愛しきものたちへ   作:砂岩改(やや復活)

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第14話

 

「銃を持つ者には容赦しない。現に発砲していた」

 

「それをMSで蹂躙するのは虐殺だ!」

 

「アスラン、軍人として敵を殺すのに相手など関係ない。私は無抵抗な人間や民間人を殺した訳じゃない」

 

 インド洋沖の戦いの後、アスランとエリアは個室で話し合っていた。

 

「戦争にも有り様がある」

 

「戦争はスポーツじゃない。卑怯も平等も必要ない、相手が来るなら殺さなければならない。ナチュラルなんて…」

 

「エリア…」

 

 外から人の気配を察した二人は言い合いをやめて一旦、息を整える。

 

「お前の言い分も分からんでもない。だが私は容赦などするつもりはない」

 

「エリア、あの時の君は復讐の感情に囚われていると感じた。そんな姿はシンたちに見せるべきじゃない。」

 

「…そうだな。それは反省する」

 

「エリアさん!っと…」

 

 案の定、シンの声が聞こえてくると二人は目を合わせて頷く。

 駆け寄ってきたシンはアスランを見ると少しだけ不満そうな顔をするがすぐにエリアに向き直る。

 

「あの、さっきの…は」

 

「民間人の救助はご苦労だったな。私は少しやり過ぎてしまったが…」

 

「い、いえ!民間人の扱いを考えれば当然のことです!エリアさんはなにも間違ってません!」

 

「…」

 

 アスランへの当て付けのように言葉を発するシン、それを察したアスランは内心、ため息をつきながらその場を後にする。

 シンの肯定の言葉を聞いたエリアは喜びではなく、後ろめたさを感じ、少しだけ目を伏せる。

 

「あれ程の空戦だ。疲れただろう?食事にしよう」

 

「はい!俺もそのお誘いに来たんで!」

 

「それは奇遇だったな。では行こうか」

 

「はい!」

 

ーーーー

 

「でもいいよなぁ軍本部の奴等。ラクス・クラインのライヴなんてほんと久しぶりだもん。俺も生で見たかったぁ」

 

「けど、だいぶ歌の感じ変わったよな、彼女」

 

 インド洋を越え、マハムール基地に辿り着いたミネルバ。そのMSドッグでは戦闘を終えた機体たちのチェックに追われていた。

 

「それに今度、衣装もな~んかバリバリ?」

 

「そうそう!そしたらさぁ胸、けっこうあんのなあ。今度のあの衣装のポスター、俺絶対欲しい!」

 

「セイバーの整備ログは?」

 

「ああ、これです!」

 

「ありがとう」

 

 会話を聞かれたのではないかと慌てたヴィーノとヨウランは整備ログを眺めながら立ち去るアスランを見送りながら愚痴を漏らす。

 

「婚約者だもんなぁ。いいよなぁ。」

 

「ちぇ、ケーブルの2,3本も引っこ抜いといてやろうか?セイバー」

 

「聞こえてるぞ二人とも」

 

「あッ!」

 

「…胸は私の方が大きいぞ」

 

「っ!?げほっ!げほげほ!」

 

「シン!ちょっと汚ないわよ!」

 

 3人のコントを眺めながらエリアの呟きを聞いてしまったシンは飲んでいた飲み物を吹き出してしまう。

 

「入港完了。各員速やかに点検、チェック作業を開始のこと。以降、別命あるまで艦内待機。ノイエフォード隊長、アスラン・ザラはブリッジへ」

 

「私はアスランと基地司令に挨拶に向かう。後は頼んだぞ」

 

「はい!」

 

ーー

 

「…」

 

「そんなに深刻な顔しなくてもエリア隊長は大丈夫よ」

 

「そんなことを気にしてるんじゃないよ」

 

 エリアたちが基地司令と作戦会議をしている間、休息に入っていたシン、レイ、ルナマリアは休憩室で雑談をしていた。

 

「まぁ、いきなりオーブに居た人が仲間だ、フェイスだって言われてもビックリするのは分かるけど。そんな視線じゃないもの」

 

「まぁ、気にくわないのは確かだけど」

 

 エリアにとっておそらく何にも変えられない存在をシン知っている。それはアスランも同様だろう。

 エリアをよく見ているから分かる。アスランもなにかエリアに対してなにか考えがあって動いていると言うことは。

 最初はオーブにでも連れていくつもりなのかと思ったが違う。

 

「…ヒントを探してるだけだよ」

 

「ん?」

 

 そんな彼の意図を知ることが出来たらエリアにも近づけるのではないかとそう思ったのだ。

 教官として、軍人として、人間として理想とも言える存在の彼女は自分と同じ前大戦で大切な人を失い、それを今も引きずっている。

 そんな理想と親近感の狭間で揺れるシンの心情は本人とて理解し、説明できるものではなかった。

 

ーー

 

「はい、報告は資料の通りです。レイの精神も安定しており乱れはありません。シンは相変わらずですがアスランが刺激となるでしょう」

 

「そうか、しかしシン・アスカ。彼のオーブ沖海戦のデータは実に興味深い」

 

 ミネルバに戻ってきていたエリアはとある人物と通信を行っていた。

 

「戦闘能力が著しく向上しています。状況判断も的確で、まるで別人のように冷静な判断を下しています。正直、あれは驚きました」

 

