愛しきものたちへ   作:砂岩改(やや復活)

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第4話

 

 

「各ステーション、状況を報告せよ!」

 

 アスランをルナマリアに任せた後、ブリッジに向かう途中、大きな衝撃に襲われるがなんとかブリッジに辿り着く。

 

「バート!敵艦の位置は!?」

 

「待って下さい、まだ…」

 

「CIWS起動、アンチビーム爆雷発射!次は撃って来るわよ。」

 

「見つけました。レッド88、マーク6チャーリー、距離500」

 

「逃げたのか?」

 

「やってくれるわ、こんな手で逃げるなんてね」

 

 状況を見て逃げられたと察したエリアだったが乗艦しているデュランダルの姿を見て驚く。

 避難しているとは思っていたがミネルバ出撃時に退艦しているものだとばかり思っていた。

 

「だいぶ手強い部隊のようだな」

 

「ならばなおの事、このまま逃がすわけにはいきません、そんな連中にあの機体が渡れば…」

 

「ああ…」

 

「今からでは下船いただくこともできませんが、私は本艦はこのままあれを追うべきと思います。議長の御判断は?」

 

 驚くエリアを一目見て微笑みながらデュランダルは判断を下す。

 

「私のことは気にしないでくれたまえ、艦長。私だってこの火種、放置したらどれほどの大火になって戻ってくるか…それを考えるのは怖い。あれの奪還、もしくは破壊は現時点での最優先責務だよ」

 

 敵艦は該当なしと言うことだったが地球軍である可能性が極めて高い。

 このまま放置するわけにはいかないがまさか議長まで行動を共にするとは。

 

「全艦に通達する。本艦は此より更なるボギーワンの追撃戦を開始する。突然の状況から思いもかけぬ初陣となったが、これは非常に重大な任務である。各員、日頃の訓練の成果を存分に発揮できるよう努めよ。」

 

 敵艦の追撃に移るミネルバだが一時警戒体勢を解除しひとまずの休息を得る。

 

「エリア、議長を部屋に案内して…」

 

「はっ、艦長。お伝えしたいことが」

 

「なに?」

 

「発艦前にオーブの代表がザクと共に乗艦、保護しました。戦闘中でありましたので私の独断で士官室にお休みになられております」

 

「オーブの…」

 

「彼女が…何故この艦に?」

 

 予想外の出来事に思わず言葉を漏らす二人に少し申し訳なさそうにするエリアであった。

 

ーー

 

「何やってる、ザクのフィールドストリッピングなんざ、プログラムで何度もやったろうが!その通りやればいいんだぞ!」

 

「は、はい!」

 

 ミネルバMSハンガー。

 そこにはヴィーノとヨウランたちが次の戦闘に備えてMSの整備を行っていた。

 

「しっかしまだ信じられない。実戦なんて嘘みてえ、なんでいきなりこんなことになるんだろう、でもまさかこれでこのまま、また戦争になっちゃったりはしないよね?」

 

「教官、いつもいってただろ?」

 

 ヨウランの言葉にヴィーノはアカデミーの授業を思い出す。

 

「前大戦は連合、ザフト間で平和を守るための条約が結ばれたが、実際は双方共に戦争継続が不可であるがゆえの条約締結だった」

 

 第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦において地球連合軍はジェネシスにより参加艦艇のほとんどと月面基地の1つを失い。

 プラントもクライン派のアイリン・カナーバを中心としたクーデターにより戦争どころではなくなった。

 

「現状においてナチュラルはブルーコスモスを中心に反コーディネーター運動を活発化させ、コーディネーターは前大戦による核攻撃に対し憎悪を抱いている状況だ。今、この世界は儚い均衡の上で成り立っている。小さな火種でも崩れてしまうほどこの世界は脆い…」

 

 教官であるエリアがいつも口にしていた言葉だ。

 

「敵艦から出てきたのってダガータイプだったんだろ?」

 

「そうだって聞いたけど…」

 

「覚悟しないといけないかもしれないぞ」

 

 ヨウランの言葉にヴィーノは思わず背筋を伸ばす。

 彼女の言葉、その意味をやっと実感できたのだった。

 

ーー

 

「本当にお詫びの言葉もない、姫までこのような事態に巻き込んでしまうとは、ですがどうか御理解いただきたい」

 

 エリアの報告の後、デュランダルとタリアは急いでカガリの待つ士官室に赴き、会談を開いていた。

 

「あの部隊についてはまだ全く何も解っていないのか?」

 

「ええまぁ、そうですね。艦などにもはっきりと何かを示すようなものは何も…しかし、だからこそ我々は一刻も早く、この事態を収拾しなくてはならないのです、取り返しのつかないことになる前に」

 

 案内役として出入り口で立つエリア。

 それが気になるようでアスランはカガリにを見ながらもエリアに時々視線を移していた。

 

