霊狩中毒   作:WATAHUWA

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もどってきたナルに、リンはヲリキリさまの話をした。誰かが呪符をコックリさんの道具だと偽って広めた。なにも知らない生徒たちは、進んで呪殺に手をかしていたのだ。

 

「作ったのも呪法を行ったのも素人だからよかった。私ならこれ一枚で殺してみせますよ」

 

しかも呪う相手に麻衣達は驚いた。

 

「マツヤマヒデハル氏です」

 

松山先生だったのだ。

 

「……まつやま…ってあの松山先生のこと?なんで」

「麻衣。分かってるはずでしょ?生徒を犬扱い。坂内くんに対してはせっかくの夢をバカにする。恨まれるのは当たり前だよ」

 

松山の名前が出てことに麻衣は固まってしまったが肖の説明に納得してしまった。実際、亡くなった坂内の事を「カルトだかにかぶれて悲惨な末路をたどった奴」と見下していた。坂内からすれば呪いたいと思ってしまうのは当然だ。

 

「帰る準備は済んだか?もう用はないんだ。さっさと引き上げるんだな」

 

松山本人が来てしまった。流石に「あなたは呪われている」と言えないのでナルは「申し訳ありませんが席を外していただけませんか」と言うが松山はやっぱり席を外さない。それどころか「またよからぬ相談か?」とまた失礼なことを言う。これはもう仕方がない。恨まれていることを自覚させるためにナルは呪符を見せて説明した。

 

「バカバカしい!呪いなんかで人が殺せるわけないだろうが。だいたいだれを呪い殺すって言うんだ?」馬鹿にする松山先生にナルは言う

「…松山先生、をです。リン?」

「はい、そうです。滝川さん、百目鬼さん。梵字は読めますか?」

「読めます」

 

リンに言われ、肖と滝川は呪符に書かれている梵字を読む。

 

「………なるほど、松山秀晴としか読めねえや。」

「私もそう読める。」

 

滝川と肖もしっかりと「松山秀晴」と読んだ。

 

出所は一年生と美術部から。ナル達の説明に松山先生もやっとわかったようだ。

 

「さ、坂内か!?あ、あのバカ何てことをしてくれたんだ!何で俺が…」

 

とても分かりやすいのに恨まれる理由は全然わかっていない。

 

「何故自分が選ばれたのか、本当にわからないんですか?」

 

皆の視線が集まる。

 

「……安原……」

「『ぼくは犬ではない』。…坂内君の遺書の全文です。ぼくらは、学校がぼくらを犬のように飼い馴らそうとしていると知っていました。その代表が誰かと聞かれたら、ぼくでも先生を挙げます。…先生は学校の象徴だったんです」

「実際、坂内君の事を「オカルトだかにかぶれて悲惨な末路をたどった奴」「あの世で後悔してるだろう」と言ったじゃないですか。恨まれるのは当然ですよ。」

 

安原と肖の言葉。

「そんなこと言ってたのか!」

「恨まれるのは当たり前ね」

「教師としてどうなんですの」

 

滝川、綾子、真砂子に言われる松山。ジョンにも顔をしかめられる。彼らの言葉と視線に耐えきれなかったのか。

 

「ど、どうにかならんのか?!」

 

必死にお願いする。出来る方法はただ一つ。呪詛を生徒たちに返すことだ。

 

「あたし…ナルなんてだいっきらいだからね」

 

やはり優しい麻衣に嫌われてしまった。

 

「バカにきらわれるのは光栄だな リン準備をはじめる。肖手伝ってくれ」

「はい」

「……うん。弓弦行くよ。」

 

ナルに言われリンと肖と弓弦はベースを出た。車に乗る3人と1匹。

 

「目的地は?」

「肖の家だ。」

「やっぱりだね」

 

遥が書いた書物に騙されて呪いの儀式をやってしまった人を助けられる方法があった。それの確認しに行く。

 

「ナル。これが終ったらちゃんと麻衣に謝ってね。麻衣は本当に良い子なんだから」

「・・・・・・・・。」

 

肖の言葉。しかしナルは無言。運転席にいるリンは呆れる。

 

「返事!」

 

弓弦に頭をべしっとはたかれ、ナルはしぶしぶ「わかった」と小さく答えた。しばらくして肖たちは家に到着する。

 

「あら?肖たちどうしたの?」

 

小羽が肖たちに聞く。弓弦が管狐に戻った後、肖は説明する。

 

「非常事態。解決するためにはひいお祖父ちゃんの書物が必要なの。」

「わかった。静くんに言っておくね」

「ありがと!」

 

***

 

ぱらぱら

 

「あった。」

 

しっかりと騙されて呪いの儀式をやってしまった人を助けられる方法と書かれている。

 

「まず図のような人形を作り、騙された人の名が書かれた紙を貼る。そして図に書かれている札を用意して…」

 

