斬魔の妖精   作:ベジタブル

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あんまり話が進んでない……


間話③
28話「宿命」


▼トウヤ視点

 

ウェンディたちが『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に入ってから早くも数日が過ぎた。

彼女たちを連れて帰ってきたその時こそ歓迎会だなんだと大騒ぎになったが、今ではもう既にウェンディ達がいる光景が当然のものとして馴染んでしまっている。

歓迎会云々はそれを口実に飲み食いしたかっただけではないか、とは思うのだが、ウェンディがウチに馴染んでくれたのは本当の事なので問題はないだろう。

このギルドはなんというか、そういった部分については本当に寛容というか、懐が広い。どんな相手でも受け入れ、一度内側に入った人間の為なら何を投げうってでも節介を焼く。

世間ではお騒がせギルドとか言われているらしいが、俺はそこを含め、『妖精の尻尾』の体質を心底誇らしいと思っている。

幸いな事に、その気質はウェンディにとっても受け入れやすいものだったらしく、出会った当初の引っ込み思案は大分薄らいでいるように感じた。ギルドでも何度か、彼女の明るくて可愛らしい笑顔を見る事ができていて嬉しい限りだ。

 

うん、なんて言うか、本当にウェンディは可愛いな……

ウチにしては珍しく、小動物的な可愛さというか、守ってあげたくなる系というか。

貴重な癒し枠だ。

こないだ一緒の行ったクエストも、本当に『妖精の尻尾』かと思う程に常識的かつ穏やかに依頼を完遂する事が出来た。

常識人かつ癒し枠かつ治癒魔法の使い手とか、絶滅危惧種すぎて保護しなきゃと思うレベルである。なんて貴重なんだ。

今後の仕事は是非ウェンディと一緒に行きたい。

何気に、解呪のプロフェッショナルと治癒のプロフェッショナルという組み合わせになっている事からも、俺達2人で解決できない依頼は単純に俺の戦闘力が足りないという可能性以外は考えられない相性の良さだし。

 

常識人枠という事で言うとルーシィも筆頭に上がる……はずだ。

しかし、彼女はなんというか……色々と振り回されてツッコミを入れている光景が板に付きすぎて、あまり常識人のイメージがないのである。

本人に言えばあんまりにも酷い言いざまに鋭いツッコミを入れてくれるであろう……ほらね?

 

違うんだ、ホントにあの子はいい子なんだよ?

六魔将軍(オラシオンセイス)』の女が持っていた鍵を受け継いだらしく――これで9本目の黄道十二宮らしい――その契約の現場にたまたま居合わせてしまったが、その際、通常は「~体」と数える星霊を「~人」と呼んでいた。

後で聞いてみたら、「聞いてたの!?」と少し照れた上で事情を話してくれたのだが、どうやら、六魔の星霊魔導士は星霊をモノのように使い捨てる酷い人物だったようで、その事で思うところがあったからとか、レオ――つまりロキとは既に人として接してきたからとか、そんな経緯だったらしい。

が、そんな事より結局は「たくさん友達ができて嬉しいんだ」と言った笑顔が彼女の本質であり、星霊を「~人」と数える気持ちの根源なのだろうと思う。

こういう子の元に貴重な星霊が集まってくるのは、なんと言うか……嬉しい。

 

ルーシィといえば、もう1つ嬉しい知らせがあった。

何と、『幽鬼の支配者(ファントムロード)』の時には色々とあったルーシィパパが、つい最近ルーシィに手紙を寄越したらしいのだ。

どうやら、俺が渡した資料は役に立てて貰えたらしく、穏便に大規模事業からの撤退を行えたようである。

今では、商売を志した当初の熱意と誠実さでもって、小さくも人々の役に立つ商談をまとめて回っているらしい。

勿論、これまでよりも売り上げ規模は落ちるため、屋敷こそ手放してはいないようだが、お手伝いさんなどの数は大分減ったみたいだ。それにしたって、次の就職先はきちんと斡旋したという話だし、残った人たちも「お嬢様が帰ってくる家は綺麗にしておきたい」と言って張り切っているらしい。

ルーシィの実家に関わる人達が皆健やかに暮らせているという事実は勿論嬉しかったが、それ以上にその事を嬉しそうに話すルーシィの笑顔が、俺にとっては何よりも喜ばしい事だった。

 

だがしかし、皆がみんな幸せという訳にはいかないようで、今のギルドには浮かない顔をしている人間が何名か…

 

