斬魔の妖精   作:ベジタブル

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24話「恩人」

▼ウェンディ視点

 

今日の私はいつにもましてダメダメだ……

朝から仲間の方を――しかも、よりにもよって『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』のトウヤさんを闇ギルドの人と間違えるなんて失礼すぎる。

そもそもこの戦いに参加する事を決めたのも、トウヤさんとナツさん、私と同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であるお2人に会ってみたかったからなのに。

これで嫌われてしまって、グランディーネの事を聞けなかったらどうしよう……

 

と、少し前まで悩んでいたのに、数十分経っただけでもっと大きな悩みが立ち続けに私の前へと現れたのだ。

連合軍の皆さんが樹海の入り口で『六魔将軍(オラシオンセイス)』の人たちに襲われていた時、怖くて動けなかっただけじゃなく、なぜかそのまま『六魔将軍』のアジトまで連れ去られてしまった。

最初は意味が分からなかったけど、会話を聞く限り、どうやら彼らは私の治癒の力を欲していたらしい。

 

凄く怖いけど、それでも悪い人達に手を貸したりなんかしない!

正面から戦うのは怖くても、それくらいの抵抗はしなくちゃ。

 

そう思っていたのだけれど……

 

彼らが私に治させたい人物が誰か、というのが今日最大の問題だった。

 

 

 

「ジェラール…………!?」

 

 

 

私にとっての恩人であり、世間にとっての大罪人、ジェラールが棺のような箱に磔にされていたのだ。

7年前、私が育ての親だった天竜グランディーネが姿を消して、路頭に迷っていた時の事だ。私は同じく道に迷っていたらしいジェラールと出会い、一カ月ほど旅を共にした。彼と出会っていなければ、幼い私は飢えて死ぬか、魔物に食べられてしまっていただろう。

一緒にいると危険だからと『化猫の宿(ケットシェルター)』に私を預けてからはずっと会えていなかったけど、私にとっては大恩人であり、お兄ちゃんのような人である事は変わらない。

だが、私と別れてからのジェラールが行ってきた事は、私の知る彼からは想像もつかないような悪行ばかりだったらしい。

 

曰く、多くの人を奴隷として働かせていた。

曰く、評議院に潜入し、不正にエーテリオンを投下、評議院の権威を失墜させた。

曰く、大昔の凶悪な黒魔導士、ゼレフを復活させようとした。

曰く、曰く、曰く……

 

いまやジェラールは、大陸全土を震撼せしめた希代の大犯罪者である。

私は目の前のこの人を治癒してはいけないのだろう。

危険な大罪人が眠ったままでいるのなら、起こしてしまうような事はすべきではないし、『六魔将軍』の人が起こそうとしているのだから、何か狙いがあるに違いないのだ。

 

しかし、私の脳裡には、あの優しく撫でてくれたジェラールの手の感触が蘇る。

彼が噂のような事をしていたなんて信じられない。

私がこれまで生きてこられたのは、間違いなくこの人のおかげだ。

短い間だったけど、兄妹のような関係だと思っていた。

彼が今、長い眠りについているというのなら、助けてあげたい……

 

「5分やろう……その間にどうするか決断しろ」

 

「ダメだよ、ウェンディ!!」

 

私をここまで連れてきたブレインという人が私を促し、実際にジェラールと対峙したというハッピーが私を止める。

 

――私はどうすればいいの……?

 

 

 

 

▼トウヤ視点

 

「……アルマ」

 

謎の少女に心を抉られてから暫しの時間が経つ。

俺とアルマは当初の予定通り樹海の西側を探索していたのだが、その最中に非常に古い建物の跡が残る廃村を見つける事ができた。

廃村自体には怪しい部分は見当たらないのだが、その奥にある洞窟からは数人の匂いや物音が感じられる。

無関係の人間がここにいるとは思えないし、ここがアジトで間違いないだろう。

 

本来なら深入りはせず、討伐隊と合流しにいくのが得策なのだが、そういう訳にもいかないようだ。

 

