植込みの傍のベンチに座り、渋谷は軽く事情説明をし始めた。一週間ほど前、校長から旧校舎の調査を依頼がきたのだ。怪談に参加したがったのも旧校舎の話が出るかもしれないと思ったからだ。(昨日出たので、麻衣が説明した)
「では、働いてもらおうか」
録音を終えた渋谷が立ち上がる。助手代理の仕事の始まりだ。麻衣は旧校舎へ行くのを躊躇っていたが、振り向いた渋谷にひと睨みされると、とぼとぼと諦めたように歩き始めた。肖は「しょうがないよ」と麻衣に言う。旧校舎に着くと渋谷は傍に止めてある車に近づく。彼がスライドドアを開けると 色んな機材がたくさん乗せられていた。
「機材を運ぶ」
「機材って……これ? もしかして、これ全部、運ぶの!?」
「必要なだけ全部」
「ゴーストハントって科学的に調べるんだ」
なんからしくない理由が分かった。
「二人はマイクを外して集めてくれ。僕がスタンドを回収する」
「わかりました。」
外している間、なんで設置するのか?と聞く麻衣と音を拾うために使う。と渋谷の一方的な言い合いがあった。麻衣が聞きたいのは使われていない旧校舎に
なんでマイクを置くのかをだ。渋谷は
「だからマイクを置いてみるわけだが?」
やっぱり小馬鹿にしている。麻衣は意味がわからないという感じできょとんとしている。肖が代わりに説明をし始めた。
「旧校舎って誰も来ないでしょ?」
「うんうん。」
「なのに物音がしたら?」
「あ、すごく怪しい」
理解してくれたようだ。
「少なくともこれまで、特に異常な音は録音されていないな。……まあ、この程度なら当面危険はないだろう」
「危険じゃないってさ」
「……うーん」
こうして三人は旧校舎に足を踏み入れた。
「ねえ……幽霊屋敷って危険?」
「そういうものもある」
「危険なものもあるし、死んだって気づいてないから普通に生活していた霊も居たって聞いた」
「危険だってあるのに、どうして十七やそこらで、こんなことをやってるわけ?」
「必要とされているから」
麻衣の問いに即答する渋谷。
「へええ? でも、今までに解決できなかった事件だって、あったでしょ?」
麻衣そう少し意地悪そうに訊ねる。が、渋谷の答えは「ない」。
「僕は有能だから」
きっぱりと言う彼に麻衣は引きつる。
「あァら、すごいのねー。顔が良くて、しかも有能だなんてー」
思い切り、あからさまに皮肉った。肖は苦笑い。渋谷は麻衣と肖を振り返る。
「僕の顔……いいと思うか?」
「いいんじゃない? 恵子たちも騒いでたしー」
「容姿は良いと思いますよ?」
二人の言葉に渋谷は一言。
「趣味は悪くないな」
ナルシスト発言だ。
「百目鬼さん!!あいつナルシストだ!!」
「……うん。堂々と言うのはある意味凄いね」
「絶対周りからのあだ名はナルシストのナルちゃんだ!!」
「本人に言っちゃ駄目だよ」
この日、渋谷のあだ名がナルとなった。そして次にやることは車の機材運び。麻衣はどこに運ぶのかと問うと
「校舎の中」
「……てことは、旧校舎の中に入れと?」
「旧校舎を調べに来たんだから 当たり前だよ」
麻衣の言葉にさらりと言う肖。彼女の言葉にナルも同意する。
「百目鬼さんの言う通り、何のために来たと思ってる」
ナルは冷ややかに言ってから、麻衣と肖にスチールパイプを何本か押しつけた。
「あたしー、荷物番をしたいなー、なんて……」
しかしナルの視線と無言の圧力に負けた。
ポン
なでなで
「私もいるから大丈夫。安心していいよ」
「………百目鬼さ――――ん!!(泣)」
心細い麻衣の頭を優しく撫で、優しい言葉をかけてくれる肖。嬉しさのあまり麻衣は抱きついた。
「ありがと百目鬼さん!!あたし嬉しい!!ねえせっかくだから肖って呼んで良い!?あたしも麻衣でいいからさ!!」
「うん。麻衣って呼ぶ」
そんな2人の様子にナルはため息をつく。
「心配しなくても、2人だけで行けとは言わない」
3人は旧校舎に入った。まず玄関には折り重なった靴箱の残骸。その残骸とボロボロな外見以外は普通の校舎の作りだ。廊下の窓から差し込む光は、窓ガラスの汚れのせいか、いかにも弱くて頼りない。
(霊の気配はない。てことはいない?)
