SWORD&SOUL -VS 33-   作:地水

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 後半戦はSynchronicity(牧野由依)をガンガンかけて作っていました。
後者は心理描写的にこれがあってるかなと思って。


04:天舞う二刀流、そして……

 激しい剣撃音、繰り返し散らされる火花、増えていく傷跡。

ALOの空にて繰り広げられる戦闘は、未だ激しさが続いていた。

黒の剣士・キリトは風の勢いを利用して突っ込んでくる整合騎士のキリトの攻撃を防ぎながら思考を巡らせていた。

 

(今まで血盟騎士団の団長やら、SAOの亡霊やら、アリスを狙う襲撃者と戦ってきたが……これほどやりづらい戦闘はないな)

 

ふと脳裏で思い返されるのは、かつての強敵達。

SAOにてデスゲームの舞台を作り上げた張本人・茅場彰彦が扮した血盟騎士団団長の"ヒースクリフ"

GGOにてデス・ガン事件を行った殺人ギルドの生き残り"デスガン"

UWにて戦った人界を支配していた女性"アドミニストレーター"や、人工知能アリスを狙っていた"謎の男(ガブリエル・ミラー)"

どれもキリトにとっては多大な犠牲と死闘を以てして勝ち取った相手だ。

 

―――だがそんな強敵たちより、目の前にいる相手は手ごわかった。

なんせ自分自身だ、向こうの自分《キリト》は無意識にしていて気にしてないだろうが、剣筋も戦い方も全く同じ。

これほどやりづらい相手は後にも先にも他にいない。

だからとはいって……いやだからこそ、この自分《おとこ》には負けられないのだ。

 

(……コイツは俺なら、もちろん『アレ』を使ってくるはずだ……)

 

そう思った時、距離を取っていた整合騎士のキリトは剣の構えを解いた。

その表情は眉を顰め、しびれを切らしたかのようにあるものを取り出す。

 

「決着がつかないな……長引くのもつらいし、悪いがコイツで決着をつける」

 

それはもう一本の黒い片手剣、先ほどまで使っていた片手剣と同じデザインをしたそれを整合騎士のキリトは構える。

―――二刀流、SAOから続くキリトという【黒の剣士】が使う本気のバトルスタイル。

自分と同じなら使えることが予測できていたが、ここまで同じだと焦りを通り越して関心すらしてくる。

 

「いくぞ!」

 

「ああ……かかってこい!」

 

再びぶつかりあう、黒の剣士・キリトと整合騎士キリトの剣。

だが、整合騎士の方が持っていたもう一つの片手剣が振り下ろされる。

咄嗟に受け止めていた剣を弾き飛ばし、その一撃を防ぐ。

 

「ぐぅ!?」

 

「どうした!まだまだ本気は出してねえぞ!」

 

整合騎士のキリトの繰り出す二刀流による斬撃が襲い掛かる。

なんとかして防いでいくが、次第にその速度が速まっていく。

 

(クソッ、二刀流でここまで苦しめられる日が来るなんてなぁ!!)

 

心の中で叫びながら、振り下ろされる刃をなんとかして防いでいくキリト。

だが、整合騎士のキリトの放った詠唱が耳に届いた。

 

「バーストエレメント!」

 

「しまっ…」

 

二刀流でも神聖術を使えないとは限らない事を失念していたキリトは身構える。

その直後、周囲に待機させていた熱素、風素、氷素といったあらゆる攻撃が爆発としてキリト目掛けて襲い掛かった。

上空一帯に爆発が響き渡り、煙幕によって包まれていく。

その中からキリトの持っていた剣が放り出され、地面へと突き刺さる。

煙が晴れると、整合騎士のキリトは渋い顏をしながらボロボロの姿のキリトを見やる。

 

「アレを喰らってまだ生きているか」

 

「生憎と、しぶといのはアンタも知ってるだろ?」

 

「はっ、抜かせ。そのやせ我慢、いつまで続くか!」

 

整合騎士のキリトは再び、双剣を構えて切りかかろうとする。

先程剣を吹っ飛ばされ、今のキリトは丸腰も同然。

さて、追い詰められてきた……そう思った矢先、自分の名を呼ぶ聞こえてきた。

 

「キリト!」

 

「……シノン!」

 

振り返ると、そこにいたのは何かを携えて弓を構えるシノンの姿。その後方にはアスナ、ユイ、リーファ、そしてリーファに抱えられているステイシアのアスナの姿もあった。

整合騎士のキリトはステイシアの方を見ていて驚いており、一瞬の隙ができた。

それを見逃すシノンではなく、彼女はキリトに対してこう言った。

 

「受け取りなさい!これを!」

 

その言葉と同時にキリト目掛けて放たれた、

キリトは射線上から少しよけ、驚異的な反応速度で飛んできたものを掴んだ。

―――それは、かつてアンダーワールドにて使っていた漆黒の剣"夜空の剣"だった。

なんでこれがこの世界にあるんだ……!?

