斬魔の妖精   作:ベジタブル

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ガルナ島編は飛ばしちゃいます。
この主人公がエルザと一緒に(もしくはエルザの代わりに)ナツたちを追いかけるというビジョンが見えませんでした。行ったとしても、途中からになってしまう上、やる事的にはリオン達やウルティアと面識を作っておくことと、ユウカとの魔法打消し合戦くらいしか思いつかなかったので。
ガルナ島編ファンの方、申し訳ないです。


幽鬼の支配者編
4話「最強の男」


▼トウヤ視点

 

あの後、事件解決の為に奔走した俺たちは、被害者を出す事なく事件を終えられた安心から疲れがドッときて、後の処理を駆けつけてきた評議員や軍の連中に任せて早々に退散した。

ナツだけは「暴れたりねー!」と喧嘩を吹っかけようとしてきたが……

アイツの体力はどうなってんだか。

参ったなぁ、と思っていたところに入ったのはエルザからの助け舟だった。どうやら俺の知らない間に「手伝う代わりに事件が終わったら勝負する」という約束をナツがエルザに取り付けていたらしく、だからそれまで体力を温存しておけよ、と話を持って行ってくれたのだ。強くて機転も利いて、めっちゃ美人、う~ん、エルザはホントにいい女だよなァ。

今は新聞を流し読みしながら、件のエルザvsナツの勝負が始まるのを待っているところだ。

手元の新聞によると先の事件はギルドマスター定例会を狙ったテロ未遂事件として大ニュースとなっているようだ。大半のメンバーが逮捕されたという話だったが、あのエリゴールは拘束しようとした軍の奴らをぶっ飛ばして逃走してしまったらしい。

えっ、大問題じゃね…?

完全に主犯だし、実力的にも『鉄の森(アイゼンヴァルド)』では間違いなくトップだった。思想的にもおそらくアイツが扇動したんだろう事は想像に難くない。

報復とか狙ってくるのだろうか。卑怯な手に走らず、タイマンでやろうってなら受けて立ってもいいんだがな。

そうして文字の海におぼれようとしていたところに、隣にいたカナが話しかけてくる。

 

「ねぇ、あんたはナツとエルザ、どっちに賭けるんだい?」

 

え、なに?

みんな仲間同士の勝負で金賭けてんの?

酷くない?

いや、俺も参加するけど。

 

「ナツに1000ジュエル」

 

まぁまだエルザの方が強いだろうが、ここぞという時のナツの爆発力は目を見張るものがあるしな。そこまで勝負にならないって事もないだろうと思う。

 

「あいよ、ナツに1000ね~」

 

と、よく見るとカナが胴元だったらしく、俺から受け取った1000ジュエル札を足元の籠にポイっと入れ、後ろのボードに何か書き込んでいく。

 

「ナツに賭けたやつらは残念だったねぇ!」

 

というカナの言葉に反応して、ギャラリーの男どもが吠える。

ナツに賭けていた奴は「そりゃねぇよ~」とか「今日の昼飯代が~」などと喚き、エルザに賭けていた奴は勝ち誇った顔で諸手をあげている。

……ひ、酷い反応だ。

俺の運のなさはクエスト中の不運な事故だけでなく、こういった賭け事にも適用されるらしく、俺はこの手のギャンブルで勝った事がないのだ。

当然ギルドの奴らは皆その事を知っており、俺がどちらに賭けるかを聞くだけで結果が分かったような振る舞いをする、という訳である。

 

「悪いねぇ、聞くの最後にしちまって。あんたが早いうちに賭けちまうと、商売になんないからさ」

 

本当に酷い言われようである。

次のカナとの修行はいつもよりキツいやつにしてやろうと密かに決めた。

 

「いい。当てるから……それより、服」

 

そう、服だ。

普段の痴女めいた格好ではなく、白いノースリーブを着ているのである。

それでもなんとなくセクシーなあたり、物凄い色気であるとは思うが。

 

「いや……これはその…あんたが……」

 

と、少し赤くなるカナ。

暑いのだろうか?