今、洞窟の中から微かに感じる匂いは5つ。

2つは全く知らない、どこか嫌な感じのする匂い。おそらくは、これが『六魔将軍』の誰かなのだろう。

3つ目、4つ目はなぜかハッピーと先ほどの少女。どうしてここにいるのか、なぜこの組合せなのかは全くもって分からない。しかし、巻き込まれたか、人質にされたか、何か他の目的があるのか……いずれにせよ危険な状態である事は間違いない。

こうなってしまえば、1度救出作戦を敢行する必要がある以上、当初のクリスティーナによる爆撃という方法は使いにくくなってしまう。まさか、2人を巻き込んで攻撃をする訳にもいかないし、救出してしまえば相手はアジトによりつかなくなる。現時点で第一プランは失敗したと考えるべきだろう。

となれば、ここですべきなのは信号弾を撃って仲間に場所を知らせて、自分は2人の救出に走る事だろう。

アルマとハッピーの(エーラ)と俺の魔法があれば、『六魔将軍』2人が相手といえど、逃げる事くらいはできるはずだ。

 

しかし、その作戦を取る事も出来ない。

最大の問題は5つ目の匂いだ。

本当にどうしてここにいるのか分からないが、()()()()()()()()()()()()()()()の匂いがする。

作戦に私情を挟む事はしたくないが、ジェラールとエルザが接触する事はできる限り避けたい。

だから、信号弾を撃つ訳にはいかない。

そうなってくると……

 

「ナツかグレイを探せ…………ジェラールがいる」

 

こそこそとアルマに話しかける。

ジェラールの名前に息を呑んだのが分かったが、その事についてはそれ以上追及しようとはせず、「分かりました」とだけ小さく呟いた。

 

「トウヤ、無茶はしないように」

 

エーテリオンを食べてから魔力の質・量ともに上昇しているものの、ここで3人を仕留められるはずもない。

しかし、ここから離れる訳にもいかないだろう。

それを無茶というのなら、その言いつけは守れそうにない。

……まぁ「約束できない」と正面切って言える程の度胸もないが。

 

「……善処します」

 

これ以上問答する訳にもいかないと感じたのか、深く溜息をついてから飛び立ってしまった。

その背中をいつまでも眺めていたところで仕方がないので、さっさと洞窟の中に入る事にする。

中は隠れるところが無いほど狭く、一歩入った時点で中の全てが一望できるほどだった。

大きな棺の傍らにたたずむ白髪褐色の男とモヒカン野郎。その奥で震えている少女。ボロボロの服――というよりはその切れ端を身に着けたジェラール。よく見れば、その布地には楽園の塔で見たものの面影がある。

こちらを見ても、どことなく色が無いというか、感情のこもっていない視線をコチラにやるだけで、何か様子がおかしい気がするし、一体何が起きているのだろうか。

交錯する4人の視線。

白髪の男が口を開こうとするも、それより先に少女が涙をこぼしながら声を上げた。

 

「ごめん…なさい、トウヤさん……この人は私の……恩人なの……」

 

どうしてこの子が俺の名前を?

それより、ジェラールが恩人だと?

 

そう思って少女を改めて眺める。

 

あぁ、なるほど……

どうして、俺はあの時、森の中で彼女を必死に追わなかったのだろうか。

 

彼女の右肩には猫の紋章が刻まれている。

つまり、『化猫の宿』の魔導士という事だ。

それさえ分かっていれば、少女の正体も自ずと分かる。

 

天空の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ウェンディだ。

その魔法は、今や誰も使う事ができないとされる治癒魔法すら使う事が出来るという支援特化のモノだという。

ジェラールの服がボロボロな事から考えるに、『六魔将軍』の連中が楽園の塔の爆発に巻き込まれて瀕死になったジェラールを回収し、たった今、ウェンディに治療させたというところだろう。

ジェラールの噂は聞いているだろうに、自分の中にいるジェラールを信じて行動したのだろう。

優しい子だ……

それだけに何とも悲しく思えてしまう。

この優しさの根源がただの()()()だなんて……

 

「ほう、トウヤ……妖精の尻尾(フェアリーテイル)の斬魔か。噂は兼ね兼ねといったところだが、我々3人を相手にするには、いささか役者不足なのではないかね?」

 

