斬魔の妖精   作:ベジタブル

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つい先日、UA10万突破しました!&この回で30話!!
今回は記念回ですね!!
見てくださっている皆さんにこの場を借りてお礼を言わせてください!
いつもありがとうございます!!

記念回といっても特にこれと言った特別な事はないんですけれども……


30話「リサーナ」

▼トウヤ視点

 

『お前らにいて、オレにネコがいないってのが気にくわねぇ!』

 

『あい。そんな事言われてオイラも無理やり手伝わされてたんだ』

 

下らない事をしていたという自覚があったのか、それ以上何も言おうとしないガジルに代わって説明をしてくれたハッピーの話では、マグノリア上空へと飛び立った俺達を見たガジルが野生の勘を発動させ、全速力でついていく事をハッピーに提案したそうだ。

マグノリアでのあてのない喋るネコ探しに難航していたガジルは、ハッピーや俺のようなエクシード関係者から情報を得る方向にシフトしようとしていたらしく、そんな折に俺とウェンディが揃ってどこかに向かおうと言うのだから、即座に尾行を開始した、という経緯らしい。

呆れた行動力だと思うが、それ以上に性質(タチ)が悪いのは、結果的にその勘が大正解である事だろう。

ある使命を帯びてエドラスからエクシードの卵が送り込まれたのは6年前だ。アルマやハッピー、シャルルが俺達のような保護者――俺とアルマの場合は立場が逆転している気もしなくはないが――と出会えたエクシードは勿論、他のネコ達もこの6年もの年月があればしっかりとした生活基盤がたてられているはずだ。翼や知恵という武器があるにしても、狩りに特化した種という訳ではないから、定住しない生活ではそのうちに限界が来て野垂れ死んでしまっているのではないだろうか……

まぁ兎も角、長くマグノリアで暮らしている俺達の中でもハッピー達に似たネコがいるなどと言う噂を聞いた事がないのだから、今更マグノリアでエクシードを探すのは無理があるのだ。

それに比べてエドラスは、それこそ彼らの本来の住処だ。ガジルがパートナーを見つけられる可能性は少なくはないだろう。

……こちらのエクシード達は人間に対して差別の意識が強いそうだから、絶対にうまくいくと太鼓判を押す訳にはいかないが。

 

こうして、俺、アルマ、ミストガンという当初予定していたメンバーに、ウェンディとシャルル、そしてガジルとハッピーを加えた4人+3匹というメンバーでエドラスの地に降り立ったのだった。

あまり開けたところはまずいという事で、着地した場所は幻想的な植物が幾多も繁る森の中だ。森、といっても樹高はそう高くなく、太陽の光が地面まで差し込んでいて比較的明るい所である。時刻的にも夜にはまだ数時間ある為、今の内にここから少しは落ち着ける所へと移動する事にしたのだが……

 

「アレ何だろ……? 倉庫かな?」

 

と言って、冒険気分で少し前を歩いていたハッピーの足が止まった。指さした先を見れば確かに、人が棲んでいるというよりは、倉庫と言った方がしっくりくる――アースランドの常識が、この世界の建築にも当てはまるなら、だが――ような建物が1つ立っていた。

 

「丁度いい、あそこで変装用の道具を拝借していこうぜ。オレ達はまだしも、エクシード、だったか?……は気軽に顔を晒す訳にもいかねぇだろ」

 

「そうだな。ついでに私たちの紋章を隠す道具もいただいておこう。持ち主には申し訳ない事だが……」

 

「私達が変装するのは分かりますが、どうして紋章まで隠す必要が?」

 

「私も古い記憶だからな。確かな事が分かればまた報告すると約束しよう。今は厄介事を避けるおまじないくらいに思っていてくれ」

 

そうしてガジルの提案通り、その倉庫に忍び込む事にした俺達。

中に人がいない事は確認済みであり、簡単に侵入することができた。このメンバーで隠密能力が高いのはミストガンくらいだが、索敵においては滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が3人も揃っているおかげで死角がないと言えるだろう。我々の鼻と耳を舐めてもらっては困るのである。

 

倉庫の中にはありとあらゆるものが雑に放置されており、衣類は勿論、医薬品の類いや、武器――流石に違法かつ貴重な魔法の武器は置かれていなかったが――まで置かれていた。

ひとまず、アルマには上はそのままにスカートを倉庫で手に入れた子ども用の物に変えてもらい、その中に無理やり尻尾をしまい込ませた。更に、深めに帽子を被らせて顔と耳が見えないようにすれば、まぁ……なんとか……人間の子どもですよと言い訳できなくはない程度の変装には……なる、かなぁ?

