「…心配ありませんわ、だって。除霊なんてできてないじゃない」
ベースに戻った後、黒田が綾子を馬鹿にする。霊が見えない者からすれば悪霊が怒ったにしか見えないから無理もない。やいのやいのと言い合っているとあることに気づいた。
「椅子が真ん中?」
肖の言う通り椅子が真ん中にあったのだ。
「昨日カメラ置いた教室。真ん中に椅子なんかなかったよね?」
麻衣も周りに言う。当然さっきの騒動があったので皆その部屋へ行ってもない。なので巻き戻してみるとだ。
ズズ…ズ
ギシ
誰も
「じゃあ黒田さんが襲われたのは?」
実は黒田が勝手に来た時、襲われたそうだ。しかしカメラを確認しても意味ありげに切れていた。故障ではなさそうなのだが・・・・。
「ご覧の通りですが?」
「は…。真砂子ちゃん、感想は?」
「その方の気のせいですわ」
滝川の声に、少し考えながらもきっぱりと言うが、やはりさっきまでよりも声に力がない。
「いい加減に認めたら!?ここにはよくない霊がいるのよ!」
黒田は大きめに真砂子に叫ぶ
「もう一度中を見てきますわ」
言って踵を返した。
「逃げるの?素直に間違いでしたって言えば?」
勝ち誇る黒田さん。
「逃げる?何故?この校舎に霊はいませんわ」
くすり、と妖しい笑みを浮かべてそのまま教室を出ていく。
「黒田さん」
「な、何よ」
無表情で黒田の前に立つ肖。その様子が怖かったのか後退りする。
「そろそろその悪い癖直した方が良いよ」
「く、癖?」
『?』
その言葉に黒田は当然の事、周りも疑問符を浮かべる。
「ここの癖。そしてここの癖」
肖は自分の唇と胸に触れた。
「小指動かないでしょ」
その言葉に黒田はハッとなり青ざめていく。
「あ…あなた」
「早く直さないと取り返しがつかなくなるよ」
そう言って肖は真砂子を追いかけた。
***
「真砂子」
「肖」
しゅるり
真砂子に追いついた肖。そして弓弦が現れ、真砂子にすり寄る
「弓弦ちゃん久しぶりですわね」
真砂子は嬉しそうに弓弦を撫でた。肖と弓弦は間違いなく自分の味方。それだけで真砂子は安心出来た。
「肖と弓弦ちゃんと久々に会えたせいなのか初めて会った日を思い出しましたわ」
「中学1年の時だったよね」
中学1年の頃、霊媒少女として有名になって来た真砂子に依頼が来た。ある町の白梅が花びらが赤く染まったという現象が起きたから。植物学者が調べても異常はない。なので心霊現象として真砂子がその白梅に調べようとした時、
ずわ
『きゃあ!?』
黒い影が真砂子を飲み込んだ。怪我は無かったのだが建物は無い。それどころか周りすべてが真っ黒。しかし泣いている声が聞こえてきた
『ぼうやどうしましたの?』
男の子が泣いていた。聞いたら『行きたい所へ行けない』と泣く。それどころかどこからか聞こえる声が『そこへ行かせてはいけない』『その子を助けてあげて』とお願いされた。
『(そんな。どちらを選べばいいんでしょう)』
様子からしてどちらもウソついていない。どうすればいいのか悩む真砂子に1本のリボンが落ちてきた。まるで出口は上だと言わんばかりに
『やっと帰ってきた。大丈夫?』
『え?』
気が付くとそこに居たのは少し疲れ気味の肖と弓弦。先ほどの男の子は白梅の根元に遺棄された亡骸の魂。声はその白梅だった。
『赤く染まったのは子供を助けてほしい白梅のSOSだったの。』
「霊媒体質じゃなかったものの、とても詳しい肖に出会えて嬉しかったのですよ」
「うん。連絡先交換して、年賀状や暑中見舞い贈り合ったり、一緒にお出かけしたよね」
しかし受験勉強などでそう簡単に会えなくなってしまったのだ。そう話している内に椅子が動いた部屋に到着した。
「……行くよ」
「はい!」
カメラに映らないよう弓弦を隠した肖は戸を開ける。例の椅子は動いていない。
「動いていないね」
「そうですわね」
肖たちは部屋に入った。今のところは異常はない。ベニヤ板が貼られているだけだ。
「うーん」
霊はいない。なぜ動いたのか肖は悩む。
バキ
「キャアアア!!」
「真砂子!」
肖は急いで真砂子を掴む。しかし肖も落ちてしまう。
(う、地面に激突する!)
その時だ。
グイ!
「「!」」
ドサドサ
引っ張られたかと思えが植込みに落ちたのだ。
「ゆ、弓弦ありがとう」
弓弦が引っ張っていなかったら肖と真砂子は地面に激突。生きていても重傷だ。
「真砂子大丈夫?」
「な、なんとか」
様子からして心臓バクバクいっているようだった。高い所から落ちたから無理もない。
バタバタ
ナル達の足音が聞こえてきた
「弓弦隠れて隠れて」
肖に言われて弓弦が服に隠れた瞬間
「2人も大丈夫!?」
「怪我は!?」
「生きてる!?」
麻衣達が顔を出した。こうして肖と真砂子は救急車で病院に運ばれた。
「本当にごめんなさい。あたくしの不注意で肖まで…」
「ううん。別に大丈夫。弓弦が引っ張ってくれたおかげで擦り傷で済んだからね」
病室で真砂子は肖に謝罪する。肖は全然気にしていない。弓弦は2人を心配する。
「(にしても霊はいないのに心霊現象が起きるんだろう。あの人に聞けば分かるかな)真砂子、弓弦。少し寝るね」
「え?はい」
肖は目を閉じた。
ふ―――
煙草の匂いがする
「お、起きたか肖」
「ひいお祖父ちゃん」
静にそっくりなこの男性は百目鬼遥。静が子供の頃に亡くなった肖の曾祖父だ。彼は若い頃の姿で時々君尋や肖の夢に現れては談笑などして過ごす。そして君尋が言うには肖が赤ちゃんだった頃、夜泣きしそうになった時はデンデン太鼓を鳴らしてあやしていたそうだ。
「落ちるとは災難だったな。怪我は大丈夫か?」
心配そうに肖の頭を撫でる遥。肖は「大丈夫だよ」と答える
「ねえひいお祖父ちゃん。霊やアヤカシが居ないのに騒霊ってあるの?」
生前、憑き物落としをしていた遥ならなにか知っているかもしれない
「ああ。あるよ。沢山あった依頼の一部は霊が居ない騒霊だった」
「そうなの?ひいお祖父ちゃんはその時どうしてた?」
その問いには遥はこう答える
「沢山話を聞いたな」
「話?」
チュンチュン
朝になっていた
「………ひいお祖父ちゃん。答え合わせさせてよ」
答え合わせをさせてくれない遥だった。