アイクの異世界旅行記   作:よもぎだんご

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サムス、登場です。


舞台は整った

「…アダム、見ているのだろう。生存者だ」

「…………ああ」

 

 冷静沈着を地で行くアダムも多少は驚いているようだ。

 

 私は明らかにバイオハザードが起こっているボトルシップで、鎧やマントを付けて実体剣を構えた男と互いに武器を構えて向かい合っていた。

 

 様々なビーム兵器や銃、その他パワードスーツまで存在する現在。

 実体剣や金属鎧とマントも仮装パーティーの衣装としてなら人気はあるが、実際に武器として使用するには時代遅れにも程がある。

 しかし目の前の男はそれを大真面目にやろうとしていた……使われていたのは何千年前だと思っているんだ。

 

 いや、本当になんなんだろうこの状況。例えて言うならばゾンビ物の映像作品を見ていたら、おとぎの国の剣士が出てきてしまったような場違いな感が……

 

 待て、落ち着け、まずは状況の整理だ。

 

 

 

 

 

 メトロイドを絶滅させに来た私を、母親だと思いこみ、慕ってくれていたメトロイドの幼生体ベビー。

 ベビーはマザーブレインから私を庇い、瀕死の私にエネルギーを分け与え、私の頭上で砕け散った。

 

 私はベビーのくれたエネルギーをほぼ全てハイパービームにつぎ込み、マザ―ブレインを破壊して、爆発する惑星ゼーベスから命からがら逃げ出した。この際にデリケートなエネルギータンクとミサイルタンクが破損してしまったが、まあ命には代えられない。

 

 馴染みの検疫官から身体とパワードスーツに異常がないどころか性能が向上していると太鼓判押してくれた。

 これもまたベビーがくれた力なのだろうと感慨にふける私に笑いながら彼は言った。

 

「お偉いさん達が君の報告をお待ちだよ。君のスーツは君が恥をかかないようにピカピカしといたから」

 

 惑星ゼーベスとメトロイドの消滅を報告した私に万雷の拍手が沸き起こり、私の重たい心をさらに重たくしたのを覚えている。

 

 それからしばらくの時が流れて、メトロイドもスペースパイレーツもベビー少しずつデータベースの記号になってきた頃、辺境宙域を航行中に救難信号「 Baby`s cry 」をキャッチした。

 

 Baby`s cry 誰かを呼ぶことを最優先する赤ん坊の泣き声になぞらえた典型的な救難信号だ。

 

 Baby`s cry この言葉に導かれるように私はスターシップの進路を変更して、この廃棄された宇宙ステーション、通称ボトルシップにやってきた。

 

 するとそこには、私のかつての上官で父親のような存在だったアダム・マルコビッチ司令官、その部下で元同僚のアンソニー他銀河連邦軍の1部隊が来ていた。

 

 彼らに付いていくうちにここの異常性と危険性が分かってきた。

 薄暗いステーション内のあちこちに戦闘の跡も残され、その上を奇怪なクリーチャーたちが跋扈し、私たちを襲ってくる。

 このままではアダムたちが危ない。そんな気持ちに突き動かされて私はアダムに協力を提案し、私は再び彼の指揮下に入った。

 

 今回のミッションの目標は大まかに分けて生存者発見とその保護、この事件の真相解明の2つだ。最優先が生存者の保護というのがアダムらしい。

 

 アダムの指示に従う義務と彼との視界の共有、さらに武器の使用に制限がかかったが、銀河連邦軍を抜けて以来初めてになるアダムの指揮下での部隊行動に不謹慎だと分かっていても不思議と心が浮き立ったのを覚えている。

 そしてアダムの命令で、ここのメイン電源に巣くっていた巨大なハチのような連中とその巣を破壊して電源を復旧させた。

 

 ここまでは良かった。いや、ちっとも良くないがサムス・アランお馴染みのトラブルだった。問題はこの次だ。

 

 ミッションに成功し、一時帰還を命じられた時、背後の扉がいきなり開いたのだ。

 

 敵かと思った私はとっさに横に跳んで射線から外れ、回転して体勢を整え、扉にチャージ済みのアームキャノンの銃口を向けて____思わず目を疑った。

 

 そこには私と同じくらいの年の男がいた。

 それだけなら生存者発見を喜びはしても、ここまで衝撃は受けなかっただろう。

 

 その男はまるで古い絵本の中から跳び出してきた様な格好だった。

 

 濃紺の頭髪に蒼い目、頭に濃い緑の鉢巻を巻き、青い鎧と紅いマントを着て、黄金の実体剣を片手で構えてこちらの様子を眼光鋭く伺っている。

 

 

 

「に、人間なのか…」

「……それ以外の何に見える」

 

 しゃべった!?

