ウマ憑依(ぴょい)伝説   作:タイシン推し

4 / 4
 ランニング将棋(デュエル)

 それはレース(スピード)の世界で進化した新たな将棋。

 そこに命を懸ける伝説の馬銘(アザナ)を持つ者たちを――人は


 5Gs(ウマ娘)と呼んだ。


















 な、わけねーだろ!―――将棋王5Gs……ではなく!



 ゴールドシップ劇場、爆続!!




#3 目指すぜ 将棋王!!

 「はち〇ーは●みーはっ●っみー♪ はち〇ーをなめーるとぉ~♪」*1

 

 

 

 浮かれた調子で調子っぱずれな歌を歌いながら、独特のステップでたんたかたんと廊下を歩いている少女が一人。ウマ娘の特徴である耳と尻尾がそのたびにふわりふわりと左右にリズミカルに揺れて踊っていた。

 

 

 少女の名前はトウカイテイオー。『皇帝』シンボリルドルフを越えた、ウマ娘史に残る初の無敗三冠ウマ娘を目指す『帝王』として今日も前を向く未だ負け知らずの快活少女である。

 

 

「ふんふふーん、ふんふっふー♪」

 

 

 ご機嫌な様子を隠すこともなく『私浮かれてます』と顔に盛大に垂れ下げた状態でステップを踏んで向かう先はトレセン学園の生徒会。

 そこに彼女の最も尊敬する目標、『皇帝』が待っているからに他ならない。

 

 

「たのもーーぅ!!かいちょー!!ボクが来たよー!!」

 

 

 そうしてバァーーーン!!と盛大にドアを開け放った先で

 

 

 

 

 

 

 

「――王手(チェックメイト)」

「ふむ……このまま“行ってしまって”も問題はなさそうだが……“一手仕舞って”貰えるだろうか?」

「かいちょぉおおおおおおお!?」

 

 

 

 生徒会室のテーブルを挟んで謎のテーブルゲームに興じている生徒会長、シンボリルドルフを見て絶叫染みた声を上げていた。

 

 

 

 

 

 *****  【 視点転換 】

 

 

 

 

 

  どうしてこうなった?

 

 

 

 

 始まりはそう、トレセン学園を戦国武将カチドキアームズ状態で駆けまわっていたことで“女帝”エアグルーヴに連行され、会長である“皇帝”のところに連れてこられたところだった。

 

「報告は聞いている。大した騒ぎだったようだな」

 

 やや責めるようにも聞こえる言葉だが、表情は優しく柔らかいもので、苦笑に近い。背中に後光を背負うように窓から差し込む陽光を浴びている皇帝・シンボリルドルフを前に

 

「チッウッセーナハンセイシテマース(たいへんもうしわけありませんでしたー)」

 

 まるで変化のない通常運行のゴールドシップ。ネタが理解できてるのか出来てないのかルドルフ会長は笑顔のままで、理解できてないであろうエアグルーヴが静かにブチギレ始めていた。内面で視界だけ共有してるこっちは現状生きた心地が全くしないんだが――そもそも生きてるって言っていいのか知らんけど。

 

「学園を束ねるものとしては、きみに何らかの処分を行う必要がある。だが、トレーナーを必要としていなかったきみがトレーナーを探し始めた。その踏み出した一歩を払ってしまうのはこの学園の趣旨に反するとも思える」

 

 訥々と語るルドルフ会長に謎にうんうんと頷いている訳知り顔のゴールドシップ。なおこいつが被告側である。

 

 

「唯一抜きんでて並ぶもの無し、この言葉に相応しくあれ。きみにこの言葉に至るものがあると思うかね?」

 

 

 シンボリルドルフ会長の言葉に

 

 

「知らね。あるかも知んねーし、ねーかも知んねーし?

 

 

 そんなもん、今の段階でわかるわけねーだろ」

 

「そうか……そうだな」

 

 ゴールドシップの言葉が納得のいくものだったのかは知らない。が、シンボリルドルフ会長は微笑んでうんうんと数度頷いていた。

 

「会長。しかしこのままでは示しがつきません」

「確かにそうだな。それでどうだろう、ゴールドシップ?