そう思ったキリトだったが、少し考えて予想がついた……この愛剣は目の前にいる整合騎士のキリトだと。

夜空の剣がもう一人のキリトに渡った事を気づいた整合騎士のキリトは叫ぶ。

 

「貴様、何故それを……!!」

 

「もう一人のアスナ……ステイシアを持っていたから拝借しただけよ」

 

「チッ、余計なことを!」

 

舌打ちを打ちながら、整合騎士のキリトは目の前にいるキリトへ目掛けて両手の二本の剣を振るう。

だが、その二本とも受け止められてはじき返された。

一体何が起こったのか、と見てみれば、そこには夜空の剣の他に黄金色の剣を構えたキリトの姿があった。

かつて仲間達と共に手に入れた聖剣"エクスキャリバー"と夜空の剣、二つの名剣を構えたキリトは、整合騎士のキリトへ切りかかった。

 

「ハァァぁぁァ!」

 

「舐めるなぁ!!」

 

ぶつかり合う双剣と双剣。

黒の剣士・キリトと整合騎士のキリトの二刀流がぶつかり合った。

激しい一撃が余波となってアスナ達に襲い掛かるが、誰一人逃げる様子はない。

この二人の戦いを目を逸らすわけにはいかなかった。

 

「キリト君……」

 

「お兄ちゃん……」

 

「キリト……」

 

「パパ……」

 

アスナ、リーファ、シノン、ユイの四人が自分達の知るキリトの勝利を信じて祈りを捧げる。

この戦いに自分達が割り込むことは、彼自身が望んでいないはず。

だから、彼女達はせめて祈る事しかできなかった。

 

「二刀流と二刀流、同じになっただけで何が変わる!」

 

「違いはあるさ、俺……なんせこの夜空の剣は悪魔の樹を親友と一緒に切ったものだからな!」

 

「親友?誰の事だ」

 

「覚えてないのか……それすら封じられてるなんて悲しいやつだな」

 

「―――憐れんだ目で俺を見るなぁ!!」

 

親友との記憶すら封じされた自分を憐れむ瞳に激昂する整合騎士のキリト。

両手の剣が光のエフェクトに包まれ、最大の一撃を放たんと距離を詰める。

だが、キリトは静かに両手の剣を構え、何かが来るように待っている。

そして、整合騎士のキリトの必殺の一撃が繰り出さんとしたその瞬間……。

 

「―――そこだ!」

 

キリトの繰り出した一閃が整合騎士キリトの、―――双剣の側面へ同時に叩き込まれる。

その瞬間、両手の剣の刀身は砕かれてしまう。

驚愕する整合騎士キリト、もう一人の自分が繰り出したその一撃が既視感を覚え、その技名を口にする。

 

「武器破壊……!」

 

「あたりだよ」

 

キリトはもう一人のキリトにそう言いながら、次の一撃を決めんと剣を振り上げる。

整合騎士のキリトは刀身を砕かれた剣を持って、彼に突き刺そうとする。

両者は最後の一撃を決めんと、技を発動させる。

 

「「うぉおおおおおおお!!」」

 

 

「きゃっ!?」

 

「ママッ!!」

 

 

リーファの軽い悲鳴と、ユイが飛び出した名を叫ぶ。

―――その直後、二人のキリトの間に人影が割って入った。

 

 

 

「なっ……!!」

 

 

飛び出してきた人物を見て、驚きの表情を見せたキリト。

 

 

「え……?」

 

 

予想外な人物が出てきて、子供じみた驚き声を上げる整合騎士のキリト。

 

 

「 間 に 合 っ た 」

 

 

―――そこに入ってきたのは、ステイシアだった。

 

彼女はキリトの剣から整合騎士のキリトを庇うように、両手を広げて庇う体制に入っていた。

それを見た整合騎士キリトは、絶望の顔に染まった。

 

 

(……失うのか?彼女を……)

 

 

(失ってしまうのか?あの時のように、また……)

 

 

(あの時のように、また……?何を……言って……)

 

 

一瞬のうちに思考を巡らす、整合騎士のキリト。

その脳裏に思い浮かぶのは、―――斬られた紅白の騎士服を身にまとった、一人の少女……。

知らないはずの光景、しかし忘れてはならない出来事。

二度と失ってはならないものが、そこにあった。

 

 

――その瞬間、何かがひび割れるような音が聞こえた。

 

 

 

「―――うわあああああっ!!!!」

 

 

整合騎士のキリトは前へと飛び出し、強引に前に出た彼女を抱きかかえる。

同時にもう一人キリトの振り下ろされた剣が彼の身体に直撃した。

嫌な斬撃音と共に、鮮血が噴き出す。

斬り落とされた左腕が宙を舞い、地面へと落ちていく。

 

右目と片手を失った漆黒の鎧の騎士と、抱きかかえられた一人の女神。

その光景を見て、キリトは驚く。

 

「お前……何故」

 

「がはっ、なんでだろうな……俺にも、わからない」

 

キリトの問いに漆黒の騎士は苦笑いを浮かべながら答えた。

先程の一撃を受けて満身創痍の状態になった彼は、次第に神聖術による飛行操作ができなくなったのかふらつき始める。

それでも、抱きしめている少女を離すことはない。

一方、少女の瞳が開いて彼の頬へと手を伸ばす。

 

「よかった、今回は……君を守れたんだね」

 

「無茶を、しすぎだ……」

 

「それはお互い、さまだよね……」

 

「言えている……かもな」

 

彼の言葉と共に、少女の顔に何かが滴り落ちる。

それは、涙だった。彼の瞳から流れ落ちる涙は、少女の頬を濡らす。

先程の憎しみや嫉妬の混じった表情から一転、悲しそうな表情が顔を濡らす。

そんな彼の顔を自分の顔とそっと近づかせ、唇を重ね合う少女。

 

「ふふっ、いつも御返しだよ……君の強引なキスはもうタジタジなんだから」

 

「……はっ、そっちが……悪いんだぞ」

 

「キリト君……大丈夫だよ、キミと一緒ならたとえ何処へだって行くよ」

 

「……だったら……一緒に、落ちてくれるか?」

 

「うん、いいよ」

 

悪戯めいた笑みを浮かべる彼と、柔和な笑みを浮かべて快く承諾の言葉を告げた少女。

その言葉の後、彼らの支えていた神聖術の力が解け、そのまま落ちていく。

互いに抱きしめ合い、二度と離れることもなく……二人は落ちていく。

 

何処までも、何処までも、二人は妖精の空へと落ちていく……。

 

 

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