愛しきものたちへ   作:砂岩改(やや復活)

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第12話

 

 無事にカーペンタリアに辿り着いたミネルバ一行はエリア指揮のもとカーペンタリア基地に隣接する街のレストランを貸し切り宴会を開いていた。

 

「このローストビーフ美味しい!」

 

「このマルゲリータ食べてみろよ」

 

 どんちゃん騒ぎとは行かないが全員がやっと味方の基地に入港できたという安心感からか楽しそうにしていた。

 ミネルバクルーの一部はエリアの教え子ということもありそのメンバーを中心に多くのクルーが参加していた。

 

「エリアさん」

 

「シン、美味しいか?」

 

「はい、本当にありがとうございます。でも良いんですか?」

 

「何が?」

 

「全員分、エリアさん持ちなんて」

 

「気にするな」

 

 心配するシンを優しく撫でてやると彼は少し照れ臭そうにする。

 

「シン、こう言うのを聞くのはヤボと言うものだ」

 

「レイ」

 

 レイも楽しんでいるようで皿の上には山盛りのラザニアが乗っていた。

 彼自身、あまりこういった大衆店と言うものに行ったことがなく中々に新鮮な気持ちでいたのだ。

 

「楽しんでくれているようで何よりだ。レイにもいつも世話になっているからな」

 

「いえ、自分も助けられてばかりです」

 

「じゃあ、お互い様と言うことにしておこう」

 

 そうしてミネルバ若グループの宴会は無事に終わったのだった。(お金はギリギリ足りた)

 

ーー

 

「いやぁ、満腹満腹」

 

「食べすぎだよ、お姉ちゃん」

 

 満面の笑みを浮かべるルナマリアとたしなめるメイリンを眺めながら帰路に着いていると街の電気やから緊急のニュースが目に入る。

 

「緊急速報です。オーブ連合首長のカガリ・ユラ・アスハ氏が結婚式場から拉致されたとの情報が入りました。関係者の話によりますと前大戦の英雄《フリーダム》が関与しているとの…」

 

「エリアさ…」

 

 突然、歩を止めたエリアに近づいたシンは声を掛けようとしたが思わず言葉を止めてしまう。

 彼の目の前にいたのは先程とは考えられないほど無表情な顔をしてニュースを見つめるエリアの姿があったからだ。

 

「ん、どうしたシン?」

 

「い、いえ。ルナたちに置いていかれますよ」

 

「そうだな、行こうか」

 

 だがそれも一瞬、いつも通りの顔になり微笑みながら見つめてくる彼女に戸惑いながらも歩を進める。

 

「そう言えば、お前。オーブの時、私のこと呼び捨てにしてただろ?」

 

「え、聞こえてたんですか!」

 

「ふふっ」

 

ーー

 

「エリア・ノイエフォード、戻りました」

 

「お疲れ、悪かったわね。任せて」

 

「いえ」

 

 前大戦を知らない若者たちの鬱憤晴らしに行ってくれていたエリアを労ったタリアはコーヒーを差し出すと彼女はそれを受け取り静かに啜る。

 

「オーブ、大変なことになりましたね」

 

「えぇ、でもそれ以上に…これよ」

 

 タリアに渡された資料を読むと静かに呟く。

 

「これは、それに」

 

 渡されたのは新型機のマニュアル。

 それと1つの辞令書。

 

「まぁ、彼がどういうつもりなのかは来てから問いただすとしてまわってくるのが速いわね」

 

「まぁ、もともとそう言う約束だったので。こんなに速いとは思いませんでしたが」

 

 宣戦布告により、グフイグナイデットの正式量産が決定。エリアの戦闘データを得てさらに改良された量産型が各地に配備されるとの事だ。

 それに伴いグフカスタムのテストは終了としその改良型である試作機をさらに送るとの事。

 

「まだ着いてないんですか?」

 

「もうすぐの予定だけど。そろそろくるんじゃない?」

 

 そう言っているとミネルバの近くに輸送機が着地し中から見たことない機体が姿を表す。

 

「噂をすればね」

 

「見たことない機体ですね。確かにグフ系列っぽいですが」

 

 ブリッジから眺める新たな機体をエリアは静かに見つめるのだった。

 

