「ふぁ〜」
と、欠伸をしながら俺、不知火 紅汰(しらぬいこうた)は授業を受ける。勉学が重要なのは良く理解しているが眠いものは眠いのである。ましてやめぐねえの優しい声で教科書の朗読なんぞされれば、それはもう寝ろと言われたようなものだ。だから俺は寝る。おやすみな「えい」とはいかなかったようだ。俺の安眠はめぐねえのまぁまぁ痛いチョップによって邪魔された。
「こら〜!紅汰くん、なに普通に寝ようとしてるんですか。まったくもう。」
「だってめぐねえの朗読心地よすぎるんだよ。それはもう寝ろと言われたようなものなんだよ。」
「どんな理論ですか!?」
プンプンといった様子でめぐねえが怒る。
めぐねえは俺の事になると敏感だ。例えば俺が小学生のときは家出した俺を30分で連れ戻し、高校デビューで髪を染めようとしたらいきなり家に押しかけられ染色剤を没収されたこともある。何が言いたいかと言うとめぐねえって何故か俺に厳しいんだよな。
「とにかく、今日の放課後は補習ですからね!」
「えぇ〜」
ほらな?また補習だよ。ちょっとした事ですぐにこれだから彼女も出来ないし…まあ高校卒業までは作る気ないからいいけどさ。寝よ。
「zzz」
「こら〜!言ってるそばから寝ちゃだめです!」
そんなこんなでもう四時半。只今絶賛帰宅中。
え、補習?速攻で終わらせた。(途中で逃げたとも言う)
にしても今日はやけにパトカーや救急車が多いな…なにかあったのか?人通りも少ないし…
「ってあれは…まずい!」
横断歩道を渡る小学生くらいの少女。途轍もないスピードでそこに襲い来るトラック。少女は気付いていない。体が勝手に走り出す。常人には届かないだろうが俺なら届く。少女を突き飛ばす。直後、トラックにぶち当たり体が宙を舞う。体から血が流れ出る。
「キャ〜!」
「お、お兄さん!お兄さん!」
トラックは走り去ったようだ。にしても騒がしい。これぐらいで死なねえっての。体を起こす。立ち上がる。良かった。少女は無事のようだ。
「えっ!」
「貴方、動けるの!?」
少女は驚き、隣の…なんだ。内の高校の生徒か。
「まあ、色々事情があるんだ。説明は…俺の家でしようか。ついて来てくれ。」
二人はコクコクと頷き了承してくれる。早く帰らないと面倒な事になるしな。
︙
︙
︙
siteりーさん
紅汰宅
「とりあえず着替えてくるから適当に寛いでてくれ。」
と、言い残し彼は血まみれのまま奥の部屋に入った。るーちゃんを救ってくれた彼は、確かにトラックに轢かれた。しかし、彼は直ぐに起き上がり、事情を説明するといってこのマンションまで私とるーちゃんを案内した。訳がわからない。トラックに轢かれて直ぐに動ける人間はいない。いやそもそも生きているだけでおかしいのだ。るーちゃんを助けてくれたのに感謝はしているが、私は彼が怖い。まるで夢を見ている気分になって頬をつねる。
「痛い…」
「りーねえどうしたの?」
「な、なんでもないのよ。」
るーちゃんに心配されて誤魔化す。そんな事をしていたら、彼が奥から出てきた。シャワーも浴びたのか髪が濡れている。服も灰色のパーカーに黒いジャージと、少し適当過ぎると思うようなふうに変わっていた。
「おまたせして悪いな。改めて自己紹介から。
俺は不知火紅汰、巡ヶ丘高校三年生だ。よろしく。」
彼が自己紹介をして来たので感情を出さないようにこちらも自己紹介を返す。
「えっと、若狭悠里です。同じ巡ヶ丘高校三年生です。こっちは…」
「わ、わかさるりなの。えっと、さっきはたすけてくれてありがとうなの。」
「悠里さんと瑠璃ちゃんだな。気にすんなって、代わりに怖がらせたみたいだし。で、さっきのことなんだが」
どうやら隠しきれなかったらしい。私が質問する前に彼から話しだした。
「ちょっとSFじみた話になるんだが、俺の母さんの事から説明しようか。」
「おかあさん?」
「ああ、母さんの名は妹紅って言うんだけど、母さんはとある実験施設で人体実験を受けていたんだ。それによって不死身に近い身体構造に作り変えられた。
その力を使って逃げ出したんだけど、逃げた先で俺の父さん、不知火清慈(しらぬいしんじ)と出会った。詳しくは面倒だから省くけどその息子の俺も母さんの力をちょっとだけ受け継いでてな。それで俺も死ににくい体になってるからトラックに轢かれても平気って訳。まあ痛いものは痛いけど。気持ち悪いよな。こんな奴。と、悪いな。えっと分かったか?」
「は、はい。なんとか…」
「るーはよくわからないの???」
私はなんとか呑み込めたが、るーちゃんは駄目だったようだ。でも…
「でも、紅汰さんはるーちゃんを助けてくれました。感謝こそすれ、気持ち悪くなんてまりません。」
「!?、そうか…ああ、この事は他の誰にも秘密な。捕まって解剖なんてごめんだし…」
「わかりました。(たの〜)」
と、同意する。…って今何時?