まずは目の前でずっと同じ皿を拭いているミラだろうか。

原因は分かりきっているし、だからこそ俺から言えることなんてないのだが。

 

「ミラ」

 

「あっ、ごめんなさい……私、さっきからボーっとしてるわね」

 

今俺達がいるのは、ギルドメンバーの憩いの場である酒場のカウンターである。

俺はと言えば、先日のウェンディとの依頼の報酬が思いの外高く、しばらくクエストをこなさなくて良いという喜びに胸を躍らせ、昼間から酒場に入り浸っている訳だ。

とは言っても、酒は飲めないから、ちびちびと廃棄予定の刀剣類をつまんでいるだけなのだが。

 

カウンターを挟んで向かいにいるミラはと言えば、いつも通り酒場で給仕の仕事をしている訳だ。

他のヤツらに呼ばれれば普段の笑顔でテキパキと仕事をこなすのだが、俺の前に戻ってきて手が空くと途端に何かもの思いにふけったような表情となってしまう。

それだけ俺には心を許してくれていると思えば嬉しいことではあるのだが……

 

「いや、いい……大丈夫か?」

 

「ふふ、トウヤにはお見通しね……やっぱりこの時期になると、ね?」

 

そりゃそうだわな……

まだ2年しか経っていないんだ……リサーナが死んでしまってから。

リサーナとはミラとエルフマンの妹の事だ。

ギルドでは特にナツと仲が良かったが、俺にとっても『妖精の尻尾(ココ)』に流れ着くきっかけを作ってくれた恩人である。

 

今からだいたい6年前の事である。

親であった斬竜セルバルドが居なくなってしまって、色んな所を旅していた俺はその道中にやたら大きな卵を発見したのだ。なんとなく気になって拾ったその卵から産まれたのが喋るネコだった時は流石に腰を抜かしたが。

その子猫に「アルマ」と名前を付け、寂しい1人旅が、1人と1匹の珍道中となってから1年が経った頃――つまり今から5年前、マグノリアへとやってきた俺はアルマにそっくりな喋るネコと戯れる少年と少女に出会う。

それがハッピー、ナツ、そしてリサーナだったのだ。

世にも珍しいネコを連れているという共通点を持つ俺達はすぐに意気投合し、放浪の身である事、ナツと俺が同じ境遇であるという事が分かると、俺は自然に『妖精の尻尾』に加入していた。

それまで他者を警戒してばかりだった俺が、この時ばかりは大して疑いもせずにその提案を受け入れたのは、自分とダブるナツが居た事だけではなく、きっとリサーナの太陽のような明るさがあった事も一因だったのだと思う。

 

そんなリサーナは、ストラウス一家で受けていたクエストの最中、全身接収(テイクオーバー)の制御に失敗したエルフマンの暴走を止めようとして……

 

それからオドオドしてはいても誰より優しかったエルフマンは誰よりも強さを求めるようになり、抜身のナイフのような鋭さを持っていた魔人ミラジェーンは今のような穏やかな女性に変わってしまった。

俺は勿論、今の2人も、昔の2人も変わらず家族として愛している。

しかし、時折、今の彼女たちをみて痛ましくなる事があるのだ。

 

俺はリサーナが死んだ現場に立ち会う事が出来た訳ではないが、「家族を喪う」というその一点で酷く取り乱し、しばらく仕事も手に付かないありさまになってしまった。

今思い返しても弱い自分が嫌になってしまうが、とにかくそれだけ落ち込んだのである。

そして、今でも、エルフマンとミラジェーンの綺麗な白髪が揺れると、ふとした瞬間に太陽のような笑顔を思いだしてしんみりしてしまうのだ。

俺でこのありさまである事を考えれば、ミラ達の気持ちはと言えば……

 

「……今日は休め」

 

「ううん。今はこうやって動いてる方が気がまぎれるから」

 

そんなもんか……

 

「じゃあ……」

 

「ふふ、珍しいわね、トウヤがお酒だなんて」

 

そういう気分の時もあるってだけだ。

働きたがってる奴もいる事だし、注文しただけの事に過ぎない。

 

「……ありがとね」

 

だから、そうボソッと呟いた言葉は俺には聞こえていないのである。

 

 

 

 

△ △ △ △ △

 

どうやらミラは気を使ってくれたようで、運ばれてきた酒は大分度数を低くしたものだったらしい。

そのおかげか、ほろ酔い気分でマグノリアを歩く事が出来ているが、どうにも新鮮な感覚だ。カナなどはいつもこのような感覚なのだろうか?