ーー

 

 そして翌日、昨日の喧騒は鳴りを潜めミネルバは通常通りの運用になっていた。

 

「でも、今度こそ戻れんだよな。プラントってか、宇宙へさ」

 

「ミネルバは宇宙用戦闘艦だしな。月軌道に乗んなきゃ意味ねえもん…」

 

 と言いながらヨウランとヴィーノは新しく来た新型を見つめる。

 機体の背中についているグフに酷似した飛行ユニットを装備している新型機は明らかに大気圏内用だ。

 

「どうなってんのかあプラント」

 

「どうって?」

 

「だって核なんて撃たれちゃってさあ。お袋達のこと心配だし」

 

「彼女のこととか?」

 

「アホ、居ないよそんなの、何でお前の話は直ぐそっち行くの?」

 

 そんな話をしながら整備していると見慣れない赤い機体がミネルバに降り立つ。

 

「何なのこの新型。一体誰?」

 

 見慣れない機体がミネルバに来たので次々と集まる一同。

 

「あぁ!」

 

「アスランさん!」

 

 驚くルナマリアとメイリンの声にさらに注目を集める。

 そんな中、いつの間にか居たエリアの前に降り立つアスラン。

 

「認識番号285002、特務隊フェイス所属アスラン・ザラ。乗艦許可を」

 

「了承した。改めて、ようこそミネルバへ」

 

「ねえさっきの…あんた!なんだよこれは?一体どういう事だ!」

 

「もう!口の利き方に気を付けないさい!彼はフェイスよ」

 

「えぇ?」

 

 突然のアスランの登場にけんか腰なシンを宥めるルナマリア。

 

「詳細は追って話す。今は着任の挨拶が先だ」

 

「は、はい」

 

 流石に仕事モードのエリアに逆らえないシンは借りてきた猫並みに大人しくなるとエリアはアスランを連れてタリアの元へと向かうのだった。

 

「……」

 

「……」

 

「色々と言いたいことがあるが…ひとまず何故だ?」

 

「それは…」

 

 気まずそうなアスランを見かねてエリアが質問するとアスランはプラントでの議長との話をした。

 そしてエリアはミネルバがオーブを出てからここまでの経緯とカガリの強奪事件を伝える。

 

「頭が痛くなってきた」

 

「それはこっちの台詞だ」

 

 アスランは少し迷ったがイザークたちとの会話は伏せることにした。エリアの目的とその黒幕と思われる人間を突き止める。それも目的の1つのだった。

 

「エリア」

 

「なんだ?」

 

「…いや、これはからよろしく頼む」

 

「あぁ」

 

 なにか言いたそうにするアスランをスルーしエリアは静かに返事をするのだった。

 

ーー

 

「はぁ…貴方をフェイスに戻し、最新鋭の機体を与えてこの艦に寄こし、私までフェイスに?一体何を考えてるのかしらねえ。議長は…それに貴方も」

 

「申し訳ありません」

 

 ミネルバ艦長室にはタリアと副官のアーサー、そしてエリアとアスランが顔を会わせなんともいえない表情を浮かべる。

 

「別に謝る事じゃないけど…それで?この命令内容は、貴方知ってる?」

 

「いえ、自分は聞かされておりません」

 

「そう、なかなか面白い内容よ。ミネルバは出撃可能になり次第、ジブラルタルへ向かえ。現在スエズ攻略を行っている駐留軍を支援せよ」

 

「スエズの駐留軍支援ですか、我々が!」

 

 アーサーお馴染みのオーバーリアクションに感心しながらもエリアは嫌な顔をする。

 

「ユーラシア西側の紛争もあって今一番ゴタゴタしてる所よ。確かに、スエズの地球軍拠点はジブラルタルにとっては問題だけど。何も私達がここから行かされるようなものでもないと思うわね」

 

「ですよね、ミネルバは地上艦じゃないですし。一体また何で?」

 

「戦果を挙げすぎましたかね」

 

 エリアの皮肉口調にタリアは内心同意する。

 戦果を挙げた艦は味方を鼓舞するため、敵への牽制のため。と言う名目で厄介な戦場に呼ばれるのは良くあることだ。

 

