで見ることができた。根拠は無いが、もうXが暴れまわる心配はない。そう感じ取っていた。

 

「辛い思いをさせて……ごめん」

「うぅっ……あぁっ……」

「痛かったね……苦しかったね……私がちゃんとしていなかったから……」

 

 子供をあやすように、レイナはXの体を優しく、つよく抱きしめる。そして彼女の髪にそっと触れ、優しく撫でる。そんなレイナの行動に、Xは戸惑いの表情を見せる。が、自分を抱きしめるレイナに対し、Xも、機械化された自分の手でレイナの背中に触れる。その行為にファントムはヒヤリとしたが、それは攻撃の意思によるものではなく、ただ単に、自分を抱きしめてくれたレイナを抱きしめ返しているだけだとわかり、強張った体の力を抜く。

 

「怖かったんだよね……誰も、貴女に味方する人がいなかったから……」

「創造……主……」

「でも大丈夫……私は、貴女の味方だから」

 

 そしてレイナは、抱擁を解き、Xの顔を見つめながら己の中で決めていた“真名”を告げる。

 

「貴女の名前は……“レギーラ”」

 

 その名を告げた途端、Xの……いや、レギーラの体が輝きだす。そして輝きが収まった次の瞬間、彼女は元のガンプラの状態へと戻っていた。

 

「お、終わった……のか?」

「どうやらそのようでござるな……」

「レイナちゃん! 大丈夫?」

 

 レギーラの姿が消えたとたん、トモヒロ、タクオ、オトメの3人がレイナの元へと駆け寄る。

 

「うん……私は大丈夫」

「あいつ、どうなったんだ?」

 

 皆から少し遅れて、ソウシがレイナに問いかける。ガンプラの状態に戻ったということは、もしかしたらまたこのガンプラを作った時と同じように、マシンソウルが宿っていない状態になっているのかもしれないと、心配に思ったからだ。

 

「心配ない……今はガンプラの状態に戻って眠っている……。マシンソウルもちゃんと安定している」

「わかるのか?」

「うん……レギーラの意識が伝わってくる。今は休ませておきたい」

「そうか……そうだな。あいつ、あんな状態で無茶しまくっていたからな」

「うん……」

 

 レイナの手に抱かれているレギーラのガンプラは、あちこちが破損しており、パーツも欠損している箇所が多い。これを元の状態に直すには、いくらレイナでも困難だと誰もが思った。

 

「これを」

 

 その時、カゲツキがレイナに握った手を差し伸べる。何だろう? とレイナは訝しげに思いながらもその手の下に平手を差し伸べる。握ったシャドームーンの手が開き、その中にあった何かがカラカラと軽い音をたててレイナの手の中に納まった。

 それは、先ほどの戦闘によって切断されたり、破損して飛び散ったレギーラのパーツ類だった。

 

「これは……?」

「拙者からの心ばかりのお詫びの印でござる。彼奴の力を削ぐためとはいえ、そなたが心を込めて作りこんだ部品を破壊してしまった……誠に申し訳ない」

 

 と、カゲツキはレイナに対して深々と頭を下げた。その姿は心底自らの行いを悔いている様子だった。彼女がいつもソウシ達に見せているのは、戦っている姿やガンプラ達の窮地を救った姿だけ……それ故に、カゲツキのこんな姿を見るのはとても新鮮だった。

 

「えうぅ……そ、そんなに謝られても困る……頭を上げてほしい」

「しかし……この程度で許してもらおうなどとは……!」

「心配しなくても、これならすぐに接着できる……貴女が綺麗に切ってくれたおかげ」

「そう……でござるか? かたじけない!」

 

 レイナのその言葉に、カゲツキはまたも深々と頭を下げ、そして後ろへ一歩下がる。

 

「全く、あんたってばお堅いわねぇ」

「しかし創主よ……拙者にもう少し実力があれば事の収集は速やかにできたというのに……」

「あんたは十分やったわよ。さて、じゃあ静かになったところでお話タイムといきましょうか」

 

 と、にこやかな会話をかわすシノブとカゲツキ。どうやら二人がマスターとその人化ガンプラであるという話は本当のようだ。

 

「そ、そうだった! そもそもなんで姉貴がここに居るんだよ!?」

 

 シノブが登場した時からずっと胸中に抱いていた最大の疑問を、トモヒロは姉に投げかける。そしてそれに便乗し、ソウシも質問を投げかける。

 

