斬魔の妖精   作:ベジタブル

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今回、ハートフィリア家の使用人に適当な名前を付けてしまっておりますが、多分に度と出てこないのでお許しを。


8話「父」

▼トウヤ視点

 

その後の話。

じいちゃんの妖精の法律(フェアリーロウ)を見た後、間もなく気絶してしまった俺は、そのまま病院へと運ばれ、治療を受けた。

まだ身体が痛いというのに呼び出されたと思ったら評議員の部隊がいて、取り調べされる事になった時は若干殺意が湧いた。

とはいえ必要な事ではあるので大人しく従い、あちらから手を出してきたのだという事を強調しつつ、今回の件での俺の行動を説明した。

ファントムの支部の半分を文字通りにぶっ潰したその足でジュピターを受けとめ、ジョゼと喧嘩をした、と言ったら大分引かれてしまったが……

そうこうする間に1週間、やっと一息つけたところだ。

 

結局ギルドは建て替えをすることになった。

幽兵(シェイド)の侵攻からは守れたものの、そもそもの老朽化に、ガジルにやられた傷の深さを鑑みると、補修工事を繰り返すより、いっその事建て替えた方が早いという結論に達したようだ。

死ぬ気でギルドを守り抜いたカナ達としては、守った場所を自分たちで解体工事する、という事に大分複雑そうな表情をしていた。しかし、幽兵に好き勝手されなかったおかげで無事に残った柱を新しい建物にも流用する事や、マスター(じいちゃん)の言葉を聞いて納得したようだ。

「確かに建物は大切じゃが、形あるものはいずれ朽ちる定め。本当に大事なものは全員無事だったんじゃ、この際、みながより快適に過ごせる環境作りに勤しむのもよかろう。なに、建物との思い出は心に残っておる」だそうだ。

じいちゃんがそのままノリノリで書いた新ギルドの図面が、まったくもってあてにならん下手さだった事はご愛嬌だろう。

今はギルド一丸となって土木工事に従事しているところだ。

俺もケガが治り次第に木材の斬り出しなどで役に立つつもりだ。

他に特筆すべき事と言えばロキが死にそうな顔になりながら、街中からルーシィの紛失した鍵を探しているという事と、ナツがガジルを降した後に聞きだしたドラゴンについての情報を教えてもらった事だろうか。

前者は、隠れ家に避難している最中にルーシィが襲われたという事実に責任を感じての事みたいだ。個人的な理由で避けていたからって。

後者については、ナツのイグニール探しの一環だ。勿論俺だってセルバルドを探している。それで、聞けた話によると、ガジルもドラゴンに滅竜魔法を教わったという事らしい。そして、ガジルのところのドラゴン、メタリカーナも、イグニールやセルバルドと同じ、7年前、777年7月7日に消えてしまったそうだ。その日に一体何が起きたというのだろうか。

あとは、最後に残されたやるべき事の為に依頼した調査の結果が今朝到着した事くらいだろう。

これを読みこんで、用事を終わらせに行ったら皆と一緒に新ギルド作りをしよう。

 

 

 

 

▼ルーシィ視点

 

あの戦争から1週間が経った。

事件後のごたごたで忙しくなり、結局うやむやになっていたことを片付けようと思う。

凄く怖いけれど、今なら向かい合えると思うんだ。きっと、帰るべき場所ができたからなんだろう。

ね、ママ。

あたし、言いたいこと言ってくるよ。

ギルドの誰にも告げずに乗った列車の中で決意を固めたその時、目的の駅にたどり着いた。

最小限の荷物しか持っていなかったあたしはすぐに降りて、ホームを抜けてしまう。

見知った道を歩く。

旅に出た時――家出した時は、この道を逆向きに歩いたんだよね。

って、当たり前か……

でも、そんな事まで感慨深く感じてしまう。

きっと、この家はそれだけ――それこそ見た目の大きさ以上に――私の中で大きい存在なのだろう。

大きな屋敷の大きな庭に足を踏み入れる。

あはは、ホントに…今の家とは全然大きさが違うなぁ、笑っちゃう。

 