「ユーラシア西側の紛争というのは?」

 

「常に大西洋連邦に言いなりにされている感のあるユーラシアの一部の地域が分離独立を叫んで揉めだした事件だ。徴兵されたり制限されたり。そんなことはもうごめんだと言うのが、抵抗してる地域の住民の言い分だ。それを地球軍側は力で制圧しようとしている一方、こちら側はその独立運動を裏から支援している。間に地元民を挟んでいる分、余計にややこしくなって泥沼化している場所だ」

 

 開戦からの情報を持ってないアスランの為に分かりやすく解説するエリア。

 

「我々の戦いは、あくまでも積極的自衛権の行使である。プラントに領土的野心はない。そう言ってる以上、下手に介入は出来ないでしょうけど…行かなくてはならないのはそういう場所よ。しかも、フェイスである私達二人が…覚えておいてね」

 

 タリアの言葉に返事をしたアスランはエリアに連れられて外に出る。

 部屋の案内やら色々としなければならないからだ。

 その後、他のクルーに対する説明やらなんやらで1日忙殺されたエリアはクタクタになりながら部屋に戻る。

 

「本気で疲れた…」

 

 制服の上着だけ脱ぎベットに転がると大きく深呼吸する。アスランの世話もそうだが新型機の慣らしやらなんやらで本当に忙しいのだ。

 

「誰だ?」

 

「シンです」

 

「いいぞ」

 

 そうしていると部屋にノック音が鳴り、反応すると部屋に入れる。

 

「お疲れさまです」

 

「気が利くな」

 

 シンから渡された暖かいココアを受けとるとゆっくりと飲む。

 

「今日、1日。忙しそうにされてたので」

 

「流石に疲れたよ」

 

 ブーツと靴下を脱いで完全にオフモードになるエリアは少し戸惑うシンに対し人差し指をたててシーっと言うポーズを取る。

 

「みんなには内緒だぞ」

 

「は、はい」

 

 そんな仕草にドキッとしてしまうシンだが密かに深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

「アスランのことか?」

 

「はい」

 

「アイツなりに考えた結果だろう。一度、銃を握ればその感触が忘れなくなる。力を持つ者なら尚更だ。自分はなにか出来る筈だ、なにかしなければならない。そんな事を考えてしまう真面目な奴だからこうしてここに来たんだろう」

 

「……」

 

「気持ちは分からなくはないだろ?」

 

「はい」

 

 わがままを言う子供を優しく諭すように話すエリア。

 

「アスランは死ぬほど頭固いくせにすぐに意地になるし、口下手で言葉足らずだからすぐに誤解招くし。あぁ見えて大変だったんだぞ。アカデミーの時は」

 

「そうなんですか」

 

「そうそう、それに対抗してイザークなんてすぐに怒って物に当たるからニコルとディアッカの三人で止めたり…」

 

「エリアさん?」

 

 突然、黙るエリアに戸惑うシン。

 すると彼女は突然震えだし、息が荒くなる。

 

「エリアさん!」

 

「うっ…うぅ!」

 

 うずくまる彼女を見てどうしたら良いかと混乱する。

 

「ニコル、ニコル!嘘だ、イザーク…嘘だと言ってくれニコル!」

 

「…えぇい!」

 

 暴れだす彼女を必死に抱き締めるシンはエリアの真似をして穏やかに話す。正直、自分でもなに言ってるか分からなかったがしばらくすると落ち着き動かなくなる。

 ゆっくりと顔を見ると気絶するように寝ていた。

 慎重にエリアをベットに寝かせると布団を被せ、溢れたココアをタオルで拭いて静かに部屋を出る。

 

(エリアさん…)

 

 胸が締め付けられるような感覚を感じ拳を握る。

 あのアスランと話していた時から、何かしら彼女も持っているものがあると思っていたが…。

 こんなに苦しんでいるのは自分だけだと思っていた。でもエリアさんみたいに心の置くで必死に殺して生きている人もいるのだと今やっと実感した気がする。

 

(俺は貴方を助けれますか)

 

 強く脆い、そんな彼女に対し不思議な感情がシンの心にふと現れたのだった。

 

 

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