霊狩中毒   作:WATAHUWA

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〇

 

ー夜ー

 

情報収集から帰ってきた安原が「そうですか」とうつむく。自分が居ないときにそのようなことになっていたから無理もない。

 

「……元気出しましょう。まだ終わったわけじゃないんですから。こんな犠牲出して負けて帰ったら、それこそ何のために来たんですか」

 

「…ん」

「だな……」

 

その言葉により麻衣達は精神的に立ち上がった。

 

 

「そうとなったら宿題を片付けちゃいましょう!」

 

そう言って安原はパンパンにつまったリュックサックを出した。

 

「まずこれが滝川さんご要望の新聞のコピーです」

 

自慢の情報収集能力で集めた資料を出す安原。たしかにいろんな人たちが死んでいる。ただしだ。

 

実際に吉見家で代替わりのときに大量死したのは先代と先々代の時だけ。問題は吉見家ではなくこの場所なのだ。

 

(この場所)

 

肖は考える。実際、雄瘤と雌瘤の伝説。麻衣の夢では神社で誰かが殺されるなどあるからだ。

 

「ちょっと面白い話を見つけたんですよ」

 

 

安原が見つけたというのは『異人殺し』の民話。異人というのはこの場合、『余所者』にあたる。

 

 

「昔は村、と言うのは閉鎖社会だったわけです。村人皆が親戚でご近所さん、みたいなね。たとえばそこに諸国を回ってる行商人が来たとします。その人は村人とは地縁・血縁的に何の関係もない、村人とは全く異なった人…すなわち『異人』です」

 

安原が言うには、この『異人』を殺してしまう昔話っていうのは日本各地にあって、

民話の中でも『異人殺し』として分類されるんだそう。

 

「いわゆる『マレビト』が殺されるのが常なんですが……」

 

すると麻衣が「ちょい待て」と慌てて待ったをかける。『マレビト』の意味がわからないからだ。

 

「安原さんが言う『マレビト』は折口って人の思想の中核概念。村人を祝福したり訓戒を垂れたりする来訪神つまり来訪する神って意味なの」

「百目鬼さんの言う通りです。これが拡大されて同じようによそから村へ来て神の代理をする人を『マレビト』と呼ぶんです」

 

静が民俗学者だから知っている肖と先ほど調べた安原が『マレビト』について説明する。いわゆる霊能力者。つまりだ

 

「あたしたちも『マレビト』ってこと?」

 

麻衣の言う通り自分たちはよそ者。さらに霊能力者もいるので『マレビト』に当たるのだ。さらに安原は説明する。こういった『マレビト』を殺してしまう、というパターンを持つ民話を『異人殺しの民話』というらしい。

 

「大体の話が、村へやってきた『マレビト』がやなヤツだとか金を持ってたって理由で殺されて、その結果祟りが起こるという話です」

 

「確かに納得だね。依頼人には必死にお願いされたり、緑陵高の教師には詐欺師まがいなんて言われたり」

 

肖の言葉に弓弦は「そうそう!」と言う感じに頷く。麻衣も「わかるなぁ…」と納得した。安原はこの土地に残る異人殺しのパターンを説明する。

 

・タイプA

 

昔、村に三人の修験者がやってきた。彼らは『おこぶさま』を見て

 

「これは祟りをなすものだ」

 

と言い、除霊を行った。すると『おこぶさま』は金の仏像に変わり、修験者はこう言った。

 

「ありがたい仏像が波に洗われてこんな姿になったため祟るのであろう。都にお堂を建てて祀ることにしよう」

 

ところが村の長者がこの金の仏像ほしさに修験者を海岸で殺してしまう。すると修験者を殺すと同時に仏像は元の木の棒に戻ってしまった。程なく長者の家は不幸が続いて絶えてしまったので修験者の祟りといわれる。

 

・タイプB

 

昔村に三人の座頭がやってきた。彼らは『おこぶさま』を見て、

 

「ありがたい神様だから社を建てて祀るべきだ」という。

 

しかしこの年は凶作で村人にそんな余裕はなかった。しかも村人の一人が、座頭たちが大金を持っているのを見てしまう。村人は長者の家に座頭たちを招いて食事に毒を混ぜて殺し、金を奪って死体を海に捨てた。以来嵐や高波が続いたので村人は後悔し、『おこぶさま』を祀る社を建て座頭の塚を建てた。

 

実際にモデルになった話もある。タイプAと似た内容で御小仏(おこぶつ)様と呼ぶようになった。

 

「三人の行者もしくは座頭」

「ばーさん。私の考えと同じになって来たね」

「……そうだな」

 

十八塚は別名は三六塚。三つの六部塚。つまりあれはその三人の塚の可能性が出てきた。葉月の首に痣が出たのは葉月はあの塚に悪戯したからかもしれない。さらにこの土地には一揆が起こり、首謀者五人が斬首されたとある。

 

「・・・・・・しゃーない。数の多い方から片付けるか。一揆の五人から・・・・・・・」

 

まずは一揆の五人から行こうとした時だった。

 

 

ドン

 

家全体を横から殴ったような重い“音”が響いた後、間髪入れずバタバタと“音”が駆け抜けた。

 

「滝川さん、温度が下がります」

 

リンの声にモニターを見れば機材が次々とエラーを起こし、全ての画像が砂嵐へと変化する。先手をつかれた。

 

 

 

 

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