「ああ〜!もう五時じゃない!帰って晩御飯の支度をしないと!」
「ほんとなの!早く帰らないとパパに怒られるの〜!」
なんて私達が焦っていると、
「おっと、ちょっと話し込み過ぎたみたいだな。もう暗いし、家まで送って行くよ。」
と、提案してくれた。う〜んでも…
「いえ、ここからそう遠くないのでお気になさらず。」
「なさらずなの〜。」
「だとしても送るよ。今日は何処かおかしいし、」
なかなか引いてくれない。どうしよ『ピロピロピロピロ』
「りーねえ、お電話なの。」
「おっと、お父さんからじゃないか?」
そう言われてスマホを取り出す。確かにお父さんだが、どうしたのだろう?
「すいません。もしもし、お父さん。どうしたの?」
『悠里!無事か!?瑠璃もそこにいるな!』
「え、ええ。なにかあったの?」
『説明している時間はない!今どこにいる!』
いきなりお父さんがそんな事を訊いてくる。
「えっと同じ学校の子の家にお邪魔してるけど。」
『そうか!とにかく絶対にそこから動くな!外は危険過ぎる!』
「なんで?何があったの!?」
『すまない。もう時間がない。テレビを見るん…』
そこで電話は途切れてしまった。
site紅汰
「どうしたんだ?」
と、悠里さんに尋ねる。
「お父さんが外は危険だからそこを動くなって。ニュースを見せてくれますか?」
「Okちょっとまて。」
そうしてテレビをつける。
『引き続き臨時ニュースをお伝えします。現在日本各地で大規模な暴動が起こっています。屋外にいらっしゃる方は直ぐに帰宅し、自宅にいらっしゃる方は雨戸を閉めて外に出ないようにしてください。』
そこに映し出されたのは燃える車や崩壊した町並みなど酷い有様だった。
「そんな、こんなに静かなのに?」
「へいおん?なの〜。」
と、リアクションする二人。
「あ〜、このマンション防音設備が狂ったように整ってるからな。それで何の音も聞こえなかったんだと思う」
「そ、そうなんですか…」
と、会話しながらカーテンを開き外の様子を確認する。って何だアレ?人が…人を食ってる?
「なにか見えるの〜?」
瑠璃ちゃんがこっちに来るが
「駄目だ!」
と言って止めるが見てしまう。
「!?お、おええ…」
やはり小学生には酷すぎたようで瑠璃ちゃんは吐いてしまった。そうしていると悠里さんが
「どうしたんです?」
と言って窓に近寄って外を見てしまう。
「!?」
どうやら言葉も出ないらしい。
こいつは…面倒な事になりそうだ。
悠里さんが落ち着いたのでこれからについて話し合う事にした。瑠璃ちゃんは寝ている…というかあれは気絶に近いか。都合はいいので寝ている間に終わらせてしまおう。
「さて、外の『奴ら』についただが、聞いてくれるか?」
「は、はい…」
「これは推測に過ぎないのだが、『奴ら』はいわゆるゾンビ、もしくはそれに準ずる物であろう。よって噛まれたり傷一つつけられれば感染、そのまま『奴ら』の仲間入りだろう。よって此処で救助を待った方が良いだろうが…恐らく期待出来ないだろうな。」
「どうしてですか?」
「ニュースで見た通り首都圏は陥落しているだろう。であれば国会や内閣府も駄目だろうな。たとえ生き残りがいても官邸対策室への移行は不可能に近い。と、なれば救助隊も派遣出来ない。」
「は、はあ。でもとりあえずは籠城するしかないと思いますが?」
「と、思うだろうがこのマンションは籠城するには脆すぎる。入口はガラス戸の上一つだけだから直ぐに入られるし一斉に『奴ら』が押し寄せればここはそのまま棺桶になる。とはいえこのマンションの入居者は軽く120人だから協力すればなんとかなるだろう。」
「な、ならその生き残りの方達と協力すればなんとかなるんでしょう。」
「協力すれば、な。考えてみろ。食料はすぐに無くなるだろうから奪い合いになるのは必然だ。」
そう、問題は食料だ。ここにいても助かる訳がない。
「じゃあ…じゃあどうすればいいんですか!!例えそうだとしてもここ以外に何処に行くんですよぉ…」
と悠里さんが泣き崩れる。さて、ここからが本題だ。
「内の学校だよ。」
「え?」
そう、あの学校は、
「あの学校は避難所としてはベストだ。発電設備、地下水を汲み上げろ過する浄水設備、それにもちろん食料もたっぷりある。少なくともここよりはマシだ。」
ここで一度区切り、
「そして何より近い。ここからなら500メートルって所だから瑠璃ちゃんを連れていてもリスクが低い。よって俺はあそこがいいと思う。」
と、一番の理由を明かす。そうすると悠里さんは納得した様子でうなずいた。
「移動は瑠璃ちゃんが寝ている間に行いたい。アレをまた見たら、次は瑠璃ちゃんの精神が崩壊しかねない。だから今、動くぞ。悠里さんはキッチンにある食料をまとめてくれ。カバンは奥から持ってくる。」
「わかりました。」
そうしてと悠里さんは行動を開始する。とりあえず、奥のアレも持っていくとしよう。
「紅汰さん、こっちは準備出来ましたってなんですか?
