【完結】洞窟物語~女神の雷~   作:FA-UMA

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第九話

「……意外だな、まさかどうともなく無事とは」

「アレはアレでわしに恩義を感じてるらしくてね、そう乱暴は出来ないらしい」

 

 少し調査をしてから帰るというブースターよりも一足早くアーサーの家に飛ばされたコーティーは、そのまま砂区へと直行した。使い慣れたアーサーの転送装置だ。何故かリセットしたはずの転送先一覧に砂区が入っていたのは気になるが、手間が省けたと考えれば良い。

 家に戻って数日ぶりに見たジェンカは変わらずに元気なようだ、態度も普段と同じように見える。十年間も共同生活紛いの事をしているというのに、どことなく上から目線なのも全く変わらない。今更なので特に何も思わないのだが。

 

「駐在所には誰もいなかった。カーリーはともかく、他は?」

「カーリーもミミガー達もバカ娘にどこかに飛ばされたよ。犬ころ達もまたバラバラ、残されたのはわし一人じゃ」

「……そうか」

 

 大体予想も付いていた事だ、ただそれが現実になっただけ。だというのに、いざ現実を直視してみるとコーティーは凄まじい怒りに襲われた。

 それはドクターやミザリーに対するものもあるが、大部分がそれではない。彼は自分自身の不甲斐なさに対する怒りに震えている、自分だけがこうしてのうのうと家に戻って来ているのが許せずにいる。

 表面には出さずに、ただ内心で発奮していた。

 

「俺が飛ばされたのは島のコアのある迷宮だった。婆さんが作ったらしいな、魔女だとも聞いた」

「ああ、ガウディ達から聞いたのかい?」

「後は下呂とかいう医者だな」

「そうかい……」

 

 コーティーが椅子に座って一息吐くと、家全体を沈黙が支配した。犬がいないジェンカの家というのはこうも静かなものなのか。

 目を閉じて暫くのスリープモードに移行しようとした彼を起こしたのは、ジェンカの言葉だった。

 

「ミザリーはわしの娘じゃ」

「……孫じゃなくて娘だったのか、婆さん案外若いんだな」

「魔女にとって年齢はあって無いようなものじゃ、わしにもミザリーにも」

「そうか。便利だな、魔法は」

「呪われた力じゃ」

 

 もう一度そうかと繰り返し、コーティーは小さく目を開ける。ジェンカは明後日の方向を向いてぼんやりとしているようだ、今更互いに相手を気にするような関係でもない。

 迷宮にいる時には色々と問い詰めてやろうと思っていたが、冷静に考えてみて知る必要があるような無いような話だった。彼女が魔女だからといって何だというのか、ミザリーが娘だからといって何が自分に関係する。

 ただ自分は目的に従って行動するだけだ、そうしたいからそうするだけ。意味が増えたところで彼は気にするような質ではなかった。

 ジェンカは続けて言う。

 

「ミザリーを、悪魔の王冠を止めてくれ」

 

 平坦な物言いだった、感情をわざと殺しているように聴こえる。目を閉じ直しながらコーティーは答えた。

 

「婆さんには関係無い、俺が王冠を破壊したいからそうするだけだ。……まあ、何だ。健康そうで良かった」

 

 そのままスリープモードに入ったコーティーが目覚めたのは、二時間後の事だった。

 

 

     ☆

 

 

 休養を終えてアーサーの家に戻ると、ブースターがコンピュータに向かって何か作業をしていた。どうやら怪我による問題は無いようだ。話しかけ、二人は互いの健在を喜びながら情報交換に移る。

 

「ここで彼に会った。約束通り君に関しては言わないでおいたが、本当に良かったのか?」

「ああ。俺の事を覚えていないなら、余計な情報を吹き込まないほうが良い。この戦いが終わってからでもゆっくり思い出させるだけだ」

 

 クォートを対ドクターに集中させたいのも本音だが、コーティーもクォートに構っている暇が無いというのも事実だった。ドクターやミザリー、更にはカーリー達に関してやらなければならない事が多い。

 何だかんだと言いながらいっぱいいっぱいなのだ。立て続けに敗北し、自分に対する不甲斐なさが立って焦りも存在している。あくまでもコーティーは自分優先だ、周囲に気を遣っている余裕が無ければそれなりの理由を付けて放置して当然。