少々苦しいだろうが、人前にでる場合はこうしてもらっていないと目立って仕方ないだろう。

俺の方は医薬品の方から適当に包帯を調達してきてアルマに頼んで首に巻いてもらっておいた。俺の紋章はうなじに付いているが、隠そうと思うと意外と難しい。パッと見で気づかれなくする、程度であれば襟の長い服を着ればいいのだが、完全に隠したい場合はそれでは隙間から見えてしまう可能性がある。そんな時に重宝したのが包帯を巻くという方法だ。こっちはこっちで目立つと言えば目立つのだが、紋章自体は確実に見えなくなる。アースランドでも、正規ギルドの魔導士である事がバレない方が良いような場面ではこうして包帯を巻いていたので、慣れたものだ……いや、巻いてくれるのはいつもアルマだが。

周りを見てみれば、ガジルは左肩をしっかりと袖で隠せるタイプの黒い服を身に着け、ハッピーにすっぽりと耳まで覆うようなフードのついた服を着せていた。シャルルは踊り子のような衣装を身にまとい優雅に決めている。

そしてウェンディだが、上はカチッとした赤いジャケットにオレンジの大きいリボンを合わせており、下は一本白ラインの入ったフレアスカートだ。短いスカートから伸びた脚はニ―ソックスに守られつつ、絶対領域を展開している。極めつけには、髪型を高い位置のツインテールにするという、なんとも可愛らしいファッションとなっていた。

可愛い……妹にしたい。いや、もう妹なのでは?

ミストガンの方に視線をやって『俺達の妹は最高だな!』と念を送ってやると、非常に怪訝んあ顔をされたので、ちょっと悲しい。

おい、そんな目で見るなアルマさん。さっきのテレパシーはあなたに送ったものではありませんよ。

ちなみに、ミストガンは普段から殆ど肌の露出のない格好をしているし、今更隠す所がないといった姿だ。というかそもそもアイツ、どこに紋章入れてんだ……?

 

そんな風に準備を整え終えようとしていたところで、不意に窓から外を見たウェンディが驚きの声を上げた。

 

「み、みなさん!アレみてください!!」

 

手招きされて全員同様に窓辺まで近づいて、これまた全員同様に動揺してしまう羽目になったのだった。

 

「あのマーク……妖精の尻尾だよ!?」

 

ハッピーの言葉の通り、この倉庫から少し離れた所にある、樹木をくり抜いて作ったような建物の上部に『妖精の尻尾』のギルドマークが刻まれた旗が飾られていたのだ。

要するにこの世界の『妖精の尻尾』という事なのだろうが……まさか、こちらに来てから一番最初に見るのがコレ、というのは……

 

「まだ残っていたか……」

 

ぼそりとミストガンが呟いたその言葉に、ガジルが「どういう意味だ?」と食いつく。

 

「あれはこの世界の妖精の尻尾……そして、エドラスにおける数少ない魔導士ギルド。だが、それはつまり……」

 

なるほど、それが「紋章を隠しておくべき理由」というわけか。

この世界は魔法が有限であり、魔力の宿った物質――つまりは魔水晶(ラクリマ)などだ――を道具に組み合わせる事でしか使用できない。そして、それらを扱う権利を王国が管理しているせいで、魔法を個人所有する事は犯罪に当たるはずだ。

 

「この世界では妖精の尻尾は闇ギルドって訳ね……」

 

「そんな……」

 

的確に真実を言い当てるシャルルの言葉にミストガンは黙って頷き、ウェンディはショックを受けて声を漏らす。

だが俺は、逆にそんな逆境にあっても諦めずにつるんでるんだなって喜びの方が大きい気がする。

まぁ、俺達はそんなこの世界の俺達――この世界でも俺が『妖精の尻尾』に所属しているかはわからないが――にトドメを刺すかの如く、魔法そのものを奪おうとしている訳だが……まぁこの話は後にしよう。

驚きながらもこっそりとギルドを観察していると、誰か女性の人影が玄関から出てくるのが見えた。

その人物は金色の髪をサイドで纏め、黒光りするライダースーツを腹の部分だけ切り抜いたような露出の多い攻め攻めな格好をしている。眼光鋭く周囲の男達に何事か怒鳴りつけている様子から、かなり気の強い女性だと分かる。分かるのだが……

 

「アレ、どう見てもルーシィだよね?」

 

「だな。笑えるぜ、ギヒッ」

 