「お、おおお、お嬢様――――っ!?」

 

敷地に入った途端、大声を上げてスペットさんが駆けつけてくれる。

大泣きしながらあたしに抱き着いてくれる。

庭中から、従者小屋から、屋敷の中から、本当に沢山の人が現れる。

リボンさん、エイドさん、ベロ爺にコネル君、トミーさん……みんなみんな「おかえりなさい」と言ってくれる。

あぁ、ここにだって、こんなにもたくさんの味方がいたんだ……

やっぱりあたしはもう大丈夫だ。

こんなに優しい人たちと別れるのは辛いけど、沢山の勇気をもらえた。

と、改めて覚悟を決めていたところに、スペットさんがおずおずと、涙をぬぐいながら「あ、あの……お嬢様?」と声を掛けてくる。

すると、あたしの周りに集まっていた皆が何か思い出したような顔になり、急に空気が不穏になる。

 

「あのぉ……先ほど、お嬢様の家族、と名乗るお客様がこの家にやってこられまして……今、旦那様とお話をなさっているのですが、どんなご関係でいらっしゃるんでしょうか、お嬢様?……まさか私たちの知らない間にご結婚を……!?」

 

はぁ!?!?

ど、どういう事!?

か、家族って事はギルドの誰かよね?

こんな暴走をするのはナツね!

 

「そ、それってまさか桜色の髪の……?」

 

「え?い、いえ、灰色の髪の寡黙な方でしたが……あ、一緒にいらっしゃった猫様は桜色の見事な毛並みをしていらっしゃいました」

 

「ちなみに、今は従者小屋の方でお魚をお召し上がりになっておられます」

 

ちょ、それアルマでしょ!?

灰色の髪で寡黙って……

何してんのトウヤ!?

こうしちゃいられない、すぐに話してるところまでいかなきゃ!

 

 

 

 

△ △ △ △ △

 

「あなたの事、調べました」

 

その場にいた皆と、急いでお父様の書斎の前までやってきた。

しかし、なんとなく乱入する気にはなれず、どんな事を話しているのか気になってしまったあたし達は、全員で書斎のドアに耳を当てて盗み聞きする事にしたのだ。

 

「始まりは商業ギルドLOVE&LUCKY、そこで行っていた事業が軌道に乗り、当時付き合っていたレイラ・ハートフィリアと共に独立……元々良家であったハートフィリア家に婿入りする形で結婚。いくつもの事業での成功で得た金と、家の資産を用いてハートフィリア鉄道を興し、1代でハートフィリア家を財閥と呼ばれるまでに押し上げた」

 

お父様、婿入りだったんだ……

あたし、本当にお父様の事何も知らないんだなぁ。

 

「何が言いたい?」

 

「LOVE&LUCKYに居た頃の同僚の話だが、当時のあなたの仕事の仕方は、まず地元の関係者との信頼関係を築くことから始まるという。人に密着した事業で、奥様と二人三脚で大きくなっていった」

 

「古臭いやり方だ……あの頃は若かったのだよ」

 

あのお父様がそんな事してた時代があったんだ。

ていうか、今日のトウヤめちゃくちゃ喋るわね。

 

「トウヤは怒っている時と、長い時間をかけて話す事を決めている時はよく喋りますよ。今回はここまでの道中ずっと考えてたみたいです」

 

そうコソコソと教えてくれたのはアルマだ。

あたしが屋敷に入ってきたのを従者小屋から見て、追いかけてきたのかもしれない。

 

「そーなんだ」

 

「あとは酔っている時も饒舌です」

 

え、酔わせてみたいかも……

そういえば普段飲んでるのも、お酒じゃなくてフルーツのジュースらしいもんね。

おっと、トウヤが続きを話し始めたみたい。

 

「独立、結婚してからも、規模が大きくなった分取りこぼしは増えただろうが、当初は基本方針そのままに営業していた。しかし、あなたは次第に金の魔力に取りつかれ、徐々に周りを顧みないビジネスを行うようになった」

 