摂取しているアルコールの量で言えば恐らく数百倍にはなりそうだが……

 

高揚感から余計な事を言ってしまいそうだな、と思っていると、今一番余計な事を言ってはいけなさそうな女性の顔が目に入ってしまった。

それは最近ギルドで浮かない顔をしている奴パート2のエルザだ。

おっと、目があったからには流石に誤魔化して避ける訳にはいくまい。

 

「おい、大丈夫かトウヤ。顔が赤いように見えるが……珍しいな、おまえが酒など。ひとまずこっちに来い、フラフラ歩いていては危ないだろう」

 

そう言って俺の手を引くエルザ。

近くの公園に入り、そこに設置されたベンチまで半ば強引に連れてこられたはいいが……

 

「なんで膝枕……気持ちいいけど」

 

おっと、口が滑った。

先に座って膝をパンパンと叩いたエルザに「何やってんだコイツ」と思ったが、あっさりとその誘惑に負けている俺もよっぽどであった。

 

「少しは楽になるだろう?」

 

フッと笑うエルザは本当に綺麗で……だからこそ、その表情が次の瞬間に曇ったものにかわってしまったのが残念に思えた。

 

「なぁ、トウヤ……その、ジェラールの事だが……本当はあの時、会っていたんだろう?」

 

「あぁ……」

 

「どうして……どうして私に言ってくれなかったんだ?」

 

どうして、か。

うーん……

そう言われてもな、と思いながら、エルザの両頬をグイッと持ち上げて無理やり笑顔を作らせた。

 

「ひゃ、ひゃにをしゅる!」

 

「エルザに泣いて欲しくなかったから、だと思う……でも、余計なお世話だった」

 

パッと手を放して下からエルザの頭を撫でた。

どういう意味だと怪訝そうな顔をする彼女に向け話を続ける。

 

「多分、エルザやシモンが言う『昔のジェラール』に戻ってた、と思う……だから、心配いらない」

 

「それは本当か!?」

 

「あぁ……万一の事を考えてあそこからは逃げてもらったが、約束したよ……落ち着いたら必ずもう一度会いに来るって。それまでは贖罪の旅を続けるんだと思う」

 

そうか、そうかと何度も呟いてはポロポロと涙をこぼすエルザ。

全く、俺が「泣いて欲しくない」っていったの聴いてなかったのか、コイツ?

ってまぁ、今回のこれに関してはいいか。

嬉しい涙だもんな。

それに、ただ泣いているだけではない。

 

 

 

「やっぱり、笑ってる方が綺麗だ」

 

 

 

そっと、エルザの頬に手を伸ばす。

頬の肉が上がっている硬さに触れて、視覚と触覚でもって彼女の笑顔を感じた。

 

 

 

「馬鹿者……酔い過ぎだ」

 

 

 

 

△ △ △ △ △

 

次の日。

俺はギルド酒場の一角で悶えていた。

これまで酒を呑んだのは片手で数えられる程度の回数ではあるが、その度に記憶が飛んでいた。しかし、今回は記憶が残っている。

楽しい経験ができた事に感謝すると共に、あんな羞恥経験を記憶に留める羽目になった事についてミラに恨みごとの1つでもぶつけてやりたい気分だ。

なーにが「笑ってる方が綺麗だ」だよ、そういうのはロキにやらせろ!!

 

「どーしたんだい、あんた。今日は一段と憂鬱そうじゃないか」

 

そう声を掛けてきたのは、いつものように樽ごと酒をかっ喰らっているカナだ。

これでも普段の事を想えば若干ペースが遅いというのだから、本当に俺とは異なる生物なのではないかと疑わしく思えてきてしまう。

どうして、酒のペースが遅いのかと言えば、つまるところ、コイツも最近調子の悪いギルドメンバーの1人であるという事だ。

カナはカナで不調の理由が分かりやすい。

恐らく、間近に迫ったS級魔導士昇格試験について思いを馳せてナーバスになっているのだろう。

俺としては()()()()()カナが合格すると思っているのだが、本人からすればやはり不安なようだ。

 

「ふふ、トウヤね、昨日少しだけお酒を呑んで、それで珍しく記憶が残ってるから落ち込んでるみたい」

 