「3年前、突然トモヒロの家を出てってそれっきりどこで何をしているかも教えないで……心配したんですよ!」

「っていうか……姉貴、いつからガンプラを!?」

「あ、そうだ! なんでシノブ姐さんのガンプラまで人の姿になっているんですか!?」

「そしてなんであんなに強いんだよ!?」

 

 今まで溜まっていた疑問の全てをシノブへと向けるトモヒロとソウシ。だが、シノブは大きなため息一つついて、そんな二人を呆れ顔でなだめる。

 

「あー、はいはい。それはまた後で話してあげるから。はい、まずは他の人たちに私のことを紹介紹介♪」

 

 と、すぐににこやかな表情になり、自分の弟に皆への紹介を促す。

 

「あぁ……んじゃ、みんなには改めて紹介するよ。俺の姉のサラ・シノブ。ちなみに俺とは7歳上……あだだだだだっ!?」

「はいそこ、間接的にでも女性の年齢を公表するものじゃありませ~ん♪」

 

 と、シノブは笑顔のまま、固そうな革靴でトモヒロの足の小指あたりをぐりぐりと踏みつける。本人は軽くやったつもりらしいが、当のトモヒロは足が離れると自分の足を擦りながらしゃがみ込む。よほど痛かったようだ。

だが改めて“姉”と言われてもタクオ、オトメ、レイナ、ファントムの4人はトモヒロとこの女性の顔を交互に何度も何度も見比べるのをなかなか止められなかった。言われてみれば確かに、顔の輪郭やその茶色の髪の毛等、姉弟としての共通点はいくつか見つけられた。が……それにしてもこれほど美人でグラマーなボディの姉がいたとは、誰も思いもしなかっただろう。

 

「しっかし、しばらく見ないうちにトモもソウちゃんも大きくなったわね~」

 

 シノブはしゃがんでいるトモヒロの襟を掴んで無理やり立たせ、ソウシの横に並ばせ、顔を見比べある。「それはこっちのセリフだ……」と、シノブの胸あたりを見ながらソウシとトモヒロは互いに内心思ったが口には出さなかった。そんな困惑している二人の表情が、昔の二人を彷彿とさせ、シノブにとってはとても懐かしく、そして愛らしく思えた。

 

「んふ~♪」

「おわっ!?」

「ちょっ……姉貴!? く……苦しいって……! もががっ!」

 

 とうとうその気持ちが抑えきれなくなり、シノブは満面の笑みで二人の弟分を両手で抱きしめ、自分の胸に押し付ける。当然二人の眼前にはふよふよした柔らかい感触のモノが押し付けられ、それはそれで嬉しくない気もしなくもないのだが……その前にツルツルした革製のライダースーツに気道を塞がれ、とても苦しい。

 

「な、なんと羨ましい光景でござろうか……!」

「あ、あの~……お姉さん?」

 

 しばらくその光景を見ていたタクオから思わず本音が漏れる。オトメも同様に、突然のことにその光景をしばらく傍観していたが、今はそんなことしている場合じゃないという事に気づき、おそるおそるシノブへ声をかける。

 

「ん? あぁごめんなさいね、こんなことしている場合じゃなかったわ」

「ぷはっ!?」

「はぁ……し、死ぬかと思った……!」

 

 ようやく解放され、二つの理由で顔が赤くなっていた二人は、その場で呼吸を整えると改めてシノブの前に向き直る。

 

「ね……姐さん! ふざけている場合じゃ……―!」

「わかってるってば。ん~、カゲツキ。ちょっと聞きたいんだけどあの戦いを誰かに見られていたかしら?」

 

 シノブがカゲツキに尋ねる。ソウシ達は「あの戦い」という言葉の意味がよくわからずにきょとんとした顔になる。その戦いというのはソウシ達が来る前に終結したXとリボーンズとの戦いのことである。無論、その場にいなかったソウシ達には、Xがあの天ミナ率いる人化ガンプラ軍団の一人、リボーンズと戦い、それを完膚なきまでに叩きのめし、勝利していたことなど知る由も無い。

 

「うむ……子供が数人、この公園に居た。その内一人はXと間近で接触していた。まだ物心も付かぬ幼子ではあったが、さりとて……」

「そう……子供達が見てしまったってことは、当然その親にも話は伝わっているでしょうね。子供の戯言と聞き流してくれればいいけど……」

「おい……一体何の話だ姉貴!? もしかして、Xの姿を誰かに見られていたのか!?」

 

 トモヒロの声が思わず上ずる。人化ガンプラの存在は、世間一般には秘密にしようというのがソウシ達のルールだった。無論そのことはシノブも理解している。その存在が世に知られたら、たちまちパニックになることは目に見えていたからだ。今まではなんとかうまいことやってきたが、今回は子供とはいえ、一般人に見られてしまった……もしそこから綻びが生まれてしまったのだとしたら……。