「さっきから何なんだ貴様は!?つまみだされたいのか!?ルーシィの事で話があるというから聞いてやっているのだぞ!!」

 

激昂するお父様。

今となっては、星霊を使える私の方が力は強いって分かっているのに、それでも凄く怖いと感じてしまう。

 

「あなた方では俺を排除できません……続きです。その方針が決定的になったのは奥様が亡くなった事です。その頃から、どんな人間も道具としてしか見なくなった。自分の娘すらも」

 

「だから貴様は結局何が言いたいんだ!?さっきからくどくどと人の家の事にとやかく言いおって!貴様には関係ないことだろう!!」

 

「そんなことない。家族の家族の事だ!」

 

家族の家族、か……

トウヤってホントにギルドの皆の事を大事にしてるよね。

なんだか、その優しさが今、あたしだけに向いてると思うと、凄く心がぽかぽかしてくる。

 

「何が言いたいか、と言えば……人の心を蔑ろにする人は、人の心に足をすくわれるぞ、という事だ」

 

「何……?」

 

「あなた、凄く恨みを買ってる。今、サザーラント商会の方で、ハートフィリア鉄道買収の動きがある。私財まで担保に出しているでしょう?……このままだと破滅します」

 

「な、なんだと!?」

 

バサッと紙をひったくるような音が聞こえる。おそらくトウヤの持っていた資料か何かを取ったのだろう。

この言葉には使用人の皆もざわついている。

 

「こんな事が…ふざけている……!」

 

「今回の事もそうだ……ファントムが俺たちにどんな感情を持っているか、ろくに調べずに依頼しましたね?ジョゼは『子どもを産める体ならいい』とルーシィの四肢を捥ごうとしていた」

 

「なに!?……そ、そんな事は頼んでいない!!」

 

よかった……

そうだよね、自分の娘の腕を切っても良い、なんて流石に言わないよね、お父様でも。

 

「あなたは……もう1度目を開くべきだ。悲しみから逃げているだけでは、もう1度失う」

 

その言葉に、お父様が息を呑む音が聞こえる。

 

「目を開いて人の心を見れば、ルーシィが持つ価値が分かる。あの子の価値はハートフィリア家の1人娘だ、なんて事だけじゃない……あの子はとっても優しい子だ。滅茶苦茶やってばかりの俺たちを大事にしてくれる。奴隷のように扱う魔導士すらいる中で、星霊を友のように扱う。目つきが悪くて、無愛想な俺に初対面からよろしくって握手までしてくれた」

 

「人の痛みが分かる子だ。苦しむ誰かを見て涙を流せる子だ。父が帰ってこないと泣く子どもの為に立ち上がった子だ」

 

「目を開いてあの子を見て、あなたはまだ、ルーシィをただの馬鹿だと、小娘だと笑えますか?……人の心は、別の誰かの心を動かす。少なくとも今回、俺を動かした。ファントムからルーシィを守るために、ギルドの皆が動いた。この力を笑いますか?」

 

「俺はあなたの事を、諜報ギルドに調べてもらった資料の文面でしか知りません……だから、これはただの憶測ですが、あなたが奥様に惹かれたのは、そういうところだったんじゃないですか?……少なくとも、ハートフィリア家の娘だったからじゃない!」

 

あれ…何か、頬が濡れてるや……

この人は……あたしを見てくれてるんだ。

ギルドのみんなはあたしという人格を愛してくれる。

こんなに嬉しい事はない。

 

「もし……あなたが、もう1度ただのルーシィを見つめてくれるなら、俺は……俺は、1度2人で話してみて欲しいと思う」

 

あたし、もうお父様と話す事なんてないと思ってた。

だけど、もし、もしやり直せる目が少しでもあるなら……

 

「俺は……血のつながった父や母の顔を知りません。育ててくれた父も今はどこにいるか分かりません。でもあなた達はそうじゃない。お互いが今どこにいるか分かっているでしょう。だから……」

 

泣きそうな声で語るトウヤ。

「父」という言葉は、トウヤにとってもとても重いものだったのだろう。

ゴシゴシと目元を拭う音が聞こえた後、毅然とした声を取り戻す。

 

「もし、それでもあなたがルーシィを狙うというなら、ギルドを抜けて、犯罪者になってでも、俺があなたを潰します……」

 

すぅーはぁーと息を吸う音が、広い部屋にこだまする。

 

 

「ルーシィは俺が守る」

 

 

その言葉にあたしの胸がきゅうと締め付けられる。

え、なにこれ、やばい、すごい……うあああ、顔が熱い!