いやもうホント、こっちとあっちでは色々と違うらしいな……

ミストガンとジェラール……当然ゼレフに嵌っちまう前の方だが、この2人はこう思うと大分似ている方なのだろう。

その後も何やら和気藹々と、ご令嬢のような上品なカナや、以上に厚着のグレイ、色々と育ち切ったウェンディと失笑を禁じ得ない面々が出てくる。

 

 

 

そして――時が止まった。

 

 

 

「なぁ、アルマ、ハッピー……俺は夢を見てるのか?」

 

「いいえ、トウヤ……」

 

「そう、だね……あれ、リサーナだよ」

 

ミラやエルフマンにそっくりの綺麗な白髪を短く切り、周りを照らすような太陽の笑顔を振りまく少女……俺達の世界では既に死んでしまっている女の子、ミラとエルフマンの妹で、俺の恩人であるリサーナが俺の目に入った。

 

だが、当然ながらその名前には「エドラスの」という前提が付く。

その事が無性に悲しくて、でももう一度顔を見られたという事が嬉しくて、気づけば俺は涙を流していた。

 

「トウヤさん……?大丈夫ですか?」

 

気遣ってくれるウェンディの声も今は届かない。

無意識に手を伸ばして、呼びかけようとすらしてしまう。

今はここに盗みを働きにきていて、しかもいずれは彼らから魔法を奪おうとしているというのに……

 

「オイ、斬竜!奴らこの倉庫に向かってる!逃げるぞ!!」

 

ガジルにぐいと腕を引っ張られ、辛うじて嗚咽のような返事を漏らすも、俺は未だに心ココにあらずで、逃げる準備はアルマ頼みだ。

 

「いくぞトウヤ、しっかりしろ!」

 

ミストガンに叱咤されて倉庫を出て、走り出す。

すぐそこまで迫ってきていた『妖精の尻尾』の連中には気づかれてしまったが、駆け出した先でミストガンが姿を消す魔法をかけてくれて追跡を免れる事に成功する。

見つかってから魔法がかかるまでの数秒間、俺の瞳は相も変わらずリサーナを映していて、しかしながら、リサーナの瞳も俺を映していた。

つまる所、合ったのだ――目が。

そして、その目を染めた驚愕に、何となく泥棒と出会ってしまったという事以上の色を感じてしまったのだった。

 

 

 

 

▼???視点

 

「なんださっきの奴ら!?」

「魔法使って逃げてったぞ!」

「泥棒か!?」

「どこのやつだよ!」

 

喧騒が耳に入る。

しかし、その意味までは頭に到達しない。

頭の中に堰が作られて、今はある1つの事しか考えられないような……そんな感じ。

 

「大丈夫?」

 

「え?あ、うん!な、なにが?」

 

ミラ姉が明らかに様子のおかしい私を見て声を掛けてくれるが、ロクな返答すらできやしない。

 

先ほどからあの瞳が離れないのだ。

 

目つきが悪くて、小さい子には怖がられるくらいなのに、その奥の奥に宿る光はとっても優しくて家族思いの綺麗な瞳。

私が――よく知っている目。

 

その優しい眼差しが私を見て悲しみに染まっていた。

涙が煌めいていた。

 

――ダメだ、私……行かなきゃ!

 

今まで全然気づいていなかったが、なにやら後ろでルーシィが話しているようだ。

 

「さっきの奴らには絶対に何かある!だから、あたしが追いかけて、洗いざらい吐かせてやる!」

 

それなら――

 

 

 

「それなら私も連れて行って!」

 

 

 

私のすぐ後ろに居た兄と姉が、優しげに、それでいて悲しそうにこちらを見つめている事に、私は終ぞ気づく事が出来なかった。

 

 

 

 

▼トウヤ視点

 

「落ち着いたか?」

 

無事に逃走に成功して、少し歩いたところでミストガンにそう聞かれる。目の部分しか見えていなくても、その声音から大分こちらを気遣ってくれているのが分かる。

 

「あぁ……悪かった」

 

俺がチンタラしていなかったら、あそこでコチラの『妖精の尻尾』に見られる事は無かったかもしれない。そう思うと申し訳なくて、つい俯いてしまう。

ミストガンはそんな俺の肩にポンと手を置いて「いや、いいんだ」と呟いて、少し前に出る。

 

「皆、聞いてくれ。我々はひとまずこのままルーエンの街へ向かい、そこで宿を取る事にしようと思う」

 

最終目的地は王都になるが、直接乗り込むには遠く、また、この世界の基礎的な情報も不足している。ミストガンが居るだけ遥かにマシだが、その知識だって6年前のものだ。変わってしまった事も、忘れてしまった事もあるだろう。

幸いにも俺達は魔法を所持している訳でもないし、先ほどの『妖精の尻尾』にも俺達に似た人物はいなかった。紋章さえ見られなければ軍に怪しまれるという事もなく、ある程度自由に動く事が出来るはずだ。

体勢を整え、情報を集める。

これに反対する理由はないと言えるだろう。

 

……本音を言えば、自由時間というものが、実は凄く欲しかったのだ。

異世界だぞ?しかも都合よく言葉が通じて、文字まで読める!

