パーン・パーン・パーン! ー飛空艇事故の真実と真相ー   作:鈴本恭一

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セールーン飛空1990便墜落事故②:到着

○ガウリイ=ラファエフ(四魔協(四大陸魔剣士協会) セールーン市魔剣士協会代表。魔剣士)の証言

 

『待ってろよ、リナ=シャブラニグドゥス!!』

 

 俺たちはそう言って飛空艇に乗ったんです。

 

 俺たち、いえ、私たちはセールーン市魔剣士協会の魔剣士で、団体リーグ専門チーム『ジャスティスセールーン』に所属してます。

 

 魔剣士の団体リーグは個人リーグに比べると新しくて、セールーンには団体リーグのチームがありませんでした。

 そこで私達が初めて四魔協のカカナ団体リーグへ出場したんです。

 もう快進撃でしたよ。

 初出場のチームが強豪チームを次々に破る、竜人の言葉で言うジャイアントキリングに、セールーンのみんなも喜んでくれました。まさに街の代表でした。

 夢みたいで、あの興奮と熱狂は今でも色褪せません。

 

 そしてついに、カカナの団体リーグの頂点を決める決勝戦へ行けることになったんです。

 相手はジョルム市代表チーム『ルビーアイ』

 

 ……まぁチームって言っても、あっちは1人でしたけど(※当時の規定では4人以下であれば1人でもチーム登録可能)

 

 もっとも団体リーグの歴史が浅いって言ったって、1人だけのチームが決勝戦に来るなんて今までありませんでした。

 でも、その1人だけのチームは、ただの1人じゃありません。

 

 なんせ、あのリナ=シャブラニグドゥスなんですから。

 

 

 

 

 

○リナ=シャブラニグドゥス(四魔協 世界王者。骨羽の翼人。魔剣士)の証言

 

 私はその日、ワッサタウンの空港にいました。

 雨が降っていました。

 夜でしたけど、待合室で、彼らを待っていました。

 ジャスティスセールーンを出迎えたかったんです。約束してたわけじゃないですけど。

 

 彼らの試合は何度も見ました。

 とてもきれいなチームでした。4人一緒だと、大陸王者と同等かそれ以上にきれいな技を繰り出せるんです。

 

 とても感動しました。わくわくしました。

 試合で彼らに斬られる名誉を貰うのか、彼らへ私に斬られる名誉をあげるのか、予想が付かなくて。

 初めて負けるかもしれないと思ってわくわくして、コーチ達に黙ってこっそり空港に行ってしまったんです。

 

 まぁ、この羽のせいですぐに私がそこにいるってバレちゃったんですけど。

(と、彼女は骨だけの翼を示す)

 

 飛空艇はこわいので乗ったことはありません。セントラル島の世界大会に行ったときも船を使いました。飛空艇だと魔剣を手荷物に持って行けないそうですし。

 

 とにかく、空港の待合所で、魔剣を持ってる骨羽の翼人がいるってことで、色んな人に囲まれました。ジャスティスセールーンがその日の便で来ることもみんな知ってて、もう大変でした。

 

 

 

 

 

 

 

○ガウリイ=ラファエフ(ジャスティスセールーン キャプテン。魔剣士)の証言

 

 その日に乗っていたのは、セールーン飛空の飛空艇で、ギボネー社製のヘクター号型でした。

 出発が2時間近く遅れて、夜の9時になってやっとセールーンを出たんです。それでワッサタウンの空港に着陸しようとしたときには、夜11時半を超えていました。

 

 私は憧れの世界王者に会えると思って、眠れませんでした。

 私たち4人は魔剣士になるまで、その日の食い物にだって困った惨めな暮らしをしてました。

 だから、惨めの代名詞みたいな骨羽が世界王者になったって聞いて、感動したんです。

 骨羽は他の翼人と違って飛べないので、結束が固いはずの翼人から仲間とは思われないそうです。

 他の人間からはなおさらです。俺たちより惨めだったでしょう。

 

 だから、リナ=シャブラニグドゥスは憧れです。

 

 彼女のようになりたくて、魔剣士の修行をこれでもかと打ち込みました。

 ずっと夢の中にいるようでした。

 4人でチームを組んで、決勝戦まで来られたのでさえ現実感がないのに、その決勝の相手がリナ=シャブラニグドゥスですよ? 信じられますか?