それなら普段の格好になればいいのに。

俺としてはドキドキしなくて済む分こちらの格好の方がありがたいのだが。

 

「?」

 

「あ、いや、だから……ああもう!あんたが痴女とか言ったからだろ!おバカ!!」

 

真っ赤な顔で怒鳴りつけられましても……

あの時のこと気にしてたのねカナさん。これは普段から思っていたとはいえ、軽率な発言だったかもしれん。申し訳ないことをした。

 

「す、すまん」

 

「もういいよぉ!それよりホラ、始まるよ!」

 

おお、本当だ、エルザとナツが準備運動をしている。

と、期待に胸を膨らませているとなぜかナツがこちらを睨みつけてくる。

 

「おいトウヤァ!エルザを倒したあとはおめーだぞ!覚悟しとけよ!」

 

「うむ、それはいいな。私もトウヤには勝てた事がない。この辺でリベンジしておくのも悪くないだろう」

 

いやいやいや。

なに言ってんですかね、このお2人。

手伝う条件で闘うってんだから、俺はエルザを手伝った側なんだからおかしな話になるでしょうよ。

それにエルザさんも……勝ったことないって、そりゃ相性的に剣が効かないからそうなるのであって、むしろ徒手空拳でまぁまぁ勝負になる辺り、もう殆どそっちの勝ちでいいと思うんですけど???

2人には悪いけど断っておこう。

 

「え、あ、うん」

 

あ゛。

もうホント……口下手な自分の舌が恨めしい。

こらこらナツくん、「燃えてきた」じゃないんだよ、俺は「萎えてきた」って言いたいんだよ!

めんどくさい事になっちまったなぁ……誰か助けてくれ。

あ、少し離れたところでアルマが「呆れた」といった目でこっちを見ている。くそう……

 

「あんた今、完全に勢いで答えただろ?」

 

「うん……」

 

「あんたも大変だねぇ……」

 

ホントにね。

まぁでもひとまず切り替えて、この一戦を楽しむとしよう。

 

「さぁ、お前の全てをぶつけてこい」

 

そう言ってエルザが換装したのは炎帝の鎧だ。炎に対する耐性が高く、ナツを相手取るならこれ以上ない選択だろう。エルザさん本気ですな。

しかし、ナツも然るもの。「なら全力が出せるな」と仲間に向けてはいけないような火力の炎を両腕に纏わせる。

 

マスター(じいちゃん)が「始めいっ!」と声を掛ける。

先手必勝、掛け声と同時に突進したナツが右上段から炎を纏った拳を振り下ろした。

しかし、そんながむしゃらな攻撃を見切れないエルザではなく、半身を引きながらカウンターの一閃を放つ。

が、それもまたナツには当たらない。

下にしゃがみながら避けたナツは、その際に接地させた両腕と左脚を軸に右の蹴り上げをエルザにぶつけようとする。

これまた華麗に身を躱したエルザはサッとしゃがみ、地面につけたナツの腕に足払いを掛ける。これによって転がったナツに追撃を仕掛けようとするエルザ。

すわ決着か、と寄せられた観客の期待は、ナツが寝ころびながら放った横なぎのブレスにかき消されてしまう。

迫りくる炎に対し、追撃の姿勢を一瞬で改め、後方宙返りの要領で回避してしまう。舞うような身のこなしは『妖精女王(ティターニア)』の面目躍如である。

時間を稼いで起き上がったナツは、その勢いのまま右アッパーを繰り出す。一方のエルザも、着地と同時に翻り、その回転の勢いを利用して袈裟懸けに斬りかかる。

そして今、激突――――

 

パァン。

 

という瞬間、手を叩く乾いた音が鳴り響く。

決闘を止められてしまったナツとエルザだけでなく、盛り上がりに水を差された観客たちも、不満げに音の出どころを見つめる。

そこにいたのはカエルのような姿をした胡散臭い男であった。

 

「そこまでだ。全員その場を動くな。私は評議員の使者である」

 

そう言った使者殿は、エルザと俺の方を一瞥した後、手元の紙を読み上げる。

 

「先日の鉄の森テロ未遂事件において、器物損壊罪他7件、および呪歌(ララバイ)破壊の容疑でエルザ・スカーレット、トウヤ・グレイスを逮捕する」

 

おい、使者殿。

「誰か助けて」とは思ったが、代わりに更なる厄介事を持ってこいとは言ってない。

 

 

 

 

△ △ △ △ △

 

結局のところ、今回の逮捕は評議員の面目を保つための形だけのモノだったらしく、裁判も大した事は聞かれなかった。呪歌(ララバイ)の件については少し強く問い詰められたが、「エリゴールを倒して一息ついたところで、ヤツから笛を取り上げようとしたら何か紫色の煙を吹きだそうとしていた。危険かと思ったので、すぐに宙に放って斬り捨てた」と主張すると、渋々といった様子ではあったが納得してくれた。

