旧校舎に向かおうとすると 再びこちらに来る二人の人影があった。
「やあ、お揃いですな。もうお一方、お着きになりましてね。紹介させていただきましょう」
1人はこのややこしい雰囲気の遠因である校長。もう一人は
「ジョン・ブラウンさん。どうか、みなさんで仲良くやってください」
肖と麻衣と同年代の外人少年だ。ジョンは頭を下げる。
「もうかりまっか」
・・・・・・・・・・。
外人さんが京都弁。
「ブラウン言いますのどす。可愛がってやっとくれやす」
聞き間違いと思ったがやっぱり変な京都弁を話したジョン。片言だったらまあ仕方がないがまさかの京都弁。
「その……ブラウンさんは、関西の方で日本語を学んだようで……」
「ああ、そうですか。頑張って勉強したんですね」
「はい!ほんまに頑張りましたどす」
肖の言葉に笑顔で言うジョン。周りはと言うと滝川が耐え切れないというように噴き出した。綾子もそれに続いたこの場の様子に口の中でもごもご言った校長はそそくさと去っていく。
「おおきにさんどす」
また出た京都弁にどっと笑いが出た。ジョンはその様子に困っている。失礼だがジョンのおかげで険悪な空気がぶっ飛んだ。
「ブラウンさん? どこからいらしたんですか」
「わてはオーストラリアから、おこしやしたのどす」
ここまでくると さすがのナルも少し苦笑いだ。
「頼むから、その変な京都弁はやめてくれ」
「せやけど、丁寧な言葉ゆうたら、京都の言葉と違うのんどすか」
「誰だよ! こいつに日本語を教えたのは!」
とりあえず教えた方も京都弁を話していたのだろうと肖は思った。
「いいか? 京都弁は方言の一種だ。悪いことは言わないからやめろ。な?」
「はあ」
やはり方言の意味は理解できていないとりあえず肖はジョンに分かりやすく説明する
「ブラウンさん。イギリスの方がCan'tの
「あー!なるほどどす。いやー日本語も奥が深いどすな」
理解してくれたようだ。でも言われてすぐに変えられないのでこのままになった。
「せやったら、仲ようにいかせてもらいますです。あんさんら、全部が霊能者でっか?」
「そんなものかな」
ナルが答え、周りの人物たちのことを話す。
「彼女は松崎さん。巫女なんだそうだ。彼が滝川さん。前には高野山にいたとか」
「あんさんは?」
ジョンの問いにナルは自分については簡単に答える。
「ゴーストハンターと答えておこうかな」
「ああ! せやったら、車の中の機材は、あんさんのもんやねんですね?ごっつえらい装備やなあと思うたんです」
「へぇー外人は分かるんだね」
「英語だからね。霊能力者より分かりやすいんだよ」
外人は機械で調査=ゴーストハンターとなっているようだ。
「君は?」
「へえ、わては、いわゆるエクソシストっちゅーやつでんがな、です」
外見は肖たちと同年代だが19歳だった。
「肖、麻衣。仕事にかかる」
こうして今度こそ旧校舎に入っていった。が、なぜかその他の霊能者がベースにまでついてきたのだ。
「こいつは…これだけの機材をよく集めたな」
「関係ないわ。──もう坊やの出る幕はないわよ。この御大層な荷物を纏めて帰る準備をしたら?」
まるで邪魔して調子を出させない悪質批評家にしか見えない。
「あなたがたは、旧校舎の除霊に来たのでは?それとも遊びに来たんですか?」
「私も邪魔して調子を出させない悪質批評家にしか見えない。力を使う場所を間違えているのが残念」
ナルと肖に言われ、綾子は「大した事件でもないのに、大騒ぎしちゃって」と言って逃げるように部屋を出た。滝川も肩をすくめながら出ていく。
「肖ってきつく言う事あるんだねー」
「私2人のような人嫌い。」
肖は真顔で言った。
「協力するのと、ちゃうんですか」
ジョンは困った様子で聞いた。
「そういう状況ではなさそうですね」
「わて僕、こういう雰囲気は、かなんのです。僕はできるだけ協力させてもらいますよって、ここにいてもよろしいやろか」
「どうぞ」
ジョンの性格が友好的で良かったと思う(実際、ジョンって呼んでと言われた)。こうしてジョンを交えて、続きを開始した。サーモグラフィについてジョンから教わっていると玄関の映像に見覚えのない着物の少女が映ったことに気づく。麻衣も気づいた。
「……ナル!」
ナルが立ち上がり戸口を見る。その少女がいた。驚く麻衣。しかし肖は驚いてなかった。
「久しぶりだね真砂子」
「まあ肖元気そうで良かったですわ。弓弦ちゃんや静さん達も元気です事?」
「うん。皆元気」
嬉しそうに言う肖と少女。弓弦も少女の問いに答えるように一瞬だけ顔を出した。元気だという事に少女も嬉しそうだ。
「校長はよほど工事をしたいらしい。あなたまで引っ張り出すとは」
少女は無言のまま。表情すら変わらない。
「ナル、知り合い?」
「いや。でも、顔は知っている。有名人だから」
彼女の名前は原真砂子。TVで有名な霊媒師だ(特技は口寄せ)。
「肖とは知り合いなのか」
「違う学校の友達」
「肖にはお世話になりましたわ。受験勉強でしばらく会えなかったんですの」
真砂子はなぜか自慢気に説明する。一方麻衣は5人も心霊現象に対応する者達が集まったことに不安になってしまう。
「キャアアアアアアアアア」
綾子の悲鳴が聞こえてきた。ナル達、別行動していた滝川は急いで綾子の下へ行く。
「ちょっと!開けてよ!!」
そこは一階西側の一番奥の部屋。そこから大きい音と綾子の声がした。ナルが戸に手をかけ、開けようとしたのだが何故か開かなかった。とりあえず旧校舎はボロいので扉は蹴り破ることになった。
「何なのよもう!」
なんでも教室を観ていたらいつの間にか扉は閉まっており、開けようとしても開けられなかったそうだ。綾子は地霊、つまり土地の精霊の仕業だという。滝川は死者が出ているので地縛霊。ジョンはまだわからないだ。真砂子は当然。
「真砂子、いないよね」
「ええ。1人もいませんわ」
霊はいないだ(さらに真砂子はなぜか逆ナンをする)。
「明日は授業が終わったらここへ。できたら泊まる準備をしておいてくれ」
「わかった。」
ナルの言葉に肖は即答。麻衣はというと
「せっかくの土曜日なのに―――――!」
「カメラを弁償するか?」
「……用意してきます」
カメラの弁償の言葉に負けた。あの金額を払えは流石に無理だからだ。
***
翌日。巫女姿の綾子が校長に教頭、生活指導の先生といった学校関係者ともに現れた。
「つつしんでかんじょうたてまつる、みやしろなきこのところに、こうりんちんざしたまいて、しんぐのはらいかずかずかずかず、たいらけくやすらけく、きこしめしてねがうところをかんのうのうじゅなさしめたまえ……」
(浮遊霊程度なら祓えるな。実力があるのに本当に残念)
「これでなんの心配もありませんわ。」
しばらくして、玄関だけ清めた綾子。にっこり笑いながら自信満々に校長たちに言った。校長たちはお礼として食事に誘う
その時だった
ギシッ
パン!!
「きゃあ!」
「「「わあ!!」」」
玄関のガラスが割れたのだ。ガラス片が綾子と校長たちを襲う。傍から見れば、怒った霊が反撃したにしか見えない。霊なんていないのにだ。