ローエングリーン砲台攻略作戦のために合流した現地協力員を出迎えたエリアは手を差しのべる。
「お待ちしておりました、ミス・コニール。私はこの作戦の現場責任者であるエリア・ノイエフォードと申します」
「歓迎に感謝する、ミス・ノイエフォード。こちらこそよろしく」
コニールはエリアの手を強く握ると案内されるままにブリーフィングルームへと向かう。
ーー
「起立!」
席の前列最右翼に居たレイの言葉と共にブリーフィングルームに集まっていた者全員が椅子から立ち上がり入ってきたエリア、アスラン、コニールに注目する。
「着席!これよりラドル隊と合同で行う、ガルナハン・ローエングリンゲート突破作戦の詳細を説明する」
エリアの指示で椅子に座る隊員たちは部屋の前面に映し出された地図に注目する。
「ガルナハン・ローエングリンゲートと呼ばれる渓谷の状況だ。この断崖の向こうに街があり、その更に奥に火力プラントがある。こちら側からこの街にアプローチ可能なラインは、ここのみ」
地図に示された地点は一本の渓谷になっており、逃げ道はない絶望的な地形であった。
「敵の陽電子砲台はこの高台に設置されており、渓谷全体をカバーしていて何処へ行こうが敵射程内に入り隠れられる場所はない。超長距離射撃で敵の砲台、もしくはその下の壁面を狙おうとしても、ここにはモビルスーツの他にも陽電子リフレクターを装備したモビルアーマーが配備されており、有効打撃は望めない。我々ミネルバ隊がオーブ沖で同様の装備のモビルアーマーと同系列の機体と言うことだ」
「タンホイザーを防いだ…」
「そうだ、つまり我々が持ちうる最大火力であるタンホイザーを防ぐモビルアーマーが存在する以上。我々は圧倒的に不利というわけだ」
ルナマリアの呟きに答えるようにエリアは作戦を説明する。ローエングリーンとタンホイザー互いに攻撃手段は持っているものの敵にはリフレクター装備のモビルアーマーがいる。向こうには盾があるがこちらにはない。
「作戦領域に侵入次第、ミネルバのタンホイザーにて敵モビルアーマーを最前線に誘引。これを速やかに排除し敵のローエングリーンを破壊すると言うのが我々の作戦だが質問は?」
エリアの言葉に対して挙手をしたのはレイ。
「作戦概要は把握しましたが敵もそれは予測済みだと判断します。誘引後、モビルアーマーに即時撤退されれば我々の作戦は失敗です。サブプラン等はあるのでしょうか?」
「ある。そしてこれはシン、お前が肝だ」
「え、自分でありますか!?」
モビルアーマーとの戦闘を想定していたシンは驚きながらエリアを見つめる。
「そうだ」
「ミス・コニール。説明をお願いします」
「うん、ここに本当に地元の人もあまり知らない坑道があるんだ。中はそんなに広くないから、もちろんモビルスーツなんか通れない。でも、これはちょうど砲台の下、すぐそばに抜けてて、今、出口は塞がっちゃっているけどちょっと爆破すれば抜けられる」
「モビルスーツでは無理でもインパルスなら抜けられる。データ通りに飛べばいい。だが想定される坑道内の広さを考えるとシルエットは連れていけない。シルエット無しでの戦闘になる」
つまり使えるのは20mmCIWS、ナイフ、ビームライフルのみ。その装備で直衛のMSと砲台を破壊し、本命であるローエングリーンを破壊しなければならない。
「軽装のインパルスではモビルアーマーの相手はキツいだろう。俺とエリアの二人がモビルアーマーを撃破、厳しいのであれば引き付ける」
「だが空戦できるMSはイフリートとセイバーのみに対して敵MSは全機、飛行能力を保有している。あまり期待するな」
かなり賭けな作戦にシンは少しだけ緊張したように頷く。
「この作戦は本来ならば、かなり分の悪い賭けだ。だが諸君らならばこの作戦を完遂できると私は確信している。諸君らの健闘を祈る!」
「「はい!」」
ー