あんなモノ、封印するよりいっそ廃棄してしまった方がいいだろうに。とはいえ、一度「封印する」と決めたものを勝手に処分されては困る、という事なのだろう。お役所も大変だ。

気になった事があるとすれば、裁判の会場まで連れていかれる際、評議員のジーク何某という男の思念体がエルザと話し込んでいた事だ。なんだか険悪な雰囲気が漂っていたし、去り際に俺の方を警戒混じりに観察してきたし、なんとなく嫌な男だった。イケメンだし。

と、そんな感じで小さなトラブルのみで終わり、俺たちはその日中に帰れる予定だった――はずが、夜中になってもまだ牢屋にぶち込まれていた。

なぜか、と言っても理由は簡単で、俺たちを心配して駆けつけてくれたナツが、あろうことか裁判に乱入してきたからである。

嬉しくはあったが、これ以上に有難迷惑な事もない……

しかも当の本人は、この硬い石材性の牢屋で早々に眠ってしまった。

そのおかげでエルザと2人っきりになれたので、気になっていた事を聞いてしまおう。

 

「ジークレイン……知り合いか?」

 

「ん…なんというか……いや、お前には関係のない事だ」

 

ふぅん、そういう言い方するんだ……

こうなったら何としても聞き出してやる!

と思ったが――

 

「……言いたくないか?」

 

「すまない……」

 

俯いているエルザを見ると、そんな気持ちも霧消してしまう。

言えるようになったら聞こう。

そう思った俺は、ナツと同様に横になり、そっと目を閉じた。

 

 

 

 

△ △ △ △ △

 

短い拘留期間を経て、無事ギルドに帰ってきた俺は、ミラに飲み物と廃棄予定の刀剣類を注文し、ガジガジとかじりながらシャバの空気を堪能していた。

すると、なぜか急に眠気が襲ってきた。

それは自分だけではなかったようで、唐突に倒れていくギルドの面々。

ははぁん、これはアイツだな?

 

「斬魔」

 

気づいた俺はすぐに魔力を高め、略式で魔法無効化を発動する。

するとあれほど重たかった瞼がウソのように軽くなり、眠気も最初から無かったかのようになる。

やがて、起きている人間が俺とマスター(じいちゃん)――あとは2階にラクサスがいるか――だけになると、全身を黒衣で覆い、更には覆面に髪の毛を全て隠す帽子の完全防備に身を包んだ怪しげな男が現れる。

その男は依頼板(クエストボード)から適当なクエストを持ってきて、じいちゃんに「行ってくる」とだけ報告する。

まったく、シャイな男である。

あ、人の事言えない?

そーですね……

 

「ミストガン」

 

俺の声に振り返った男――ミストガンは少しだけ空気を緩めて近寄ってくる。

 

「……久しぶりだな」

 

「あぁ」

 

俺たち2人はいつもあまり喋らないが、なんとなくその距離感が心地よく、こうしてたまにミストガンがギルドに現れた時には一言二言交わすようにしているのである。

ミストガンの持っている紙を盗み見ると、今回はモンスターの討伐依頼らしい。

と、こちらと同様に俺を観察していたミストガンが、俺の羽織のポケットに意識を向けているのが分かる。

 

「それは?」

 

という質問に、俺はポケットの中をまさぐり、中のものを見せて答える。

それは緑色の少し大きい宝石のようなもので、強い魔力を感じられる事から魔水晶(ラクリマ)であると推測される。

 

「闇ギルドが持ってた」

 

確かルーシィがギルドに入る直前に受けたクエストで手に入れたモノだったはず。

あの時も例に漏れず、正体不明の魔物を倒す依頼が闇ギルド討伐に化けたのだ。

元々その街を牛耳っていた闇ギルドが、この魔水晶を裏オークションで競り落としたはいいが、誰が所有者になるかで揉め、街で潰しあいを始めた。支配しているだけなら兎も角、街中で暴れられては困ると考えた住民だったが、如何せん普段からその闇ギルドに搾取されているものだから、闇ギルド討伐依頼の報酬など出せるはずもなかった。そこで、やむを得ず名目をモンスター討伐とし、闇ギルド討伐よりは幾ばくか安い報酬で魔導士を呼びつけようとしたのである。この事を聞いた俺はひとまず問題の闇ギルドを壊滅させ、住民の代表者に厳重注意を行った上で、報酬は指名手配されていた闇ギルド構成員の賞金と、そこがため込んでいた財貨からもらうという事で納めたのであった。そこで押収したものの1つがこの魔水晶だったのである。

