Wがロドスに合流してからまだそんなに経ってない時に秘書に任命された話

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二次創作は初めてなので初投稿です


Wとドクターとコーヒーの味

「絶対にイヤよ」

 ケルシーの執務室でWとケルシーが面談をしていた。内容は、

「Wにドクターの秘書を務めてもらう」

 というものだった。

「なんであたしがあいつの面倒なんか見なきゃいけないワケ?」

 Wは嫌悪感を少しも隠すことなく言い放った。

「これはドクターたっての要望だ」

「それを言ったところであたしの考えが変わるわけないじゃない。ケルシー先生はそんなことも分からないのかしら?」

 ケルシーの言葉にWは挑発した笑顔で返事をする。だがケルシーは表情を崩さずため息をひとつ着いた。

「そもそもこれはドクターがアーミヤに具申したことだ。アーミヤは彼の頼みをできるだけ聞いてやりたいだろう。アーミヤの願いは問題がない範囲で極力叶えてやりたい。だから私からお前に言ってるんだ。お前ならそれぐらいすぐに気付くと思っていたんだがな」

「あら、あたしのことそんなに高く評価してくれてるの? 光栄だわ、優しい優しいケルシー先生?」

 目を見開き、口角を上げて挑発を続けるWだがやはりケルシーは動じない。

「あまり手間をかけさせないでくれ」

 表情ひとつ変えずにケルシーは静かに僅かな殺気を放つ。

「っ……。あら? 別に私はここであんたとやり合ってもいいのよ? そしたら施設がメチャクチャになるかもしれないけどね?」

 対するWも不敵に笑う。だがケルシーがすぐに殺気を鎮めるとWもつまらなさそうな表情になった。

「そんな脅しが通用すると思うか? そもそもお前に選択権はない」

「はぁ……。そんなの知ってたわよ。やればいいんでしょ、やれば。まったく面倒ね」

「あぁ、よろしく頼むぞ」

「なにが頼むよクソババア。いつかぶっ殺してやるわ」

 こうしてWはドクターの秘書を務めることになった。

 

「そういうわけだからこれからよろしく頼むわね」

 執務室に入ってきたWが挨拶をするが言葉とは裏腹に嫌悪感と警戒を顕にした表情をしていた。

「よろしく頼む」

「じゃああたしは出かけるから。それじゃあね」

 分かっていたことだが明らかに嫌われている。時間をかけるしかないと考えるドクターだった。

 

 それから数日後──。

「W、コーヒー淹れてくれない?」

「分かったわ。少し待ってなさい」

 少しするとWがコーヒーカップを机に置いた。

「ありがとう」

 そう言ってドクターはカップに口を付ける。

「しょっぱい!?」

「あら、ごめんなさいね? 間違えて塩を入れちゃったみたい」

 そう言いながらWは殺意のこもった笑顔を向けていた。

 

 別の日──。

「ハイ、コーヒーよ、ドクター」

 まだ頼んでもいないのにWがコーヒーを淹れてくれた。

「ありがとう。W」

 早速ドクターはカップを口につけた。今日のコーヒーはブラックのようだ。

「あんた、あたしがなにか仕込んでたりとか思わないわけ?」

「どうして?」

「はぁ……。別になんでもないわよ」

 Wはそういうとそのまま執務室から出ていってしまった。

 

 ある日の作戦遂行後──。

 作戦を終えて戻ってきたWの頬には切り傷が一筋入っていた。それについて聞くと、

「別に、爆弾を破裂させた時に破片が飛んできただけよ」

 と答えた。

「Wにしては珍しい」

「いいじゃない。それより今日は疲れたから先に戻るわよ」

 そう言って執務室をでようとするWの手をドクターが掴む。

「……なによ」

「少し待ってて」

 不服そうな顔をしていたWだが来客用のソファに腰をかける。ドクターは応急箱を用意してキズの処置をする。

「っ。ちょっと痛いじゃないの。ヘタクソね」

「すまない」

 悪態をつきつつも処置を受けるWに絆創膏を貼ると、彼女は小さくため息をついた。

「ホント、最悪な気分だわ。あんたにキズの手当をされるなんて、吐き気がするわ」

 そう言い残すと部屋から出ていってしまった。

(ホント最悪よ。あんな殺人犯に少しでも気を許してるなんて……)

 

 また別の日──。

「はい、コーヒーよ」

 最近はなにも言わなくても決まったタイミングでWがコーヒーを淹れてくれるようになった。

「じゃああたしは作戦記録を見てるから、なにかあったら呼びなさい」

 そう言ってWは1人用ソファに寝転んでタブレットを眺め始めた。ドクターは返事をするとカップに口をつけた。

「!!??」

 口に含んだコーヒーはキツいしょっぱさに少しだけ甘さを感じるような味で、ジャリジャリと塩が舌の上に残る。

「W……」

「ちょっと、今話しかけないでくれるかしら?」

 訳を聞こうとWを呼ぶが怒られてしまった。さっきと言ってることが違うと思いながらもドクターはコーヒーを淹れなおしにいった。

 