 面倒な事が嫌いなだけだとも言える。

 

「金髪の女型はいなかったか?」

「いや、彼一人だった。そのまま急いでタマゴ回廊に行ってしまったよ、カズマ君がそこにいるらしい」

「……」

 

 不可解な話だ。クォートに関しての記憶が無いとしても、カーリーが彼から離れて行動する意味は薄い。どう考えたとしても共に動くのが最善なはずだ、だというのに一人で動いているとは。

 もしかしたら、最初から彼らは再会していなかったのかもしれない。クォートが独自に動いてカーリーはまた別に一人でいるのか、もしくは何か不測の事態が起こり離れ離れになってしまったのか。

 どちらかはわからない。だが、とにかくカーリーが迷宮に飛ばされたのはほぼ間違い無い。ならばすれ違いになってしまい、まだ迷宮に残されている可能性もある。彼女ならば独力で脱出するだろうが、合流した場合のメリットは大だ。

 どうするべきか。少しの時間を思考に費やし、コーティーは決断を下した。

 

「カズマが使っていた大農園に繋がっている転送装置、あれはどこにある?」

「クサムラの倉庫に繋がっている。しかし、あれは一方通行だ。作業には時間がかかるぞ」

「飛行装置があるとはいえ、外壁を登って行くのは面倒だ。知識だけなら頭にインプットされてるからな、自分でどうにかする」

 

 そう言って、コーティーはブースターの横から割り込んで転送装置をクサムラに飛ぶよう設定し直した。カーリーを探しに行く、クォートの後を追う、どちらも却下だ。自分自身の目的を最優先に取る。

 決してカーリーを見捨てたのではなく、彼女ならば自分で全てどうにかするだろうという信頼があってこその行動。クォートに関しては戦力になるだろうが、タマゴ回廊から大農園に移動する方法に心当たりが無いので追うのは論外だ。

 無駄な時間を使うわけにはいかない、今取るべきは最も効率の良い行動だとコーティーは自分を戒める。私情を挟めば死ぬだけだ、彼はそう考えて生きて来た。

 

「博士はどうする?」

「ここで待機していよう、私が出張ったところで邪魔になってしまう」

 

 賢明な判断ではあるが、彼としては苦渋の決断なのだろう。冷静な性格をしているように見えるブースターでも、ドクターと戦いたいという欲は持っている筈だ。それを抑えて待機を選択したのは、自分自身でも悔しく感じているに違いない。

 こういった辺りは素直に尊敬出来るとコーティーは思った。コーティー自身も冷静な性格であるとは自覚しているのだが、ここまで自分を抑え込むような真似は出来そうにもない。老練、とでも言うべきなのだろうか。とにかく単純な好感を持てる人物だった。

 自身最優先の自分やカズマとは大違いだなと、自嘲するのも忘れなかった。

 

「生き残ってくれ」

「爺さんもな」

 

 差し出された右手を迷う事無く掴み、生まれて二度目の握手を交わす。確かな信頼関係がそこにはあった。

 

 

     ☆

 

 

 コーティーが転送されたのを確認し、ブースターは椅子に座り直しながら大きく溜め息を吐いた。ドクターの元から逃げ出してからというもの、ほとんど休みも無しに働き続けている。流石にそろそろ身体にもガタが来ているようだ。

 だが、単純に運が良かったのだろう。全滅したと思われていた武装探索ロボット達に巡り合えるとは思ってもみなかった。彼らは戦闘に関しては他の追従を許さない程のスペシャリストだ。しかも、キラーロボットと違って豊かな心を持っている。

 きっと、捕まってしまったスーやミミガー達も無事に助けてくれるだろう。

 自分では出来ない事を押し付けてしまって申し訳なくは思う。だが、今のブースターにはただ頼る事しか出来ないのだ。

 二人共に完成した飛行装置を託した、ならば後は祈るのみ。そして彼らが帰って来れる場所を整えに動き、環境を守り切らなければ。

 