 

「用途は?」

 

「分からない……が、確か『竜の魔水晶』といっていた気がする」

 

イマイチ使い方は分からなかったが、綺麗だからという理由でお守りとして持っている事にしたのである。

ミストガンは少し驚いた表情をした後、一つ頷き

 

「持っておくといい。いずれ必要な時がくるかもしれない」

 

それだけ言い残して、俺から離れていった。

 

「これっ!眠りの魔法を解かんか!」という言葉に反応して伍、四、参、弐、壱とカウントダウンを行い、「壱」と言うと同時に霧の向こうに消えてしまった。

ミストガンと入れ替わるようにギルドの面々の意識が覚醒していく。

 

 

 

 

▼ルーシィ視点

 

「んんぅ……」

 

何だったの、今の?

急に眠くなったと思ったらすぐにまた目が覚めて……

周りの人たちもあたしと同様に目覚めはじめている。なぜかナツはまだ眠ってるけど。

起きだした人たちはある人物の名前を口にして「さすがだ」とか、「あんにゃろォ」とか言っているようだ。

 

「ミストガン?」

 

聞いたことない名前だけど誰だろう?

 

「妖精の尻尾、最強の男候補の1人だよ」

 

そう言って私の疑問に答えてくれたのは、週刊ソーサラー調べ、彼氏にしたい魔導士ランキング上位のイケメン、ロキだ。

あたしとしては他のギルドメンバー同様に喧嘩っ早いし、無駄にチャラいしでナシかなぁって。

まぁ、あちらも星霊魔導士には何やら苦手意識があるらしく、誰の質問に答えたかに気づくと驚いた顔で逃げ出してしまったが。

あ、ロキがトウヤにぶつかった。

 

「げぇぇ!トウヤぁ!?」

 

といって、あたしの時以上のスピードで走り去ってしまった。

どうして星霊魔導士でもないトウヤまで怖がるのかしら?実はトウヤも星霊が使えたりするのかしら…?

というか、逃げざまに「前門のルーシィ、後門のトウヤか…」なんて呟いて、人の事を猛獣みたいに扱わないで欲しいわね、ロキったら。

 

「ていうか、最強候補って、こないだのチームが最強チームだったんじゃないの!?」

 

ナツ、グレイ、エルザ、トウヤのチームが最強って聞いてて、確かに凄い強さだって納得してたのに。

 

「あぁ?誰だ?そんな下んねぇ事言ったの?」

 

「ミラさん」

 

そう言うとグレイはバッと振り返り、先ほどの発言を聞いてしまったらしく泣いてしまっているミラさんに「ごめんミラちゃん!」と謝る。

あーあ、泣かせちゃった。

 

「いやまぁ……それでだな。まぁ最強の女ならエルザで間違いないし、トウヤだって最強の男候補で間違いねぇんだが、この話をするのに欠かせねぇヤツがあと何人かいるんだよ」

 

「その1人がミストガン……」

 

「そういうこった。と言っても、アイツは何故か誰にも姿を見られたくないらしくてな。たまにギルドに来ては全員を眠らせて、依頼だけ取ってさっさと帰っちまうんだよ。だから俺含めて、誰もヤツがどんな男か知らねぇんだ。例外はじーさんくらいか?」

 

そんな人もいるのね……

何か顔を見られたくない理由があるんでしょうけど、それにしてもメチャクチャよね……

姿を見られたくないからって、全員を眠らせてしまうというのもそうだけど、それを可能にしてしまう魔法の力量も。

その時、上の階、つまりS級魔導士専用のフロアから「いんや」という声が響く。

 

「オレは知ってっぞ。あとはトウヤもよく喋ってるよなァ?」

 

「ん?……まぁな」

 

柄の悪い金髪の男が嘲笑混じりの表情でこちらを見下ろしてくる。

上階と下階で明確な格の違いがあるのだと示すような態度。

嫌なヤツ……

 

「あの人は?」

 

「もう1人の最強候補、ラクサスだ。じーさんの孫なんだが……それよりもトウヤがミストガンと喋った事あるって方が気になるんだが」

 

マスターの孫!?

あれが!?

全然似てないじゃない!