 きみは何か言いたいことがあるかな?」

 

エアグルーヴの介入に頷いてゴールドシップを見るルドルフ会長に、ゴールドシップはただ一言こう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、デュエルしろよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――で、コレである。もう一度言おう『どうしてこうなった?』

 

 

 8×8の盤上に並べられた将棋の駒―――と、チェスの駒と、何故かオセロ石。

途中でやってきたトウカイテイオーとか絶句して固まってるんだが……そもそもこのゲームどういうルールで進んでるのか不明すぎて訳が分からない。なんなの?これ……こう……なんなの?

 ゴールドシップの脳内での思考を読み取ってみてもわけがわからん。この盤面見て相手の手を予想してるんだろうけど「三4桂馬?いやいや、ここはルークを前進だろ」とか「あえて黒石をこっちに……いや、シールドブレイクの可能性がある」とかカオスすぎて状況にまるでついて行けない。

 

 

「か、会長……?何やってるの……?」

 

 そんなカオス極まりない状況にやっと復帰したのが新進気鋭のウマ娘、トウカイテイオーである。絶句から回復したテイオーの言葉にルドルフ会長が「ん?」とようやく気付いて顔を向けた。

 

「ああ、テイオーか。なに、ゴールドシップの処分を賭けて一勝負ん打っている」

「――ほう、六7ビショップか……ならこっちで王手ルーク取りな」

「ふむ……それは悩ましいな。王を逃がすしかないが……実にクールな戦術なことに、そうするとそちらがルークを取りにくーる……と、そういうわけだな」

 

 ニヤリと不敵に笑ってゴールドシップを見つめるルドルフ会長。

 

「実に面白い―――ユニークな盤上遊戯(テーブルゲーム)だな」

「……そんな感想言ったの会長くらいだぜ?」

 

 ツゥと微かに頬に伝う汗がひとつ。それがゴールドシップの焦りを表している。

 

「テイオー、君も彼女と勝負をしたことがあるのか?」

「え?ぁー……いや、わけわかんないから断ってた……ました」

 

 たどたどしく返事をするテイオーにルドルフ会長が「そうか」と返し、盤面を見つめる。

 

「かれこれ4度目のチェックメイトに対して「待った」を認めてもらっているが、やっとルールが理解でき始めたところだ」

「わかったの!?コレを!?」

 

 驚愕しているテイオー。叫び出してしまったんだろう、わかるよ。ゴルシの中にいる俺ですらわからんもの。このゲームがどういうルールなのか理解しようとする前にゲーム版ひっくり返す自信があるもの。

 

「将棋王 という名前を付けただけある。各それぞれの駒には強さのランクがある。

 

 将棋の駒>>チェスの駒>>>オセロ という具合にな。だから何度も駒を取れる位置取りをしていながら駒を奪うことはしなかった」

 

 会長の言葉は少し熱を帯びている。はじめての経験と発見に高揚しているのかもしれない。

 

「将棋のルールと同じく、相手の王・玉を獲れば勝利。なので将棋の駒だけで他を蹂躙できる。だが、チェスの駒を蹂躙しすぎてよろしくない。なぜなら、一番役に立たないと思われているオセロの石だが、「石で挟むことで間の駒を全て獲ることができる」というルールがある。と、思われるからだ。

 オセロの石は単体では意味を持たない。にもかかわらずお互いの持ち駒の扱いで一枚ずつ持っているところが切り札と思われる所以だ。そしてオセロの石は「挟むことができる場所にしか置くことができない」と見た。そのうえで、挟み込んだ対象が「すべて相手の駒でなければならない」という条件があるのだろう。でなければ一撃必殺の意味合いが薄れてしまう」

 

 ぺらぺらとルールについての推論を口に出していく会長。その間、内心のドッキドキとワックワクが加速しているのが理解できるから『あ、これ当たってるんだ』と理解できる。ゴルシの内心での緊張がヤバいレベルである。

 

「スゲーな会長……流石会長だわ……コレのルールを聞かずに、いや、聞いても理解できるやつ殆どいなかったんだがな……ようこそ“こちら側へ、歓迎しよう”って言ってもいいか?」

「私の推論が当たっていたのならば、喜んで賛辞を受け取ろう」

 

がっしりと握手を交わす二人の様子に、まるでついて行けない周囲の二人。

 そんな二人などお構いなしに「上級ルールだとこれにトラップカードの概念が加わるんでなー」とか談笑しながら手を進めている。

 

そんなこんなで十数手、お互いに白熱した試合展開を醸し出してきた辺りで―――

 

 

 

 ジリリリリリリリリリリ!!!!