その大荷物。」
と、悠里さんは呆れたようにこちらを見る。
「武器だよ。流石にこんな状況で一体とも遭遇せずとはいかないだろうし。」
「ああ…」と、悠里さんは頷く、と同時に苦い顔をした。
「心配しないでくれ。あくまで護身だ。進んで倒しはしないよ。さて、」
瑠璃ちゃんはまだ眠っている。この様子なら移動中に目を覚ますことはないだろう、と思う。ってあ。
「あの…悠里さん。戦闘は俺がするので瑠璃ちゃんをお願いしたいのですが…」
と頼み込む。そしたら悠里さんは「はあ…」と溜め息をつき、
「しょうがないですね。まったくもう。大きい弟が出来たみたい。」
なんて言い始める。
「と、とにかく行動開始だ!」
「おおー」
移動は順調だった。何故かわからないが学校まではほとんど『奴ら』と遭遇しなかったのである。
そう、学校までは…
「な、なんて数なの?」
校庭には50体はいるであろう『奴ら』がいた。これでは到底校舎な入れない。しかも、そのほとんどが校門、つまりこちらに向かって来ている。
「ん、ここはどこなの?」
さらに最悪のタイミングで瑠璃ちゃんが目覚めた。仕方ない、か。
「悠里さん、瑠璃ちゃんの目を隠してあげてて下さい。こいつらは俺がなんとかします。」
「そんな!無理よ!?こんな数「いいから!」わ、わかったわ。」
よし、これで思う存分戦える。
「ゾンビに炎は良く移る」
そう言って俺は両の
「!?それは?」
後ろで悠里さんが驚いているようだ。当然だろう。常人には炎は操れないのだから。
「灰は灰に。土は土に。吸血殺しの紅十字!」
カッコつけて適当に無意味な詠唱を唱える。と、同時に炎を撃ち出す。
全ては灰に熔けた。
「さて、行こうか?」
「え、ええ。」
どうやら悠里さんはあまり驚いていないようだ。まあ、屋上からこちらを見ている人を含めて説明が必要だろうな。
そこからは難なく校舎に入り、生存者がいた屋上を目指した。やはりこちらに気付いていたようで扉を開けて待ってくれていた。
「さて、自己紹介といこうか。知っている人もいるだろうが三年生の不知火紅汰だ。」
「三年生の若狭悠里です。園芸部部長も務めてます。
こっちは妹の」
「わかさるりなの。よろしくなの。」
「えっと、三年生の丈槍由紀だよ。よろしく。」
「三年生、陸上部の恵飛須沢胡桃だ。よろしく。」
「国語教師の佐倉慈です。よろしくお願いします。って紅汰くん!さっきの炎はなんなの!?私あんなの知らないわよ!」
「そりゃ言ってないし。まあ、本当の事を話そう。」
場の空気が変わる。…なんか言いづらいな。
「まず、悠里さんと瑠璃ちゃんに謝らないとな。人体実験の下りは全部嘘だ。」
「え?」
「そうなの?」
と、悠里さんと瑠璃ちゃんが反応する。
「ああ、本当はもっと現実離れしてるんだよ。
結論から言うと俺の母さんは不死鳥の力を扱う事が出来る。その力を俺も受け継いでいるからさっきのように炎を扱えるんだ。さらに母さんはかぐや姫に出てくる蓬莱の薬を飲んで不死身になった『蓬莱人』と呼ばれている。その血も流れているから半不死身って訳でな。寿命以外で死ぬ事はないらしい。質問は?」
と、足早に説明すると、めぐねえが手を挙げた。
「ほいめぐねえ。」
「なんで隠してたの、なんで私にも隠してたの。」
「…だって嫌われると思ったし。」
「そんな事ない!だって私は紅汰くんの事が…」
「俺がなんだって?」
「な、なんでもないもん。」
相変わらず可愛いな。それと、
「めぐねえ、口調変わってるよ?」
あ、由紀が先に言った。
「へ?あっ!コホン、とにかく、今日はもう暗いことだし寝ましょうか。」
確かにもう夜遅い。なので
「そんじゃ、ベッドメイキングといこうか。悠里さん、ブルーシートってあるよな。」
と、尋ねる。
「ええ、あるわ。こっちよ。」
そして寝床を作り、俺は少し離れて眠りについた。
感想をくださると作者は燃えながら喜びます。
余談ですがいつもより文章崩壊しております。