 

「ミストガンはシャイなんだよ…あまり詮索してやるんじゃねェ」

 

「静かだが…いい奴だぞ」

 

そんな雰囲気にそぐわないズレた事を言っているトウヤに反応している人間は1人もいない。全員の視線がラクサスという男に注がれている。

 

「オレと勝負しろ、ラクサスーーー!!」

 

「エルザごときに勝てねぇようじゃ勝負にならねぇヨ」

 

ナツが食ってかかるも、一蹴されてしまう。

引き合いに出されたエルザも怒気を出しながら問い詰めようとする。

 

「それはどういう意味だ……?」

 

ゴゴゴという音が聞こえてきそうなエルザの一睨みにも動じた様子はなく、腕を広げて黒いマントをなびかせたラクサスが尚も挑発を続ける。

 

「オレが最強って事さ」

 

臆面もなく言い切った事でほとんどの面子はたじろいでしまう。

例外は、それでも睨み続けるエルザ、気にした様子もなくガジガジと剣の山を平らげているトウヤ、そして――

 

「降りてこいコノヤロウ!!」

 

とタンカを切るナツくらいだ。

 

「おまえが上がってこい」

 

2階で1人、ニヤっと笑う。

「上等だ!」と駆け出すナツだったが、その途中、魔法でその部分だけ巨大化したマスターの腕に叩きつぶされてしまう。

 

「まだ2階に上がってはならん。ラクサスもよさんか」

 

悔しそうなナツ、懲りた様子のないラクサス。

 

「妖精の尻尾最強の座は誰にも渡さねぇよ。エルザにも、トウヤにも、ミストガンにも…あのオヤジにもな……オレが最強だ!!」

 

 

 

 

▼トウヤ視点

 

白けた空気は結局元に戻らず、1人、また1人と帰ってしまい、最後まで嫌な雰囲気だった。

はー、まったくラクサスは……

何をイキがってるんですかねぇ。

いくら何でもまだ師匠には勝てないだろうに、あの人のいないギルドで何言っても仕方ないと思うんだけどなぁ。

昔から気難しいヤツだとは思っちゃいたが、あそこまでヤな感じだったかなぁ?

何か馬鹿な事しでかさなきゃいいけど……

ま、その時は俺が何とかすりゃいいだけか。

俺自身、ギルド最強なんかに興味はない。ないが、だからって今のラクサスに負けるとも思わねぇ。

何があっても家族を守れるだけの力を。

もうセルバルドが消えた時の、何もできなかった俺じゃねぇ。

間に合わなかったあの時の、力の足りない俺でもねぇ。

父さん(セルバルド)との絆の証であるこの魔法で、家族を守りきってみせる。

っと、熱くなっちまった。

明日からは久しぶりの仕事だ。

そんなに遠くに行くわけではないが、今日は早めに寝てしまおう。

 

この時の俺は、クエストに行っている間に、あんな事が起きるなんて、露とも思っていなかったのだ。

 

 

 

 

△ △ △ △ △

 

今回の依頼も結局面倒な事になっちまうんだもんなぁ。

まさか、途中であんな巨大モンスターが乱入してくるなんて……

ようやく帰ってこれた訳だが、こちらでも事件が起こったらしい。

またナツが何かやらかしちまったそうだ。

ラクサスに触発されて勝手にS級クエストに行っちまったとかなんとか。

そちらはエルザが回収に向かったみたいだから何とかなったのだろうが、除名とか、そんな面倒な事にならないといいなぁ。

喧しいヤツだけど、ギルドにいないとやっぱ寂しいし、それにルーシィも巻き込まれたらしいし……

あの子は凄くいい子だ。もし危なかったら、少し面倒だが弁護を買って出よう。

あ、でも俺の無口さじゃ、むしろ足手まとい……?

それにしてもガルナ島か。

依頼料が大した事なかったから興味なかったけど、どんな仕事だったんだろうな、今度アイツらに聞いてみるか。

 

「アレ?あそこにいるのはナツたちではありませんか?」

 

(エーラ)を出して飛んでいるために俺より視点の高いアルマが、俺より先に4人+1匹の姿を見つける。

 

「あぁ……」

 

ホントだ。

でも何で立ち尽くしてるんだろ?

ん?

気のせいか、周りのマグノリアの人たちもヒソヒソと何か話しているような。

 

「って、何ですかコレ……!?」

 

その理由は簡単だった。

簡単だったが、それを飲み込むのは並大抵の事ではなかった。

ナツたちの先、そこにあって、いつも通り俺たちを出迎えてくれるハズの、俺たちのギルドは――

 

巨大な鉄の杭によって、ボロボロに壊されていた。

 

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