肖は達筆で書かれている方法を読む。リンは人形の形は札の文字をメモする。ナルは生徒たちの名簿を用意する。

 

 

数時間後

 

リンが人形を作り、それを車に運ぶナルと肖はなんとか作業を終えた。

 

「後は蝋燭と香炉と皿だな」

「持ってくる」

 

すると

 

「ん」

 

包みを持ってきた静がいた。

 

「お父さん」

「食え。」

 

腹が減っては戦ができぬ。そう思ったのか差し入れを用意してくれたようだ。

 

「ありがとう」

「後で小羽さんにもお礼を言います」

 

「ナル。お礼は君尋さんにもだよ」

 

静のことだ。小羽と共に君尋にも強引に作らせたに決まっている。蝋燭と香炉と皿を静に用意してもらい、肖たちは腹ごしらえをすることになった。

 

「……うまいな」

 

野菜料理だけを食べるナルとリン。肖は

 

「うん。美味しくないって言ったら怒るからね」

 

小羽と君尋が作る料理の味をよく知っているからこそ「マズイ」と言われたらムカついてしまうのだった。こうして準備を終わらせた肖たちは静と小羽に挨拶し、すぐに緑陵高校へ戻った。

 

 

***

 

体育館にすべての人形を置いた三人と弓弦はベースに戻る。

 

「リン。頼むぞ」

「はい」

 

すると麻衣と滝川が来た。人形に騙されている。そしてやっぱり麻衣は抗議をし、ベースを追い出された。

 

「何で誰も2人を止めないの?ダメだよ!あんなことさせないで。やめさて……!」

「麻衣」

 

滝川が麻衣の頬を軽く叩いてまっすぐ見つめる。

 

「ナルを信じろ。ナルが俺達の期待を裏切ったことがあるか?」

「だって……」

「あるか?」

「………ない……」

 

麻衣は今までの事を思い返す。いつだってナルは完璧だった。どんなことも調べて、

事件の真相を暴いて、解決した。

 

「だったら信じろ。大丈夫だ」

「麻衣、言霊をやろうか」

「………言霊?」

 

麻衣はナルとリンに協力する肖を不満気に見る。

 

「ナルとリンさん、皆が助かる方法をやっているんじゃないかな?だから私は二人に協力してたの。だから「絶対に大丈夫」」

「………絶対に大丈夫」

「ちゃんと心を込めて!」

「絶対に大丈夫!!」

 

しばらくして

 

「……終わったの?本当に!?」

「ああ」

 

それを聞いた麻衣は大急ぎで体育館へ走った。当然、大量の人形に驚いている。

 

(壊れているのはちゃんとある。後は壊れていない人形を探してヲリキリ様をやったことをあるかを確認するだけ)

 

「じゃあ、ヲリキリさまをやったことはないんですね?はい……はい、わかりました。ありがとうございました」

 

確認がとれた麻衣はカチャリと受話器を置いて一息ついた。

 

「大丈夫。何ともないって!」

「やった!」

 

その言葉にベース内に嬉しい声があがる。こうして生徒たちに何もなく、呪詛返しは成功したのだった。麻衣は先に外に出たナルを追いかけた。生徒たちのために行動したのに酷いことを言ってしまった。それを謝罪するために。

 

「それにしてもよく知っていたなリン!」

「出来るならできるって言いなさいよ!」

「出来ませんでした」

 

滝川と綾子の言葉に素直に答えるリン。

 

「お礼を言うなら百目鬼さんの曾祖父に。彼が残した文献がなかったら呪詛返しはできませんでした。

「…………うそぉ!!Σ(・□・;)」

 

肖のひいお祖父ちゃんスゲェ!!と心から思ってしまった滝川達。これは遥のおかげだと聞かされた麻衣は遥の墓に滝川に用意してもらった上等な酒を供えるのだった。

緑陵高校の異常現象は坂内の祟りとして慰霊祭をするとのこと。ヲリキリ様も坂内の祟りの一つと言えばやらなくなるだろう。

 

後日

 

『許すまじ!生徒たちを犬扱いする教師たち!』

『自殺の原因は教師!?遺族怒りの訴え!!』

 

連日、ニュースやマスコミにはこの文字などが並んでいる。坂内の自殺とその原因が松山だ。とマスコミにバレ、教育委員会から調査のメスが入った。当然、松山は教育免許剥奪。保健の先生以外教師たちも悪くて教育免許剥奪。良くてとても厳しい再教育センターに送られることになった。新聞には緑陵高校には生徒たちを犬扱いしない良心的な教師たちが赴任されることとなったと書かれている。生徒たちのインタビューには「すごく安心している」「松山たちがいなくなってよかった」とあった。

 

「安原さん達もう大丈夫だね」

 

肖の言葉に弓弦は頷いたのだった。

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