『♥️♥️ ×月○日 青い厄招きを頂戴にあがります♥️♥️』
とある日、王都にある場末のうらぶれた骨董品店に仰々しい予告状が届き、泥棒が入った。
特に盗むものもない筈の店だが、泥棒が入るとは不思議なものだった。しかもこの泥棒、予告状を出す様な愉快犯だった。
予告状を出された日、案の定、喜んで居るのか怒り狂っているのか良く分からないハゲ店主が罠を仕掛けまくった。最終的に泥棒は、己に触れて気絶したわけだが……。
この泥棒の女が予告状に乗せていたのは、厄招きと呼ばれる置物だった。
厄招きとは、小汚ない狸型の置物であった。不自然な青い色をしており、腹から手にかけては白かった。へそに袋が付いており、無限に入るそれにはアイテムボックスという名前が付いていた。厄を寄せるなどという風評は、まるごと無視されるような逸品であった。
何故こんなものがここにあるかというと、タンスの角に毎日小指を3回ぶつける厄を発現していた商人が、己に触れて厄払いしたついでに置いていった。
「くくく……。この女、どうしてくれようか?」
ハゲ店主が指を鳴らしながら、悪どい顔で宣った。完全に、無辜の村人を襲う山賊の首領の様態となっていた。
「いやあの……。普通に衛兵に引き渡せば良いのでは……?」
ウン某が至極
「いーや! 俺の店の商品を狙うなんざ、私刑が妥当だね!」
ハゲ店主は、余程腹に据えかねていたのか、思考が完全に悪者と化していた。何処から持ち出したのか、舐めると切れ味が上がる鉈を取り出して舐めている。……その鉈、前の持ち主が猛毒植物を切って舐めてしまった払い下げではなかったか……。
暫く経って、簀巻きにされた泥棒女が、風見鶏の鬨の声で目を覚ました。
「よし! 起きたな! やらせろ!!!」※(殺の意)
「あんた何口走ってんだ!!」
ウン某が、ハゲ店主を押さえ込みにかかった。己は女から話を聞くことにした。この女、非常に薄幸そうな顔立ちをしており、とても泥棒のようには見えなかった。どちらかと言えば、文官にいそうなタイプに思われた。
泥棒女に話を聞くと、厄招きは元々封印のための遺構にあったものが、盗まれたものであったらしい。
何でも、入ったものに相応の呪いを掛ける罠の一部であったそうだ。腹のアイテムボックスは、当時大量の水が入っていたそうな。
泥棒女は、今年の雨期で
「……」
「……」
義賊の女の話を聞いて、店主とウン某が固まった。その顔には、冷や汗が見られた。
「どうぞどうぞ」
「どうぞどうぞ」
二人は、一転して厄招きを差し出した。
ちなみに、予告状の裏面には変態聖女の紹介状が乗っており、複雑な紋様をしていた。何でも、若い婦女子の間で手紙を〈デコる〉のが流行っているそうだ。この紹介状もデコられていたのだが、度が行きすぎており、もはや元の文字の原型がなかった。義賊の女も無駄にデコっていた。
「紛らわしい書き方するんじゃねぇーよ! そもそも、文法がおかしいだろうが!?」
通り掛かって顛末を盗み聞きしていた八百屋の奥方によって、噂話で性犯罪者の謗りを受けることになったハゲ店主は、終始怒鳴っていた。
きっとハゲ店主は、犯罪者に間違われる厄に掛かっていたのだろう。先日の、幼子を特殊な縛り方で愛する幼女偏愛者という噂もそれだったのだろう。なんとも可愛そうなことだ。
数日後、王都の水源が枯れた。
◆
これは風の噂で聞いた話だが、王都の水源はとある女怪盗によって盗まれたらしい。水源を丸ごと盗んだ女怪盗は、指名手配されて一躍時の人となった。
女怪盗は、男に触れられると服がビリビリに破れる呪いに侵されており、色々な追っかけが大量に発生して有名だったそうな。
本作はフィクションであり、未来から来て助けに来たんだか問題を起こしに来たんだか良く分からない狸とは関係がありません。
でも好き。