 

 誰かが俺たちに、この時この飛空艇でここに行け、って命じてるような、そんな気さえしました。

 

 

 ………出発が2時間も遅れなかったら、あの事故は起きなかったでしょうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

○アンディ=ブルースロット(ワッサタウン・ロイヤーズ国際空港 入域管制席担当(当日))の証言

 

 あの事故があったのは、金曜日の夜でした。

 天気は崩れてて、ただでさえ忙しい週末をさらにややこしくしてくれました。

 週末というのはどの空港も慌ただしく、スケジュール通りに進まないこともよくあります。

 

 セールーン飛空の1990便も相当遅れて、空港の管制へ呪文を詠唱してきました。

 

『ワッサタウン・アプローチ、セールーン1990、フライトレベル160を維持』

『セールーン1990、ワッサタウン・アプローチ、針路300に向かい、魔導誘導にて01R滑走路の最終進入経路へ。降下して9000フィートを維持』

『セールーン1990、了解。針路260に向かい、魔導誘導にて01R滑走路、降下して9000フィートを維持』

 

 南側から来る1990便へ進入経路を指示して少し経った後、1990便から連絡が来ました。

 

『ワッサタウン・アプローチ、セールーン1990、針路305に雷雲を確認。コースの変更を要求します。迂回させて下さい』

 

 その雷雲はその日ずっとあって、天気の悪さの原因でした。

 しかし距離を取れば問題ないので、私は1990便に呪文で伝えました。

 

『セールーン1990、雷雲をこちらでも確認しています。そのコースは雷雲の10カイリ横を通過できます。他の40機も問題なく通過できています』

『ワッサタウン・アプローチ、セールーン1990、こちらの探知機器で捕捉した雷雲は針路を塞いでいます。コースの変更を要求します』

 

 1990便の機長は慎重でした。

 飛空艇にとって風の精霊は恵みにもなりますが災いにもなりますから、神経を使うのは当然でした。

 なので私は1990便のコース変更を許可しました。

 

『セールーン1990、では針路060へ。目標は魔導灯台"ギガス"。通過したら報告を。その後を指示します』

『針路060、魔導灯台"ギガス"、セールーン1990了解。ありがとう』

 

 それからしばらくして、1990便が"ギガス"の通過を報告してきました。

 

『ワッサタウン・アプローチ、セールーン1990、魔導灯台"ギガス"を通過。高度12000フィート』

『セールーン1990、ワッサタウン・アプローチ、左旋回して針路280、目標は、魔導灯台"ルリン"。降下して9000フィートを維持』

『セールーン1990、了解。左旋回で280、魔導灯台"ルリン"、9000フィートに降下』

 

 ところがそこで、1990便の前を飛ぶ別の飛空艇がいました。ロードース1988便です。

 セールーン機の速度ではロードース機に近付いてしまいます。

 両機を5カイリ、約9キロメートルは離したかったので、減速を指示しました。

 

『セールーン1990、200ノットに減速』

『200ノットに減速、セールーン1990』

 

 そして1990便が滑走路への進入コースに入ったので、許可を出しました。

 

『セールーン1990、ワッサタウン・アプローチ、01R滑走路への魔導誘導による進入を許可します』

『ワッサタウン・アプローチ、セールーン1990、01R滑走路への魔導誘導による進入を許可』

 

 またセールーン1990便が5カイリ手前まで来たので、空港の飛行場管制席へ呪文を唱えるよう指示しました。

 

『セールーン1990、ワッサタウン・タワーと交信して下さい』

『ワッサタウン・タワーと交信、セールーン1990』

 

 これでセールーン1990便は飛行場管制の管轄になりました。管制魔導卓が自動で運航票を飛行場管制の魔導卓に送り、私は他の便に注目することが出来ました。

 

 なんの問題もない、通常通りのよくある手続きのひとつでした。

 

 そこに連邦気象局からの速報が入り、それを全ての飛空艇へ通達しました。

 

『全飛空艇へ連絡。空港南側でやや強い雨。着陸時に雷雨が予想されます。注意して下さい』

 

 

 

 

 

 

 

 

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