・主人公(クォート)が喋ります。
・原作でも判明していない点が多いために、独自の考察と解釈が多々含まれています。
・オリ主は原作ストーリーの表舞台には立たず、裏を補完していく形になります。
・トゥルーエンドのネタバレを盛大に含みます。
・洞窟物語は名作フリーゲームです、皆やろう(ダイレクトマーケティング)
その浮遊島には『力』が埋まっているとされていた。人智を超えた力で空に浮かんでいるその島は大変な魅力で溢れていて、地より天を見上げた人々を惹きつけてやまなかった。
人間は欲望に忠実な生き物だ。だから、地上の人々はどうしても我慢をする事が出来ない。神秘に満ちた島の力を自分のものにしたいという思いを抑えきれなくなってしまったのだ。
しかし、同時に人間はとてもずる賢い生き物でもある。地上の国々は自らの手を汚そうとはせずに、代わりに探索をしてくれるロボットを次々に送り込み、島の情報を得てあわよくば力を手に入れようと目論んだ。
結果として、島には過剰なまでの数と戦力を持ったロボット達が侵入することになった。
命令に従うだけのロボット達には、良心も容赦も無かった。
ミミガーと呼ばれる、ウサギを二足歩行にして人間の半分程の大きさにしたような原住民は当然ながら島を荒らされる事を嫌い、探索ロボットの上陸を拒んだのだが、ただ探索をし力の根源を入手せよと命令されている探索ロボットにとって、当然ながらミミガーは自分達の敵としてしか映らない。
邪魔をするならば排除するのみ。そう判断した探索ロボットは、一縷の迷いも無くミミガー達を手にした銃で殺害していった。
残念ながらミミガー達は弱かった。束になってかかったとしても、探索ロボットの一体にすら勝つのは難しかった。だから、ミミガーは遂に食べることによって莫大な強さを得られるという赤い花に手を染めてしまった。
赤い花はミミガーの潜在能力を極限まで引き出し、探索ロボットとも互角以上に戦えるだけの力を身に付けさせた。その後に訪れる代償をまだ知らぬままに。
これにミミガーに協力する人間まで加わり、戦況は一気に五分にまで持ち込まれていく。
戦争と呼ばれるまでに肥大化した戦いは今なおも続いている。
☆
紫電が頬を掠め、直ぐ背後にあった岩盤を叩いて消える。一発でも喰らってしまえばそのままお陀仏だろう。そう判断したカーリーブレイスは、流れる筈もない冷や汗が背中を伝う錯覚を覚えた。
浮遊島の外壁にせり出した、鉄骨と岩盤の複合によって作られた足場があるだけの奈落空間。現在のカーリーが立っている戦場はそんな場所だった。
「クォート、あれは物には効果が薄いみたい。壁を盾にして戦って!」
声をかけた先には、無口な戦友がマシンガンを片手に構えたまま突き出た岩盤に背を預けている姿がある。この島に眠る力、『悪魔の王冠』を破壊するために派遣された二体の武装探索ロボット。それが女性型のカーリーブレイスと男性型のクォートだ。
探索ロボと銘打たれてはいるが、この二体の目的は力を手に入れるのではなく逆に破壊する事。過ぎたる力は人を破滅へと導くと判断したある組織から派遣された、言うなれば島に味方をする側のロボットだった。
『キラーロボット』と蔑まれる探索ロボットとは違い、自らで行動を決める判断力もあれば虐殺を受けたミミガーに対して力になりたいと思う情もある。狩る者と守る者。外見に少々の差異はあれど、作りがほとんど同じである筈のロボット二種類は完璧とも言えるほどに真逆だ。
カーリーとクォートはどこまでも心優しかった。
「力強いねー、流石最強のキラーロボットさん。まともに戦ったら勝てないみたい」
「笑いながら言わないでよ」
「だって言うなればラスボスよ、ワクワクしない?」
「しない」
「私はするわよ!」
「聞いてない」
などと軽口をたたいては見たものの、素直に戦ってみたとしても勝てる気がしないのは確かだった。
岩盤を越えた向こう側に月と星の光を背景にして仁王立ちする一体のロボットがいる。カーリーのすぐ近くにいるクォートに刺々しさを増したような、紫色の肌に迷彩柄の軍服を纏った男性型。
実際にクォートに似ているどころか瓜二つだ。それもその筈。この二体は、製造工程がほぼ同じの兄弟機なのだから。人間らしく言えばクォートの方が弟にあたる。
探索ロボットチーム二の隊長。コーティーと呼ばれるその個体は両手に一般的な物よりも一回り大きな銃を持ち、ただ二体が隠れている岩盤を睨み付けている。