 などという事を考えながらまたコンピュータに向かい直した時、転送装置が稼働した。慌てて振り向いて見れば、青白い光に包まれて一体のロボットが現れる。先程別れた者とほぼ同じ顔。だが、服装や肌の色がまるっきり違う。

 赤い帽子をかぶったクォートだった。

 

「あっ、博士」

「君か。どこから来た?」

「農園から。転送装置があったから、繋げちゃった」

「……」

 

 もう少しだけ待っていれば楽に飛べたというのに。コーティーの運の無さに同情し、ブースターは天を仰いだ。

 その後、クォートは巨大なキノコを鷲掴みにして農園へと戻って行ったのだが、その怪しげな雰囲気から何に使うのかとはどうしても聞けなかった。

 

 

     ☆

 

 

 クサムラは名の通りに自然豊かな草木に塗れた地域だ。浮遊島には基本的に乾いた大地の荒れたところが多いのだが、水源の豊かなこのエリアは奇跡的に草が辺り一面に生い茂る、森林のような姿を見せている。

 訪れるのは初めてだが良いところだと、コーティーは素直にそう感じた。クサムラに住んでいるミミガーは数匹程度いると聞いていたのだが、家らしき場所を訪ねてみても見当たらない。恐らくはドクターの一味に襲撃されて攫われてしまったのだろう。連れて行かれた場所は大農園の可能性が高い。

 別に助けるような義理は無いのだが、大農園に向かうついでに解放しておくのも構わない。それよりも、目の前に気になる物があった。

 

「……何でこんな物が落ちてるんだ」

 

 エリアに一歩踏み出そうとするその場所に、何やら機械の残骸が落ちている。恐らくはエアバイクだろうか。空を飛ぶスクーターのような乗り物で、確か扱いはとても難しく、慣れない者が使えば間違い無く事故を起こしてしまう代物だと知識にはあった。

 割と貴重な筈なのだが、真っ二つに割れる程に破壊されてしまっているとは。少し乗ってみたいような気もするので残念だと思いながら、コーティーはゆっくりとクサムラの奥地へと踏み込んで行く。ここから先は自分にとっての未開の地、とにかく警戒して進まなければならない。

 当然ながら油断は皆無だ。何時どこでドクター一味が仕掛けて来るかわからない。

 

 ネメシスを右手に持ちながらずんずんと歩いて行くと、周囲は徐々に太陽の光が遮られて薄暗くなってきた。そして、共に獣の気配も大きくなってくる。

 目の前に現れたのは数匹の影、目を凝らして見ればそれはよく見覚えのあるものだった。

 クリッター。この浮遊島でも最もポピュラーなモンスターと考えて差支えない、大した強さも持たないほぼ無害な獣だ。二つ耳に柔らかそうな丸っこい姿、ハッキリ言って相手にする必要すら感じられない。

 しかし、明らかにその中の一体がおかしかった。サイズが他の二倍、いや三倍はある。

 大自然の神秘がそうさせたのだろうか、それとも資源豊か故の過剰飲食だろうか。巨大なクリッターが道に堂々と居座っている。

 本来ならば無視して進むところだが、今回は通る方向を塞がれている格好だ。残念ながら排除しなければならないらしい。

 ネメシスを構えて正面へ。元々耐久力も無い生物だ、先制攻撃をかましてしまえば直ぐに倒れるだろう。そう考えて強大なクリッターに向けて素早く引き金を引くが、その予想は早々に裏切られる形となった。

 クリッターが計四体、弾丸を回避して纏めて空へと飛び立った。

 

「なぁっ!?」

 

 あまりにも予想外な出来事に、コーティーから珍しくも素っ頓狂な声が漏れる。それもその筈、十年間をかけてクリッターという生物を観察してきたが、このように飛ぶ事の出来る種類など見たこともない。

 よくよく見てみれば、二つの耳をプロペラ代わりにして飛んでいるようだ。物理法則など完全に無視である。飛行スピードは早くもないが、徐々に近付いて来ている。踏み潰すつもりなのだろう、やられる前にやれという精神は向こうにも確かにあった。

