23話「連合軍結成」
▼トウヤ視点
ラクサスがギルドから抜けた後、ナツが「どうしてやめさせた」と
だが、一週間もすればそれらも落ち着き、雷神衆の3人も他の連中と大分打ち解けてきたように思う。元々軽い性格のビックスローや、ナルシスト気味のエバーグリーンは兎も角、堅物のフリードまでもが誰かと談笑しているのを見ると、あの戦いも無意味なものではなかったのではないか、と少し嬉しくなる。あとはさっさとラクサスが戻ってきてくれれば何もいう事はないのだが、頑固者の祖父が再加入を認めるまでどれだけかかる事やら、といった感じだ。
ちなみに、ミス・フェアリーテイルコンテストはエルザが優勝したらしい。エバーグリーンの乱入によって滅茶苦茶になってしまったコンテストではあったが、祭り2日目の間にマックスたちが何とか票を集めてきたそうだ。
あの時は石化の解除やラクサスの事が気がかりで全然意識していなかったが、確かにゴスロリ姿のエルザは破壊力抜群だったもんなぁ……
その後に続く2位がルーシィ、3位がジュビアだった。2人とも新人メンバーながらの大健闘で驚かされたものだ。しかし、優勝賞金は1位にしか出ないらしく、それを家賃のアテにしていたルーシィはいつも通り金が無いと嘆いていた。……あの子にハートフィリア財閥のお嬢様だった時代があるというのがたまに信じられなくなる。
しかし、そうなると優勝候補だったミラに何があったのだろうと気になってしまい、周囲に確認してみれば、いつもの天然が悪い方向で働いて自爆してしまったそうだ。なにやら顔だけガジルに変身したとか……ミラよ、それじゃミスコンじゃなくて隠し芸大会だ。
この事について「そりゃないだろ」とミラ本人に突っ込みに行ったのだが、これが藪をつつく結果となった。
「見に来てって言ったのに来なかった人には言われたくないわ」と頬を膨ませたミラにカウンターを食らわされてしまったのだ。ほとほと参った俺は「いう事を一つ聞く」と言ったのだが、これまた悪手であったと言わざるを得ない。会話を遠くで聞いていたカナ、エルザ、ルーシィが「じゃあ私達も」と便乗してきたのである。
約束してたのはミラだけだろと言いたかったのだが、何やらまくし立てる女性陣の前では俺の声帯は無力。
「え。え……」としか声が出せず、味方かと思っていたミラも「良いわね!みんなで共有しましょう?」となぜかノリノリで俺に逃げ場はなかった。
結局、カナとは2人で呑む約束、エルザとは男女ペア限定のスイーツ食べ放題に付き合う約束、ルーシィとはクエストに一緒に行く約束、ミラとはストラウス家へ御飯を食べに行く約束をさせられた。
色々と付き合った感想としては、前から順にそれぞれ「覚えてない」「場違い過ぎて緊張した」「ルーシィの成長が凄く感じられた」「飯は美味かったがエルフマンが暑苦しかった」である。
他に最近起こった特筆すべき事と言えば、なんといってもミストガンの過去話についてだろうが、これはあまりにも衝撃的過ぎて簡単に言い表す事はできない。
少なくともエルザにとって害がない事は分かったのだが、わざわざ言いふらす事でもないだろうから、ミストガンの顔を知ってしまったナツには「問題ないから他言するな」とだけ言っておいた。
そんなこんなで穏やかな日々を過ごしていた俺だったのだが、内が落ち着けば今度は外が騒がしくなるものらしい。
近頃、バラム同盟の一角である『
バラム同盟とは、『六魔将軍』、『
殆どの闇ギルドがこの3つのギルドいずれかの傘下となって上納金を渡しているらしい。
それだけ強大で影響力のあるギルド群であるという事なのだろうが、件の『六魔将軍』はたった六人で構成されているというのだから恐ろしい話だ。
そんな風に緊張感が高まっている中、いくつかの闇ギルドが集結しつつあるという情報がウチに回ってきた。
回ってきたというか、要するにそこを一網打尽にしろという俺宛の依頼であったのだが。
六魔の動きに関連したものか、集結しているのは六魔の傘下ギルドなのか、などの調査も兼ねた掃討作戦(俺とアルマの2人のみ)だ。
情報を聞いてから1週間、ひたすらに闇ギルドを潰して回ったのだが、『
