斬魔の妖精   作:ベジタブル

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日間ランキングの7位にこの作品が載ってました!
UAも3万を突破しており、ありがたい限りです。
ここからBoF編に入っていきますが、今回は戦闘描写ナシ、またしてもトウヤ君途中参加になります。ご容赦ください。


BoF編
19話「祭りの始まり」


▼トウヤ視点

 

今はマグノリア収穫祭一日目の朝だ。

しかし俺は今、マグノリアから少し離れた森の中を急いで歩いていた。

どうしてこうなったか、順を追って説明していこうと思う。

 

始まりは昨日の朝、アルマがフリードに頼まれ事をされた、と俺に報告してきた事だった。

フリードとは、『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』の魔導士の1人で、ラクサスの親衛隊である雷神衆のリーダーをしている男だ。

詳細は分からないが、術式魔法という古代文字を空間に刻む事で、その空間にルールを課すという魔法を使うらしい。事前準備が重要になるようだが、以前エルザと立ち会っているところを見た限りでは、単純な戦闘能力も高いように思えた。もう少しギルドに帰ってくる回数が増えれば、今年のS級魔導士昇格試験の受験者にも選ばれるだろう。

雷神衆の他メンバーも実力は高い。ビックスローという鎧の顔当てを被った男は、自らが操る霊魂を人形に憑依させて戦うセイズ魔法を扱う。これの厄介なところは、霊魂の方が無事ならいくら人形を破壊しても意味がないという部分だろう。紅一点であるエバーグリーンは妖精をイメージさせる魔法をいくつも使用する他、石化眼(ストーンアイズ)という強力な魔眼を持っている。効果は名前の通り、目の合った者を石に変えてしまうという物だ。

しかし、この2人もフリード同様にギルドにあまり寄り付かない。少し寂しいのだが、まぁ人それぞれの仕事の仕方があるから仕方がないのだろう。

そして、そんなあまりギルドにいないはずの男からの頼み事とは何だったのかといえば、とある村で発見した危険な呪物の破壊であった。

もともと雷神衆は今年の収穫祭に参加するつもりだったそうで、クエストを受けながらマグノリアに向かっていたらしい。その中で立ち寄った村の1つにて依頼をこなした後、ふとその村にある古い遺跡に立ち寄ったところ、封印が解けかけた状態の壺を見つけたという。

すぐに破壊を試みたが、下手に攻撃を加えれば封印だけが壊れる可能性もあると考え、俺を呼んだ方が早いと判断してギルドに帰ってきたそうだ。

俺は正直非常にめんどくさいとは思うのだが、直接その話を聞かされたのはアルマだけだったので、事は一刻を争うという言葉に二つ返事で引き受けてしまった。

ファンタジアの準備をネタにゴネようと思ったのだが、本番2日前に迫っている状態では演技の確認以外は全て終わっていたのでそれは無理だった。また、村の場所的に列車で急げばギリギリ日帰りできそうだったために、心的ハードルも下がってしまっていた。

(まぁ、そこで「最悪一泊してもファンタジアには間に合う」と言ったアルマと「ミス・フェアリーテイルコンテストも見たい」と思っていた俺とでひと悶着あったが)

そして、トドメとして「ゼレフに関わっている可能性がある」という言葉がフリードから零れたと聞いてしまった。そこで亡霊に憑りつかれていたジェラールの顔が思い浮かんでしまえば、もう俺の中に放置しておくという選択肢は無くなっていたのである。

マスター達への報告は行っておくというフリードの言葉――に頷いたのはアルマで、俺は事後承諾だったが――に甘える事にして、急いで列車に乗り込んだのだった。

 

乗り込んだのだったが……

いざ目的の村に到着してみて、村長に話を聞いてみても「そんな壺の話は聞いたことがない」としか言われず、念のため入った洞窟遺跡でも魔力の残滓すら感じない壺の破片が見つかっただけだった。

不可解な事はそれだけではなく、その遺跡から出ようとした時に天井が崩落し、瓦礫を除けて外にでた瞬間には闇ギルドに襲われた。

ここまでなら普段のアンラッキーかとも思ったのだが、その闇ギルドの1人と強めの《お話》をしたところ、この村に居る『妖精の尻尾』の魔導士を襲えと依頼した奴がいた事を教えてくれた。

