(pixivと同時投稿してます)
碇シンジは今、司令執務室に居る。
「話は聞いた。ジオフロント内に職員用だが部屋の空きがある。そこを使え。案内は護衛に任せてある」
いつも将棋を指している副司令の姿は無く、この部屋にはゲンドウとシンジしか居ない。よって、今日はゲンドウ自身がシンジと会話をしている。
「分かりました。ありがとうございます」
「問題無い」
親子とは思えない会話である。其れもその筈、この親子は地球1、いや、宇宙1仲の悪い親子なのである。例えば、普通の鶏と卵の親子丼だと、仲良く混ざってご飯の上に乗っかっているものだが、この親子の場合は、鶏と卵が綺麗に分かれ、尚且つ少し離れているくらい仲が悪いのだ。
「失礼しました」
「問題無い」
何故この男は『問題無い』でしか返せないのだろうか。魔女に呪いでもかけられたのだろうか。そんな風に普通の人なら疑問に思うが、シンジはそんな父を気にする事なく部屋から出て行った。
シンジが保安部の案内人と歩いていると、見知った顔がベンチに座っていた。
「よう、シンジ君じゃないか」
「加持さん!」
シンジは驚いて声高になる。
「どうしたんだ、保安部なんか連れて」
「僕、ジオフロント内に住む事になったんです」
「葛城は何も言わないのか?」
リョウジは疑問に思う。ミサトはシンジを弟の様に可愛がっていた。其れに、時々自分にシンジを自分に重ねている様にも感じていた。そう簡単にシンジを手放す筈は無いだろう。
「はい、まぁ…」
シンジが言い淀むのを見ると、リョウジは案内人と話し始める。会話が終わると、案内人はリョウジに一礼して、立ち去って行った。
「シンジ君、たまには俺とお茶でもどうだ?」
「僕、男ですよ…」
2人はカフェに来ていた。リョウジは店員にコーヒーとカフェオレを頼むと、近場の空いている席に座る。
「俺の行きつけなんだ」
リョウジは少し自慢げに言う。
「落ち着いた、良い雰囲気ですね」
「だろ?」
リョウジがニヤリと笑う。するとそこへ、先程頼んだコーヒーとカフェオレが運ばれてくる。リョウジはコーヒーを一口飲むと、珍しく真面目な顔でシンジを見つめる。
「シンジ君、家出なんてどうしたんだ?」
「ど直球で聞いてくるんですね」
「まぁな、それだけ心配って事さ」
「葛城さんが、でしょう?」
シンジは少し怒りを込めて言う。そんなシンジの怒りにリョウジは少し驚く。
「君が怒るなんて、よっぽどだな。葛城とアスカは一体何を仕出かしたんだか…」
リョウジは殆ど溜め息のような声で言った。考える。やらかすとしたらアスカだろう。まぁ、ミサトにも充分問題が有るだろうが。
「シンジ君、君はアスカをどう思う?」
「他人の気持ちも考えられない、外面だけの最低の奴ですよ」
シンジは今までの事を思い出して、怒りを滲ませる。彼の普段の様子からは想像も出来ない言葉だった。
「そうか…」
それを聞いたリョウジは、昔の事を思い起こして、遠くを見た。
「アスカは、昔からパイロットになる為だけに生きていた。今まで自分の全てを棄てて、ここまでやってきた。だから、何も知らないんだ。………シンジ君、俺はオーバーザレインボーで初めて君と会った時、君ならアスカを変えられると思った。エヴァという呪縛から、アスカを助けてくれると思った。それは、それだけは、今でも変わらない。だからもう少しだけ、アスカを見守ってやってくれ。救ってやってくれ。君にしか出来ない事だと思う」
リョウジは真っ直ぐな眼でシンジを見つめる。シンジの眼は、少し揺れた。
「僕は…許せません」
「まぁ、そう簡単に許せる程、人間出来ちゃいないさ。今はそれで良い。唯、俺の言った事は全部本当だ。だから、頭の隅にでも入れておいて欲しい」
「…分かりました」
「よし、じゃあこの話は終わりだ。そうだ!この後遊びに行かないか?」
「遊び…ですか」
「折角家出したんだ、遊び以外に何がある?」
「ま、まぁ…」
「ボウリングにしよう。シンジ君の護衛とやれば、4人になる」
「流石に護衛の人は…」
「「やりましょう」」
シンジの背中側の席から、護衛2人がひょこっと顔を出す。
「うわあぁ!」
シンジは突然の背後からの声に思わず絶叫する。
「さぁ、行きましょう」
片方がそう言うと、シンジは2人の護衛に引っ張られ、黒塗りのNERV専用車に乗せられる。傍から見れば、ただの誘拐犯にしか見えない。
「ボウリングなんて何年振りだろうな」
そう呑気に話すリョウジは未だ知らなかった。これからボウリング場で始まる悪夢を……………
「シンジ君がボウリングをしたそうだ」
「相手は」
「保安部と加持リョウジだ」
「結果は」
「シンジ君が全てストライク、一人勝ちだよ」
「そうか」
「意外な才能だな」
「…あぁ」
ルカです。
前回の一話ですが、感想を送ってくれた方、本当にありがとうございます。暴れて喜んだ結果、家は全壊、左右の家が半壊、正面の家が火事となりました。嘘です。
今回の話では、シンジ君はNERVに住む事になり、NERVが『新たな、居場所』になった訳ですが、実は他にも色々な案が自分の中でありました。例えば、「シャムシエル戦後のように家出して最終的に見つかる」だったり、「レイに会って、そのままレイの家に住む」だったりとか、とにかく自分の中で必死に考えました。そして、決まったのが「NERV」です。加持さんがシンジ君に話した通り、シンジ君とアスカ、そしてミサトさんの3人で幸せになって欲しいと思います。そのゴールに辿り着ける道はどれなのか考えた時、僕はNERVだと考えました。この決断がどうなるのか、正直作者にも分かりません。
さぁ、次回の三話ですが、多分色々はちゃめちゃになる予感がします。お楽しみに!
それと、作者あまりシリアス得意じゃないんですけど、コメディに振って良いのか迷ってます。ぜひ感想で教えてください。