Bloodborne × ワールドトリガー 血濡れの万能手   作:たっつんG2

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ラウンジでの一幕

 一瞬の油断だった。

 

 この隙ならば叩ける、といった一瞬の希望が、相手の思うツボだった。

 シールドの合間を縫うようにして叩き込まれた旋空が、俺のトリオン体を喰い裂いた。

 

『柊、ダウン。10-1で、太刀川の勝利』

 

 背中がマットに打ちつけられる。柔らかいはずのその感触が、妙に背骨に響いて痛かった。

 

 仮想戦闘ブースから出ると、やけに目に生気の灯っていない、天然パーマの男がこちらに歩み寄ってくる。

 

 太刀川慶。さっき、散々俺を斬り殺した野郎。

 年齢は俺の一つ上と聞くが、その、落ち着いたというか、気怠げな雰囲気と無精髭が、見た目の年齢を底上げしている。

 

 まあ悪くいえば老け顔。

 

「よう柊。珍しいな、俺から一本取るとは。腕を上げてるのは俺だけじゃねえってか?」

 

 飄々とした態度で、アゴ髭を撫でながら。

 

「あーチクショウ、やめだやめ。やっぱあんたには勝てませんわ」

 これ見よがしに不機嫌なポーズで、ラウンジのソファに倒れるように腰掛ける。

 

「まあそういじけるなよ。剣の振り方はまだまだ素人だが、体捌きは中々のもんだぜ。旋空なしじゃキツかっただろうな」

「ちぇっ、ご機嫌取ろうったって、そんなんじゃおだてられませんよ」

 

 左手の甲を見てみると、そこに記されている数字は朝に比べ300も減っていた。眉をひそめると、隣に座るヒゲがニヤリと口角を上げる。

「いいじゃねえか。ポイントの動きがでかいってことは、それだけ成長してるってことだぜ。なにも、大きければいいもんでもない」

 何食わぬ顔で俺の隣に腰掛けた太刀川が。

 

「……そういえば、太刀川さんの個人(ソロ)ポイントって今、いくら?」

 

「9800」

 

「…………」

 

 キメ顔でそう言った。

 

 ヒゲを二、三本抜いてやった。

 

「うわっ!? なにすんだ!?」

「いいでしょ、どうせトリオン体なんだから」

 

 使い捨てるトリオン体のヒゲが二、三本抜けようが構わないだろう。

「ひー、末恐ろしい奴だぜ、そのうち生身のヒゲも抜いてくるに違いない」

「そのつもりです」

 

 

「おー、二人とも、今終わったとこ?」

 

 そんなことを言いながらラウンジに入ってきたのは迅さん。隣に小南を引き連れていた。

 

「ええ、随分と搾られましたよ、ポイント」

 知ってるよ、とでも言いたげな顔で苦笑いする迅さん。

 対照的に、小南はどこかしら誇らしげな顔をしている。

 

「ふーん!! まだまだね柊は!! まあ、頼んでくるなら? この私が手ほどきをしてあげてもいいんだけど?」

 

「いや結構です」

 

「ぬぅわんでよこのー! 生意気ーっ!」

 

 腕をぐるぐる回す小南の襟を掴んで離さない迅さん。

 

 小南桐絵。大規模侵攻以前のボーダーから所属している古株――

 

 しかし中身はまだ中学一年の子供である。そんな子供に手ほどきを受けるほど落ちぶれていない。

 だが小南は、先輩風を吹かせたいのだ。

 

 太刀川さんはもはや小南と互角に戦えているし、沢村さんや風間さんでは歳が離れ過ぎている。

 

 三輪からは何故か目の敵にされているしで、残るは俺……そんなところだろう。

 

「そんじゃ太刀川さん、一戦やろうぜ」

「ああ。臨むところだ」

 

 そんな事言って迅さんと太刀川さんはブースに消えていってしまった。

 

 小南は腕組みをして、無い胸を張って偉そうにしている。

「柊!! 私たちも行くわよ! 孤月のなんたるかをみっちり教えてあげる!」

 

「いやっ、俺はもう三輪か柿崎あたりをボコって気持ちよく帰ろうとっ!?」

 

 首根っこを引っ掴まれてブースの方に引きずられていく。苦しくはないが、自尊心に生傷がつく。

 

 トリオン体、力っょぃ……

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