倒した奴から話を聞いてみると、行先こそ口を割らなかったが、六魔に召集されたというのはゲロってくれた。
この話をじいちゃんへ通信用
この情報を元にウチ、『
天馬にはロキみたいな
しかし、俺が1番気になっているギルドはその2つではなく、最後の『化猫の宿』だ。このギルドにはとある伝言を頼まれている少女が在籍しているのだ。
ちなみに、ウチからはエルザ、ナツ、グレイ、ルーシィの4人が選出されている。俺もこのまま参加しろとの事だが、先に来ているという事は報告済みだから別動隊として動いていていいと言われてしまった。
ので、今はアルマと2人ぼっちで斥候をしているところである。
しかし、この辺りには特にそれらしい痕跡は発見できない。
もう少し西側に行ってみようか、と考えていた時ちらりと小さな女の子の影が視界に入ってきた。
青みがかった長髪が清純な印象を与える可愛らしい女の子で、未だ幼さを感じさせる四肢を震わせながら走っている。
きっと親とはぐれたか、森に迷い込むかしてしまったのだろう。
この森は今非常に危険だ。
成果のなさそうな斥候はやめにして、あの子を街まで送ってあげた方がよいかもしれない。
そう思って、木々の隙間から道の方に出て、後ろから少女に声を掛けた。
「なぁ……」
その声に盛大に反応した少女がビックゥと体を震わせ、おどおどとしながら口許に手をやってキョロキョロと振り向いたのだが――
「ひぃえええええええ!!?」
俺と目が合った瞬間に顔を真っ青にし、心底怯え切った様子で両手を挙げて全速力で逃げて行ってしまった……
「えぇ……」
俺は少女の走って行った方向に力なく手を伸ばして、立ち尽くすのみだった。
子どもに泣かれる事は多々あれど、あそこまで怖がられたのは流石に初めてで凄く悲しいのだが……
「どうしたんですか、トウヤ……あぁ、あの子を泣かせてしまったのですね……まぁ、あちらにはエルザ達が集まっている天馬のマスターの別荘がありますから、何とかなるでしょう」
うん……そうだね……
ちなみになんだけどサ。
あの子も泣いてたと思うけど、俺も今泣きそうだよ?
はぁ……
「……………………西の方、見に行くか」
▼ルーシィ視点
「残るは
「連中というか、1人だけと聞いてまぁす」
マスターに――なぜか――『六魔将軍』討伐連合軍に指名されたあたしは、エルザ達と一緒に馬車に乗って、天馬のマスター・ボブの別荘へとやってきていた。
連合軍4ギルドの内、既に3つのギルドが集合しており、今は残りの1つのギルドを待っているところだ。
『妖精の尻尾』も――あたしを除いて――相当クセの強い人間の集まりだとは思っていたのだが、他の連中も変わった人ばかりだった。
『青い天馬』のメンバーは、金髪の爽やかイケメン・ヒビキ、幼い見た目のイヴ、褐色ツンデレのレンで、3人ともなぜかホスト然とした格好、言動をしている。先ほどから、これから一緒に戦う仲間同士というより、客と店の人といった方がしっくりくるような会話しかしていない気がする。他にも、一夜というよく分からないキモい人も来ていた。この人もエルザ曰く高い実力を持っているらしいのだが……
『蛇姫の鱗』はウチのマスターと同じ、
こうしてみると、ホントに何であたしがここにいるのだろうという気持ちになってしまう。
残る『化猫の宿』の人も、こんな作戦に当たるというのにたった1人で来ているヤバい人みたいだし……
心細いから早くトウヤと合流したいなぁ、などと思っていると、急にバタンと扉が開いてあどけない少女が部屋へと入ってきた。
「ごごごごごめんなさい遅れてしまいました!……あの、その、さっき怖い人とそこで会って!その……多分、今回戦う人なんだと思って、それで、でも私怖くて……!」
作戦に不似合いの少女の登場と、唐突な六魔の目撃情報に場が騒然となる。
私自身も混乱しているところだ。
遅れたと言っている事から、この少女が『化猫の宿』のメンバーなのだろうが、1人で戦うにはあまりにも弱々しいというか、幼い感じがする。
それに、先ほど見たという事はこの近くまで六魔が来ているという事で、それってかなり危険なんじゃ……?