カナへと新しいつまみを運びに来たミラが、心底愉しそうにカナに密告しやがる。

 

「はぁ!?あんた、どうしてそんな大事な事を私抜きでやってんだい!」

 

そんな事言われても、その場にいなかった人間を誘う術などないし、そもそも昨日の雰囲気的にカナでは合わないだろう。あと、カナが居たら、記憶が飛ぶまで飲まされていたに違いない。

 

その後はしばらくカナの恨み言を聞き流しながら、適当なものを摘まんで過ごしていた。

鬱陶しい事この上ないが、ひとまず明るい雰囲気で話せているようだったので、変に思い詰められるよりはこっちの方がいいか、と少しほっとして俺も会話――と言うには一方的に話しているのを聞いていただけだったが――を楽しんだ。

そんな矢先、大きな鐘の音が街中に響き渡るのを感じ、その()()()()に驚く事になった。

 

「ギルダーツが帰ってきた!!」

 

少し離れた所でナツがそう叫ぶ。

そう、この普段とは少し異なる鐘の叩き方は、正真正銘『妖精の尻尾』最強の男で、俺の師匠で、そしてカナの――である、ギルダーツがマグノリアへと帰ってきた事を知らせるため専用のものなのだ。

今まであの人が姿を見せなかったのは、S級クエストを超えるSS級クエスト、それを更に超えた10年クエスト――10年間誰も達成できなかった依頼をそう呼ぶ――を更に超える100年クエストに出かけていたからである。

いやどんだけだよ、と思ってしまうが、それだけの実力がある魔導士なのだ。

俺ではSS級はともかく10年クエストでも受ける許可が下りるかどうか……いや、下りても面倒くさいから行かないけれども。

 

では、この特別な鐘の音はそんな過酷な仕事に出た男の帰還を祝うものか、と聞かれれば実は全く異なる。むしろこれは()()と言った方が近いものなのである。

というのも、ギルダーツの使う魔法は、あらゆるもの――建物は当然、生き物も()()さえも粉々に砕いてしまうからだ。その上、本人の性格がもの凄く適当な事もあって、一度、街の入り口からギルドまで1本の横穴をあけてしまったという逸話すらある。

その為、このマグノリアには「ギルダーツシフト」なるものが存在しており……

 

『町民の皆さん!速やかに所定の位置へ!!繰り返します……』

 

外では空飛ぶ魔法のメガホンから、このような注意喚起がなされている。

人々は大声を上げて逃げ惑い、街は轟音を上げて()()()いく。

そう、物理的に割れていくのだ。

要するに、街の入り口からギルドまで穴をあけて突っ切られるくらいなら、街を可動式にしてギルダーツに対応してやろうと考えた訳なのである。

 

断言しよう。

マグノリア市長はアホである、と。

 

 

 

「お嬢さん、確かこの辺りに妖精の尻尾ってギルドがあったハズなんだが……」

 

ギルダーツはギルドに入って早々にミラに向かってそう声を掛けた。

 

「ここがそうよ。それに私、ミラジェーン」

 

「えぇ!?随分変わったなァ、オマエ!!つーかギルド新しくなったのかよーっ!!」

 

ギルド最強の威厳など微塵も感じられない程のアホな表情で驚きの声をあげるギルダーツ。

あー、でもそうか。

つい最近建て直したばかりのギルドは勿論、ミラが変わってしまったのが2年前で、ギルダーツが100年クエストに出たのが3年前だから、そちらの事も……というかリサーナの事も知らない訳だ。

 

その後はナツがいきなりギルダーツに挑みかかっていったり、マスターに100年クエスト失敗の報告をしたりと色々としていた。

ギルダーツ程の男でも失敗するクエストがある事への衝撃や、ナツの鮮やかな撃沈ぶりにも思うところは多々あるが、俺が気になっているのは、隣でなんでもないように見せかけて酒を呑んでいる女の子の事だ。

 

「……何見てんだい?」

 

「別に?」

 

素直じゃない弟子の頭に手をやり、ガシガシと髪をかき混ぜてやる。

 

「ちょっと、子ども扱いしてんじゃないよ!」

 

不貞腐れて抗議する姿はまだまだ幼さが見える。

普段はあんなに妖艶な雰囲気を醸し出しているというのに、こういうギャップを見せてくるのだから、女の子というのはズルい生き物だ。

 

 

 