 だがしかし、驚きはすれど焦りは微塵も存在しない。飛んだところでクリッターはクリッターなのだから、空にいるならば叩き落としてやればいい。

 ネメシスをそれぞれ二発か三発、それだけを撃ち込めば全てが地上に落ちてピクリとも動かなくなってしまった。

 死んでいるか、それともまだかろうじて息をしているか。どちらでもいいと深く考えずにコーティーは歩みを再開させて奥へと突き進んで行く。

 

 その後も襲い来るのはえらく巨大なクラゲ、更にはえらく巨大なカエル、更にはえらく巨大なクラゲを更にえらく巨大にしたクラゲ。

 と、気付いてみれば巨大生物しかこの地域には生息していないかのような錯覚を覚えていた。

 しっかり見てみれば通常サイズ、あくまでもこの島の基準に則った通常サイズの生物も付属するようにいるのだが、他の大きさのインパクトで霞んで見える。

 自然の力は恐ろしいものなのだと初めて知ったコーティーは戦慄すると共に、これからは環境保護を可能な限り推進していく事を心に誓ったのだった。

 

(やはり、いないか)

 

 一本の道しかない道を真っ直ぐに進んで行くと、誰かが住んでいるらしい民家に辿り着いた。しかし、これも無人だ。先程とはまた別の者が住んでいたのだろうが、こちらも連れ去られてしまったらしい。

 アーサーのような例外を除けば、ミミガー達に戦闘能力は無いと言っても過言ではない。ドクターやミザリーに襲われてしまえば、対抗する手段も無くやられてしまうに決まっている。

 何にせよ、この家の中からは先に行けないらしい。ブースターを使って家を飛び越し、更に奥へと進んで行く。

 暫くすると、今度は道が荒れて歩きづらくなってきたが、ここは飛行装置があるので楽なものだ。道が荒れていようが上を行けば問題にならない。

 クリッターも相変わらず襲い掛かって来るが、それも些細な事で、ネメシスを雑に撃っていれば撃退出来た。そして進むにつれて建造物らしき物が多くなり、目的の倉庫らしき場所も見えた。

 

 何故か崩壊しかかっている扉をこじ開けて中に入ると、倉庫と言う割には何も無い空間が広がっている。あるものと言えば転送装置にコンピュータ、後は細々とした何に使うかもわからない物があるぐらいだった。

 迷わずコンピュータを立ち上げて確認をすると、転送装置のプログラムに何らかのエラーが生じているようだ。転送装置の状態を見比べながら作業を続け、三時間程度が経過した辺りでようやく回線が繋がった。

 行き先は大農園、確かにカズマが飛んだと思われる転送場所だ。

 まさか、数日前はこれに頼る事になるとは夢にも思わなかった。次に大農園を訪れる時は、また自力で外壁を登る羽目になると思っていたのだが。更に次があるのなら、アーサーの家と繋げるようにしておこうとコーティーは誓った。

 正常な状態を表している緑色を眺める目を閉じて、コーティーは軽く息を吐く。この先は死地だ。少しぐらい、こうやって精神統一をする時間をもらってもバチは当たらないだろう。

 

「……」

 

 戦い通しの十年間だった。彼がこの島に派遣されてかなりの時間が経つが、考えてみれば、今こうしているのが信じられないような状況から始まっていた筈だ。本来ならば、コーティーはミアキドが王冠を手に入れた時点で役目を終えていたというのに。

 それが、今はこうして何の因果か島の命運をかけた戦いに巻き込まれ挑もうとしている。自分自身を過剰に評価しているつもりは無いが、客観的に見てみても物語にするならばメインキャラクターと捉えられるべき立ち位置にいるのだろう。

 主人公は誰になるか。知らないところで噂を聞く限り派手な事をやっていそうなクォートかもしれないし、性格的に向いているのはカーリーかもしれない。だが、自分は主人公などという器ではないだろうとコーティーはハッキリと自覚している。

 つまるところ、地味なのだ。

 裏方をやっている方が圧倒的に性に合っているとも思うし、何よりも主人公などになってみたいとも思わない。そんな面倒なものはやれそうな者に任せておけばいい、それこそ十年ぶりに活動を開始したロボットだなんてそれらしいではないか。

 

「くっ、くく」

 

