霊狩中毒   作:WATAHUWA

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〇

とりあえずナルは安原が集めた資料を見る。しばらくして…

 

「うーっすただいまー……と」

 

明るい声を響かせた滝川が顔を出す。

「ナル!」

 

麻衣はナルが目を覚ましてくれたので嬉しそうな顔。

 

「あぁ渋谷さん。無事でよろしおました」

 

ジョンも嬉しそうに言うがナルは無視。綾子の「感謝してほしいわねぇ」の言葉にも「それはどうも」だけ言う。だから安原と肖は説明した。

 

「キゲンが最低」

「私の平手打ち覚えてたよ」

 

この自分が憑かれてしまった上に女子に平手打ちをかまされた。ナルのプライドにそれが突き刺さっているのだ。安原と肖の説明に麻衣たちは(なんて勝手な)と物凄く呆れ、それと同じくらい納得する。

 

「肖大丈夫だったの?」

 

麻衣は思わず肖を心配してしまう。

 

「不機嫌オーラを出しながら「頬が地味に痛い」って言われた。すぐ謝ったよ。そして物凄く怖かった。ねえ弓弦?」

(コクコクコクコクコクコクコク)

「うわー(汗)」

 

肖の言葉と涙目でいつも以上に頷く弓弦の様子に麻衣はドン引き。その時の様子を思い浮かべてしまった。一方、滝川は「…どうも祟りの元凶は六部の霊じゃないみたいなんだな」と言う。霊たちは集まり、精霊の力を借りた綾子に一気に浄化してもらう。それが綾子の除霊なのだがここには霊じゃない物がいた。三六塚等この土地で死んだ者たちはそいつの式になってしまった状態だったのだ。その正体は

 

「『おこぶさま』だろう」

 

ナルがあっさり言った。分かりやすく説明するとおこぶ様は「吉見家は自分を祀るべき祭司だ。自分をしっかり祀れ。出ないと祟るぞ」と伝えているのだ。

 

 

「だから祟りの猛威を奮っていながら一家は皆殺しになっていない。自分を祀らせるために祭司が必要だからあえて残したんだ」

 

つまり吉見家は今の生き残っている大人たち、克己たち、その後生まれるだろう子孫たちがちゃんと欠かさずおこぶ様を祀れば当分は大丈夫。しかしだ

 

 

「『おこぶさま』の除霊を行う」

 

神であるおこぶ様の除霊をすると言うのだ。

 

 

 

「相手は『えびす』とはいえ神の一種だぞ。化け物よりタチが悪い。化け物を狩る方法はないと言ったのはお前だろうが」

 

滝川が言うがナルは拒否。

 

「あいつを見過ごせって?冗談じゃない。これだけ愉快な経験をさせてもらったんだ。きちんと返礼をするのが礼儀というものだろう」

 

何処からどう聞いても依頼なんていっそどうでもいい。プライドを傷つけたから除霊してやると言っている。周りが説得しても無理だった。こうして除霊は滝川とジョン。それ以外は万が一の救助要員として行くこととなった。

 

「ナルはこういう事になるとバカになるんですね。」

「………そうですね。」

 

今回の様にプライドが傷つけられるとナルの行動は本当に予測できない。肖の言葉にそれを良く知っているリンは言い返せなかった。

 

しばらくしておこぶ様の下へ到着した。

 

 

「はじめよう」

 

ナルに言われ、滝川がおこぶさまの前で一つ息をついて構える。

 

「オンハバハバキウタサバタルマサバサバキツドカンオンダタガトナウベバヤソワカ……」

 

少しすると周りの壁が脈打っていた。呼吸音も聞こえてくる。更にはみんなが使ったこの場で唯一の入口が閉ざされて行く。

 

「おこぶ様の仕業」

 

肖はすぐに分かった。おこぶ様に敵認定されたのだ。滝川は焦るが「あんなものに構うな」という。再び真言を唱え始めると、さっきまでの二種類の音に加えて“声”も混じってきた。苦しむ霊たちの声だ。

 

「弓弦。今回は九尾にならないで。逃げる場所がないから」

 

肖の言葉に弓弦は渋々頷く。いう事を聞いた弓弦を撫で、肖はいつもの様に弓矢を出し

 

ぱあん

 

放った。

 

当然霊たちは祓われる。周りも各々自分の方法で祓う。

 

 

「タリツタボリツハラボリツタキメイタキメイカラサンタンウエンビソワカ!」

 

独鈷杵を大きいナイフのように振り上げ、おこぶさまに叩きつける。刺さった瞬間、物凄い風で滝川が飛ばされてくる。

 

「ぼーさん!」

 

麻衣たちが駆け寄る。

 

「…ジョン、悪いがあの独鈷杵……あれで流木を壊せ」

 

後は流木さえ壊せれば除霊は出来るのだ。ジョンは言われた通り、刺さったままの独鈷杵を抜き、大きく振り上げた。けれど強い反発には耐えられず、同じくこちらへ跳ね飛ばされてくる。一方、独鈷杵が安原の足元に転がった。

 

「ちょ、安原さん?!」

 

足元のそれを拾い上げ、壊しにかかる。けれど前二人と結果は同じ。なのにナルは

「……その程度か?」と辛辣に言った。当然怒るのは麻衣。

 

 

「そんなにプライドが大事なら人に頼らず自分でやれば?!他人に守ってもらって、そんなプライドがなんぼのもんよ!!」

「……正論だな」

 

麻衣の言葉に正論だなと言うナル。返答に納得したのか滝川の下へ行った。

 

「さ、帰ろう。もう十分だから」

「あぁ…ナルちゃん悪いな。限界だ」

 

立ち上がった滝川をリンとジョンが。安原を綾子と真砂子が支えて、麻衣がその後ろから歩き出す。ただし肖と弓弦は動かない。

 

「肖!弓弦ちゃん!さっさと行くよ!」

 

麻衣に言われても肖と弓弦は動かない。

 

「リンさんナルの様子がおかしい!」

 

肖の言葉にリンは「ナル?!やめなさい!」と叫ぶが既に遅し。

 

ドガアアアアァァァァン!!

 

爆発に近い“音”と風と共に、煙が上がった。誰もが呆然とし、聞こえるのは波の音だけ。少しして収まった煙の先。

 

「……おこぶさまが…!」

 

流木が粉々に砕け散った。

 

「霊の気配が…」

 

肖は驚く。霊の気配は無くなり、洞窟はただの洞窟になったのだ。

 

「今ぼーさんは、除霊出来るんなら最初からやって欲しかったなーという気持ちでいっぱいです」

「除霊じゃなくって破壊なんだけど」

 

肖の言う通り、あれは除霊じゃなくって破壊だ。とりあえずおこぶ様はもういない。吉見家に戻ることになった。

 

 

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