極めつけに、最寄りの駅で列車の不備が見つかって、少なくとも明日までは列車が動かないというではないか。

 

明らかに、俺をマグノリア収穫祭に参加させたくない人間が存在する、というのが俺とアルマの共通見解だった。

仲間を疑いたくはないが、どう考えてもフリード、もしくは雷神衆、ラクサスの思惑であろう。これがただの嫌がらせなら一発殴る程度で済ませられるが、俺にいられたら困るような、魔法を使った大掛かりな何かを引き起こそうというならただではおけない。

一泊して始発で帰るというのも考えたが、宿や列車にも何か仕掛けられている可能性を考えて自力で帰る事にした。宿は兎も角、列車の中では乗り物酔いでロクに戦えもしないからだ。

夜通し歩けば早朝にはマグノリアへ辿り着くかと考えていたが、俺はここで自分の読みの甘さを痛感する事になった。

行く道行く道で何者かの襲撃に遭ったのである。

いくつか、本当に偶然出会っただけの犯罪者もいたのが俺らしい所なのだが。

敵を倒しながら街道を進むか、隠れながら森を行くかで迷い、結局後者を選んだ訳だが、森の中にも襲撃者が待ち伏せしていてうんざりする羽目になった。

 

そんなこんなで心身ともに疲れ果てた状態で迎えた収穫祭初日の朝。

マグノリアまではあと数時間だ。

 

 

 

 

▼ミラジェーン視点

 

『エントリーNo.3、ギルドが誇る看板娘、その美貌に大陸中が酔いしれた!!ミラジェーン・ストラウス!!』

 

司会のマックスにそう呼ばれて、ミス・フェアリーテイルコンテストのステージに出ていく。

この口上、私は大袈裟だと思ったのだが、こういう大会ではこのくらい大きく出るのが普通だと押し切られてしまった。

でも、ステージを見てくれている人は「待ってました」とか、「本で見るより可愛い」などと言ってくれている。恥ずかしがっているより、笑顔で手を振らないとね。

私の前の2人、カナとジュビアは自分の魔法を使った派手なアピールをしていた。カナはカードを舞わせている間に水着に早着替え。ジュビアも1度水になってから水着姿へと変身し、しかも背景に波まで出して演出していた。

だから、私も自分の得意魔法を使って盛り上げようと思うの。

 

「顔だけアルマ!」

 

「「「「「えーーーーーーー!!?」」」」」

 

ふふ、アルマは可愛いものね!

お客さんも皆喜んでいるわ。

お次は少し外してみようかしら。

 

「顔だけガジルくん!!」

 

「「「「「ぶーーーーーーー!!?」」」」」」

 

顔以外は私のままだから、ガジルくん女装しているみたいに見えて、相当おかしく見えるはず。

現に会場も大ウケだ。

水着は用意できなかったけど、インパクトでは前の2人に負けていないし、会場の盛り上がりでは私が勝っているだろう。

次のエルザには悪いけど、今回の勝負は私が貰ったわね。

そう思いながら、演技が終わった出場者の控室に向かうため、ステージに張った3枚の緞帳の隙間からステージ裏に引っ込んだ。

 

勝利は確信しつつも、私の心は完全な晴れ模様とは言えなかった。

当日は見に来てねと約束したはずのトウヤが会場にいなかったからだ。

正確には昨日から姿を見ていない。

朝早くからフリードとアルマが話していたのを見たが、それに関しての事だろうか。

フリードがマグノリアに居るなんて珍しいとは思ったが、何やら真剣に話しており、邪魔してはまずいと話しかけられなかった。それに、帰ってきているなら後でギルドにも来るだろうし、その時に話せばいいかとも考えていたのだ。

しかし、アルマやトウヤは勿論、フリードまでもがギルドに来る事はなく、今日の朝がやってきてしまった。

私との約束を守って、コンテストまでには戻ってくるかとも思っていたのだが……

こうなってくると、ステージを見てもらえなくて残念だったという気持ちよりも、何かトラブルに巻き込まれたのではないかという心配が勝ってしまう。

しかし、その手掛かりを得ようにも、雷神衆の方もどこにも見当たらないというもどかしい現状に頭を抱えるしかない。

本当に大丈夫かしら、トウヤ……なんだか嫌な予感がするわ。

 

