パーン・パーン・パーン! ー飛空艇事故の真実と真相ー 作:鈴本恭一
○アレッサンドロ=エルミ(王立ワイバーン訓練校 上級教官)
あの日のリタリーニャ空港には、多くのワイバーンと訓練生がいました。
3段階ある卒業試験のうち、最初の試験が行われていたからです。
王都の訓練校だけでなく、あちこちの訓練校から教官と生徒がやってきていました。
幼馴染みのフランチェスコ=ガルコにも、そこで会いました。
『フラー! 久方ぶりだな』
『アレックスじゃないか、君も来てたのか!』
私達はワイバーン繁殖場のある街で育ったので、小さな頃から飛空騎手に憧れて育ちました。
私達が飛空騎手になった頃には、多くの飛空騎手が飛空艇への仕事に就いていました。私達も誘われたのですが、ワイバーンにしがみつく仕事を捨てる気にはなれませんでした。
『君も試験の監督かい』
『ああ。その言い方だとフラー、君もか』
『まあね。けど実を言うと、この空港は初めて来たんだ。ワイバーンポートからの飛空計画を出してる。ポートがすぐ見つかるといいんだけど』
その言葉に、私は驚きました。
『おいおいフラー、リタリーニャのワイバーンポートは使えないぜ? 知らなかったのか?』
『なんだって?』
『ここのワイバーンポートはずっと前から閉鎖されてる。ポートにヨロイドオオスギが生えたからな』
『え、あの空港のポスターに映ってるやつかい? 空港の中に生えてる?』
『そうだ。今じゃ名物さ。だから試験で使えるのは、滑走路22だけだ』
『そんな馬鹿な。だって試験のための飛空計画はずっと前に提出したし、承認もされた』
『Aプランだろ? ワイバーンポートを使うやつ。滑走路を使うBプランも提出しろって言われなかったか?』
『言われた』
『だろう? そっちも承認されたはずだ』
『けど空港からは何も………』
と彼が言ったとき、フランチェスコは空港管制から呼び出されました。
それに応じ、戻ってきた彼は苦笑して、
『ポートは使えないから、試験はBプランで実施してくれってさ』
私は笑いながら彼の肩を励ましてやりました。飛空艇の空港なんてそんなもんさ、と。
………そうこうしているうちに、空港の天候は急に悪化していきました。
濃い霧が、空港全体を覆い始めたのです。
『いやな天気だ。飛べなくなるかもしれない』
ワイバーンの飛行は、計器類に頼らず飛空騎手とワイバーンの感覚が頼りのため、気象条件がかなり厳しく決められています。
特に視界の良し悪しは最も重要で、飛空艇と違い雲霧の中を飛ぶことは禁じられています。
ただし地上を移動する分には、その限りではありません。
『予報では、霧はそれほど長く続かないらしい。悪いなアレックス、生徒がそろそろ来る。Bプランのせいで打ち合わせをやり直さないといけない』
『滑走路に着いたらちゃんと報告しろよ。迷子の呼び出しをされたくないなら』
『よしてくれ、訓練生じゃあるまいし……そろそろ行くよ。ケールにも覆いを付けないといけないし』
『ケール? 今日のワイバーンの名前か?』
『ああ。いい子だから後で会ってくれ』
『分かった。霧には気を付けろよ。俺の生徒はもっと後になる。終わるまで待っててくれるか?』
『いいとも。美人のいる店を見付けてあるから、勝手にどっか行くんじゃないぞ』
『君が落ちなきゃね』
お互いに笑い合って、それじゃ、って別れました。
(そこで、彼は目を手で覆った)
……今でも後悔しています。どうしてあんなことを言ったのか。
頭の中で、誰かが言うんです。
お前があんなことを言ったせいで、あの事故は起きたんだ、って。