「おはよう麻衣!百目鬼さん!」
「あ!おはよう!」
「おはよう」
ミチルに言われ、応える麻衣と肖。そして…
「それじゃあ答えてね!!」
「渋谷先輩と何話したの!?」
「デート!?デートなの!?」
「Σうお!!」
「質問責め」
朝からミチル、祐梨、恵子の質問責めを喰らう麻衣と肖。肖の長い髪に隠れている弓弦はイケメン好き女子の大声に驚いていた。
「とりあえず渋谷さんは転校生じゃないよ」
「「「え?」」」
肖の言葉に固まる3人。そんな3人に麻衣は言う。
「旧校舎の怪談を調べに来た調査員だってさ」
転校生ではない。ただ旧校舎の怪談を調べに来た調査員と聞いて3人は我に戻り、「え―――――っ?」とショックを受けた。
「ちょっと、谷山さん、百目鬼さん」
話をしている最中、いきなり声をかけてきたのは、昨日と同じく黒田だった
「おはよう」
「おはよう。──何でしょうか」
肖と麻衣が挨拶し、何しに来たのかを聞いた。
「昨日のあの人、霊能者なの?旧校舎を調べに来たって、今、言ってたけど」
「霊能者じゃなくて、ゴーストハンターだそうです」
「カメラやマイクを使って科学的に調べるみたい」
黒田は少し考え込むような仕草をした。
次に言った言葉はかなり驚きだ。
「二人共、あの人、紹介してくれない?」
突然そんなことを頼んできた。
「え?」
「は?」
黒田の言葉に驚く肖と麻衣。眼が点とはまさにこのことだ。黒田曰く自分に霊能力あるから手伝いたいそうだ。そんな彼女に肖と麻衣は顔を見合わせる。ナルは霊能力を使うというより科学者。お手伝いは機材運びなど雑用。さらには素人と話すのは嫌い。とりあえず麻衣は黒田に説明する。
「素人と話をするのは、嫌いだそーです」
「あたし、あなた達ほど素人じゃないわよ」
即答する黒田。今度は肖が説明する。
「黒田さん。私達助手さんに怪我させたから手伝っているの。だから聞いてくれないと思う」
その説明に黒田がギロっと睨む。
「なんせナルちゃんは事務所の所長らしいし」
麻衣のその言葉に反応したのはミチル。背後から麻衣の襟首を引っ張る。
「ちょっと麻衣、ナルちゃんってなによ、親しそうに」
「ナルシストのナルちゃん。言っとくけど、あいつに夢を持ってるとガッカリするぞ。すっげー性格、悪いから」
麻衣はナルのあだ名の理由を話す。彼の性格も追加した。そうしている内に黒田はいつの間にか自分の席に戻っていた。彼女の様子からして本当は皆の仲良くしたいのだが生真面目な性格なせいで冗談やおしゃれなどの話題についていけない。皆が興味を示してくれるように「自分は霊能力者」と周りに言っているようだ。
すり
「……うん。このままじゃ黒田さんが潰れる」
すり寄る弓弦の言いたいことに肖は気づく。せめて君尋の店に行ってやっかいな癖に気づいてほしいと願った。
放課後
「特に異常はないな……なさすぎるくらいだ」
ナルの下へ行ったのだが、ナルが言う通り以上は無かった
「弓弦。霊はいる?はいだった1回。いいえだったら2回つついて」
肖の問いに弓弦は答える
コンコン
いいえだった。
(いないか)
旧校舎の怪談は嘘だったようだ。
「へえ、いっぱしの装備じゃない」
女性の声が聞こえた。振り返ると、男女二人組がやってきた。女性は化粧バッチリ。男性は長い茶髪だった。
「大したもんだけど──子供のおもちゃにしては、高級すぎるんじゃない?」
嫌味ったらしく言う彼女にナルが聞く。
「あなた方は?」
「あたしは松崎綾子。よろしくね」
「あなたのお名前には興味がないんですが」
バッサリと言ったナル綾子の顔が引きつった。
「ずいぶん生意気じゃない。でも坊や、顔はいいわね」
「お陰様で」
ナルらしい返答に綾子は肩を竦めながら口を開く。
「ま、子供じゃ顔がよくてもしょうがないか。ましてや顔で除霊できるわけでなし」
除霊という言葉に、ナルが反応する。
「同業者ですか?」
「そんなものかな。あたしは巫女よ」
「このねーちゃんが!」
「私も見た事ない」
女性はまさかの巫女だった。更に驚くことがもう一つ。
「俺は高野山の坊主。滝川法生ってもんだ」
「えー!?あの人ってぼーさんなの!?」
「きっと違う仕事もやってるんだよ。私のお父さんだって本業は民俗学の研究者だよ。」
「えー副業あっていいんだ」
ちなみに滝川は綾子に「破戒僧」と言われていた。更にお互い名前は知らないと喧嘩するしまつ。
「ねえ。肖。霊能者ってこんな人ばっかなの?」
「ううん。人それぞれ。ひいお祖父ちゃん温厚な性格だから」
弓弦も肖の髪に隠れながらコクコク頷く。
「谷山さん、百目鬼さん」
現れたのは黒田。愛想のいい声で、しかも親しげに寄ってきた。
まず車とナルを見る。次に言い合いをしている松崎と滝川を見比べた。
「この人たちは?」
「旧校舎を調査に来た人たち。校長が掻き集めたみたいだよ。巫女さんとお坊さんなんだって」
「ああ、良かった……! 旧校舎は悪い霊の巣で、あたし、困ってたんです。」
まただった。松崎も滝川も、口を噤んで黒田のほうを見る。
「あんたが……どうしたんですって?」
「あたし、霊感が強いんです。旧校舎に溜まった霊の影響をもろに受けてしまって、
終始頭痛はするし、聞きたくもないのにいろんなことを話しかけられて──」
「自己顕示欲」
松崎はあっさりと言い切った。
「……え?」
「目立ちたがりね、あなた。そんな嘘八百を並べてまで、自分に注目して欲しい?」
綾子の言葉は厳しい。しかしだ
(これならやっかいな癖を改善できるかもしれない)
肖が危惧するやっかいな癖を改善できるかもしれないのだ。しかし
「……あたしは霊感が強いの。霊を呼んであなたに憑けてあげるわ……本当に強いんだからね…………偽巫女。今に後悔するわ」
そう言って黒田は去っていった。その様子が怖かったのか麻衣は「ナルちゃん」とナルを呼ぶ。
「今日はあたしたち何をすればいいの?」
「あ、麻衣ちょっと」
言ってはいけないあだ名を言ってしまった麻衣。肖は確実に怒られると思った。しかし
「お前、ナルって言わなかったか?」
なぜか驚き、さらには「どこで聞いた?」と聞いてきた。
「ひょっとして、ナルって言うんだ、ニックネーム」
ナルはえも言われぬ表情を浮かべた。そんなナルに笑いながらバシバシ叩く。
「やっぱねー! 誰でも思いつくんだあ、ナルシストのナルちゃん!」
「は?」
「まー、気にしない、気にしない。──んで? 何をするの?」
麻衣はこれからどうするのかを聞く。その問いにナルは
「そうだな……これといって反応がないんで、次の手の打ちようがないんだが」
ナルはそう言って考え込んでから、
「麻衣と肖の先輩の──」
「あー。人のこと、呼び捨てにした」
文句を言う麻衣にナルは「おまえもさっき言っただろうが」と言う。
(あれが呼び捨て?)
肖は疑問に思いつつミチルの先輩が人影を見たという二階の一番西の端の教室に機材を置くことが決まった。