「少しは落ち着きなさい、ウェンディ。まずは自己紹介よ」
混沌とした場に、更にもう1人……というか、1匹現れて、ぴしゃりと空気を引き締めてくれた。
「シャルル!?ついてきてたの!?」
シャルルと呼ばれた白いネコは、大きなリボンのついたワンピースを着て、二足歩行をし、人間の言葉を話していた。
ハッピーやアルマの他にもまだいたんだぁ……
ちなみに、そのハッピーはシャルルに一目惚れしてしまったようで、目をハートにしていた。白ネコちゃんは全く相手にしていないが……
「アナタ1人じゃ不安で仕方なかったもの……私はシャルル、この子はウェンディよ」
そのセリフを聞いて、おたおたとしていたのをようやく少しだけ落ち着かせ、あたし達を見た少女がゆっくりと話始めた。
「あ……えと、その、
よろしく、とお互い言い合った後、少し落ち着いてからジュラが代表して質問する。
「それで、先ほど見た人物というのは?」
まだ少しおどおどとしつつも、はっきりと質問に答えてくれるウェンディ。
「さっき、ここまでくるのに通った森の中で、凄く目つきが悪い人に声をかけられて……」
闇ギルドが活動してるっていう森の中で、いきなりそんな人に声を掛けられたらそりゃあ怖いわよね……
1人で来るほどの魔導士っていうからビビッてたけど、普通の子どもじゃない。
きっと、サポートの魔法が物凄い力なのよね。
「目つき以外に外見的特徴はないのかね?」
その一夜の質問にはシャルルの方が答える。
一緒に入ってきた訳ではなかったが、ついてくる最中で一緒に見ていたという事だろう。
しかし、彼女が語った情報は、『
「灰色の髪で、東洋風の羽織を着ていて、身長は平均的、あと私やそこのオスネコみたいなネコを連れていたわ……あの目は間違いなく何人もヤッてきてるわね」
灰色の髪。
東洋風の羽織。
ハッピーみたいなネコ。
「ねぇ、グレイ……」
「あぁ……そうだろうな」
すーっと遠くに目をやりながら、グレイと言葉を交わす。
エルザは片手で目頭を押さえ、ナツまで「何してんだアイツ……」と苦言を呈していた。
そのままの体勢でもう片方の手を軽く上げたエルザが、『妖精の尻尾』を代表して申し訳なさそうに言った。
「すまない……それは恐らくウチの者だ……」
△ △ △ △ △
「すみません!すみません!本当にすみませんでした!」
「そんなに謝る必要ないわ。大体紛らわしい見た目をしている方が悪いのよ」
勘違いで逃げ出したのだと分かり、ヘッドバンキングかと思う程に頭を激しく下げるウェンディと、それでも傲岸不遜な態度を貫くシャルル。
2人を足して割るくらいが丁度いい反応だと思うのだけど、これはこれでバランスが取れていていいコンビなのかもしれない。少なくとも、ナツとハッピーのようなツッコミのいない暴走ペアのようにはならないだろう。
というか、むしろ謝るのはこちらの方だ。
まったく、トウヤったら、こんな小さい子を怯えさせるなんて……
「ウチのトウヤがお騒がせして、本当にすまなかった……少し緊張感に欠ける状態にはなってしまったが、改めて本題に入るとしないか?」
エルザが軽く頭を下げてから、一夜さんを促す。
1度一夜さんのトイレタイムを挟んだものの、始まった作戦説明の概要はこんな感じだった。
まず、『六魔将軍』の目的は、ここから北に向かった場所にあるワース樹海に眠る古代の破壊魔法ニルヴァーナ。
奴らの拠点を見つけ、そこに6人を集めるのが、あたし達の目標。敵の集まっている拠点に向け、天馬の誇る魔導爆撃艇クリスティーナで攻撃を行い、拠点諸共殲滅するそうだ。
何とも物騒だが、そんな作戦を選ばせるような相手だという事の方が恐ろしいのではないだろうか。
できればあたしはエンカウントせずに終わりたい……
そして、肝心の敵の情報は写真付きで伝えられた。
まず、トウヤ並みに目つきの悪い男が、毒蛇使いのコブラ。
モヒカンに尖った鼻が特徴的なレーサーという男。名前……というかコードネームだと思うけど、そこから推察する限り、スピードを高めるような魔法を使うと思われる。
神父のような恰好で、角ばった顔の男が
次が『六魔将軍』唯一の女性メンバー、エンジェルだ。心を覗けるという話なのだが、本当だったとしたら厄介すぎる……
最も情報が少ないのはミッドナイトと呼ばれる黒髪に白いメッシュの入った男。
そして最後に六魔の司令塔、ブレイン。白髪をオールバックになでつけた褐色の男で、顔に左右対称のラインペイントが入っている。
「6人まとめてオレが相手してやるァー!!」
敵の情報を聞いている内に闘志を抑えられなくなったらしいナツが周囲の静止も聞かずに飛び出して行ってしまう。
相手の説明は聞いていても、作戦は聞いてなかったのね……
あ、いや、聞いてて無視したのかもしれないけど。
「仕方ない、行くぞ」
と、ナツを追いかけていくエルザ。
その後、残った面々も「妖精の尻尾」には負けていられないとばかりに駆け出していく。
1人で別荘に残っている訳にもいかないので、あたしも後を追う。
追うが……
皆、血気盛んすぎるよぉー!!
