終わりの魔導書   作:peg

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燃え尽きるがいい!


火災千封

 王都の貧民街近くにある、益体もない商品を扱っている骨董品店は、再び夏を迎えていた。

 本来であれば秋に突入するはずであったが、涼しくなるかと思いきや、再び暑くなった。猛暑である。

 

「……」

「……」

 

 店主と売り子のウン某が秋晴れの元、店先に座り込んで汗を垂らしていた。

 先月まで時節柄良く見た氷売りの魔術師達は、纏まって移動した後であった。王都の水源の水不足から来る節約令も合わさり、王都は地獄の様相となっていた。

 

「あつい……」

「なぜ、こんなときに地獄烏の渡りと重なるのですか……」

 

 地獄烏とは、火山一帯に住まう鳥形の魔物だった。翼に炎を纏っており、灼熱の体を持っていた。西にあった火山が突如休火山となってしまった為、一斉にあちこちの活火山へ疎開しているのであった。

 貧民街は木造の建物が多く、この湿度や気温であれば小火も起きるのだが、王都ではここ50年程火事らしい火事は起きていなかった。

 というのも万年魔力不足の己が、火事となる炎の因果を食べているからであったが……。己はもっと崇められて良いのではないだろうか。

 

「これだけ熱いのに、打ち捨てられている廃材なんかに火が着かないとは……。やはり王宮にあると言われる宝玉、火災千封はすごいですね……」

「あー……。それなぁ……」

「?」

 

 訳知り顔の店主が己を一別した。言っても良いのだろうか……。まぁ、50年程経ったので問題あるまい。

 

「何です?」

「只の小石なんだ」

「は?」

 

 火災千封は、移動してきた地獄烏に困っていた王都の鋭遣隊へ、先代が売り付けたものだった。実はただの小石であり、大事に保管すると火災が無くなる謂れがあると、兵隊達に売り付けたものだった。いつしか、それが国宝となり王族の手に渡った。実態は、因果を頑張って食ってくれ、とお願いされた己の力であった。崇めよ。

 

「えぇ……。あんたらほんとに……。なんてことを知ってしまったんだ……」

「がははは! は、あちっ! あちち」

 

 ウン某が頭を抱えてしまった。それを見た店主が爆笑し、座っていた椅子から転げ落ちた。転げ落ちた店主は、地面に肌が接触すると跳び跳ねてのたうちまわった。土が剥き出しの地面の温度は、かなり上がっているようだった。

 

 通りの様子を窺うと、殆ど誰も居ない中、近所の八百屋の女将が日射でパンを焼いていた。なんとも逞しい女だ。

 

 パンが焼き上がる頃、通りからゾロゾロと衛兵達がやって来た。目的は、この店のようだった。……ついに、店主が捕まるのか。

 

「い、いらっしゃいませ」

「い、いらっしゃいませぇ……。何かご入り用で?」

「妖具改めである! 西にある火山を消した疑いが掛かっている!」

「えっ?」

 

 どしどしと、数人の衛兵達が店の中に入って来た。

 

「そんなぁ! 旦那、そりゃご無体な!」

「ええい! うるさい! 邪魔をするな」

 

 隊長格の衛兵に店主がまとわり付いて進行を妨害した。木製の天秤を持った兵士が、己の前で止まった。

 

「こ、この反応は……!」

 

 天秤は、己から勝手に迸った赤い雷撃で燃え尽きてしまった。己は、因果を食べ過ぎて絶好調となっていたのだった。なんか、すまんな……。

 

「あああ! 隊長これです! こいつが犯人です!」

「ああー! ダメです! お客様! ダメです! ああー! 火災千封の本体ですそれ! あ、あつっ! あちち」

「このお方、うん○マンですぞ!? まさかこいつら、街を壊す気では!」

 

 ウン某が騒ぎ立てたが逆効果だった。衛兵に蹴飛ばされて、地面で先程の店主と同じ道を辿った。己はその後、魔力を遮断する布を被せられた。

 

「ぎゃー!」

 

 何も見えなくなったとき、通りが爆発した。近所の八百屋の女将が焼いていたパンが、急に爆発した様だった。因果をねじ曲げまくられたパンが、因り戻しで弾けたのだ。

 

 爆風で布が外れた。

 一瞬のことだったが、王都の建家の半数が同じような現象で爆発した。

 

 

 

 

 幸いなことに、一瞬で布が外れたため、火事による被害は免れたのだった。また、死傷者も出なかった。

 

 後日、王宮から使いが走って来て、謝罪を入れられた。詫びの品として燃やすと冷えるたらいを下賜された。口止め料だそうな。

 

 変態の聖女が己に力を注ぎ、たらいを煌々と燃やすことで、この騒動は収まった。

 

 




そろそろ明け方が涼しくなりそうですね。
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