霊狩中毒   作:WATAHUWA

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~呪いの家~
〇


SPRに来て2度目の夏が来た。その日は、綾子と滝川がオフィスに来ており、事務所のバイト代に驚く。旅行帰りで機嫌が悪いナルに怯えるなどをしていた。すると…

 

「……あの、こちらは……その、いわゆる霊能者さんですよね?」

 

若い男性と首に包帯を巻いた幼い女の子が入ってきた。

 

「あ、はい!そうです!」

「麻衣。ナル呼んでくる」

 

麻衣は男性と女の子をソファに案内し、肖はナルを呼びに行った。

 

コンコンコン

 

「ナル。依頼人が来たよ。」

 

所長室の戸をノックする肖。少しして不機嫌そうなナルが出てきた。

 

「依頼?」

「依頼。男の人と小さい女の子」

 

肖に言われ、ナルは男性たちの下へ行った。

 

「所長の渋谷一也です。」

「え?」

 

所長が若いので驚いたが「吉見彰文といいます」と言う男性。

 

「こちらは姪の葉月です。診ていただきたいのはこの子なんですが」

「……病気の治療なら、病院に行くべきだと思いますが」

「ナル。病気じゃ絶対にありえないことかもしれないよ」

 

依頼を受けたがらないナルに肖は言う。常識的な人なら病院に連れていく。しかし病院に連れて行かず心霊調査事務所に来たという事は葉月に病院では治せない異常があるという事だ。滝川もそう思ったのか「診るぐらいいいじゃねぇか」と言う。

 

彰文は葉月の首に巻いていた包帯をはずした。

そこにはまるで紐か何かで首を絞められたように、首回りに赤い湿疹ができていた。

「よくある皮膚病のようやな見えますが、それが少しも痛くも痒くもないらしいんです」

さらに彰文は葉月のワンピースの背中をくつろげた。そこには首と同じく、赤いミミズ腫れが広がっていた。首と違うのはそれが意味を成しているところだ。

 

『喘月院落獄童女』

 

それは戒名だった。実家が寺の肖と滝川が説明する。

 

「『喘月』は、何かを恐れるのがバカなくらい出を越していること。『落獄』は地獄に落ちるって意味なの」

「『童女』は女の子につける。喘月の『月』は『葉月』から取ったんだろう」

 

明らかに誰かが悪意を持ってつけた戒名。

 

「『このバカな子供は地獄に落ちるだろう』ってさ」

 

肖と滝川の説明に流石のナルも「わかりました。依頼を受けます」と言った。こうしてナル達は彰文の依頼を受けることになった。

 

ー当日ー

 

「わあ!海だー!」

 

彰文たちが住む家は海がすぐそばのすぐそばの料亭だったのだ。海を見ながら食事。かなり贅沢だ。

 

「皆さん、こちらへ」

 

彰文がある部屋に案内する。敷かれた布団の中に座る老婆。本当の依頼人で彰文の祖母、吉見やえだ。やえは自己紹介を始める。

 

「吉見やえ、と申します。本来なら私がお伺いにあがらねばならないところ、ご覧の通り些か身体を不自由にしておりまして、孫を代理にやりました。失礼もあったことと思いますけれど、どうかご勘弁くださいまし」

 

身体が動けないのは仕方がないと理解しているので問題ない。なのでナル達はそのまま話を聞く。やえ曰く吉見家には代替わりの時に必ず返事あるとの言い伝えがある。

実際、32年前に先代が亡くなった時には家から八人も死者がでたらしい。事故と原因不明の病気によって。それは先代が先々代から家を譲られた時にも同じことがおこり、六人いた兄弟の中でやえだけが生き残った。そして、当代であったやえの夫が亡くなり、今また同じことが葉月を初めとして起こりはじめている。それだけじゃなく、何とかするために呼んだ霊能者の人達も3人亡くなった。

 

***

 

ベースになる部屋に案内されたナル達。彰文は地理を説明するために右手でOKサインを作るように言う。彼に言われ、肖達は言われた通りに作る。

 

「中指の先の方が漁港で、指の辺りが海岸。とんで人差し指の先に海蝕洞で、第二関節から付け根辺りがお店、親指との間からちょっと奥まったところに渡り廊下で繋がる母屋。ぐるっと回って親指の付け根の骨辺りに神社、爪に茶室です」

 

彰文はOKサインの指で分かりやすく説明した。(彰文が去った後、肖は自分の指で弓弦に説明した)

 

機材の配置を終えた後、夕食を食べることになった。そのため吉見家のやえ以外の大人たちが集まる。

 

父の泰造と母の裕恵。

 

・長男の和康と奥さんの陽子。葉月はこの長男夫婦の娘で、克己という兄がいる。

 

・次男の靖高。

 

・長女の光可と旦那の栄次郎。長女夫婦にも和歌子という娘がいる。

 

・次女の奈央 彰文のすぐ上の姉

 

・彰文は五人兄妹の末っ子。

 

すると麻衣はリンとナルの食事が違うと気づいた。彼らは菜食主義なのだ(実際、小羽と君尋の料理は野菜料理だけ食べていた)。何かお持ちしましょうか、という裕恵の勧めを丁寧に断る。

 

「調査の時は精進潔斎しておくことにしておりますので」

「まぁ……霊能者の方も大変ですね」

 

精進潔斎の意味が分からない麻衣は「肖、精進潔斎って?」と聞く。

 

「分かりやすく言えば… お酒と肉を食べたら心と体が綺麗にならなくなるから食べちゃ駄目ってこと。」

「えー?そうなんだ」

「だから本当にリンさん立派ですね。式を従え招魂が出来るのは納得です」

 

 

精進潔斎を心がけているからこそ招魂が出来るほどの実力者になったのだと肖と弓弦は納得する。リンは肖の誉め言葉に「………ありがとうございます」で小さな声で言い、リンを褒められた式達はご機嫌だ。ちなみに精進潔斎をやっていない滝川と綾子は居心地悪くなってきたのか「…ねえ」「ホントねぇ」と小さくなっていた。

 

 

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