白髪の男が今度こそ話しかけてくる。

実際、ウェンディを連れて逃げるだけでも一苦労ではあるのだ、反論はできようもない。

俺は半身になって構え、相手は手に持った骸骨の杖を少し持ち上げる。

 

「知らん……だが、お前らを逃がす訳にはいかない」

 

ジェラールが動きを見せない事に不気味さを感じつつも、戦端を開こうとしたその時、外から大きな声が響いた。

 

 

 

「ジェラァァァァァァァル!!」

 

 

 

燃え滾る憤怒を込めて叫んだナツの声が洞窟内に反響する。

その声を聞いて痛そうに頭を抱えるジェラール。

焦燥のようなものが表情に滲み、汗が噴き出している。

 

「ちっ……ここは私達2人で十分だ。近づかせるな、レーサー」

 

「OK」

 

即座に迎撃を命じる白髪頭に、軽く返事をするモヒカン男。

走っているだけとは思えないスピードで颯爽と洞窟を出ていった。

これでこの場に残されたのは、対峙する俺と白髪、頭を押さえるジェラールと、まだ泣いたままのウェンディ、必死にナツを呼ぶハッピーだけ。

それにしても、ホント舐められてるな……

俺にとっては都合がいいのだが。

 

チャンスは何故かジェラールが悶えている今をおいて他にない。

そう思って駆け出す。

 

「斬魔ノ太刀 纏の型・風牙」

 

相手もそれに反応し、杖から黒い炎を広範にまき散らしてきた。

狭い洞窟の中では十分な目くらましとなり、すぐに斬り払っても一瞬は見失ってしまう。

――どうしかけてくる?

黒炎が晴れたその瞬間、ガガガと岩が動く音がした。

下からか、そう思い身構えようとしたその瞬間、意外な光景を目を奪われる。

 

「なにっ!!?」

 

その轟音は白髪の男ではなく、ジェラールの放った魔法によるもので、むしろその男を狙って放たれていた。

目の前に開いた大穴に吸い込まれるように落ちていく六魔の男。

その瞳は驚愕の色に満ちており、何かのブラフという事ではなさそうだ。

ならば、こいつらは一枚岩ではなかったという事か?

 

何がどうなっているんだ……?

 

そこで突然の衝撃が俺の体を弾いた。

 

「ぐおっ!?」

 

唐突な出来事を目にして呆気にとられたせいで、目の前に迫るジェラールの魔力弾に反応しきる事が出来なかったのだ。

咄嗟のガードこそ間に合ってダメージを負う事はなかったが、少し離れた所まで吹き飛ばされてしまった。

その間に逃げたらしく、体勢を整えた時には既に洞窟内にジェラールの姿はない。

 

このタイミングで逃げるなど、何が狙いだというんだ……?

……まさか、ニルヴァーナを自分で使おうとしている?

それなら、ジェラールがニルヴァーナの場所を知っているという事になるし、ここで『六魔将軍』がヤツを起こすのにも頷けるが……

 

いや、それよりも、白髪男が穴から這い出てくる前にハッピーとウェンディを拾って逃げなくては。

 

「ハッピー、ウェンディ!」

 

「は、はい!」

「うん!」

 

急いで2人を両脇に抱え、洞窟を出る。

すると、空に流星が走って行き、森のどこかに着地したのが見えた。

 

方角は覚えた……この2人を安全な場所に置いたらすぐに追わなければ。

 

そう考えているところに、ナツとアルマ、それからもう一匹見覚えのない猫が現れる。

 

「トウヤ!ジェラールは!?」

 

「すまん、逃げられた……2人で追ってくれ」

 

抱えていたハッピーを下ろし、ジェラールが飛んで行った方向を指さす。

言われた最初こそ、「何をやってるんだ」と言いたげな表情でコチラを睨んできたが、ナツの優先順位はジェラールにあるのだろう。

 

「任せろ!そっちはエルザの事、頼んだぞ!」

 

そう言って2人で飛んで行った。

見送りながら、エルザがジェラールの方に行かないように見ていてくれ、という意味にしては表情が鬼気迫るものであったな、と疑問に思う。

 

「トウヤ、エルザは今、コブラという男の手によって毒に侵されているそうです。幸い即効性のものではないようですが、このままだと……」

 

何!?