「あら……浮かない顔ね、看板娘さん?」

 

そんな私に声を掛けてきたのは、話を聞きたいと思っていた人物の1人である、雷神衆エバーグリーンだった。

 

「エバーグリーン!?やっぱり帰ってきてたのね!」

 

「ええ、つい昨日程にね」

 

ならばフリードとも一緒に行動していたはず。

久しぶりの挨拶もほどほどに、嫌な予感に従った私は、聞きたい事を聞いてしまう事にした。

 

「じゃあ、フリードからトウヤ達の事を聞いてない?昨日から姿が見えないんだけど……」

 

そう聞かれたエバーグリーンは、口許を扇で隠してふふふと笑い始める。

奇妙な反応だと怪訝な目を向けてしまうが、見るべきなのはエバーグリーンではなく、その後ろの光景であったと気付いたのは次のセリフを聞いた後であった。

 

「知ってるわ……トウヤはこの()()が終わるまで帰ってこないの。今頃は彼に恨みを持つ奴らに襲われているところかしら」

 

それはどういう事だと問う前に、ジュビアとカナが石になって立っているのが目に入ってしまった。

 

――石化眼(ストーンアイズ)!?

 

マズい、そう思って手で目を覆おうとした時にはもう遅く、眼鏡を外したエバと目が合う。

徐々に固まり、動かなくなっていく四肢。

こうなっては最早遅いと自覚しつつも、辛うじて動く口を開いて問うた。

 

「どうして…………!?」

 

抵抗の術すら分からないまま全身の力が抜け、意識までもが固まってしまう。

最後に聞いたのは、愉し気なエバの

 

「祭りが始まるのよ……あなた達はその舞台装置になるの」

 

という呟きであった。

 

 

 

 

▼三人称視点

 

「よォ……妖精の尻尾(フェアリーテイル)のヤロウども……」

 

騒然としたギルドのステージ上にラクサスとフリード、ビッグスローが降り立つ。

その後ろには、雷神衆の最後の1人、エバーグリーンと石になった『妖精の尻尾』の女性魔導士7人が並んでいた。

その内訳はカナ、ジュビア、ミラジェーン、エルザ、レビィ、ビスカ、そしてルーシィ。先ほどまで行われていたミス・フェアリーテイルコンテストの出場者達だ。

7人の内、最初の6人は控室に戻った所を狙われた訳だが、最後のルーシィだけは異なっていた。エントリーされていないはずのNo.8として会場に乱入したエバーグリーンの()()()()として、観客の前で石にされてしまったのである。

その様子を見てしまえば会場が阿鼻叫喚に包まれるのは当然の事。既に観覧に来ていた一般人は散り散りになって逃げだした後で、残っているのは『妖精の尻尾』のメンバーだけになってしまった。

もちろん、そこまでもが首謀者達の思惑通りであった。なぜなら、先の言葉から分かる通り、彼らにとって用があるのは、他でもないギルドの面子だけだったからだ。

 

「祭りをしようぜ、ジジイ」

 

心的にも、物理的にも一段上からの目線で自らの祖父――マカロフに語りかけるラクサス。

しかし、そこには久しぶりに会う肉親同士の温かい雰囲気のようなモノは微塵もありはしなかった。

 

「今すぐ(みな)を元に戻せ!これ以上は冗談では済まんぞ!!」

 

その至極当然の要求には、ラクサスもまた当然の如く否定の声を上げる――事すらなく、ルーシィの石像の傍に雷を落とす事で応えた。

落雷を操った男は、悪びれる様子もなく固まったルーシィの肩に手を回して話を続けていく。

 

「この女達は人質だ。ルールを破れば1人ずつ砕いていくぞ」

 

『砕いていく』

同じ紋章を刻む仲間に対して、石化させるだけでなく砕くと言う。

早い話が殺害予告だ。

この言葉は元々ステージ上を睨んでいた男達の視線をさらに険しくさせた。

その殺気を浴びながらも、泰然自若として一歩前に進み出たフリードが細かいルール説明を行っていく。

 