 

「いや、幻覚を見せるタイプのクリーチャーかと…」

「………流石の俺も人間以外に間違われたのは初めてだ」

 

 しかも会って早々傷付けてしまったようだ。むくむくと申し訳ない気持ちが湧いて来る。

 

「その、申し訳ない」

「…いやいい。そういうあんたこそ何者だ」

「私の名前はサムス・アラン。フリーの賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)だ」

「そうか、俺はアイクだ。グレイル傭兵団の団長をやっている」

 

 お互い自己紹介を終えて少しだけ、空気が軽くなった。

 アイクの対応は理性的だし、彼にしても私が無闇に襲い掛かってくる存在ではないと分かってくれたのだろう。

 しかし傭兵とはまた古風な言い方だが、同業者だったか。

 

「それにしてもあんたみたいに橙色でごつごつした種族は初めて見た。なんて種族なんだ?」

「これはパワードスーツだ! ごつごつとはなんだ、ごつごつとは!」

「む? 気に障ったのならすまない」

 

 人が心の奥底で気にしていることを……! 

 女性の兵士や賞金稼ぎのための雑誌によれば4分の3が悩んでいるんだぞ。女性の兵士や賞金稼ぎに言ってはいけないことランキング上位にムキムキとか腹筋とかと並ぶ禁断ワードを、さも悪気なさそうに言ってくるのがまたムカつく。同業者ならパワードスーツくらい知っているだろうに。さっきの仕返しか、嫌味な奴め。

 申し訳ない気持ちとか色々な物がどっかに吹き飛んでしまった。

 

「武器を降ろしてくれ。私はこの施設の人間の救助に来た者だ」

 

 それでも仕事は仕事なので、アームキャノンを降ろし、呼びかけた。

 

「…救助…」

 

 彼も剣をとりあえずは降ろしてくれた。

 

「そうだ。貴方達もそのためにここに来たのか」

 

 アイクは一瞬考え込んだが、答えた。

 

「……ああ」

「…貴方は他に生存者を知らないか」

 

 傭兵団の団長を名乗るアイクの正体も気になるが、最優先すべきは生存者の有無だ。

 

「…知っている」

「本当か! 」

「ああ。全部で数百人くらいだ。ほとんどの奴がきっと無事だと思う」

「アダム! 聞こえていたか!」

「聞こえている。サムス、アイクと共に一度戻ってきてくれ。追って次の指示を出す」

「了解だ。アイク、私についてきてくれ。私の上官に会ってほしい」

「わかった」

 

 私もこの男も未だお互いに警戒を解いてはいない。この男が嘘をついていて危険な奴という可能性もあるが、今生存者の手掛かりはこの男しかいないのだ。こんなところで押し問答するより嘘を見抜くのが上手いアダムのいる所でやった方がいい。

 

 私はアイクを連れてメインセクターのアダムのいるフロアに向かった。

 

 

 もうすぐアダムの所に着くという時、今までしゃべらなかったアイクが唐突に口を開いた。

 

「サムス、その角の先に何かいる」

 

 この角を曲がると確か広い道に出るはずだ。

 私が角をそっと覗き込むとそこには1つ目の紫色の巨人がいた。あいつはここについて早々に私とアダムの部隊を襲った奴だ。奴は倒したはずだが仲間がいたのか。

 

「アイク、私が来るまでここで待っていてくれ」

「いや、俺も戦おう」

「危険だ。接近戦は相性が悪い」

 

 彼の矜持を傷つけないために方便として相性が悪いと言っただけで、そもそも私はアイクを戦わせるつもりは無い。

 

 この先にいる紫色の奇怪な巨人、通称:群体アリ。紫色のゴキブリのようなこいつらは背中に目のような模様のある一匹を中心に、集団で一体の1つ目巨人となって獲物を襲う。

 

