終わりの魔導書   作:peg

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教祖(預言者)の老婆

 その日、襤褸の店がある王都に激震が走った。

 

 なんと先日の突発的な地震を、ピタリと言い当てた占い師がいるというではないか。

 

 最近雨漏りが激しくなってきた薄汚れた店の片隅で、己は降り掛かる雨漏りの脅威に、赤い火花を放って相殺を繰り返した。

 

「当たる占いですって」

「けっ! 占いなんて信じて商売ができるか!」

 

 半端な長さの平たい木板で、弾け返った火花を机で打ち合うウン某とハゲ店主が言った。木板は耐火性能の高い木箱を加工して作ったらしい。

 当たるも八卦当たらぬも八卦。

 先人は良く言ったものである。

 

「しかも、次は大雨が降って、悪魔が沢山やってくるんだそうです」

「この平和な王都にぃ? 雨降ってるけどなぁ……絶対モグリだろそいつ」

 

 確かに鬱陶しい雨は振り続けていた。なんとかならないものか。ハゲ店主に、店を建て替える甲斐性などは望むべくもなかった。

 

 

 ぱこんぱこん、と無駄に甲高い音で火花が跳ねた。無駄にゆっくりとした軌道で移動するものだ。

 一向に勝負がつかないが、負けたほうが倉庫整理をするらしい。

 大方、ウン某に押し付けられるのであろうが。雇用者と被用者の悲しい関係だ。……哀れな。

 

 既に火花の数は十と少し数えた程だ。

 しかし、この卓球なる競技は、どうやって決着が付くのだ。

 

「それは、玉を落としたほうが負け……あ! 卑怯ですよ!!」

 

 あろうことか、ハゲ店主は己に水差しの中身を放おった。

 中身は、近くの鍛冶屋から貰った火酒だった。

 酒であっても染みができるので、己は特大の火の粉で弾き返した。

 

「ぎゃははは! これで勝ちだ! ってあつ。あっつ!!!」

「えぇ……」

 

 巨大な火の玉を打とうとした、ハゲ店主の板が燃え尽き火達磨へ変わってしまった。……哀れな。 

 

「水! みずみずみずみず!!」

 

 炎の怪人と化したハゲ店主は、店の軒先から豪雨の中へ出ていった。

 凄まじい蒸気が店の外側から上がった。

 

「懸けの意味はあったんですか……」

 

 ないな。

 結局、独りで倉庫整理する羽目になったウン某がぼやいた。

 

「しかし……先程の姿は、スポンティニアス・コンバッションを彷彿とさせる姿で不気味でしたね」

 

 何なのだそれは。

 

「人体発火現象を扱った映g……演目です。劇の」

 

 ほう、ほう!

 王都にあって、己の力で火傷する人間はいない。

 先程のハゲ店主のように、皆が薪になれば、雨も地面に到達する前に蒸発するのではないか。

 

「おい待て莫迦、何を考えてる!?」

 

 

 

 

 その日、王都の人間が燃え上がった。

 

 火事を抑制する火災千封に(かこつ)けたこの祭は、王からの禁止令を持って収束した。

 

 最初は己がちょっと燃やした。

 しかし途中から、実害はないと判断したお祭り好きの臣民達が、勝手に盛り上がって広がった。収集が付かなくなったので、スケープゴートが立てられた。

 

 悪魔を召喚した占い師の老婆は、過激派特定新興宗教の教祖として指名手配された。老婆にも自身のことは占えなかったらしい。

 

 口は災いの元とは、先人は良く言ったものである。

 

 

 

 

 

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