ロボットらしいと言ってしまえばそれまでなのだが、一切の感情を見せない冷たい無機質な目だ。
コーティーは最強のキラーロボットと称される実力を持ちながらも冷静で、知力もある程度にはある。戦況は自分が有利なのだと理解しているからこそ、無理に攻めずに相手が死地に飛び込んで来るのをただ待ち続けていた。
ただし、コーティーには身を隠す遮蔽物も無ければ背後には島の外へと投げ出されてしまうであろう崖がある。対して相手側の背後は岸壁なので、落下に注意しなくてもよいというのは利点だろうか。
「くぅー、久しぶりの強敵ぃ!! でも目を覚まして、ミミガーは敵じゃない。ミミガーは無害なの!」
「……言いたい事はそれだけか?」
「つれないねー」
底抜けに快活で、それでいてどこか演技がかったカーリーの物言いに対し、コーティーは大きな反応を示さない。苛立つなどの、心の動きも一切無いようだった。
先程からこんな事の繰り返しだ。どうにか自分のペースに持ち込もうとしているカーリーではあったが、クォートとはまた違った方向で無口なキラーロボットは黙して乗ってはくれなかった。
ちなみにクォートは会話には一切参加せず、マイペースにマシンガンを手入れしながらコーティーの隙を伺っている。こちらもこちらで特に焦りなども無いらしい。
「クォート、何か言ってみて」
「え?」
「私じゃ埒があかないから、何か言ってみて」
「えー……」
クォートがマイペースである事は重々承知しているが、やはりこういった時には協力してもらうに限る。無茶振りに聞こえるだろう。だが、もしかしたらどうにかしてくれるかもしれないと、カーリーが彼に対して信頼と期待を抱いているのも確かだった。
指示を受けたクォートは、気怠そうに岩盤の端からちらりと顔を覗かせて棒立ちのままのコーティーを見てみた。相変わらずの不機嫌そうな顔だ。顔はほぼ同じだというのに、似ているという印象は全く与えられない。
撃ってはこないらしい。これ幸いと観察を続けてみると彼の目は一点、更に具体的に言えば二点に止まった。
「その銃、カッコいいね。なんていう名前?」
「そんなの聞いてどうす……」
「ネメシスだ。女神の雷という意味を持つ、俺の誇りだ」
「さっすがクォートね、会話が繋がったわよ!」
ロボットにも誇りはある。そこを突いたクォートの見事な作戦というわけではなく、ただ多彩な武器を使う彼は見たこともない青のラインが引かれている大柄な銃が気になっただけだった。
コーティーはクォートの兄弟機というだけあって他のキラーロボットに比べて全体的な性能は優れているのだが、彼の戦闘能力を支えているのは手にしている二丁の銃によるものが大きい。
ネメシス。大口径の銃口からは電気を帯びたエネルギー弾が放たれ、対象となった生物を対内外から破壊してしまう恐ろしい銃だ。逆に、先のカーリーの分析通りに生物以外には大した効果が得られないのが弱点だろうか。それでも、柔らかい物質なら破壊できるのだが。
このネメシスは生産に多大なコストがかかるために量産には至っておらず、現在ではコーティーが持っている二丁だけがこの世に存在している。ただ扱いがとても難しいので、コスト問題が解決したとしても一般的に普及するかはまた微妙なところなのだが。
と、このように特性を一目で見抜いたクォートは、ロボットには不釣り合いなハイライトを帯びた眼をキラキラと輝かせながら、戦友に対して宣言をする。
「カーリー、倒してあの銃貰うよ」
「おー、急にやる気になったねー」
「……」
こいつらには本当にやる気があるのだろうか。あまりにも軽い雰囲気に眩暈を起こしつつも、コーティーは身体の横にぶら下がっているだけだった腕を上げ、ネメシスの銃口をそれぞれカーリーとクォートがいるであろう岩盤へと向けた。
とにかく、よくはわからないがクォートが本気になったのならばコーティーにとってこれ以上に厄介なことは無い。あれでいて戦闘に関しては超一流なのだから。
「行く」
「あっ、ちょっとクォート!」
風が強く吹き付けた瞬間、クォートが静かに岩盤から飛び出す。自らの体内エネルギーに比例してその威力を上げる赤いマシンガンを両手に持ち、真っ直ぐにコーティーに向かって突進して行く。
距離にして約三十メートルを撃ちすらもせずに突っ込むだけだ。あまりにも不用意すぎる。疑問を感じつつも、コーティーは右手に持ったネメシスの引き金を引いた。