そんな事になっていると知っているなら、ジェラールなんかにこだわっていないで駆けつけて……

って、そんな事しても意味はないのか。

相手は毒蛇使いという話だ。

魔法による毒じゃないなら、俺では解毒できない。

じゃあなぜナツは俺に向かって「頼んだぞ」などと言ったのだろうか?

……あ。

ふと、今抱えている人間が誰なのかを思い出して合点がいった。

 

「ウェンディ、エルザを頼む」

 

そう言うと、白猫とウェンディが驚いた表情をする。

 

「あ、あの……トウヤさんは私の事を知ってるんですか?」

 

「やっぱり変質者なのね、あんた!」

 

おいコラ、白猫!

 

「……………………エルザのトコ、行こう」

 

焦って何を言ってもいい訳みたいになると思って、ひとまず口をつぐんだ。

 

 

 

 

△ △ △ △ △

 

エルザの元に向かうため、ウェンディは白猫に、俺はアルマに背を掴まれて低空を飛行する。

その間にいくつか話をしている。

まず最初に簡単な自己紹介をした。

といっても、ウェンディについては元々知っていたので、目新しい情報といえば親のドラゴンの事を何か俺やナツに聞けるかと思って作戦に参加した、という事くらいだったが。

白猫の方の名前はシャルルというそうだ。

何やら気難しい性格のようだが、少し話しただけでも分かるウェンディの頼りなさから考えると、これくらいしっかりしている方がバランスを取れていて良いのだろう。

二足歩行で会話可能とくれば、どう考えてもハッピーやアルマの同類、()()()()()なのだろう。様子を見るに、例の任務とやらは心配なさそうだが……

 

お互いの事を把握した後は、アルマによる簡単な現状報告を聞いた。

クリスティーナは撃墜。連合軍メンバーは『六魔将軍』の襲撃を受けて漏れなく負傷。エルザに至っては致死性の毒を食らってダウン。ウェンディは攫われてしまった。

絶望的な状況に陥ったものの、ウェンディ救出を第一目標に、ギルドごとに分かれて樹海を探索していた、という。

例外として、天馬のヒビキとルーシィが樹海入り口に残って、エルザの様子を見ているらしい。

俺達が合流すべきはそこだ。

ヒビキは情報系の比較的新しくできた魔法を使うらしいし、俺達の合流やエルザ回復の報告を全体に回す事も可能かもしれない。

また、ナツと共に行動していたグレイはレーサーと交戦中らしい。

異常なスピードで駆けていったという事しか分からないが、それだけでも断言できるほど相当の手練れだ。

グレイなら何とかしてくれるとは信じているが、苦戦は必至だろう。

 

最後は「なぜ、俺がウェンディの事を知っているのか」だが、これはこの場でどこまで話したものか……

そう考えていると、ウェンディが少し違った切り口から話しかけてきた。

 

「あの……森の中で会った時は逃げ出してしまって、すみませんでした……私、悪い人だなんて勘違いしちゃって」

 

いや、まぁあれは俺も考えなしの話しかけ方だった。

子どもにはよく怖がられているのだから、あの場面ではアルマに出てきて貰うべきだったろう。

 

「こっちこそ……あの時はお前がウェンディだとも気づかなかったし」

 

こちらこそ、こちらこそ、と謝罪合戦になりかけていたところにシャルルが口を挟んでくる。

 

「それで?そろそろあんたがウェンディの魔法について知っている理由を教えてもらえるかしら?」

 

うわぁ……凄い疑念の目だ……

これまで話していた間も、全く信用していないぞ、という雰囲気をビンビンに醸し出していたし、これは相当嫌われてしまっているなぁ。

まぁ何にせよ、俺にできるのは真実と、伝言を伝える事だけだ。

 

「……俺はウェンディの恩人を知っている」

 

こう言うと、ウェンディには不思議そうな目で見られ、シャルルにはより一層怪しいものを見る目で睨め付けられる。

 

「それってジェラールの事……ですよね?」

 

ウェンディは伏し目がちに聞いてきたが、なんと答えるべきか……

 