「ああ、解ってる…それは当然だ、議長。今は何であれ世界を刺激するようなことはあってはならないんだ、絶対に」

 

「ありがとうございます。姫ならばそう仰って下さると信じておりました」

 

 対してエリアも表情を出さないがアスランに視線を移していた。

 

「よろしければ、まだ時間のあるうちに少し艦内を御覧になって下さい」

 

「議長…」

 

「一時的とは言え、いわば命をお預けいただくことになるのです。それが盟友としての我が国の相応の誠意かと」

 

 デュランダルの言葉にタリアは苦言を漏らすが流石に表だっては逆らえずに渋々、了承するのだった。

 

「オーブのアスハ!?」

 

「うん、あたしもびっくりした。こんなところで大戦の英雄に会うとはね。」

 

 インパルスのチェックをしていたシンはルナマリアの世間話に付き合っていると聞き捨てならない言葉を聞き、思わず叫ぶ。

 内容はあのザクのパイロットの話だ、ミネルバ所属ではない機体がいつの間にか転がり込んでいたのだ、そりゃ話題になる。

 

「でも操縦してたのは護衛の人なんだけど、それがあのアスラン・ザラらしいのよ!」

 

「え?」

 

 前大戦後に姿を眩ました英雄、アスラン・ザラ。

 隊長であるエリアの同期で彼の離しは時折、聞かされていた。

 

「ほう…アスラン・ザラ。前大戦の英雄だな、根拠はあるのかルナマリア?」

 

「レイ、珍しいわね。話に入ってくるなんて」

 

「気になったものでな」

 

 ザクファントムの調整を終えたレイもルナマリアの世間話に参加する。

 

「きょ…エリア隊長がそう呼んだのよ、アスランって…でも裏切り者ってなんだろう?」

 

「裏切り者?」

 

「珍しいな、教官がそういう言葉を使うとは」

 

 前大戦の英雄に対して裏切り者とは変な話だ。

 シンの中でのエリアはそのような言葉を口にすることはないので珍しく感じる。

 それはレイも同様であった。

 

「うん、教官がアスラン・ザラのことを裏切り者って呼んだのよ。訳わかんなくてさ」

 

「オーブに亡命したからかな?」

 

「さあ?」

 

 いくら考えても結果は出ず、悩んでいると突然、ハンガーのなかにデュランダルの声が響きわたり、視線を移す。

 そこにはデュランダルと艦長のタリア、そして案内役のエリアとカガリ、アスランが顔を揃えていた。

 

「ZGMF-1000。ザクはもう既に御存知でしょう、現在のザフト軍の主力の機体です」

 

 穏やかに話すデュランダルは一見、楽しげにミネルバのハンガーを眺める。

 

「そしてこのミネルバ最大の特徴とも言える、この発進システムを使うインパルス。工廠で御覧になったそうですが…技術者に言わせると、これは全く新しい効率のいいモビルスーツシステムなんだそうですよ。私にはあまり専門的なことは解りませんがね」

 

「…」

 

「シン…」

 

 明らかに機嫌が悪くなるシンを見て心配するルナマリアをよそに彼はインパルスを離れる。

 

「しかし、やはり姫にはお気に召しませんか?」

 

「議長は嬉しそうだな」

 

 不機嫌なカガリに対し分かっていても話を続けるデュランダル。

 ある意味、これは政治的な話し合いらしいがこういうのに関わらないようにしているエリアは黙って話を聞き流す。

 

「嬉しい…というわけではありませんがね、あの混乱の中からみんなで懸命に頑張り、ようやくここまでの力を持つことが出来たというのは、やはり…」

 

 デュランダルとカガリの話はいつまで経っても平行線だ。

 まぁ、考え方が違うのだから当たり前だが…。

 血のバレンタイン、それに加え、前大戦におけるボアス攻防戦と第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦における地球軍の核の使用、その過程があるからこそプラントは軍事力の拡大方針を捨てない。

 

(プラントは脆いからな…)

 

 一発の核でなくなってしまうほどプラントと言う故郷は脆い、カガリの唱える平和理論はプラントにはそぐわないのだ。

 

「我々は誓ったはずだ!もう悲劇は繰り返さない、互いに手を取って歩む道を選ぶと!」

 

「それは…しかし姫…」

 

「さすが綺麗事はアスハの御家芸だな!」

 

「シン!?」

 

 ハンガーに響き渡る声。

 やや話を聞き流していたエリアも思わず叫ぶ。

 シンの気持ちも分からんでないが流石にこの場での発言はまずい。

 

「落ち着け…シン」

 

「でも!」

 

「分かってる…分かってるから…」

 

 エリアは興奮するシンを宥め、カガリたちの目の届かないところまで連れていく。

 

「ボギーワン補足!」

 

 それと同時に艦内の警告音が鳴り響くのだった。

 

 

 

 

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