いつものように調査しているとジョンがある仮説をあげた。
「もしかしてここの霊は若いお人が好きなのかもしれません」
仮説を上げたジョン曰く大橋たち職員は年配の人達ばかり。逆に行方不明になった人たちは二十代以下の若い人たちばかりだ。たしかにあり得る。肖達はこのことをナルたちに言おうとベースに戻る。すると
「帰ってきた!」
綾子が安心した声をあげた。またいなくなったそうだ。いなくなったのは南のところの1人、福田。
「……肖」
「うん」
福田も若い。ジョンの仮説が現実味を帯びてきた。
「一体どうした。なんで年齢を聞く」
ナルが聞く。
「実はジョンがある仮説をあげたの」
「仮説?」
肖の言葉に疑問符を浮かべるナル。仮説を上げたジョン本人が説明した。
「はい。職員たちは年配の人ばかりっでっしゃろ?その逆に行方不明になった人たちは全員若い。だからここの霊は若いお人が好きなのかもしれません」
「なるほどな」
ジョンの説明にナルは納得する。つまり自衛できない麻衣と安原はとても危険。なので自衛できない者は自衛できる者に護衛してもらうことになった。ナルは綾子が真砂子を、滝川とジョンが安原を護衛してもらおうと提案した時だ。
「それでは谷山さんと百目鬼さんを私が護衛するということですか?」
リンが文句を言い始めた。たしかにナルは退魔法が使えない。麻衣と安原と同じく危険なのだ。
「そ そうだよどうすんの?」
「護符とか持ってないの?」
ナルは霊能力者ではなく超心理学研究者。戦えるわけない。それを思い出した麻衣と肖はナルに聞く。ナル本人は「なんとかなる」とあっさりと言うがリンに「なんとかされては困ります」と言われた。
「ナルの護衛は私がします」
「リンさん」
様子からしてナルから離れてはいけないようだ。なので肖はリンに提案する。
「私には弓弦もいますし、自衛もできるので麻衣と安原さんのどちらかに行けばリンさんはナルの護衛が出来ますよね?」
「……確かにそうですね」
肖の提案に少し考え、納得したのかリンは肖、滝川、ジョンにお願いする。
「滝川さんは安原さんを、ブラウンさんと百目鬼さんは弓弦と共に谷山さんをお願いします」
しかしナルは「ぼーさん一人ではキツイ」と言う。それだけ危険だからだ。そんなナルに「誰か一人を返してください」とリンは言う。リンの口から「教授」「ご両親」「付き添いではない」と出る。極めつけは…
「あなたを監視するためにいるのですからね」
『(か 監視ぃ!?)』
まさかの監視発言に周りは驚く
「肖肖監視って!?」
麻衣は驚きのあまり肖に聞いてしまう。
「『監視』警戒して見張ること。また、その人。以上〇談社・国語辞典「いやいや意味は分かるからね!!」
肖自身も驚いたのか君尋の家に有った〇談社・国語辞典の内容を真顔で言ってしまう。そうしている内に安原が自分が帰ってまどかをアシストすると提案した。
車に乗って去っていく安原を見送った肖達は福田を捜すためにまた屋敷内を歩き回ったが、結局見つけることはできなかった。
「この家は中央部分が高い構造になってます。一階の床が中央に向かってごく僅かですが、傾斜しています。そのため、外辺部に比べて中央付近がニメートル以上高くなっているんです」
立体的に表されたこの家の図を見て、皆は不思議そうに見ている。考えた結果は麻衣が見たあの夢。あの夢に出てきた部屋を隠すための増築である。なので壁ぶち壊し案が出た。
コンコンッ
「こんばんはー」
「まいどー。情報をお届けに来ましたー」
まどかと安原が窓から来た。二人は調べた結果を伝える。
まず一つ目。どうやら煙突の数が中と外で違うらしい。まどかが撮ってきた写真を見ると、不自然な煙突は屋敷中央部分にあった。
それから二つ目。美山家本邸周辺に住む高齢者への聞き込み。
鉦幸氏は人嫌いな上にかなりの変人だったらしい。優しい時は人に物をあげたりするが、機嫌が悪い時は人を追いかけ回して殴ったりする。慈善事業は何か悪どいことをやっているのをごまかすために隠れミノにしているんじゃないのか、とのこと
(隠れミノ……あり得る)
麻衣が見た夢。確かにやらかしていたのかもしれない。
「それと、鉦幸氏は小さいころから身体が弱かったらしいですね。子供の頃からあまり長生きは出来ないといわれてたそうです。たびたび外遊してたそうなんですが、単なる外遊というより外国の医者に診せに行ったというのが正確らしいです」
「顔色が悪い理由これだったんだね」
「うん。体が弱いならそうなるね」
自画像の顔色、目つきが悪い理由がわかった気がする。
「あ、そういえば…鉦幸氏がここに住むようになってからですが、下男が二人一緒だったそうです」
それを聞いたら肖があることに気づく。周りの空気が変わった。
(霊が来た)
霊は麻衣の中に入った。自分が死んだときの話なのか怯えている。
「しっかりしてください。この部屋には悪い人はいません」
「……この人はいけませんわ。貴女を救ったりはできません。だって、貴女はもう死んでいるんですもの」
麻衣の中に入ったことに気づいた肖と真砂子は麻衣の中にいる霊に話しかけた。
「さ、降りて。恐れないで光のほうへ行ってごらんなさいな。きっと楽になれますから」
「『絶対に大丈夫』。彼女の言う通りにしてください。」
真砂子と肖は優しく言うと霊は出て空へ向かった。
「この家に住む霊に憑かれていたようですわ。今話していたお女中さんのようです」
「麻衣、起きてる?」
真砂子は霊について説明し、肖と弓弦は麻衣の様子を見る。
「その人だ……夕べ、夢の中で殺されたの……その人なの……」
涙を流す麻衣。憑かれた時、女性の記憶が入り込んでいたようだ。
「そうやって殺された霊がこの家を彷徨っているわけか」
『助けて』『死にたくない』
あれは殺されてしまった霊たちの言葉だったのだ。