「そうだが……さっきのアイツじゃない。いや、同一人物だが、本人ではない、というか……」

 

あ、これ絶対伝わってない。

2人の怪訝な視線を感じる。

アルマもジト目でこっちを見ていると気付いて、なら代わってくれと睨み返してやる。

 

「簡単に言えば、ウェンディと昔一緒に行動していたジェラールと、先ほどのジェラールは顔が同じなだけの別人という事だと理解しておいてください……それ以上は本人と話してください」

 

混乱を極めて、顔のまわりにハテナマークをいくつも飛ばしていたような顔をしていたウェンディが「本人に」という言葉を聞いた途端に、それまでにない喜色に満ちた驚きの顔を見せた。

 

「えっ、別人?……それより、本人にって……ジェラールが今どこにいるか知っているんですか!?」

 

「あぁ、妖精の尻尾にいる……今度遊びに来い」

 

「は、はい!」

 

やはり、長年音沙汰の無かった恩人の所在が知れるというのは嬉しい事なのだろう。

俺だって、セルバルドが元気にしていると分かるだけで、大分気持ちが軽くなるだろうしな。

 

「『私の事情に巻き込む訳にはいかなかったとはいえ、7年もの間連絡できずに申し訳なかった。君が元気にしてくれているだけで嬉しく思う』だそうだ」

 

アルマに目くばせして、少しウェンディの方に寄る。

空中で、というのが恰好つかないところではあるが、そっとウェンディの頭にポンと手を乗せた。

 

「だから安心してくれ……君の恩人は何も悪い事はしていない。君の知ってるジェラールのままだ」

 

そう言うと、ポロポロと涙をこぼし始めるウェンディ。

多分、まだ全てを理解する事は出来ていないのだろうが、大事な事だけは伝えられたと思う。

 

「良かった……本当に良かった……私、ジェラールが変わっちゃったのかなって……そんな訳ないって信じたくて、でも、そんな事誰にも言えなくて……怖くて、心配で寂しくて……」

 

後ろで睨みつけてくるシャルルが怖いが、そんな事より、今はこの子を安心させてやりたい。

そんな思いでウェンディの頭を撫で続ける。

 

そうしながらどれだけ経っただろうか。

エルザやルーシィの匂いが感じられたので、アルマに頼んで一旦地上に降りてもらう。

地に足が付いた時にはウェンディも落ち着いてきたらしい。

しかし、そう思った途端、今度は顔を真っ青にさせてしまった。

 

「あ、あの……じゃあ私、勘違いで悪い人を治療しちゃったって事になりませんか……?」

 

うーむ、否定できない。

が、そんなに気にする事ではないとも思うのだ。

 

「いいのよ、ウェンディ!あの時はそうしなくちゃ、あんたの身が危なかったんだから!」

 

「でも……」

 

納得できないという顔で、先ほどとは別の意味で涙を目に溜めるウェンディ。

真面目な子だ……なんというか、庇護欲がくすぐられる。

ついついもう一度頭に手を乗せてしまう。

 

ジェラール(あいつ)をぶん殴るのは俺やナツでもできる。……でも、エルザを治す事はできない」

 

「トウヤさん……」

 

それに、と前置く。

 

「あいつにはもう誰も傷つけさせない、俺やナツが……ウェンディの優しさは誰も傷つけたりなんかしない」

 

実を言えば、もう一度話す機会があるならそれに越した事はないと思っていたのだ。

根底の根底が、俺の友達と同じだというなら……

エルザやシモンの友だった時の優しさが少しでも残っているなら……

それを引っ張り上げるのが俺の仕事だろう。

 

「もし、これでも気にするなら、少し頼まれ事を聞いてくれないか?」

 

 

 

こそこそとシャルル、アルマ、ウェンディに耳打ちする。

 

 

 

「それくらいなら大丈夫です!任せてください!」

 

「別に良いけど、あんたの方こそエルザの事、感謝しなさいよ」

 

 

 




前回言った時は、結局大して変わりませんでしたが、今回こそは投稿頻度が下がると思います。
原作は大変長いものではありますが、投げ出すつもりはないので、気長に待っていただければ幸いです。
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