「どうぞ」

 自分の分を淹れなおすついでにWの分も淹れ、テーブルの上に置く。

「あら、気が利くじゃない」

 コーヒーを一口飲むとWは眉をひそめる。

「ねぇ、これ甘すぎるんじゃないの。あんた記憶と一緒に味覚までどっかいっちゃったのかしら?」

「そんなことないと思うが」

「はぁ……、まぁいいわ。早く仕事終わらせなさいよ」

 Wはそう言ってタブレットに視線を戻す。怒られてしまったドクターはすごすごと席に戻り仕事を再開した。

 

 その後、Wは過去の作戦記録を眺めながら思考を巡らせていた。

(戦い方自体は昔のままなのに昔の戦い方とは明確に違う……。オペレーターを駒じゃなくてちゃんと人として扱って組み立てているわね。撤退もさせるし、被害が少なくなるようにサブプランも展開してる……)

 考えれば考えるほど分からなくなっていく。

(はぁ、ダメね。少し歩こうかしら)

 そしてWは部屋を出た。少し歩くと小さなコータスの少女が目に入る。少女はWに気付くと小さくお辞儀をしてWの横を通り抜けていった。また少し歩くとケルシーと誰も寄せつけない雰囲気を放つ黒ずくめの男がいた。そこでWは気づいた。

(ああ、これはユメね)

 最悪のユメだ。その男を見ると気分が悪くなってくる。怒りが湧きあがってくる。今すぐ殺したくなってくる。しかし実は今まで見ていたのがユメで、今ここであいつを殺せば彼女は死なないんじゃないか。そう思ってフードの男に手を伸ばす。その時、誰かに手を掴まれた。驚いて目を向けるとそこには薄桃色の髪をしたサルカズの女性がいた。

「あっ……。あぁ……」

 Wが言葉に詰まっていると彼女は微笑んでから、Wに背を向けて歩いていった。

「まって!」

 Wは彼女の後を追う。彼女は少し歩くと立ち止まった。そこにはドクターと、名前は忘れてしまったがものを浮かせるアーツを使うオペレーターの女が話しているのを見つけた。彼女の顔はすごく楽しそうに見える。サルカズの女性はそれを愛おしそうに眺めるとまた歩き出す。

 彼女が立ち止まるたびにドクターとオペレーターが交流しているところを見かける。移動している間、彼女は一言も話さなかったが先程フードの男を見た時とは一変して穏やかな気持ちだった。また彼女は立ち止まる。今度は振り返ってWと向き合い、手を取った。

(笑って?)

 声こそ聞こえなかったがたしかに言った。彼女と目も合わせらなかったが言ったことはわかった。Wは握られた手を見つめながら小さく微笑む。彼女はそれに満足したようにWから離れるとロドス内の景色が大きく歪んだ。

(あぁ、醒めるのね)

 なんて都合のいい目覚めだ。戻りたくない。もっと見ていたい。そう思っても景色の歪みは止まらず、背中から落ちる感覚が襲ってきた。

 ──

 目を覚ますとWの体にはドクターのコートがかけられていた。

(ロドスの夢を見たのはこれのせいね)

 体を起こしてドクターの席を見ると少し薄着だがフードだけは着けたままのドクターが居眠りしていた。

(便利な服……)

 Wはドクターに近づくとフードをめくる。

(マヌケな寝顔ね……。過去を忘れてしまえばそんなに楽になるものなの?)

 ドクターの頬に手を当ててしばらく眺めていたWだったが、またフードを被せて部屋を後にした。

 

 翌日の朝──。

 ドクターは前日のやりきれなかった仕事にてんやわんやになっていた。

「起こしてくれればよかったのに」

「あんなに気持ちよさそうに寝てたのに、まさか仕事が終わってないなんて思わなかったわぁ」

 悪態をつきながらWは淹れてくれたコーヒーをテーブルに置く。

「それじゃあ、あたしは出かけてくるわね」

 そう言って部屋から出ていった。入れ替わるようにアーミヤが部屋に入ってくる。

「ドクター、調子はどうですか?」

「大丈夫」

 会話をしながらアーミヤは持ってきた書類をドクターの机の上に置く。

「そうですか。ところでWさんの機嫌が良かった気がするのですが、なにかありましたか?」

「いつも通りだと思う」

「そうなんですね。おふたりが仲良くなれて良かったです」

「仲良いのかな?」

 アーミヤの言葉にドクターは首を傾げる。

「ふふっ。きっとそうですよ」

 それをアーミヤは嬉しそうに笑った。

「さぁドクター、残っている仕事を一緒に片付けましょう?」

 そう言いながらアーミヤは書類を広げる。

 仕事に取り掛かる前にドクターはコーヒーを一口飲む。今日はいつもより甘さが強い気がするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




楽しんで頂けたら幸いです

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