 

 

 

 唐突に目覚まし時計のアラームが鳴り響く。それを悠々とした態度で止めたゴールドシップが立ち上がった。

 

「おし、5分経ったから盤面封じるか」

「了解した。エアグルーヴ、少し席を空けるから、盤面を動かさないように見張っていてくれ」

「え?え??あの……会長?どこ行くの?」

 

 

 展開について行けないテイオーの言葉にルドルフ会長、ゴールドシップ両名は声を揃えて

 

 

「勿論、レースだ」

 

 

 短くそう答えた。

 

 

「察しの悪い奴だなー……ランニング将棋(デュエル)なんだから走るに決まってんじゃねーか」

 

 決まってるらしい。なお頭の中にいる俺も初耳の仕様である。

 

「5分間隔でレースと対局を繰り返し、レース結果によりお互いのタイム差が『持ち時間』を圧迫する仕様だ。最初にそう説明を受けている」

「“皇帝”相手だ。相手にとって不足ナシってな!2000m1本で、走ったら戻ってきて対局再開。持ち時間ゼロになるか、対局で王を取られたら負け。シンプルだろ?」

 

 シンプルの定義が乱れている。おかしいな……?これ何のストーリーだっけ……?

 

 

「さてそんじゃーいっちょ本気を出すとしますかねぇ……皇帝が相手だし、第三段階まで解放してもいいよなぁ……?」

「フフッ……それは楽しみだ。だが私もむざむざと負けてやるつもりはないぞ?最高、最速の皇帝だぞ?さあ行こう、催促せずとも見せてやるとも」

 

 

 ニコニコと笑みを浮かべたままそんな風に去って行くのを、テイオーは放心したまま見送っていた。南無南無。

 

 

 

 

 

 ―――結局レースは大敗に終わり、タイムを大幅にロスしたゴルシが敗北。

処罰として寮内の清掃活動という名のバツ掃除を3日間行うことになり―――

 

 

『んじゃ、アタシ寝てるから掃除終わったら起こしてくれ』

 

 

 ―――全自動(手動)掃除機として俺が出動することになった。

 まぁ負けたの俺のせいだけど、トレ活(トレーナー捜索活動)はお前の責任じゃね?と思わなくはなかったが……ぶっちゃけ脳内で見てるだけってのも暇なので身体を動かすのは楽しかったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なおエアグルーヴの胃痛の量は増加したらしい。

 

 

*1
サントラ収録曲なのでとりあえず伏せてます




―――後日。


「お願いだよぉ!ゴールドシップぅ!!あのゲームのルール教えてよー!
 ボクも会長とはーしーりーたーいー!!」
「ホッホッホ……よかろう。お主をゴルゴル流将棋王の弟子として認めてやろうぞ」

 全力で頭を下げて謎過ぎる盤上遊戯のルールを教えてもらうトウカイテイオーと、それを鷹揚に許可して師匠ポジに立つゴールドシップの姿に





「なんなんですの!!!?」





 と、理解を放棄して絶叫を上げるメジロマックイーンの姿があった。 どっとはらい()

次にゴルシが絡む相手は?(希望する娘に当たるとは言ってない。参考程度です)

  • サイレンススズカ
  • スペシャルウィーク
  • エルコンドルパサー
  • グラスワンダー
  • サクラバクシンオー
  • ハルウララ
  • テイエムオペラオー
  • アグネスタキオン
  • スーパークリーク
  • オグリキャップ
  • ウォッカ
  • ヒシアマゾン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。