 

「となるとあまり悠長なことはやってられないわね……うん、よし。予定変更。みんな、すぐにここから離れるわよ。カゲツキとそこの二人はすぐにガンプラの状態に戻って。それからあなた達はバスに乗ってすぐにここから離れて。すぐそばにバス停があるから。私はバイクで後を追いかけるわ」

 

 と、シノブは急に慌ただしく行動を起こし、まずファントムとサザビーに命令をし、次にソウシ達にそう告げた。

 

「えっ、でも……バスでどこに?」

 

ソウシの質問に、シノブはバイクを押して出口に向かいながら答えた。

 

「そうねぇ……とりあえず、ウチに行きましょ」

 

………………

…………

……

 

「リボーンズ、君の報告は聞いたよ」

 

 暗く、広く大きな部屋の一室。窓を背にして机の前に座る人物は、命からがら敗走してきたリボーンズを目の前にして、一言呟いた。対するリボーンズは、その人物の前で跪き、負傷部に巻かれた包帯に血を滲ませ、息も絶え絶えになりながらも己の戦った相手のことを事細かに述べていた。

 

「は、はい……まさかあんな力をつけた奴がいたなんて思いもせず……」

「あげゃげゃげゃ、おいおい言い訳かよォ? みっともねェなァ」

 

 その怖気が走るような甲高く、耳障りな笑い声が背後からしたのを聞き、リボーンズはビクッと体を震わせた。血のように赤いMA(モビルアーマード)を纏い、狂気の笑みを浮かべたマシンソウル……アストレアだった。

 

「ねェねェねェ~リボンちュわァ~ん? ちょっとイケてないんじゃなァ~い? 素直に言っちまったらどうだよォ? 油断してたらやられちゃいましたァ~、力及ばず何の結果も残せず任務放棄して逃げ帰ってきてしまいましたァ~、ごめんなさいですゥ~……ってかァ!? あげゃげゃげゃげゃげゃ!」

 

 傅くリボーンズの肩に自分の手をまわし、ニヤニヤ嗤いながらリボーンズの耳元で囁くように言った後、一際大きな声で嗤うアストレア。リボーンズは何も言い返さず、体勢も変えずにじっとアストレアの煽りを聞き流す。血気盛んなアストレアは、ここで何か反応してしまうと、それを口実に突っかかってくる危険性があるということを、リボーンズは重々承知していたのである。

 

「そこまでにしておきなさい、アストレア」

 

 アストレアの背後から天ミナが現れ、冷たい声色でアストレアを止める。その眼は赤く輝き、口元からは牙が覗く。

 

「わたくしはマスターのお部屋を貴女の血で汚したくはありません」

「ヘッ、それは俺様じゃなくってこいつに言うべきなんじゃねェの?」

 

 と、アストレアはリボーンズの頭を軽く小突く。それを聞いてリボーンズはいそいそと、彼女らの主人の前から身を引こうとする。

 

「いや大丈夫だよリボーンズ。それに、僕は君たちの誰かを汚らわしいだなんて思ってはいないから」

 

 それを聞いてリボーンズは安堵したのか、表情を和らげてまた深々と傅く。

 

「しかしそうか、彼らの仲間のガンプラにも、そこまで力をつけた者がもう現れるとはねぇ……」

「“もう”……? マスターは彼奴らのマシンソウルがそこまで強力になると見越していたのですか?」

「うん、“彼女”と接触したということは遅かれ早かれそうなるだろうと思っていたよ」

「あぁ……♪ 流石はマイマスター……その鋭い洞察力、感服致します……♪」

 

 先ほどまでアストレアに向けていた冷たい意識はどこへやら、天ミナは頬に手を当て紅潮させ、とろんとした目線を自分の主人へ向ける。彼が言った“彼女”という人物……それはソウシが保護している謎の少女……カルナのことを指しているのに他ならなかった。

 

「ケッ、アホらし」

 

 それを呆れ顔で見ていたアストレアは最後にそれだけ言い残し、部屋のドアノブに手をかける。

 

「そうだ、もしまたあのガキの様子見をするようならよォ、今度は俺様が行くぜ」

「アストレア、君がかい?」

「あァ、任務失敗したどっかの誰かさんの引継ぎってわけだァ」

 

 最後にそれだけ言い残し、アストレアは部屋を出て行った。

 

