Bloodborne × ワールドトリガー 血濡れの万能手 作:たっつんG2
勝率はおよそ二割と少し、といったところだろうか。
三十戦ほどして気が付いた。
奇特なことをして、それでも勝てずに斬り刻まれる、この無様な体たらくを見て、小南が見たらなんというだろうか。
マットに落とされる背骨が軋んできた。
連敗している時特有の、妙な緊張が腹の底から湧いてきた。
「……次はもっと太刀筋を視よう。攻撃は当たらなければいいんだ、それを避けることさえできれば――」
太刀川さんを指名する。こんなにボコボコにされてもへこたれなくなったのは、ひとえにBloodborneのおかげといえるだろう。
………………。
太刀川さんが来ない。何かあったのかとブースから出ると、忍田さんに耳をつままれている太刀川さんがいた。
「慶!! また高校の課題を溜めているらしいな!!」
「ちょ、ちょ、忍田さん離してって!」
トリオン体故に痛みは感じていないらしい。私も、一つ上の先輩が大人に耳をつままれているというのは、心が痛む。
「わ、悪い柊! この埋め合わせはまた明日するから――」
「明日までに課題が終わればな! 柊、慶は借りていくぞ」
「あ、どうぞ……」
太刀川さんはそのまま向こうへと連れて行かれてしまった。
……私も課題は溜めないようにしよう。
と、そんな太刀川さんと忍田さんのせいか、ラウンジには正隊員訓練生問わず多くの人だかりができていた。
とはいっても、十数人程度ではあるが、いつもの様子からすると随分と活気づいている。
「太刀川さんにあれだけ勝てるとはすごいな!」
と言うのは嵐山。本職の
「観てたのか、嵐山。照れるな。みっともないところを晒してしまった」
「いや、太刀川相手に、そのトリガーセットであれだけ戦えれば十分だろう、それに、足捌きも前より上手くなっている」
人混みの中から、嵐山の肩を叩くようにして割って出てきたのは、
「あ、東さん……東さんも観てたんですか、珍しいですね」
「いやなに、柊が太刀川相手に面白いことをしてると聞いたからな。つい来てしまった」
それで忍田さんの耳にも入ったということか。だとしたら気の毒だが。
「それにしても、銃と剣の併用とは、面白いことを考えつくなあ。ところで、なぜシールドをセットしていないんだ?」
「獣を狩るのに盾など不要」なんては流石に言えないので。
「銃に回すトリオンを増やしたくて。元々のトリオン能力も高くないですし……」
「なら毎日射撃練習でもするといい。トリオン器官も筋肉や心肺機能同様、負荷をかけるとその分限界値が伸びるらしい」
相変わらずこの人はなんでも知っている。
「いやはや、ボーダーのトリガーは実在の兵器を元に設計されているから、その戦い方を踏襲していたんだが――かなり強かったな、その戦法。やっぱり、常識にとらわれないことがトリガー技術のカギか――」
大学でトリオンについて研究している東さんらしいセリフだった。
「ああ――そうだったんですね。孤月は日本刀、
私がそういうと、東さんはハッとした顔をして、考え込んでしまった。
「狙撃銃……なるほど、面白いことを言うな」
「ああいえ、話半分できいてくれれば結構なので……」
「いや、いいアイディアだ。早速開発室と掛け合うことにするよ。それじゃあ」
そんなことを言って去ってしまった。
「柊さん」
そんな東さんと入れ替わるように、ずずいと出てきたのは、私より一回り小さい中学生坊主――三輪だった。
「ああ三輪。どうした?」
「太刀川さんとの戦い、とても面白かったです。ぜひオレともお願いします」
三輪が私を頼ってくれているという事実が嬉しくて、ついジーンとしてしまう。
ここは可愛い後輩のために頑張るとしようか。