▼三人称視点
意気揚々と駆け出した面々だったが、この後すぐに出鼻をくじかれる事となった。
そろそろ樹海に入ろうかという段になって、目の前に『六魔将軍』が勢揃いで現れたのである。
そして、連合軍の頼みの綱であったクリスティーナが落とされる事が開戦の狼煙となったこの一戦は、連合軍の完敗で終わってしまう。
もしかしたら、クリスティーナ陥落がきっかけと考えている時点で連合軍の敗北は決まっていたのかもしれない。
『六魔将軍』は個々の力も然ることながら、その狡猾さにおいても一流であったのだ。
まず、この樹海に来た段階で一夜とジュラという主力に負傷を負わせていたのである。
まず、別荘に潜入していたエンジェルが1人トイレに入った一夜を拘束、自身の魔法による一夜のコピー体を作った。それにより、一夜の思考を読んだエンジェルは連合軍の作戦の全てをブレインにリーク、クリスティーナの撃墜に至る。また、そのコピー体を用いてジュラを騙し討ちにし、重症を負わせる事にも成功していた。
そうしてまんまと罠にかかった連合軍を、今度は各々の武で翻弄していく『六魔将軍』。
レーサーのスピードに全く反応できず、ホットアイの地面を操る魔法に足を取られ、乱戦に混乱をもたらすエンジェルのコピー体によって各個撃破されていく。眠ったままのミッドナイトには、放った魔法が歪んで攻撃を当てることすらできず、コブラの操る毒蛇はエルザの右腕に嚙みついて遅効性の致死毒を注入してしまった。
ブレインに至っては一歩も動く事はなかったにも拘らず、連合軍で動ける人間はあっという間に1人もいなくなっていた。
戦闘が始まった途端、近場の岩に身を隠したウェンディだけが唯一の例外だが、怯えきって満足に動けもしない事を考えれば、他の連中と大した違いはないだろう。
それまで静観を決め込んでいたブレインが一同にトドメを刺そうと、骸骨の意匠が不気味な杖を振り上げた。
そこからは大気が震える程に膨大で、見た人の体が震えるほどに凶悪な魔力が渦巻いている。
しかし、結局その魔法が放たれる事はなかった。
数人が死を覚悟したその時、ブレインが岩影のウェンディを見つけ、魔力を霧散させたのだ。
「天空の巫女……!?」
良いものを拾ったとばかりに笑みを浮かべたブレインが、伸縮自在で物体を掴む事のできる煙の魔法を用いて、ウェンディ――と、咄嗟にその場にいた者を掴もうとしたウェンディによって巻き添えとなったハッピー――を攫ってしまった。
その後、今度こそとトドメの魔法を放ち、超スピードで拠点へ戻っていく『六魔将軍』。
しかし、この数秒がこの場に居た全員の命を救った。
負傷を抱えつつも何とか駆けつけたジュラが張った岩の壁が皆を守ったのだ。
こうして惨敗した連合軍。
全員が既に思いダメージを負い、エルザなどは放っておけば死に至ってしまう。
しかし、一度の敗北で心が折れてしまうような柔な人間ならば、この作戦に選出されていない。
体は弱っても闘志の衰えたものはおらず、むしろ雪辱を果たしてやると、その瞳に煌々と炎を灯していた。
シャルルの言葉により、ウェンディが治癒魔法を使う事の出来る天空の
一方、連れ去られたウェンディはといえば、ワース樹海西の廃村、『六魔将軍』のアジトにて意外な人物と対面していた。
「ジェラール…………!?」
【悲報】ウチの主人公、闇ギルドに間違えられる