探検したい!散策したい!遊びたい!買い物したい!

異世界の刀剣類の味や、ベストセラー本なんかも気になる。特に後者はルーシィやレビィにお土産として買っていけたら最高だろう。あの2人の狂気乱舞する様が目に浮かぶようだ……

 

「あの、トウヤさん……」

 

気づけば隣にやってきていたウェンディが、おずおずと俺に話しかけてくる。

ガジルとハッピーは先頭に立って、あちこち植物や動物を見ながら歩いており、ミストガンはそれを眺められる位置でつかず離れずといった様子だ。そんな男達を呆れた目で見ながらアルマとシャルルが話している。

俺達は最後尾のようだ。

 

「さっきの人のことですけど……確かミラさんの妹さん、なんですよね?」

 

そんな風に聞いてくるから、リサーナとのエピソードをいくつか話してやった。ギルドに入るきっかけになった話や、ナツが何かやらかして、何故かついでに俺も怒られた話、ミラ――当時はおっかなかった――に俺の気持ちの察し方を教えてくれた話や……色々と話した。

相変わらず話下手な俺は何度か詰まったり、説明を省いたりしてしまって、聞きにくい事この上なかっただろうが、ウェンディはうんうんと何度も相槌を打ってくれた。それだけではなく、気になった所をつっこんで聞いてきてくれたりもして、凄く話しやすかった。だから、本当に色んな事を話した。

そのうちに、なぜかまた鼻の奥がツンとしてきて、目頭が熱くもなってきていた事に気づく。

リサーナが死んで、みんなそれがショックで、ミラやエルフマンの前では何となく、彼女の話が出来なくなった。そうするうちに、誰も彼女の名前を呼ばなくなっていった。決してタブーだとか、そんな訳じゃない。暗黙の了解というか、そういう事なのだろう。

だから、こんなにリサーナの名を呼べたのは本当に2年ぶり……そう、リサーナがいなくなってしまった時以来の事だった。

この涙はその事が嬉しかったから流れ出たのだろうか。

 

不意にウェンディが俺の手をそっと握ってくれる。

小さな手の平から伝わる体温に安らぎを感じた。

 

「トウヤさんにとってのリサーナさんは、私にとってのトウヤさんって事なんですね……妖精の尻尾に入るきっかけをくれて、家族をくれて、沢山の幸せをくれた人。私、トウヤさんにはとっても、とっても感謝してます。だから、トウヤさんがリサーナさんをどれだけ大事に思っているのかも、何となく分かる気がします」

 

こんな事言うの、おこがましいですよねと笑って謝るウェンディを見て、俺は凄く、凄く心の奥がじんと熱くなっていくのを感じた。

確かに、俺はリサーナに凄く感謝している。

こんな俺に、こんなにも大事な居場所をくれた。

人生でこんなに「ありがとう」と思う相手は、リサーナとアルマくらいだ。

 

ウェンディにとって、俺はそういう「ありがとう」と言いたい相手なのだという。

リサーナが俺にしてくれた事を、俺がウェンディにしてやれた。

俺を通して、リサーナの優しさがウェンディに巡っているようだと感じた。

 

「あっ、じゃあ、私もリサーナさんに感謝しなきゃいけませんね。トウヤさんを妖精の尻尾に誘ってくれてありがとうって」

 

その事がどうしようもなく嬉しくて、言葉にできない事を悟った俺は、ウェンディの髪をかき回すように撫でつけた。

 

「わわっ、トウヤさん!髪がくずれちゃいますから!」

 

「おっと、それは悪いな」と思って手を離した。

しかしウェンディは言葉とは裏腹に、少ししょんぼりしているように見えたので、もう一度、今度は優しく撫でてやる。

すると、「えへへ」と照れ臭そうに笑うので、こちらの口角もつり上がる。

 

「ありがとな……」

 

俺のそんな呟きを聞いたウェンディは、俺が元気になったと分かった事が嬉しかったようで、花が咲くような笑顔を見せてくれた。

本当にいい子だなぁ、ウェンディは……

 

少し離れてしまっていた他の連中に追いつく為に、俺達はほんの少しだけ早足で歩き始めた。

 