ダメだ、全然話が頭に入ってこない!

長い沈黙が広がる書斎とは裏腹に、あたしの心臓は破裂しそうなくらいうるさく鳴っている。

 

「…………出ていけ」

 

「あなたは……!」

 

顔の火照りを抑える為に手で顔を仰ぐ。

周りの皆もめちゃめちゃニヤニヤしている。

アルマだけは「まったく……」という顔をしているが。

 

「勘違いするな。娘と……話をするためだ」

 

「は!?」

 

「入ってきなさい、ルーシィ」

 

と、何か声を掛けられた。

え!は!?バレてたの!?

どういう話の流れ!?聞いてなかった……

と、兎に角入らなくちゃ……!

 

「え、えと……ただいま帰りました、お父様」

 

おずおずと扉を開けて書斎に入るあたし。

すると、聞かれているとは思っていなかったらしいトウヤの顔が、トマトのように真っ赤になっていく。

次の瞬間には「し、失礼します!」と言って走り去ってしまった。

 

「何も告げず家を出て申し訳ありませんでした。それについては……」

 

無断の家出という形をとった事を反省しているのは本当のことだ。

もっと他のやり方もあったのではないか、と思う。

だって、それは逃げたのと同じことだもの。

しかし、お父様はその言葉を遮るように言葉を紡ぐ。

 

「お前を連れ戻そうとしたのは、縁談がまとまったからだ」

 

縁談……政略結婚って事だよね。

 

「ジュレネール家のサワルー侯爵だ。この婚姻でハートフィリア鉄道は南方進出に踏み出す事になる」

 

サワルー侯爵。

あの、あたしを見る目つきも、何かと動く手つきもいやらしい感じの人だ。

正直、凄く苦手な相手。

 

「だが……やめだ」

 

「!」

 

「悔しいが、あの男が持ってきた資料は本物だ。遠くない内にハートフィリア鉄道は買収されるだろう。当然、阻止するために動きはするが、買収されるかもしれない事業を拡大する馬鹿はどこにもいない」

 

立っていたところから執務机の椅子まで歩き、ドスッと座り込んでしまう。

膝に肘をつき、手のひらを組み合わせて、下を向きながら訥々と話を続けるお父様。

 

「あの男の話を聞いて……レイラと出会った時のことを思い出した。あの頃のアイツとそっくりだよ、お前は。フ……そんな事も忘れていたか、私は」

 

「いや、違うな……お前の顔すら見ようとしていなかったのだろう」

 

じゃあ、今ならあたしを見てくれるの?

あたしの誕生日を覚える事もせず、口を開けばハートフィリアの跡取りの事しか言わなかったあなたとは違うの?

 

「あたしは……あたしはあなたを許せません。あなたはあたしの仲間を傷つけすぎた」

 

「そう……だろうな」

 

だから、さよなら。

そう思ってた、マグノリアを出た時は。

 

「でもそれは、今この瞬間の話です」

 

「!」

 

お父様が弾かれたように顔を上げる。

 

「あたしにとって今一番大切なのは、あたしという人格を認めてくれる場所。そして、そこに居る仲間たちです。だから……仲間のお願いは聞いてあげたい」

 

「それに、あたし自身、ママが愛したあなたがどこかに残っているというなら、会ってみたいんです」

 

だから……

 

「あたしはあたしの道を行きます。もしママが生きていたら、『あなたの好きなことをやりなさい』って言ってくれると思うから」

 

きっと、そう。

ママと一緒に居られたのは本当に短い間だったけど、ここで過ごしたその時間は、今でもあたしの、かけがえのない宝物。

 