 こいつらの厄介な所は普通に銃やビームといった点の攻撃を仕掛けても効果が薄い所だろう。元々は虫の集団なので、腕の一部を吹き飛ばそうが、胴体を抉ろうがひるむことなく伸縮自在の腕を振りまわし、攻撃してくるのだ。しかもすぐに別の虫が集まってきてせっかく壊した所を塞いでしまう。

 私が接近して注意をひきつけ、アダムたちが遠くからフリーズガンで凍結させて、私がミサイルで吹き飛ばす。これを4度繰り返し、核となる目玉をミサイルで木端微塵にすることでようやく勝った相手だ。

 

 私がベビーから授かった緊急回避能力であるセンスムーブと同等の速度で振り回される腕が普通の人間に直撃したら体が2つに裂けてしまうかもしれない。パワードスーツも無しに、人間が剣で接近戦を挑んだ所で負けは見えている。あまり納得していなさそうな彼にそう説明した。

 

「サムス、アイスビームの使用を許可する。遠距離から奴の体を凍結させて、ミサイルで爆破せよ。私も直ぐに向かう」

「了解した、アダム」

 

 アダムの許可が出たので、私はノーマルビームをアイスビームにアップグレードする。

 ピコンっと電子音がして私の視界にアイスビームが使用可能になり、威力の上昇と凍結能力が付与されたと映った。

 

(よし)

 

 私は角から飛び出し、フルチャージしていたアイスビームを発射した。

 白い光と炸裂音を残して水色のアイスビームが飛んでいき、敵の腕に当たりその部分を凍結させる。すかさず、アームキャノンのモードを切り替え、ミサイルを放って凍結部位を爆破。

 ここまでで2秒とかかっていない。上々の滑り出しだ。

 

 群体アリもこちらに気付き、片腕になった体をゆらゆらと揺らしながら近づいてきた。

 私も覚悟を決めて、アイスビームをもう片方の腕に向けて連射しながら近づく。

 

 チャージショットの威力は高いが、次弾を撃つまでに多少の時間がかかるのが弱点だ。

 しかも今回こちらには非戦闘員がいるので私から敵に接近しなくてはならない。

 

 敵の腕が鞭の様にしなり、私を狙う。当たれば如何にシールドを張っている私でも大ダメージは必至。

 

(だが、むしろ好都合だ)

 

 私はセンスムーブを発動。瞬間的に背中のジェットを噴かせて急加速し、敵の足元に飛び込むように回避する。

 そして”既にチャージを終えた”アイスビームを巨人の足に近距離から発射した。

 

 これこそセンスムーブのもう一つの効果。一瞬だけスーツの力を引き上げるこの技は、センスムーブ中はチャージが一瞬で済むという嬉しい副次効果をもたらした。

 

 

 ミサイルを叩き込もうとする私を横から再び腕が襲う。もう一度センスムーブで後方に宙返り。さらに右に跳んで、振り下ろされた腕を躱す。目標を見失った腕は意味なく床を叩いた。

(今だ!)

 チャージショットを放ち、腕を凍結させる。すかさずミサイルを発射しようと構えたが__

 

「っく!?」

 

 突然の衝撃。シールドゲージを見ると3分の1程削られていた。

 吹き飛ばされた私が空中で体勢を整え、敵に目を向けると敵の胴体真ん中から新たに腕が生えていた。あれに突き飛ばされたのだろう。並の素材やシールドでは貫通していたはずだ。足元の氷も解けている。

 

 群体アリは新しく作った腕を振り回し、凍結して重さの増した腕をハンマーの様に叩き付けてくる。

 センスムーブでステップを踏み、宙返りをして回避するが、矢継ぎ早に繰り出されるそれらにミサイルを撃つ余裕がない。

 ミサイルは高火力で追尾機能が付いている代わりに、対象をロックオンする必要がある。弾数にも限りがあり、補給には5秒ほど無防備になるので無駄打ちする余裕もない。

 さらに腕が地面に叩き付けられるたびに、敵の氷が剥がれて散弾の様に飛び散り、私のシールドをじわじわと削っていく。

 

 刻一刻と敵が有利になっていく戦場。しかし増援は意外な所から現れた。

 

「せい!」

 

 アイクの声と同時に、群体アリの両腕の付け根が唐突に切り裂かれ、地に落ちた。

 

(ッ! 消えろ!)

