パーン・パーン・パーン! ー飛空艇事故の真実と真相ー 作:鈴本恭一
○ミリィ=セレネイド(事故調査チーム)の証言
一日丸々休みを貰った私は、生存者のロア操縦士が入院しているリマガ総合病院へバルタザーレさんと一緒に訪れました。
ロア操縦士は救助されてから5日間、意識がありませんでした。
意識が戻り、聴取ができるまで回復したのは幸運でした。もし彼まで亡くなっていたら、この事故の謎は解決できなかったと思います。
『……離陸するまでは、特になんの問題も起きませんでした』
ロア操縦士はベッドで横になった状態でしたが、私達の質問に答えてくれました。
『カトルラック機長が念入りに除氷をさせて、防氷の時間も気を付けていました。待機時間はありましたが、それでも規定通りに離陸しました』
『ええ、仰る通りでした。その後に起きたことだけが、どうしても分からなくて』
『離陸して、すぐでした。バンッ、バンッ、という音と振動がありました。そして、エンジンの出力が下がったんです』
エンジンサージだ、と思いましたが、口には出しませんでした。余計なことを言って生存者の記憶にノイズを発生させちゃまずいのは、私にも分かりました。
『機長がスロットルを上げても効果はなく、ついにエンジンが停止しました』
『……』
そこで、私とバルタザーレさんは顔を見合わせました。
ロア操縦士は私達の仕草に気付かず、
『まず右エンジンが止まり、程なく左エンジンも止まりました。緊急事態用呪文を詠唱しましたが、魔力源を喪ったため管制からの応答はありませんでした……私が憶えているのは、そこまでです』
『分かりました。思い出すのもつらいでしょうが、機内で何か他に気付かれたことはありませんでしたか?』
そうバルタザーレさんが尋ねると、ロア操縦士はビクッと体を震わせました。
『……いえ、他には何も』
『本当に?』
『……』
『お願いです』
『私の記憶違いかもしれません』
『構いません。検証は我々の仕事です』
『……声が、したんです』
『声?』
ロア操縦士は頭を振って震えながら、
『笑い声が、したんです。離陸したのと同時に。そのときは小さなもので、機長達も気付いていなかったんです。なので、私の空耳かと思ったんですが……あの爆発の音が起きると、どんどんはっきり笑い声が聞こえてきたんです。子供のような笑い声で、うろたえる私達を面白がってるような、そんな声でした』
『………なるほど』
私はその証言で、3564便に何があったのか、あたりが付いたんです。
『バルタザーレさん、お願いがあります』
『なんだ?』
『飛空艇を借りれませんか? 小さいので構いません。空港に置きたいんです。天気が事故の日に近い、今のうちに』
私の目論見を、バルタザーレさんはすぐに理解してくれました。
そしてワッサタウンの事故調査委員会の本部へ連絡しました。
『モローズ号型を1機、手配してくれ。3564便と同じ仕様の飛空艇を』
……小さいのでいいって言ったんですけどねえ(と彼女は苦笑)