愛しきものたちへ   作:砂岩改(やや復活)

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第5話

 デブリ帯に逃げ込んだボギーワンを追撃するためエリアのグフ、シンのブラストインパルス、ショーンとデイルのゲイツRが先見隊として出撃する。

 

「全員聞け、敵は既にMSを発進させているとしたら我々は圧倒的に不利だ」

 

「っ…」

 

 エリアの言葉に彼女に追随する三人は息を飲む。

 ミネルバ所属のMS隊員は全員、エリアの教え子であり実戦経験はほぼ皆無と言って良い状態だ。

 

「デブリ帯には身を隠す場所が多く、待ち伏せには最適だ。この状況なら必ず先手を取られる。攻撃を受けたら反撃ではなくまず回避に専念しろ、波状攻撃が来るぞ」

 

「「「了解!」」」

 

 このデブリ帯は熱源を持つ物も多くレーダでも敵を捉えられない。

 

(奇妙だな…)

 

 捉えたボギーワンの反応はいまだに変わらない。

 既にレーダ圏内に入っているはずなのに加速も減速もない。

 向こうがこちらに気づいていないなんてそんなバカな話はあるまい。

 

「っ…全機散開!」

 

「「「っ!?」」」

 

 それはエリアの勘でしかなかった。

 彼女の鋭い声は全員を動かした、アカデミーから聞き続けた彼女の声に対して反射的に行動できたのは彼らが訓練を怠らなかったと言うなによりの証明だ。

 

 しかし進行していたエリアたちに対して放たれたビームはエリアたちを分断する。

 

「しまった!」

 

「くっ!?」

 

「各個に応戦しろ!」

 

 シンのブラストインパルスと段幕を張りつつ後退するエリア。

 ショーンとデイルも互いに背中を預け迎撃に移る。

 

「くっそー!」

 

「各機、敵に惑わされるな。死角からのっ!」

 

 高速で接近しサーベルを抜き放つガイアの攻撃をシールドで受け、吹き飛ばされるグフ。

 

「教官!」

 

「デイル、ショーン合流を!」

 

「わかっ…」

 

 シンの言葉に視線を逸らした瞬間、カオスのビームがゲイツRを貫く。

 

「ちっ」

 

 実戦がまだだった新人であるこのメンバーではこの状況は厳しい、しかも強奪されたガンダムのパイロットたちも腕が良く、3機をまとめて相手にするのは難しい。

 

「こうなるなら大人しく、セイバーを貰っておくべきだったかな」 

 

「もらい!」

 

「あ!」

 

「ゲイル!」

 

 カオス、ガイアが遊撃を行いアビスの砲撃で仕留める。

 シンプルだが相手の連携が良く、中々突破口を見いだせない。

 

「あっと言う間に二機も…」

 

「シン、落ち着け」

 

「は、はい…」

 

 ガトリングで牽制しつつシンに優しく呼びかけるエリア、そのおかげでシンも次第に落ち着きを取り戻す。 

 

「落とす」

 

「回り込めアウル!まず新型を孤立させる!」

 

 標的がこちらに向いた事を確認しつつもエリアはミネルバの状況把握にも努める。

 ミネルバの方もかなり苦戦しているようだ。 

 

(ここで私がやっても良いが、今後の事を考えるとやはり…)

 

「全く、昔の方が楽だったなぁ!」

 

 そう言って迫るガイアを蹴り飛ばしスレイヤーウィップをアビスの顔に巻き付け電撃を流す。

 

「あぁ!」

 

「アウル!」

 

「このぉ!」

 

 メインカメラに一時的な障害が発生したアビスの援護に回ろうとするカオスだがシンの放つビームによって進路を阻まれる。

 

「くそ、新型もそうだがなんなんだヤツは!」

 

 新型ばかりに気を取られていたがエリアの操るグフ相手に三人が手玉にとられている。

 よくよく見ればグフに大した損傷は見受けられない。

 

「このままじゃ」

 