「こっちを使うか」
そう言って一つの部屋へ入った。
「谷山さんと百目鬼さんは棚を組み立ててくれ」
「わかりました。」
「ナ……じゃない、渋谷さんは?」
肖は素直に頷くが麻衣は渋谷はどうするのかと聞く。
「機材を取ってくる」
「外に出ちゃうの?」
肖もいるとはいえ、残されるのが不安の様だ。
「機材は外にあるからな。それとも君が行って運んできてくれると? ちなみに、重い物で十キロ以上あるが」
「……棚でいいです」
十キロ以上を持っての移動はきつい。きつ過ぎる。こうして肖と麻衣は棚を組み立て始めた
「にしても 本当に怖いね」
「ん?そうかな」
麻衣の言葉にキョトンとする肖。そのことに「恐くないの!?」と驚かれる。
「うん。全然」
「な、なんか肖って凄い」
するとギシッと音が聞こえた。
「なっ何?」
「え?家鳴りじゃないの?」
実家が寺なので普通の家鳴りだと思っている肖。またギシッと鳴った。しかも近い。麻衣は勢いよく音がした方を見た。麻衣が勢いよく向いたその先に居たのは機材を持ったナルだった。
「何を呆けている。さっさとしないか」
「はいはい。肖これはここかなー(泣)」
「麻衣これこっちだと思う」
「あ、そっか」
こうして棚が出来上がり、小型のTVが収納された。まるでTV局である。
「なんかTV局みたいだねー」
「そうだね。どこのカメラか間違えそう」
「うん、確かにそうだ」
組み立てが終わった後、今度は教室の温度を測りに行く。やっぱり麻衣はびくびくしていた。怪談ではけっこう楽しんでいたのに。実際の体験は嫌みたいだ。
「麻衣大丈夫?」
「や、やっぱりなんか怖い。肖は怖くないの?」
「寺の方がもっと暗いよ」
(あーなるほど)
麻衣は納得した。温度を測り、記録を書いたバインダーをナルに渡す。記録を見るナルに麻衣はどう?と聞いた
「異常はないな……特に低い場所はない。強いて言えば一階の西奥の部屋が低いが、
問題になるほどじゃない……」
「たしか、霊の出る場所は気温が低くなるって言ってたよね? てことは、幽霊はいないってこと?」
「まだ分からない。幽霊はシャイだから」
「シャイ?」
「恥ずかしがりなんですか?」
静、小羽の霊が見える友人・四月一日君尋から霊はどんなものか聞かされていたので驚いた。
「……とにかく、これではターゲットの決めようがないな」
そう言ってナルは、麻衣が渡したクリップボードを机の上に放り出した。
「とりあえず、一階と二階の廊下に二台ずつ、玄関に一台、暗視カメラを置いてみよう」
今度は暗視カメラの設置だった。しかも五台。それらを設置し終わると、やっとナルから「帰っていい」とのお達しが出る。こうして本日の作業は終わった。
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「そうか。そんなものがあるんだな」
「科学的に調べるなんて面白そうね」
帰った後、肖は静と小羽にカメラを壊し、助手さんをケガさせたのでお手伝いすることになった事を説明した。
「だったら弓弦を連れてけ。なにかあったらマズイからな」
「わかった」
こうして肖は弓弦を連れていくことにした。