 

 凍っていない腕はまた元の場所に戻っていくが、凍結した腕はその場に落ちたままだ。

 私はミサイルをロックオンし、発射。隙だらけの氷塊を破壊する。

 

「アイク! なぜこっちに来た! 」

 

 私は連続でバックステップして、アイクに怒鳴った。

 

「やはり俺も戦おうと思ってな。要はあいつの腕に当たらなければいい。それだけの話だ」

 

 アイクは悪びれもせず言った。

 

「それだけの話って……」

 

 確かにアイクは戦力になるだろう。私が凍らせて、それをアイクが切り離す。これを繰り返せば奴らを封殺出来るかもしれない。だが一方でアイクは__

 

「貴方は生存者の発見とこの事件の解明の重要な手がかりなんだ。万が一にも死なれては困る」

 

 私はアームキャノンを群体アリの目玉に向け、断続的にミサイルを発射しながらアイクに理を解く。目玉は体内に潜ってしまい当たらなかったが、最初から牽制のつもりで撃ったので構わない。この距離なら多少無駄撃ちしても補給は可能だからだ。

 

「絶対に死なんとは言えないが、負けるつもりもない。俺は勝つ」

 

 アイクは静かに言い切った。

 その姿に私は何故だか心がざわめき、湧き立つ。その言葉を信じたいと、この男ならやれるのではないかと思えてくる。

 

「……それでも駄目だ。貴方は下がっていて欲しい」

 

 しかし私はその気持ちを押さえつけた。戦場での精神の昂揚に任せての軽挙はお互いにとって命取りになる。私は身をもってそれを知っていた。

 

「……そうか、それがあんたの考えなんだな」

 

 アイクは納得したように頷いた。私は黙ってアームキャノンを挙げて、残り1発となったミサイルの補給を始める。あと4秒で補給は完了だ。その間にこの男を後方に退避させるべくと口を開こうとして___

 

「だが、俺には俺の考えがある」

 

 アイクはそう言うや否や、突然金色の剣を天に向けて放り投げた。そしてアイク自身もそれを追う様に駆け出す。

 

「あ、アイクっ! 何を!」

 

 焦って駈け出そうとしたが補給中の私は、あと3秒は動けない。

 剣は回りながら放物線を描いて飛んで行き、アイク自身もふわりと跳び上がった。

 あと2秒。

 アイクが剣を掴んだ。空中で1回転して群体アリの方に落ちていく。焦りと奇妙な興奮が私を焦がす。

 群体アリが最後の腕で目玉を庇うように掲げ、目玉虫は体の中に入り込む。

 あと1秒。

 アイクが剣を掲げて___

 

「天空」

 

 静かに呟くのを確かに私は聞いた。

 

 アイクと剣が一体となって真っ直ぐ落ちていき、群体アリを腕ごと縦に斬り裂いていく。

 地に足が着くや否や、アイクは霞むような速さで斬り上げる。

 群体アリが完全に真っ二つになる寸前、中から一際大きい目玉模様の虫が飛び出した。

 

 舞台は整った。

 

 アイクが振り下ろした剣から青い衝撃波が飛び出し、私のミサイルが尾を引いて突進し、目玉模様の虫を両断し、跡形も無く吹き飛ばした。

 

 私は油断なく、周囲を見回したが群体アリは全滅したようだ。ぴくりとも動かず、生命反応も無い。

 

 私はこちらに背を向けて立っているアイクに目を向けた。

 アイクは深緑の鉢巻と紅のマントを風になびかせながら、右腕を真っ直ぐに伸ばし、親指を上げていた。

 

 その後ろ姿に私の知っている誰かの面影が重なる。怒りにも悲しみにも懐かしさにも似た何かがこみ上げてくる。

 

 私はこの命知らずな馬鹿(勇者)に、“親指を下にして”腕を突き出した。

 

 

 Baby`s cry この言葉が、ベビーが、私を導いたのかもしれない。

 

 前時代的な装備の不思議な男と共に戦う、こんな奇妙なミッションに。

 

 

 




アイクが人間(ベオク)以外に間違われるのは別に初めてじゃないという。
あとスマブラの最新作にアイク続投です!! 今回は暁バージョン。スクリーンショットでもサムスとの絡みが2つもあって、ニヤニヤしてしまった。やはりあの2人はかっこいい。(確信)
この小説でも、アイクとサムスのかっこよさを描けたら……いいなあ
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