パーン・パーン・パーン! ー飛空艇事故の真実と真相ー   作:鈴本恭一

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セールーン飛空1990便墜落事故⑨:ドラゴンスレイヤー

 

 

 

 

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※ 以下、番組放送時の未収録インタビュー(初回購入者特典)

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○匿名(新型気象ゴーレム(飛空艇搭載型)試験志願者№3。通称カオティックブルー)の証言

 

 リナ=シャブラニグドゥス? いやぁ知らないなあ。なんのことかさっぱりだね。

 

 そりゃ私の飛空艇はね、あんとき雷雲に向かって飛んでたよ、セントラル海で。そう、オックスラントの沖ね。嵐に突っ込んでこいっていうのが気象局からのお仕事だからね。

 

 ん? なんでって、新型気象ゴーレムのテストだよ? あれを飛空艇に乗っけてちゃんと使いものになるか試したいって、気象局が志願者を募集してたでしょ? だから嵐に飛んでったんだよ、うちらストームハンターだもん。

 

 ストームハンター知らない? は? 嘘でしょ? やっべえ嵐とか台風が来たらそれの観測をするお仕事だよ? 連邦気象局から業務委託されてる立派なとこよ? ほんとに知らない? あ、知ってる? ならよし(と彼女は左右で違う色の青い瞳を満足げに細める)

 

 でね、その日もオックスラントの沖で雷雲があってね、飛空艇でとっこんでったわけ。

 ほら、ワッサタウンで飛空艇が竜に墜とされたじゃん? あれ以来、あっちこっちで新型の気象ゴーレムのテストしてるわけ。モノも良かったよ。不具合も全然ないし。どこまで良さげなこと出来るかな、って私は楽しんで仕事してた。

 

 それで、嵐の中をどんどん私たちは進んでいったわけ。嵐の外から中から色々と使ってみたいじゃん?

 雨やら雷やら凄かったねー。いつものことだけどさ。

 でもそのときは、ちょっといつも通りじゃないことがあったね。

 1万フィートくらい? 3000メートル? そんくらいの高さ飛んでたときかな?

 

 

 ………竜が、下にいたんだよ。

 

 

 びっくりするくらい近く。

 飛空艇の後ろ斜め下、たぶん100メートルも離れてなかったんじゃないかなあ。

 そんなとこにさ、細長い身体した雲竜がいたんだよ。羽はないし、小さな手足だし、でも体の長さは40メートルくらいあったなあ。長い髭とか鹿みたいな角とかはっきり見えたもん。

 

 みんなびっくりしてさ、こんなこと滅多にないからもっと近寄って見てみようぜ、ってなったの。

 

 こっそりこっそりしてさ、でも竜は全然こっちに何もしないの。みんなそのうち大胆になって、思い切って30メートルくらいにまで近付いたの。そう、上から見下ろす感じで。

 

 

 ……そのときだったかな。

 その雲竜がさ、急にびったんってして海に急降下してったの。

 

 

 あたり一面、めっちゃくっちゃに雷が光りまくったね。上も下も右も左も、全部の雲から稲妻が出てんの。飛空艇の周りの空間が丸ごと雷に変わったんじゃないかってくらい。目ぇ灼かれて潰されるかと思ったねえ。すごかったねえ。

 轟音と暴風で馬鹿みたいにシェイクされてさ、いやよく墜落しなかったもんだようちの飛空艇。

 新型のゴーレムのおかげで風を読みやすかったのもあったし、大したゴーレムだったよアレ。今じゃどこもかしこも誰も彼も使ってるもんね、あのゴーレム。

 

 

 ん? いやだから知らないってリナ=シャブラニグドゥスなんて。

 

 シャブラニグドゥスがうちの事務所に来たかもしれないけど、あのときの仕事とは関係ないじゃん?

 こっそり飛空艇に乗り込ませた? いやいや部外者を入れるわけないじゃん。

 竜に近付いたとき、シャブラニグドゥスを外に放り出した? 何それ怖っ。骨羽って翼人と違って飛べないんでしょ頭おかしいんじゃない?

 

 とにかくね、私の飛空艇にシャブラニグドゥスは乗ってなかったし、シャブラニグドゥスが竜をぶち殺すのにうちらは何も関わってないから。

 

 いや確かに通報はしたよ? 竜の死体の近くで人が溺れてるって。海難事故ですもの、連邦市民であり飛空艇乗りの義務よ義務。

 

 とにかくドラゴンスレイヤーとストームハンターはなんの関係もないのよ。これほんと。

 

 

 

 

 

○アラン=ファース(オックスラント漁業組合 組合長)の証言

 

 そりゃ驚いたなんてもんじゃないですよ。

 竜ですよ? 生まれて初めて見ましたよ、あんなの。

 

 嵐が来るんで、組合のみんなに呼びかけたんですね、港から。船を海から引き上げろって。

 このあたりは夏の嵐なんて珍しくないんで、やめとけって言うのに沖に出るのがいましてね。

 で、そんな沖に出てる船のひとつから連絡があったんですわ。

 

『竜が陸に向かって飛んでる』って。

 

 んな馬鹿な、と思ったんですが、港のみんなで遠眼鏡つかって沖を見たら、本当に飛んでたんですな、竜が。ヘビみたいな細長いやつが。こっちに向かって。

 

 飛んでた高さは600メートルもなかったはずです。そんな低いところを飛ぶとは聞いたことがなかったんですが、おかげでじっくり様子が見えました。びっしり立派な鱗のあちこちに、手傷を負ってましたわ。

 

 それが港の上に飛んできたんですよ、聞いたことのない声で吠えながら。

 

 いやぁおっかなかったです。もう、吹き飛ばされるかってくらいに嵐が暴れまくるし、昼のはずなのに真っ暗になるし稲光もしまくるし、雷が港の上を蜘蛛の巣みたいに覆ってひどい音がいつまでも鳴りまくってあちこち揺れて。

 

 で、そんな中で竜はぐるぐる捻るみたいな動きで飛んでって、また海の上に戻ってったんですね。

 

 そんときですわ。

 竜の顎の下あたりからでしたね。

 黒くて赤い、でも紫がかったような閃光が、上下にスバアァッって走ったんですね。

 

 で、次の瞬間にパッて独立祭の花火みたいに光が咲いて、ちょうど竜の頸らへんを斬り落とす感じで広がりましたわ。

 きれいだなぁ、なんて我ながら呑気に思ったんですよ。

 

 

 ……って見てたら、本当に、竜の頭が落ちたんですよ。首から先が。ぽろっ、て。

 

 

 首なしになった竜はそのまま海に落ちてきました。

 

 で、港の事務所に海難事故の連絡が入ったんですわ。。

 『竜が落ちてったあたりに溺れてるのがいる』って聞いて、私らも慌てて船出して向かいました。

 

 いやそんときは、それが世界王者だなんて知らなかったですよ。

 溺れてるっていうか、ほとんど黒焦げだったしあちこち凍り付いてたしで、ひでえ状態でした。

 背中の骨だけの羽もあって、アンデッドじゃないかってびびりまくりましたよ。剣を握ってる手なんか柄と掌が火傷で癒着してましたし。

 

 でもアレで生きてたんですから、魔剣士っていうのは凄いもんですなぁ。

 

 竜の死体?

 あれは、なんとかって魔導の研究所が持ってっちゃいましたわ。

 金髪の姉さんと銀髪のお嬢さんが、2人だけであのでかい死体を海から浜に引っ張ってったときは、目を疑いましたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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