「だから、あなたの道が、再びわたしの道と交わるというなら……」

 

「あぁ、今度は私自身が会いに行くよ……約束する」

 

今はここまで。

お父様はまだ一言も謝ってくれなかったけど、きっと時間の問題だ。

いずれにせよ、もうあんな事はしないだろう。

甘いかもしれないけど、トウヤの言葉を聞いたら、確かにそこに居る父親と、さよならするなんて悲しい事できなくなっちゃった。

 

「話は終わりだ。これから忙しくなる……なにせ、私は全てを見直さなきゃならない。事業も、私自身の事も、な」

 

そう言ってお父様は薄く笑う。

初めて見るような優しい――なんとなくママとだぶる――笑顔だ。

が、その顔がすぐに曇ってしまい、申し訳なさそうに、緊張しながらこちらを伺う視線に変わる。

どうしたんだろう?

 

「あ、あのだな…最後に質問なんだが……さっきの彼とはどんな関係だ……?」

 

ちょっ、デリカシー!?

ちょっと和解の目が出てきたからって、すぐ父親面しないでよ!!

……でも、そう、この質問の答えは決まっている。

これも今はまだ、だけど。

 

「大切な……とっても大切な家族(なかま)、だよ!」

 

あたしは、満面の笑みでそう言った。

 

 

 

 

▼トウヤ視点

 

やぁっちまった~~~!!!

はっず、うわはっず!!

本人の前で「あの子は優しい子だ!(キリッ)」とかやってたのか俺ェ!?

思わず逃げ出してきたけど、その時目が合った使用人の皆さんに全力でサムズアップされたし。

めっちゃニヤニヤしてたなあの人ら……

緊張しまくりで嗅覚も聴覚も全然機能してなかったもんねぇ。あんなに大勢に盗み聞きされてたら、普段なら気づくのになぁ。

でも仕方ないんだよ……ルーシィパパすっごい怖かったんだもん。

やっぱ財閥の長とか、威厳が違うよね、威厳が。

殴ってお終いって世界に生きてない人を相手にするのは俺には荷が重いみたいだ。

この後ルーシィに会うの滅茶苦茶恥ずかしいよなぁ。

でも、アルマを置いていく訳にもいかないし、と、やたら広大なお庭の隅で縮こまっている事にした。

 

「あっ、こんなところにいた!」

 

「大丈夫ですか、トウヤ?」

 

どうやらルーシィとアルマに見つかってしまったようだ。

……正直、もう少し放っておいて欲しかった。

合わせる顔がないので、まだ顔は上げない。

 

「その、さ……ありがとね、トウヤ。あたしの事、よく見てくれてるって分かって、すっごく嬉しかった」

 

ありがとうって言ってくれるのか?

余計な事してんじゃねぇよ、普段暗い癖に熱弁しちゃってプギャーとかじゃなくて?

えっ、ホント優しい。ルーちゃんホント優しい。すこ……

 

「あたしの事守るって言ってくれた時、カッコよかったよ」

 

うあああ、顔が熱い!

カッコいいとか言われた事ねぇよ!

 

「も、もう!こっち向いて?」

 

両手で俺の顔を挟み、無理やり上げさせたルーシィの顔は予想より遥かに近く。

うわあ、やっぱ凄い可愛いよな…まつ毛とかめっちゃ長い。あと、凄い良い匂いする。花みたいな。

そうしてルーシィに見蕩れていると、その形の良い唇から、さらに言葉が紡がれる。

 

「これは、その……お礼!」

 

そう言ったルーシィは、グイッと顔を近づけ、最後には距離をゼロにする。

俺の頬から「ちゅっ」という音がした。

 

そこから先の記憶はない。

呆然としながらも、ルーシィママのお墓参りに行き、いつの間にか合流したナツ達と一緒に、帰りの列車に乗った時、乗り物酔いの気持ち悪さでようやく意識を取り戻したくらいだ。

ちなみに、ハッとして辺りを見回した時に目があったルーシィの顔は真っ赤だった。

……そんなん反則やん。

 

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