「あのアストレアの態度……危険ですね。きっと何かをやらかすつもりですよ」

 

 またも天ミナは冷徹な態度に戻り、自らの主人に告げる。

 

「ふふっ、まぁその時はその時さ」

 

 彼女らのマスターは、まるで全ての物事を見通しているのかの如く、天ミナに対して冷静な返答をする。

 

「では、今回の件。事後処理はいつものように手回しをしておきます。目撃者に関しては如何しましょうか?」

「目撃したのは子供だろ? それに関してはスルーしておいて大丈夫さ。ところでリボーンズ、君とその改造されたヴェイガンタイプとが戦闘した後に、以前から報告にあった忍者タイプのマシンソウルが戦闘に介入したんだね?」

「は、はい! あれは紛れもなく、前々から目撃されていたマシンソウルでした……」

 

 それを聞いて天ミナは険しい表情をし、マスターは「フフフ」と微笑む。

 

「あ、あの……?」

「あぁいや、なんでもないんだ。怪我をしているところ悪かったね。戻ってゆっくり休んでくれたまえ」

「は、はい。それでは私はこれで……」

 

 そう言い残し、リボーンズは部屋を後にした。

 

「ということは……いるんだね。あの街に、彼女が」

「はい。我が社から“オリジナルマシンソウル”の素体(アーキタイプ)を奪取した女……」

「そう、君の双子の妹を奪った女性……サラ・シノブがね」

 

………………

…………

……

 

「えっ? シャドームーンが張った結界ってこれ?」

「これ、ただの工事中の時に立てる看板と柵とコーンではないでござるか?」

「これがなかなか効果あるのよ~♪」

 

 彼らの知らないところで別の思惑が渦巻きながらも、物語は次の局面を迎えようとしていた……。

 

 

 

 

 

~オリジナル機体紹介~

 

閃紅の竜騎士

「レギーラ」

 

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【機体説明】

 天ミナとの戦闘によって損傷したギラーガを、マスターであるレイナが修繕・強化したガンプラ。

究極のXラウンダー専用機(アルティメットX)”を目指し、ギラーガをベースとしてそこにガンダムレギルス、ゼイドラといった歴代のヴェイガン側のXラウンダー専用機の特徴を全て詰め込むことを目的とし、制作された。

攻・防・速さ、そしてビットとCファンネルのダブルオールレンジウェポン全てにおいて重点を置き、機体のポテンシャルを底上げされている。

 

【武装】

・ビームバルカン兼ビームサーベル×4

 

・ビームシールド

 

・ビームバスター

 

・レギーラライフル

 

・ニードルガン×2

 

・ヒールクロー×6

 

・シグルブレイド×2

 シグルブレイドは持ち方を変えることによりブレイド、グレイヴ、ブーメランの3形態に変形可能。

 

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・Xトランスミッター

 

・Cファンネル×6

 

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・電磁バリア

 

【技】

「バスターナックル」

 

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 発生させたビームシールドを拳に纏い、相手に叩き付ける打撃技。

 

「ライトニングパイク」

 

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 ビームサーベルをパイルバンカーとして応用した技。肘で発生させたビームサーベルを    

腕内で加速させ、掌の銃口部から打ち出す。敵機を掴み上げ零距離から打ち出す場合が多い。

 

「ライトニングアロー」

ライトニングパイクのビームを矢として活用し、遠距離の敵を射る。連射はできないが、貫通性が高い。

 

「ハイパーキック」

 

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 ゼイドラから発展させた技。ウイングとブースターの加速を利用し、上空からの蹴りで展開したヒールクローを相手に突き立てる。

 

「電磁フィールド」

 

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 ウイングで前面を覆った防御形態。自身を中心とし球状の防御フィールドを発生し、時機を護る。実弾・ビーム・近接武器問わずそれらを寄せ付けない高い防御力を誇るが、相当量のエネルギーを消耗するため、長時間の使用は不可能。また、一度使用した場合再度フィールド展開までには時間を要する。

 

「トライデント・デトネイター」

 ビームシールド発生基部をビームバスター発射口に接触させることにより、エネルギーを収束させ、それに合わせてビームシールド発生基部からもビームを放出し、ビームバスターの火力と収束率を高める技。その威力は通常のビームバスターとは比較にならないほどに強大である。

 

【ベースキット&主な使用キット】

HGAGE ギラーガ

HGAGE ガンダムレギルス

HGAGE ゼイドラ

HGAGE バクト

HGAGE ダナジン

HGBC ダークマターブースター

 

 

 

 

 

月光の影忍

「ガンダムアストレイシャドウフレーム“カゲツキ”」

 