 

 

 

▼三人称視点

 

エドラス王都、王城。

王に謁見室へと呼ばれた王国軍幹部たちが、目的地へと向かうまでの廊下で顔を合わせる。

その表情は皆一様に硬い。

普段おちゃらけた雰囲気ばかりを醸す、第三魔戦部隊隊長ヒューズですら暗い顔をしていた。

その理由は明白だ。

 

「今回呼ばれたのは、あの超スゲェ……はずだったアニマの事だよね」

 

ヒューズの疑問に答えるのは、金髪をリーゼントヘアにまとめた鎧の男。第四魔戦部隊隊長、シュガーボーイである。

 

「まぁ十中八九そうだろうねぇ」

 

すると、後ろからぐしゅしゅという不気味な笑い声が響いた。

2人が振り向くと王国の幕僚長たるバイロがいやらしい笑みを浮かべて近づいてきているのが見えた。

 

「そうですなぁ……いやはや、アニマ自体に不備はなかったというのに一体何が起きたのやら……」

 

しわくちゃの老人顔を更にクチャクチャにして笑いながら、髭を触って興味深げに呟くバイロ。

更にその後ろから、もう2つ足音が聞こえてきたと思うと、バイロに向かって叱責の声が飛ぶ。

 

「危機感がないな、バイロ。今回の件は貴様の責任問題とも言えるんだぞ」

 

そんな風に凛とした声を響かせたのは緋色の髪の女。

第二魔戦部隊隊長、()()()・ナイトウォーカーだ。

 

口論に発展するかに思われたが、しかしながら、それはエルザと共に現れた獣面の偉丈夫、第一魔戦部隊隊長、リリーパンサーの興味なさげな一声に諫められてしまう。

 

「くだらん……それを決めるのは全て陛下の意思だ。直に謁見の間だ、無駄口はその辺にしておけ」

 

一行が謁見室の前の扉へと近づくと、そこには既にもう1人の幹部が到着していた。

彼は先ほどのやり取りを聞いていたようで、それでいてなお、ペラペラと軽薄そうに話し始める。

 

「いやいや、リリー。僕はこういう時、喋ってた方が落ち着くんだよねぇ……だってこの中で首が飛ぶ可能性が一番高いのは僕だぜ?いやぁ、ごめんね、爺様。あなたの孫は無職になってしまうかもしれません」

 

あは、と笑う()()()()()()

()()()()()()顔を酷薄に歪めた――祖父のバイロ譲りの凶悪な――笑みを見せた。

 

これに対し、一層うんざりしたような顔を見せたリリーが、心底嫌そうに声を上げる。

 

「喧しいと言っているだろう。お前の心情など知らん……陛下がお待ちだ、はやくその扉を開けろ――()()()

 

第一から第四の魔戦部隊隊長と幕僚長、そして王国軍に2人存在する幕僚長補佐の1人、バイロの孫である男、トウヤ――エドラスのトウヤの6人が揃って、王の元へと推参した。

 

形式的な挨拶を簡単に済ませた後、大仰な格好をしたエドラス国王ファウストが玉座から立ち上がり、跪く臣下たちに今回の本題を告げ始める。

 

「ワシは今、乾いている。

 エドラスは今、乾いている

 我がエドラスが有限であってはならぬのだ。

 その為のアニマだった……

 しかし、先の超巨大アニマは何者かの力によって阻止されてしまった

 ……ワシは今、乾いている

 しかし、空を見上げれば、無限の魔力で空を泳ぐ畜生が我々を高みから見つめているではないか。

 ワシが……エドラスが求める永遠を謳歌している。

 なぜ我々はこんなにも近くにある“無限”に手が届かないのか……」

 

大きく手を広げ、天を掲げるファウスト。

臣下たちはそれまでの不穏な言葉に動揺が隠せていない。

 

「支配され続ける時代は終わりだ。

 全ては人類の未来の為。

 豊かな魔法社会を構築する為」

 

王が1人、拳を握りしめ、目を血走らせる。

 

 

 

「今こそ天使どもを地へと堕とす時――コードETDの発動をここに宣言する!!」

 




リサーナの描写をしてて「アレ?これヒロインじゃね?」ってなった問題。
ナツをエドラスに連れてこなかった弊害がここに……

10万UA&30話記念で、何かリクエストとかありましたら、感想書いてくださると嬉しいです。「リサーナもヒロインでいいんじゃね?」とか、「設定集貼って」とか。
「番外編書いて」は多分、R18の方で手一杯で難しいと思いますが。
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