 自身の不甲斐なさに悔しがるスティングだったが遠くで戦闘をしていたはずのガーティ・ルーからの撤退信号を見つけ撤退行動に入る。

 

「ミネルバは良くやったようだな…」

 

「はい…」

 

 息を切らし憔悴しているシンに対してエリアは息一つ乱さずにガイアたちを見送る。

 そんな彼女を見てシンは敵わないと心の中で呟くのだった。

 

「ボギーワン、離脱します」

 

「インパルス、パワー危険域です」

 

「艦長、さっきの爆発で更に第二エンジンと左舷熱センサーが!」

 

 無線を聞きながら帰投するエリアとシン。

 

「隊長お疲れ様です」

 

「レイとルナマリアか、艦の防衛助かった」

 

 ミネルバの護衛にあたっていたレイとルナマリアと合流し各自、順にミネルバに収容される。

 

「ショーンとデイルは…」

 

「すまない、私のせいだ」

 

「いえ、二人が無事なだけで」

 

 ミネルバは守れたがショーンとデイルは3機の攻撃によって命を落としたのは変えようのない事実であった。。

 

ーー

 

「……」

 

 戦闘終了後、エリアは一足先にブリーフィングルームで飲み物を飲んでいた。

 

(もうすぐだな…)

 

 懐から出したのはレトロなデザインの懐中時計、文字盤にはニコル・アマルフィと刻印されている。

 この懐中時計はエリアがニコルに用意した誕生日プレゼントだった、彼の誕生日である3月1日にはもう地球に降りてしまったので宇宙に戻ってきてからと持っていた。

 まぁ、彼は宇宙に生きて戻ってくることはなかったが。

 

「エリア…」

 

「………」

 

 そんな彼女に話しかけてきたのはやはりアスランであった。

 

「ストライクのパイロット。フリーダムのパイロットらしいな」

 

「……」

 

「皮肉なもんだ。ユーリさんはニコルの仇を取るためにNジャマーキャンセラーを作り、私にフリーダムを託してくれたと言うのに。その仇がパイロットとはな」

 

「ずいぶん変わったな、昔は綺麗な銀髪だったのに」

 

「あぁ、私はまだ4月15日から抜け出せていない」

 

 彼女の灰色の髪を見て呟くアスラン、それを自嘲ぎみに話すエリア、二人から放たれる重々しい空気を察してシンたちは息を殺しながらブリーフィングルームの前で待機していた。

 

「戦争だ、人が死ぬのは仕方ない。だが私はまだストライクのパイロットへの憎悪が抑えられない」

 

(エリアさん…)

 

 話を聞いていたシンはエリアの気持ちが痛いほど良く分かる。

 自身ではどうしようもないフリーダムへの憎悪、アカデミーで教官をしていた時は優しい姉のような人なのに心の中では自分と同じものを抱え込んでいたなど想像もしていなかった。

 

「すまない。お前はあの時、イージスを引き換えにしてまで仇を討とうとしてくれたのに」

 

「いや、理屈じゃ済まないことってことは分かってる」

 

「悪い。それとすまないな、ルナマリア」

 

「え!?」

 

「スカートが丸見えだぞ」

 

「え、あ…あははは」

 

 申し訳なさそうに出てくるルナマリアたちを見て笑うエリア。

 いつもの様子に戻っている彼女を見たルナマリアはホッと胸を撫で下ろすのだった。

 

ーー

 

その頃、ユニウスセブン

 

「太陽風、速度変わらず。フレアレベルS3。到達まで予測30秒。急げよ、9号機はどうか?」

 

「はっ!間もなく」

 

「放出粒子到達確認。フレアモーター受動レベルまでカウントダウンスタート。10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…粒子到達。フレアモーター作動。ユニウス7、移動開始しました」

 

「アラン、クリスティン、これでようやく俺も、お前達も…さあ行け!我等の墓標よ!嘆きの声を忘れ、真実に目を瞑り、またも欺瞞に満ち溢れるこの世界を、今度こそ正すのだ!」

 

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