「そういえば、その銃はどうしたの?」
涼やかな風に吹かれながら、カーリーは隣に座っているクォートに聞いた。全ての出来事の元凶となっていた男、ボロスを撃破して脱出した彼女は行く当ても無くバルログの上に乗って飛んでいる。
この先は未定だ。まずはどこかを旅してみるのもいいのかもしれない、だがその内に砂区へは帰るつもりでいる。色々と放り出してしまっているのだから、責任を果たす必要があるのだ。
クォートはのんびりと空中からの風景を眺めながら、のんびりとした様子で言う。
「外壁の下の方で剣と交換してもらった。何となく、前から知ってる気がしたんだ」
「そうなんだ」
答えに満足してカーリーははにかんだ。
クォートの記憶は未だに戻っていない。それでも彼がこの銃、行方知れずになっていたもう一丁のネメシスに出会っていたとは。奇妙な縁もあったものだ。
確かにこの銃は二体を護った、そして勝利へと導いてくれた。本当に女神が宿っているのかもしれないと彼女は連続で頷いて見せる。そんな彼女の右手にも、同型の銃は握られていた。
「バルログ、進路変更。目標砂区よ!」
「オーライオーライ、じゃあ飛ばすよー!!」
「結局戻るんだ……」
壊れていたのならば墓前にネメシスを供えてやろう、生きていたのならば思いっきり抱き付きでもしてやろう。
開けた未来に確かな明るさを感じながら、三体は空を行く。
☆
ガランとした駐在所の中で、ジェンカは何をするでもなくただそこに座っていた。犬も相変わらずどこかに行ったままで戻っては来ない。唯一ハジメだけは隣に控えたままだが、眠ったまま動こうとはしてくれなかった。
言い知れぬ寂しさに支配される。十年間も経験して来た他に囲まれた生活に慣れきってしまったからだろうか、それよりも以前に戻っただけだというのに何か落ち着かない。ただ、一人の老婆が魔女らしい生活をするようになっただけだというのに。
ボロスが死んだ、島にかかっている呪いの全てが消え去った。ならば、後は自分もゆっくりと死んでいくのだろう。孤独に、誰に看取られるでもなく。
そんな事を考えた矢先に、駐在所の閉ざされた扉が開け放たれた。暗闇の中に光が差し込む。人影、二人分のそれがあった。
「すまん婆さん、予想してなかった客人だ。……おい、早く入れ」
「押すなロボットめ、今更どんな顔をしろと言うんだ!!」
ぎゃあぎゃあと入り口で騒ぎ続ける、一体の家族と一人の肉親。
また賑やかになる、そう確信した彼女は頬に一筋の涙を流して薄く笑った。
「遅かったね、門限に遅刻じゃ」
女神はただ、皆を見下ろし祝福している。
これは決して語られない物語。洞窟の奥深くで起こった、そんな物語。
これにて完結です、ありがとうございました。