「よし、降りよう」
広島を後にした僕らは、今日の宿、三次(みよし)へとたどり着いた。
「まずはホテルまで歩こう」
「どのくらいでつきますか?」
「歩いて数分」
2人で今日のホテルへ。
今日泊まる徒歩ホテルは、僕が一番好きなホテルの系列。
実は今回、全て同じ系列のホテルで泊まれるようにしているんだ。
それが、一番信用できるしね。
もちろんホテルは禁煙で取った。
今回はシングル2つで取っておいた。
チェックインを済ませて、荷物を入れる。
時刻は18時前になっていた。
僕は美晴さんを読んだ。
「美晴さん、ちょっといい?」
「なぁに?マネージャーさん」
「夜ご飯食べに行こうと思うんだけど、ちょっとその前に寄りたいところがあるから寄っていいかな?」
「はい、もちろん!」
美晴さんは笑顔だった。
歩くこと数分で、目的地についた。
「ここだよ」
「ここ?」
「さっき歩いている途中に見つけたんだ。撮影地として有名かどうかはわからないけど、ちょっとここで撮影しようと思ってね。ちょっとだけ、僕のわがままに付き合ってね」
美晴さんに申し訳ないと思っていた。
それでも美晴さんは何も言わずに付き合ってくれる。それが嬉しい。
美晴さんが僕のことをぎゅっと抱きしめる。
「もちろんです……そんなの断るはずないです……わたしだって……わがままですから……」
「うん、ありがとう……」
すると踏切の音が鳴る。もうすぐ列車がやってくる。
「ほら、やってきたよ」
僕はカメラをセットする。
気付けば僕の隣で美晴さんも撮影していた。
「よし、いい感じに撮れたかな」
「うふふ、わたしも……マネージャーさん、ありがとうございます」
「美晴さんが喜んでくれたら何よりだよ。こちらこそ、付き合ってくれてありがとう……」
2人で少しだけ撮影をしたあとは、美晴さんと夜ご飯食べる場所を探していた。
マップで調べていると……
「……え?」
「どうしました?マネージャーさん」
「ここって、もしかして……」
(まさか……まだあれが……?)
「美晴さん、もう1つ寄りたい場所があるけどいいかな?」
「はい」
「ごめんね」
美晴さんを連れてやってきたのは、川沿いの場所だった。
そこには、ぽつんと一つの鉄橋が残っていた。
「やっぱりこれ……」
「これは……なんですか?」
「これ……昔の線路の廃線跡だ……」
「えっ?」
「ここ、三次と島根県の江津(ごうつ)を結ぶローカル線でかつて、三江線(さんこうせん)と呼ばれる路線があったんだ。けど、その三江線は2018年をもって廃止となってしまったんだ」
「じゃあ、これはその……三江線が昔走っていた線路……」
「多分そうだと思う。今はここを列車が走ることはないけど、今もなお残されているんだ」
この廃線跡を2人で静かに眺める。
人は誰も来ない。
ここを列車が走っていたころは、賑わっていたに違いない。
でも、そんな面影はなかった。
それはまるで、僕らが離れることで寂しくなることを暗示しているかのようだった。
その思いは美晴さんも同じだった。
「マネージャーさん。わたし、こういうのを見てると……もっとマネージャーさんのそばに一緒にいたいなって……思えてきました……」
「うん、それは僕も同じ……。ずっと一緒だよっていう証が、お互いの左手の薬指にあるから……」
僕らがあの日付けたもの。
それが今、夕日に照らされて輝いていた。
「マネージャーさん」
美晴さんの甘い声が聞こえる。
2人は目を閉じて唇を合わせた。
時が止まった。
近くを流れる江の川の流れしか聞こえなくなっていた。
唇を離して、再び時が動き出した。
2人で眺めた廃線跡。もう、この景色は見られないかもしれない。2人で目に焼きつけた。
「わたし、この景色マネージャーさんと見れて……本当によかったです……」
「うん、僕も……」
美晴さんと見た、特別な景色。
この景色を、心の奥にそっと閉まった。
皆さんこんにちは。おみです。
この度は「君と、最高の思い出を…… Op.3」を読んでいただきありがとうございます。
まさか三江線の廃線跡が残ってるなんて思ってなかったので見にいきましたね(笑)
撤去されると言う話が出ているので、見たい方はお早めに!!!
さて次回はあの秘境地へ……お楽しみに!
それでは次話もお楽しみに!