綾子の除霊が始まり、ナル達は礼美の部屋のモニターを見ていた。
《つつしんでかんじょうたてまつる みやしろなきこのところにこうりんちんざしたまいてしんくのはらいかずかずかずかずたいらけくやすらけく》
(でも場所がダメだからしばらくしたら戻って来る。実力はちゃんとあるのに本当に残念な人だな)
肖は「楽勝よ楽勝!これで事件は解決したもどーぜん!!」とご機嫌よく言う綾子を残念そうに見ていた。
「家自体に大したゆがみもしずみもない。床もほぼ水平。地下の水脈の水量が減っている様子はないから地盤沈下でもない」
ナルもこの現象は霊の仕業と分かってきた。その時だ。
「キャ―――――――ッ!!」
香奈の悲鳴が響きわたる。急いでその場へ行くとキッチンのコンロから火柱が立っていた。周りには霊の気配。霊がこの火柱を立てていたのだ。だから滝川達が懸命に消火活動しても消えない。
「皆下がって」
「バカ!お前が下がってろ!!」
滝川が慌てて言うが
「イイから下がる!」
『……はい』
肖によって下がるはめになった。
(でも何で肖は離れて?)
麻衣は疑問に思う。火を消すなら近づいた方が良いのにだ。そんな肖は左手を伸ばす。すると
ふわ…
指輪から出た煙が形を変え、弓が出来たのだ。
「え!?」
「どういうことだ!?」
弓が出たことに驚く周り。肖は周りを気にせず弓に張られた弦を引く。
すぅ…
「今度は矢」
今度はそのまま矢が現れた。そして
ぱぁん!!
矢を放った肖。その矢が火柱に当たると
ボッ
力を失ったように火が小さくなった。
「ぼーさん。消火」
「え?あ、ああ」
こうして完全に消火された。
「あんた 一体どういうこと?」
綾子が聞こうとした時だ。
「ナル!だれかいる!」
麻衣が子供が外から覗き込んでいたそうだ。とりあえず肖の事は一旦保留。ナル達はこの家で唯一の子供である礼美の下へ向かった。
「礼美 さっき台所を除いてた?」
典子が問うが「ううん」と礼美は答える。しかし子供は礼美だけ。
「ちがうもん」
「礼美!」
「ちがうもん、礼美じゃないもん!」
突如としてドン!と大きな音が響き渡った。
「な、なに!?」
「礼美じゃないもん」
ちがうちがうと否定する礼美の言葉に反応していた。
「ちがうもんっ!」
やがてそれは音だけにとどまらず、室内の家具をも揺らし始める。
「典子さん!」
気づいた時にはすでに棚は倒れ始めていた。
「おねえちゃーん!!」
「弓弦!」
本当は弓弦のことを内緒にしておきたかったがそうも言っていられない。肖の言葉に出てきた弓弦は棚を吹っ飛ばす。
「え?え?」
典子は自分が無事だったことに驚く。弓弦はそんな典子を「大丈夫?」と言わんばかりに覗き込み、腰を抜かした礼美には「怪我してないから大丈夫だよ」とばかりにすりよる。その後肖の下へ戻った。
「ありがとう弓弦。典子さん無事だったよ」
「♡」
肖にお礼を言われてご機嫌の弓弦。麻衣達は唯々固まっていた。
***
「典子さんが無事でよかった。……ただし何だよお嬢ちゃん。あの弓矢は!その蛇っぽい動物は!?」
滝川は弓矢と肖の首にまとわりつく弓弦の事を聞く。そして弓弦は蛇っぽいと言われて怒ったのかしっぽで滝川の頭をべしっとはたいた。
「さ、さっき『弓弦』って言ったよね。真砂子が言っていた弓弦ちゃんってこの子の事なの?」
麻衣の問いに肖はあっさりと「そうだよ」と答え、弓弦も頷く。するとナルは言う
「肖の力は父親譲りの除霊能力で、その生き物は使い魔だろ?」
「あ、正解」
やっぱりナルは頭がいい。大正解だ。
「お父さん譲り!?ナルどういうこと!?」
「バカ」
「………ムギャ―――――!!!」
「お嬢ちゃんどうどう!!」
「ストップ!気持ちはわかるけど待った!」
怒る麻衣を滝川と綾子が落ち着かせる。
「百物語で肖が言っていただろ?父親が矢を使わず弓で祓ったと」
「……あ!鳴弦の儀か!」
お祓いする滝川はすぐに分かった。
「あんたのお父さん鳴弦の儀が出来るのねー」
「ねえめいげんのぎってなに?」
綾子も分かったが一般人である麻衣はよくわかってなかった。なので肖が説明する。
「弓の弦を引き音を鳴らす魔除けのこと。お父さんの場合、私のひいお祖父ちゃん譲りなの。実際、憑き物落としをやっていたからね。ひいお祖父ちゃんはすごいよ。ひいお祖父ちゃんが書いたものや集めた蔵書は霊能力者にとって宝の山だからね」
「は―――すごい人なんだ」
肖の説明に麻衣は曾祖父は凄い人と理解する。
「そして弓を出したのはこれ。桃の木で出来た祓い具だよ」
「この指輪が?」
「正確には指ぬき。着けた人によって形が変わるの」
だから形は弓矢なのだ。
「最後に弓弦。この子は管狐。」
「管狐!?」
「ウソおっしゃい!蛇っぽい管狐なんていないでしょ!!」
綾子の言葉に弓弦は怒ったのか「シャー!!」と威嚇する。
「胴が長い狐だったって聞いた画家がオコジョみたいなものかって間違えて描いたのが真相」
「へ、へー(汗)」
こうしてやっと肖と弓弦の話が終わった。次の話は今回の事件。
「暗示実験じゃ犯人は人間じゃないんだったっけな。結果にどんくらい自信があるよ?」
その問いにナルは即答
「100パーセント」
「暗示に失敗した可能性は?」
「ありえない」
「絶対ってい――――」
「ナル、温度が下がり始めました」
モニターなどを見ていたリンが伝える。
「リン、スピーカー」
ドン、ドンドン!カタ……ガタガタ……
「礼美ちゃんの部屋、誰もいないのに……!」
スピーカーから流れて来たのはラップ音。それも、先ほどよりずっと激しいものだ。さらに部屋の温度は氷点下。
「……礼美ちゃんではありえない。絶対に、人間の仕業じゃない……!」