「制限時間は3時間。バトルフィールドはこの街(マグノリア)全域。そのどこかに居るオレ達を見つけて4人とも倒せばそちらの勝ち。全員戦闘不能、もしくは3時間が経てばこちらの勝ち、つまり石像全てが砂となる」

 

それを聞くギルドの面々は、あまりの事態に「本気か」と尋ねる事すらできずに黙りこんでしまう。

ただし、その中にはただ動揺するだけではなく、とある希望を抱きそれを気付かれまいと黙っている者も居た。

その希望とは、すなわちトウヤだ。石化など彼にかかればすぐに解除する事ができる。

しかし、ギルドの中でも有数の実力者達は、それは難しいだろうと考えていた。

ラクサスは常々他者を見下した態度を取っており、実際多くの者を眼中にもないと考えている。しかし、そのラクサスをして無視できぬ者が数人いた。それがギルダーツ、ミストガン、そしてトウヤだ。たった3人ではあるが、だからこそラクサスがトウヤを警戒していない訳がない。

そんな考えを裏付けるように、今までニヤニヤとするだけで口を閉ざしたままだったビックスローが話し始めた。

 

「おっとォ!?トウヤなら人質を解放できるとか考えてるおバカさんがいるなぁ……?」

 

妖精の紋章の刻まれた舌を露わにしながら語りかけてくるビックスローに、バカと言われた連中がピクリと視線を向けた。

 

「ざんねーん!アイツなら今頃この街から遠く離れたところで、アイツに恨みを持つ連中に襲われてるトコだよ!ぎゃはははっ!」

 

人質を用意する仕事があるエバーグリーン。

とある仕事のため街中を駆け回ったフリード。

そしてビックスローは、この()()のための準備として、トウヤを足止めするための工作を行っていたのだ。

自らの魔眼、造形眼(フィギュアアイズ)にて傀儡とした一般人にトウヤの情報を巡らせ、時には闇ギルドに依頼までさせてトウヤを襲わせたのである。

この言葉にざわざわとしだした『妖精の尻尾』の面々。

しかし、再び口を開こうと動いたラクサスを前にして再び静けさを取り戻す。

その沈黙には目の前の男への畏怖が滲んでいた。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強は誰か、ここらでハッキリさせてやるよ」

 

すっと右手を顔の前までもってきたラクサスが、そこからカッと雷光を迸らせ、雷神衆と共に姿を消す。

後に残るは落雷の残響が如き宣言のみであった。

 

「バトル・オブ・フェアリーテイル……開幕だ!!」

 

 

 

 

△ △ △ △ △

 

バトル・オブ・フェアリーテイル開始から40分程度が経った。

 

「よせ!やめんかガキども!!」

 

ガランとしたギルドの中で、マカロフが悔しそうに手を握りしめ、空中に浮かんだ文字を睨みつけている。

今、マグノリアの街のあらゆる所にはフリードの術式が張り巡らされていた。

術式で区切られた空間は、そこに入った人間に何らかのルールを課す。それは例えば『この中で一番強い魔導士のみ術式の外へ出る事を許可する』だったり、『この中に居る者は、戦闘終了まで魔法の仕様を禁ずる』だったりと多岐に渡る。

このうち、『妖精の尻尾』メンバーを苦しませたのは、言うまでもなく前者の類いのルールであった。これにより、妖精は共食いを始めざるを得なくされてしまった。

雷神衆と出会う事無く、近くにいる仲間同士で潰しあう。それで生き残ったとしても、疲弊した状態ではギルドトップクラスの実力を誇る雷神衆の相手にはならない。

初めは百人近くいた魔導士達は次々と倒れていき、ものの数十分で半数以下にまで減ってしまっていた。

マカロフが憤っているのは、その様子が文字でだけとはいえ、空中に浮かぶフリードの術式で実況されているからであった。

今も『エバーグリーン vs. エルフマン 勝者エバーグリーン』と表示されている。

今回は、この件を引き起こした連中の一員であるエバーグリーンを相手にした戦闘だったが、今までに表示されたアナウンスの中には、普段は仲のいい者たちが争った事を伝えるモノまである始末だ。