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武装フル装備状態

 

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【機体説明】

 ガンプラマイスター、サラ・シノブの駆る忍者を模した黒いガンダムアストレイタイプのガンプラ。身軽な出で立ちで、忍法や電磁抜刀術など、多彩な業前を繰り出し、敵を翻弄する。

 多様の武器を所有しているが、必要以上の装備は機動力が落ちてしまうことを考慮し、戦況によって適切な武器を装備する戦闘スタイルを持つ。

 

【武装】

・イーゲルシュテルン×2

 

電磁忍者刀(ライトニングブレード)“幻月”“新月”

 

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 鞘内が磁場を帯びており、その反発を利用することにより瞬時に抜刀することができる。

 

・リニアシュリケン“雷光”×3

 

【挿絵表示】

 

 腕部のリニアカタパルトから超回転・超高速で射出される手裏剣。手で持って投擲することも可能。

 

駆煉刀雷威銃(カレトライフル)

 

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火縄銃風に改造したカレトヴルッフ。元は工具だが、完全に銃としての機能を追求している。スコープ付きで、狙撃でも長距離の射程と高い威力を発揮する。バヨネットを展開し近接戦闘にも対応可能。

 

・スピアホイール“月風魔”

 

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 レドームシールドより四方にビームサーベルが発生し、高速回転しながら敵を斬る。ビームローターとしても使用可能であり、飛行が可能。また腕部とビームの糸で繋がる事により、巨大な手裏剣としても活用可能。サーベル部を分離させてビーム刀にもなる。

 

・クナイダート×3

 

・光玉

 

・煙玉

 

・チェーンシックル

 

【挿絵表示】

 

 

・ホバーユニット“水蜘蛛”×2

 

【技】

「電磁抜刀、“電光雪華”」

 納刀した状態から鞘と刀身の磁気反発を利用して高速抜刀し、相手を一閃する。その稲光の如く一瞬のみ迸る雷光と、斬撃の後に散る敵機の欠片が雪のように舞い散るため、この名が付いた。

 

「月影忍法、“幻影空蝉の術”」

 ミラージュコロイドを利用し、自身の幻影を生み出し敵の攻撃を代わりに受けさせ、その間に自身の姿を消して敵機を攪乱する技。

 

「月影忍法、“影の輪廻舞”」

 質量をもった分身を生み出し、一つの敵に集中攻撃をかける技。見る者にはあたかも影が踊っているかのような印象を持たせる。ただし、攻撃が適用できるほどの質量をもった分身を同時に生み出せるのは5体までが限度とされている。

 

「月影忍法、“地縛影縫いの術”」

 印を結び、その影にくないを突き刺して地面に縛り付けることにより、相手に暗示をかけ動きを封じる技。強力だが、印を結ぶのに少々の時間をかけるため瞬時には使用することができない。

 

 この他にも様々な電磁抜刀術、忍術を扱うらしい。

 

【ベースキット&主な使用キット】

HGCE ガンダムアストレイブルーフレームセカンドL

HGSEED ブリッツガンダム




えー…まずはお詫びです。一年以上も更新できずに大変申し訳ありませんでしたっ!!!
というのも去年の2月ごろ、改めて過去の文章を見直してみると手直ししておきたいと思える矛盾点や誤字・脱字、物語のうえで不要な部分や掘り下げた部分なんかが目立ってきてしまったのでじゃあもういっそ全部書き直そう!と思い、ちまちまと執筆と平行して過去の分の編集作業に取り掛かった次第でございます。それでもこんなに時間がかかってしまうとは思いませんでした…orz

しかしそのかいあって全編満足のいく文章になったかなと思っております。
タイトルも心機一転し、オリジナル機体の写真も増やしました。
以前読んでくださっていた方も、そして新規に読んでくださった方も、またこれからお楽しみいただけたらと思っています。

さて、今回はかねてより謎の存在だったシャドームーン……「カゲツキ」と、トモヒロの姉であるシノブを登場させました。
この二人も天ミナ一派と因縁浅からぬ関係にありそうなのでこれからも活躍させたいと思っています。

そして人化ガンプラ……「マシンソウル」の謎についても少し触れさせていただきました。
果たして彼女らはなぜ生まれたのか?なぜ戦うのか?そういった理由が今後明らかになってくるかと思います。

また、今回から新たにデジラマを作成し、載せてみました。
ほぼスマホのアプリによる編集ですが本文と平行して楽しんでいただけたら幸い

次の更新はなるべく早めに行うつもりです!お楽しみに!
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