「Superior Evolutionary Element Destined-factor、優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子と呼ばれているものだよ。彼にはその素養があった、それを開花に導いたのは君だ」

 

「お役に立てたのなら何よりです」

 

 シンたちの前では決して見せないなんの感情も映さない無表情な彼女は黙ってモニターを見つめる。

 

「それと未確定情報だが連合の要請によりオーブ軍は大規模な遠征を予定しているとのことだ」

 

「なるほど、釣れれば良いですが」

 

「君の望む結果が得られる事を祈っているよ」

 

 そう言って通信が切られ、真っ黒になったモニターに自分の顔が写る。

 

「…」

 

 その歪んだ笑顔を見たエリアは乱暴にモニターを閉じるのだった。

 

ーー

 

「どうしたんだ?一人でこんなところで」

 

「別にどうも。貴方こそいいんですか?いろいろ忙しいんでしょ?フェイスは、こんなところでサボっていてよろしいんでありますか?」

 

 エリアが通信していた同時刻、ミネルバの甲板で夕日を眺めていたアスランの元にシンが訪れていた。

 

「相変わらずだな。なにか用でも?」

 

「なんでここに居るんですか?」

 

「それは気になるよな」

 

「そりゃそうでしょう。この間までオーブでアスハの護衛なんてやってた人が、いきなり戻ってきてフェイスだ、仲間だってって言われたって。それで、はいそうですかってなるもんか。やってること滅茶苦茶じゃないですか。貴方は」

 

 当然の疑問だとアスラン自身も思う。

 

「それは、そうだろうなぁ。認めるよ。確かに君から見れば俺のやっていることなんかは滅茶苦茶だろう」

 

 素直に肯定され少しだけ肩透かしを食らうシン。

 

「俺にもやれることがないかと模索した結果だ。議長が手助けをしてくれたと言うのもあるが」

 

「ミネルバに来たのも?」

 

「議長の計らいだ」

 

 個人的には納得はしないがここに来た理由は理解はした。

 その腕が確かなのはユニウス7での活躍で知っている。議長も優遇してまでザフトに入れるのも理解できる。

 

「お前がここに来たのはそれだけか?」

 

「それは…」

 

「エリアのことだろう?」

 

「…」

 

 図星を付かれ黙るシン。

 

「お前たちがエリアに抱く印象は知っている」

 

 ルナマリアから教官時代のエリアのことはかなり聞かされているため、理解はしているつもりだ。

 アカデミー時代の彼女は簡単に言えば女版イザークと言った印象だった。今と違ってお互いに銀髪だったし双子の兄妹じゃないかと思えるぐらい気が短かった。

 

 昔、同期に告白されて理由を聞いたら体と答えられたエリアはソイツを軍病院送りにするほどの狂犬だった。まぁ、あれは相手が悪いが。

 

 それに対してシンたちが知っている彼女は教官という立場だった為か冷静沈着で頼りがいのある理性的な人物であったらしい。

 

「だからこそインド洋での事が引っ掛かってるんじゃないか?」

 

「…はい」

 

 インド洋における基地襲撃に関してはエリアらしからぬ行動にシンも引っ掛かりを感じていたからだ。

 端から見ても感情的な行動はシンからみてもかなり変にに見えたはずだ。

 

「エリアの過去のことはどこまで?」

 

「いえ、全く。恐らく大切な人のニコルさんと言う方が亡くなったと言うぐらいしか」

 

「そうか。ニコルは俺たちと同期でな、エリアの婚約者だった」

 

 あまり話したくなかったがシンの辛い過去を知ってしまった身としては話さなくてはならないと感じたアスランはた少しずつ話し始める。

 

「婚約者…」

 

「あの二人は本当に仲が良くてな。心の底から愛し合ってたと思う。本当はエリアもクルーゼ隊に入隊する予定だったんだが婚約者同士が同じ部隊に入隊されることはなくてな。エリアは成績も良かったし、月軌道艦隊に編入されたんだ」

 

 ニコルとアスランが休暇でプラントに帰った時にエリアも急いで休みをもぎ取ってニコルと会っていたのを思い出す。

 

「だがオーブの近海で…ニコルは俺を庇って死んでしまった。俺のせいでニコルは死んだ」

 

「…」

 

「それから俺はエリアとミネルバで再会するまで会ったことはなかった。会えなかった…俺のせいで婚約者を亡くしてしまったエリアに会わせる顔なんてなかった」

 

 改めて考えれば昔と性格も姿もかなり変わっていて誰か分からないぐらいだった。長く美しい銀髪だった彼女は髪がくすみ、灰色の髪を短く切り揃えた姿になっていた。

 

「それで連合に恨みを…」

 

「あぁ、俺自身も恨まれて仕方ない。だからこそシン」

 

「は、はい」

 

「エリアを支えているのはお前たちだと思ってる。エリアを助けてやって欲しい…俺が言える義理じゃないが」

 

 たくさんの情報が一気に押し寄せてきたために混乱するシン。

 

「でもどうやって」

 

「すまないがそれは俺も分からない」

 

「って丸投げじゃないですか!」

 

 頼んでおいてそれかよと思うがシンとしてもエリアの助けになるなら喜んでする。

 

「でも俺はエリアさんを見捨てる気なんて無いですよ」

 

「あぁ、分かってる。だがな、彼女の言葉を盲目的に受け取りすぎるなよ」

 

 アスランのそんな言葉にシンは黙って息を飲むのだった。

 

 

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