「エリアさん、待っていてください。俺は必ずやって見せますから」
「シン、期待しているぞ」
そんな二人の元にコニールが駆け寄り、データをシンに渡す。
「地球軍に逆らった人達は滅茶苦茶酷い目に遭わされた。殺された人だって沢山いる。今度だって失敗すればどんなことになるか判らない。だから、絶対やっつけて欲しいんだ!あの砲台!今度こそ!だから…頼んだぞ!」
泣きそうな顔をしながらデータを渡すコニールを見てシンはインド洋で連合に働かされていた人たちを思い出す。
「分かった」
そんなシンの様子を見てエリアも満足そうな顔で頷くのだった。
ーー
「進路クリアー。イフリート発進、どうぞ!」
「エリア・ノイエフォード出るぞ!」
先にインパルスを発進させ、次々とエリアたちがローエングリーンに向けて出撃していく。
「上昇。タンホイザー起動。照準の際には射線軸後方に留意。街を吹き飛ばさないでよ。モビルアーマーを前面に誘い出す!」
「タンホイザー照準、敵モビルスーツ群!」
「フライマニー兵装バンク、コンタクト。出力確定、セーフティー解除」
「総員、タンホイザー着弾の衝撃に備えろ!」
ミネルバのタンホイザーが敵MS群に迫るがモビルアーマーのリフレクターにより防がれ、着弾の衝撃波がMS隊に襲いかかる。
予測通り、敵MSは健在。
「行くぞ!敵モビルスーツ隊も出来るだけ引き離すんだ!」
「ローエングリーン、来るぞ!」
放たれたローエングリーンは照準していたミネルバに当たらずに難を逃れるが二回目は難しいだろう。
「アスラン!」
「分かっている!」
アスランとエリアは飛び上がり逃げていくモビルアーマーを追撃するがダガーが立ち塞がる。
「レイ、ルナマリア援護頼む!」
「「了解!」」
エリアが突っ込み、アスランが援護すると言う形で敵陣深くに突っ込む二人を援護するように他のMS部隊も突撃する。
「追い付いた!」
「しつこい奴め!」
敵モビルアーマーことゲルズゲーに接近したエリアはデトネーションビームソードを振るうが強固なクローに阻まれる。
するとゲルズゲーのダガー部分がビームライフルをエリアに向けて構える。
「エリア!」
「貰った!」
その瞬間、エリアたちのすぐ横が爆発しインパルスが飛び出してくる。
「なんだ!?」
「シン!」
「うおぉぉぉ!」
インパルスはそのまま合体しMS形態になるとローエングリーンに向けて突撃する。
「アスラン!シンを援護!」
「分かった!」
ローエングリーンに向けて進撃するインパルスを上空から支援するアスラン。
「奴を止めろ!」
「よそ見するな!」
エリアはビームソードでゲルズゲーのダガー部分を切り裂くが前腕のクローが襲いかかる。
「下半身が本体か!?」
一度、飛び上がるとミサイルをゲルズゲーに浴びせて目眩ましをするとビームソードを深々と下半身に突き刺す。
その傷口にビームを何発も撃ち込むとゲルズゲーは爆炎に包まれる。
「シン!」
「分かってる!」
その頃、アスランはローエングリーン直援のダガーを真っ二つに切り裂くとシンは切り裂かれたダガーの上半身を格納されていくローエングリーンに投げ込む。
「うおぉぉぉ!」
投げ込む際にダガーはインパルスのCIWSで蜂の巣にされ格納されていったローエングリーンの真横で爆発。
基地内に次々と誘爆し、山全体が震えるのだった。
ーー
戦闘終了後、エリアは各部隊の損傷状況を確認した後。
シンとインパルスを回収するためにガルナハンの街へと向かう。
「援護、ありがとうございました。でもあれはないですよ。知ってたんですか?」
「あの坑道の事か?エリアが言ってただろうデータだけが頼りだって」
「そうですけど想像以上、過ぎましたよ」
「楽しんでいるところ悪いが帰投命令だぞ二人とも」
いつの間にか二人が仲良くなっているのを見て笑うエリアはシンの乗り込んだインパルスを持ってアスランと共にミネルバに帰投するのだった。