 そこまで考えたところで、不意に声を押し殺した笑いが出た。

 珍しい事だ、笑うなどと。

 死線から押し寄せるプレッシャーにやられて頭がおかしくなってしまったのだろうか。だとしたらどうにも体たらくだと自嘲した瞬間に、更におかしさは深まっていく。

 何となく、大声を上げて笑ってみたい気分だ。そんな事をした経験は生み出されてからの十年間では無いが、カーリーやミミガー達によってそれがどんな状態なのかはよくよく教えられて来ている。誰も見ていないのだから、いいのかもしれない。

 しかし、逆に無理やり笑みを消した。今ここで笑ってしまうのは勿体無いと、何故か思った。

 

「……賛美を」

 

 誰に聴かせるでもなくそう言って、コーティーは立つ。冗談のように死線のプレッシャーがどうとか考えていたのだが、あながち間違いではなかったようだ。恐らくは最終戦になるのだから、当然と言えば当然か。

 ドクターが死ぬか、自分達が死ぬか二つに一つ。滅びをかけた一戦だ。どうあったとしても負けてやるわけにはいかない。

 どんどん自分がロボットらしくなくなっていっている事にようやく気付きながら、コーティーは転送装置に触れた。問題なく起動し、装置はさっさと乗れと言わんばかりに駆動音を撒き散らし始めている。

 焦るな、すぐに乗ってやる。

 含み笑いをしながら袋を背負ってネメシスを抜き、台座へと上ると、足下から自分の姿が消えて行くのが見えた。そして時間にしてものの三秒、たったそれだけで視界はどこか遠い暗闇の中に捕らわれてしまっていた。

 ここがカズマの通って行った通気口の中なのだろうと予想し、ネメシスを斜め前の床に発砲してみると、放たれた光弾が着弾までの一瞬だけ辺りを照らし風景を映し出してくれる。やはりそうらしい、少しばかりの段差と閉まっている通気口の蓋が見えた。

 

 間隔を開けてネメシスを撃って周囲を確認しながら蓋を外し、狭いダクトを行く。

 カズマが通る分にはとても狭く見えたが、コーティーが使う分にはそうでもない。やはり身体のサイズは小さい方が楽で利に適っているのだと、ロボットの設計に改めて感心したりもした。

 そうこう考えている内に通気口の終わりに辿り着き、今度は開け放たれたままでいた出口から颯爽と飛び降りてみると、そこは当然だがあの牢屋だった。

 見るのは三回目になるが、相変わらず陰気なところだ。ここに捕まっていたのかと思うと反吐すら出る。

 牢屋の中のミミガー達が驚いている様子が伝わって来た。攫われて来たのだろう。

 

「出してやる」

 

 それだけを言って、コーティーはネメシスの引き金をまた引いた。

 

 

     ☆

 

 

 出会いと別れ。それが一時であれ永久であれ、必ず訪れる事をコーティーは重々理解している。アーサーの件でもそうだ、別れは残酷にあっさりと訪れて悲しみを落としていく魔物に他ならない。

 だから、あまり気にしてはいけないのだと思う。嘆くのは全てが終わった後でも決して遅くない。別れに対して何か思うところを持つべきではないと自分を戒めながら、彼はこの数日間を戦い、そしてただ進んで来た。

 しかし、流石に突如の再開に対する心構えは一切していなかったわけで。

 

「あら」

「むっ」

 

 大農園の隅も隅に一台のベッドが置かれていた。前までも存在していたのかはわかるわけもないが、とにかくそこにベッドは存在していた。

 脇に立つフードをかぶった男、クトゥルーと呼ばれる生態不明のそれが寝泊りしているのだろうか。今はどうだっていい、問題はそこに座っている一人の女の方だ。

 カーリーブレイス、行方不明の彼女がこんなところで何をしている。どうして、そう声をかけようとするのを遮り、彼女は先に言った。

 

「久しぶり、キラーロボットさん」

 

 心臓を抉られたような気がした。




 大農園突入、後二話ぐらいで完結になります。
 今回はいつの間にか繋がっていたクサムラの倉庫の転送装置について補完、向こうからは飛べないのと違ったんかいと。
 この話のラスボス誰やねんと思われるかもしれませんが、実はちゃんといます。その辺りは次の話で。
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