当然、コレを見たマスター・マカロフの心中は穏やかではなかった。

普段から、ギルドの人間を「ガキども」と呼んで慈しみ、ひとたびその子らが不当に傷つけられれば、すぐに怒れる巨神となる男にとっては筆舌に尽くしがたい状況であったのだ。

傷つき倒れていく子ども達。しかし、傷つけたのもまた愛すべき子ども達。

いくら石になった女性陣を助け出すためとはいえ、仲間同士で傷つけ合うなど看過しがたかった。

そして何より、その状況を作り出したのとて同じギルドの子、それも実孫であるという事実がマカロフを追いつめていた。

それでいて、ギルドの中に留まるしかない無力を呪いながら、己を拒む『80歳を超える者と石像の出入りを禁止する』という文言の刻まれた透明な壁を前に立ち尽くすしかなかったのである。

そして、その隣にはマカロフと同様に悔しそうな表情を浮かべる者がもう一人。

 

「くう~~~~!!」

 

しかし、その理由は真逆と言って良かった。

 

「オレもまざりてぇっ!!」

 

この戦いをただの「ケンカ祭り」としか捉えておらず、ギルド最強を巡って自分も戦いたいと、ナツが悔しがっているのであった。

ではなぜ参加していないのかといえば、隣で不服そうな顔をしているガジルと同様、なぜか80歳以上出入り禁止の術式に引っ掛かって外に出る事が出来ないでいたからである。

つまり、今ギルドに残っているのは、マカロフ、ナツ、ガジル、そしてナツに付き添って動かずにいるハッピーの4人だけという事になる。

つい先ほどまで、ラクサスを怖がって動けなかったリーダスもいたが、石化解除の薬を貰ってくるため、ポーリュシカという薬物に詳しい人物のいる森に向かってしまっていた。

マカロフは、未だに「流石のラクサスでも仲間を殺したりはしない」と信じきっているナツに、感心半分、呆れ半分という視線を向けながら、リーダスの帰りを待っていた。

 

しかし、その微かな希望は打ち砕かれる事となる。

 

『フリード vs. リーダス 勝者フリード』

 

これで残りは40人。

 

 

そこからも人数の減少は止まらない。

グレイがビックスローに倒された時には、マカロフがラクサスに降参を申し出る事すらした。

しかし、思念体として現れたラクサスは「降参するならマスターの座を寄越せ」と要求。

マカロフとて子ども達の命と比べれば、ギルドマスターの座など簡単に投げ捨てられるものだと考えていた。しかし、今のラクサスに渡せるかと問われれば、絶対に否だったのである。

結局、この祭りが終わりを迎える事はなく、たった今、アルザックがフリードに倒され残り2人となった。

 

そう、2人だ。

 

もともと頭数にいれられていないマスターであるマカロフ、猫であるハッピーを除いての2人、つまりはここから出る事のできないナツとガジルだけとなったのである。

 

「こいつ等だけじゃとーーー!!?」

 

これはもう万事休すかと項垂れたマカロフだったが、ナツやハッピーがエルザの石像を熱して溶かせばなんとかなるのではないか、と言い出したのを聞いては必死に止めるしかない。

あーだこーだと喚く面々。

混沌としつつも、やはり「ここからどうすればいいのか」という雰囲気が漂ってしまう。

少しの間だけ沈黙が降り、その場の誰もの動きが止まった。

 

しかしその瞬間、残り人数を示していた文字が再び変化し始める。

静止した空間では、文字の変化というごく小さな動きであろうともやけに目立ち、4人の視線はそこにくぎ付けとなった。

 

『残り3人』

 

増えた1人は一体誰なのか。

そう誰かが疑問を口に出そうとするより先に、凛という音が響き透明な壁が裂けた。

そして飛び込んでくる翼の生えた1つの影。

銀の光を纏った灰色の髪の男と、その背中に張り付いたピンク色の猫がギルドの入り口に降り立った。

 

 

「遅くなった、マスター(じいちゃん)……」

 




この章でカナに戦闘をさせる予定なのですが、技の描写などが少ないので割と捏造になりそうです……
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