瞬間、爆発音と共に雷のような軌道を描く黄色のエネルギー弾が発射される。通常の銃弾よりも射程が長く弾速も速いそれは、凄まじい勢いでクォートへと向かい飛ぶ。
「怖っ」
無表情に呟きながら、クォートは自らに向かう脅威を前進したまま斜めに移動し余裕を持って回避した。そしてマシンガンをコーティーに向け、放つ素振りを見せる。
対し、そうはさせじとコーティーはやはり右手のネメシスの引き金を二回引いた。今度は二発のエネルギー弾が正に迅雷のごとく迫る。
両者の距離も狭まっている。今度はただの足を使った移動では回避も出来ないだろう。足を使った移動ならば、だが。
「マシンガンは便利」
クォートは前方への跳躍と共に、マシンガンを足下へと連続で発した。銃口から起こる静かな発射音が、直下の岩肌が抉られる轟音に掻き消される。
不可解な行動に見える。だがクォートは連続で弾を発射する反動を利用して、前方への跳躍の慣性を残したまま空を飛んでコーティーへと接近して来ていた。
物理法則などあって無いような光景だ。マシンガンをレベル三と呼ばれる状態にまで強化した結果、撃つ方向を調節してやる事によって、このような異常な移動を可能とした。
流石に常時飛んでいることなど出来はしないが、短距離の移動だけならばクォートとカーリーにとってはそう難しくもない。
「非常識な反動、腕がもげても知らんぞ」
マシンガンの連射には当然ながら限界がある。ならば、使い尽くさせてしまえばいいだけの話だ。連射で叩き落としてやろうと判断し、コーティーは両手のネメシスを上昇し続けているクォートへと向けた。
しかし、その引き金に掛かった指を動かす前に悪寒と共に脚が横っ飛びに動いていた。直前までコーティーがいた場所を多数の銃弾が通り抜けて行く。
「惜しい!」
「カーリーブレイス!!」
目線が上に向いた隙に、岩盤から飛び出たカーリーが銃弾をばら撒きながら走って来る。クォートとは違って斜めに向けてジグザグな軌道でだ、マシンガンはレベル三だが地に足が付いていれば反動で後ろに吹っ飛ぶといった心配も無いらしい。
相談などしている素振りは無かった、それでも相手の二体は即席のコンビネーションを完成させてしまっている。これが、鉄の紲と呼ばれる二体か、そうコーティーは戦慄した。
しかし、驚いてばかりもいられない。身を翻して放たれる銃弾を上下左右に回避しつつ、左のネメシスをカーリーに向けようとする。
「よそ見してたら危ないわよ」
「なっ」
だが、その行動は途中でキャンセルされた。突如として視界に飛び込んで来たのは赤い物体だ。
それがマシンガンを後方に向けて撃つ反動による高速移動で突っ込んで来たクォートの赤い帽子、そして頭だという事を認識した瞬間には腹に巨大な衝撃が走っていた。
「ぐっ、おおおぉぉぉぉ!?」
痛みは感じない。発声や水中活動のために備えられた鋼鉄の肺からは空気が漏れ出ることもない。しかし、衝撃に対するセンサーは備わっているし驚きに叫びもする。
地面から足が離れて行く嫌な浮遊感に支配され、コーティーの体が宙へと投げ出される。そこに更なる衝撃が走った。
「とどめ」
「落ちなさい!」
零距離で接敵するクォートがコーティーを蹴り飛ばして離脱し、二丁のマシンガンから放たれる無数の弾が体の全体を貫いていく。ロボットの耐久力は生半可なものではない。しかし、無防備な状態でレベル三の攻撃を耐えられる程に完全無欠でもなかった。
四肢が弾けてしまいそうな爆発的な衝撃が巻き起こる。気が付けば左腕が無くなり、片方のネメシスもどこかに消え去っていた。
せめてもの抵抗を。そう思ってみても、残った右腕は前へと向いてはくれなかった。
「カーリーブレイス、クォート!!」
同じロボットのくせに、どうして。
そう言おうとした口は強制的な機能のシャットダウンによって動かなくなり、体は崖へと放り出される。落下すれば地上に叩き付けられるか、良くても島の下層に落ちてしまう。前者ならば命は無いだろう。後者でも危ない。
復帰を、そう考えてみてもやはり体は動かなかった。
「ネメシスが!」
最後に耳に入って来たのは、兄弟機の珍しくも焦ったような声だった。
どうしてこの原作を選んだかって?
そりゃあ、血塗られた聖域がクリア出来なくてむしゃくしゃしたからに決まってるじゃありませんか(白目)