「頑張ろうな」

 

「……うん」

 

 

 

そんな風に頷いて、カナはまた酒を煽り始めた。

S級試験直前のトレーニング案を組んでやらないとなぁ……

俺との特訓の成果は既に十二分に出ているとは思うのだが、カナはこれで意外と小心者というか、チキンというか……そういう精神的に脆い部分があるから、それを補うための口実を作るメニューを考えるべきだろう。

 

とか考えていたのだが、不意にギルダーツから声がかかった。

 

「ナツ、あとトウヤ!後でオレん()来い。みやげだぞ~っ」

 

「あ、あぁ……」

 

そう言うと、ギルドの壁を突き破って去ってしまったのだった。

思わず苦笑いしながら横を見ると……

 

「……バカ」

 

とだけ言われて脛を軽く蹴られてしまった。

 

 

 

間が悪いよ、師匠……

 

 

 

 

△ △ △ △ △

 

ナツはすぐにハッピーを連れてギルダーツの家に向かったようだが、俺はあの後カナのご機嫌取りに精を出す羽目になってしまったので少々遅れてしまった。

大雑把な人だから特に気にはしないだろうが。

急いで向かっている最中、ギルダーツのボロい家が見えてきた時、なぜか全力で駆けていくナツ、そしてそれを追うハッピーとすれ違ったが、一体何があったのだろうか?

 

「師匠。みやげって?」

 

「おお、トウヤも来たか……まぁそう急ぐなって。お前、去年の試験でS級になったんだって?エーテリオンを食ったとか、古代兵器を斬ったとか、無茶苦茶やってるらしいじゃねぇか」

 

それからはお互いの3年間について簡単にだが語り合った。

師匠の話の約半分ほどが土地ごとに出会った女の話だったのは少し……いや大分引いたが。

そして、「みやげ」というのはどうやらみやげ話だったようで、その肝心の部分に差し掛かろうという時、ギルダーツはいきなり体に巻いたマントをはだけだした。

そこから現れたのは傷だらけの体と、義肢になった左手、左脚であった。

クエストの失敗くらいでは、何か難しい事態が起こったのだろうと楽観的に思えたが、まさかよりにもよって、あのギルダーツが戦闘力において撤退を選ばざるを得ない相手がいるとはな……これには流石に驚愕が隠せなかった。

 

「誰に……?」

 

「ナツのやつにも言ったんだがな、黒いドラゴンだ……ありゃ人類の敵だ」

 

黒い、ドラゴン……

そうか……そいつが……

 

「殆ど一瞬で左腕と左脚を持っていかれた。人間では勝てないだろうよ」

 

ギルダーツが言うくらいだ。

相当な実力を持った生き物なのだろう。

だが……

 

「お前はあんまり驚かないんだな。ナツのやつぁ、よっぽどショック受けたらしくて走っていっちまったが」

 

あぁ、それですれ違ったのか。

いやいや、俺だって驚いてない訳じゃないんだ。

でも、なぜか、そんな事より、何か因縁めいたものを感じていて、それどころじゃないってだけで。

 

「別に……俺が師匠より強くなればいいだけの話だろ」

 

人類の敵で、家族の手足を奪った奴だろ?

なら俺の敵だ。

それに、竜はもっと賢くて優しい生き物なんだ。

そんなドラゴンの風上にも置けない野郎は俺がぶっ倒さなきゃならない。

何故だか、それが俺の使命なのだと、ふと思うのである。

 

「言ってくれるじゃねぇか!なら、久しぶりに組手でもするか!」

 

「あぁ!」

 

 

 

この時感じた漠然とした予感は正しく的中し、この「黒い竜」は俺にとって宿命の敵となっていくのだが、それを語るのはもう少し後にするとしよう――

 




今回はヒロイン(ウェンディ)とヒロイン(ルーシィ)とヒロイン(ミラジェーン)とヒロイン(エルザ)とヒロイン(カナ)とヒロイン(アクノロギア)の詰め合わせでお送りいたしました。

嘘です、アクちゃんはヒロインにはなりません。

追記
R18IF書き始めました~
クオリティは残念ですが、もしよろしければそちらもご覧になってくださいますと嬉しいです。
Twitterも始めました→@yasai_hameln
https://mobile.twitter.com/yasai_hameln

モチベと出来次第なので、結果がどうあれ確約はできないのですが、少しR18IFに興味がありまして……需要ってありますかね?

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