Battle Spirits ~The hero of moon right~ 作:クロコッペ
日曜の朝、バローネは今日も仕事場に向かって歩いていた。仕事場というのはミカが経営するバトルスピリッツ専門のカードショップで、働き始めて今日で3日目だ。オーナーであるミカは昔はかなり腕のたつカードバトラーだったらしい。
仕事の内容は在庫の管理や、レジ打ち。バローネはものわかりがいいのか、初日でこれらの仕事をアッサリとこなしていった。
「こう平穏な世界も悪くないものだな……」
バローネがこの世界で驚いたことは多々あるが、やはりは12宮Xレアのことが一番大きい。前の世界では世界中にそれぞれ1枚しか存在しなかったカードが、この世界では普通に販売されているのだ。
バローネも月光龍が映っているパックをいくつか買って【巨蟹武神キャンサード】を当てた。
そんな訳で、前回ミカから貰った寄せ集めのデッキと、新しく手に入れたカードで、新しくデッキを構築し直したのだ。
そんな風にここ最近の事を振り返ってる途中
「待て~~、ロードドラゴ~~ン!!」
バローネの前方から赤い鉢巻を巻いた少年が駆けてくる。
(なんだ……?)
パタン、とバローネの額に風に飛ばされてきたカードがあたった。見てみるとそのカードは――――――
「【英雄龍ロード・ドラゴン】……? それに【バースト】だと……?」
バローネが目を引かれたのは、【バースト】の文字。数々のカードを知りつくしているバローネだがこんな効果を持ったカードを見たのは初めてだった。
「あ、そこのお兄さん。それ俺のカード!」
いつの間にかすぐ目の前に来ていたハチマキ少年は【英雄龍ロード・ドラゴン】のカードを指刺す。
「フッ……大切なカードならしっかり管理することだな」
バローネはハチマキ少年にカードを返すと、そのまま少年の元を立ち去る。
「お兄さん、サンキューなーー」
バローネは振り返らずそのままミカの待つカードショップへ向かった。
~バトスピショップ~
「あ、バローネ。もう15分も遅刻よ。なにやってたの?」
「少し道草をくっていた、悪かったな」
バローネは端的に言葉を返しカウンターへと向かう。
「で、今日は何をするんだ?」
「ええと、4日前から売り切れてた【覇王編】第1弾と2弾が今日届いたから補充しといて、パックとタワー両方ね~~」
ミカが指し示す方向にはずっしりと積み上げられた段ボール箱があった。その中にあるのが全部覇王編だというなら流石に入荷し過ぎではないだろうか。
やれやれ、と溜め息をつきながら段ボールの中にあるボックスを取り出す。そこにはまた見たこともないスピリットが映っていた。
「このスピリット……どこか【龍皇ジーク・フリード】の面影があるな……」
一通り補充を終えると、もう午前11時を回っていた。今日は休日なので、この時間帯が1番子供の客が集中する。
「ちょっと早いけど休憩にしましょ~~」
店の奥からミカの声が聞こえてくる。どうやら本番に向けて体力を温存しとこうという算段らしい。
バローネはバトスピタワーを2回回して、ミカの元へと向かった。
「お昼何にする? とりあえず牛丼とサンドウィッチがあるけど」
休憩所のテーブルには、いかにもコンビニで買ってきた安物の牛丼とサンドウィッチが並べてある。何故この2択なのだろうかと疑問に思いつつもバローネはサンドウィッチの方を取った。
「油っこいものは嫌いだ。俺はこれでいい」
「じゃあ私が牛丼もらうわね~~」
バローネはすぐにはサンドウィッチに手をつけず、先程買ったカードを確認し始めた。
「あら、タワー回したの……って、また【星座編】第1弾と第3弾……。ほんとストライクが好きなのね、バローネ」
「友の勇姿には自然と手が伸びるものだ」
「そういうものなの? せっかくなんだから最新の【覇王編】を買えばいいのに……」
まず【星座編】第1弾の方を確認した。前の方から一枚ずつ見ていく、タワーの場合4枚目のカードがレア枠であり、バローネが引いたのは……
「【騎士妖蛇ペン・ドラゴン】か……」
「へえーー結構レアなブレイヴじゃない。シングルだと2000円ぐらいするわよ、それ」
次に【星座編】第3弾 の方を確認すると
「特にめぼしいものはないか……」
レア枠にはアンコモンしかなく光物はなかった。それでもあえていえば、かつて使っていた【光の聖剣】ぐらいだろうか。
「あら、残念だったわね」
「フッ……この程度が一番良い。前は欲しい物はなんでも手に入れられてしまって、つまらなかったからな」
軽く食事を済ませ、バローネとミカは再びカウンターへと戻る。
すると二人の目に映ったのは、バトルスペース用のテーブルに所狭しと座る子供達。
もちろん手にはバトスピのカードが握られている。
「俺は何をすればいい?」
「ん~~……と、レジは私一人で十分だし……あ! そうだ!」
ミカは何かひらめいたかの様に手の平にゲンコツをポンと置くと
「はぁ~~い、みんな~~注目!!」
店全体に響きわたる大声で子供達に呼び掛ける。
「新しくバイトに入ったこのお兄さんとバトルしたい人、手挙げてーー!」
それを聞いた子供達はざわざわと騒ぎだす。
(おい、何のつもりだ……?)
(決ってるでしょ、子供達との親睦を深めるのよ。そしたら集客率もアップして人気者になれるわよ)
誰もそんなことは望んではないのだが、と言い返しておこうかと思ったがバローネは思いとどまった。
確かに子供達の人気者などには微塵も興味はないが、久々にミカ以外の者とも戦いたいという気持ちはあったからだ。
「自分こそと思う者は名乗りを挙げろ、言っておくが俺は手加減はしない」
バローネもようやく乗り気になったのか大きく声をあげる。
すると、さっきまでざわざわしてた者達が一転、バローネに即発されたかの様に一斉に手を挙げ始めた。
「ふふ、掴みはオッケーて感じね」
嬉しそうに横で笑うミカ。そんな中バローネは一人の少年に目がいく。赤いハチマキの少年。
そう、今朝会った少年だった。
「では指命しよう、そこの少年、こちらにでてこい」
「えっ!? 俺? ヨッシャー! 今日はついてるぜ!!」
ノリノリで向かってくる少年にバローネは名前を尋ねる。すると少年は元気そうに答えた。
「俺は陽昇《ひのぼり》ハジメ! お兄さんの名前は?」
「俺か……俺はバローネだ」
「おっしゃ、じゃあよろしく! バローネさん」
そんな様子を見ていたミカは口を挟む。
「じゃあ、対戦相手が決ったみたいね、せっかくだし“アレ”でやる?」
「おぉ姐御! “アレ”でやるのか!? さらにテンション上がるぜぇーー!!」
“アレ”とはなんなのか、そんな質問をする前にバローネはミカに大型の液晶モニターの前に押しだされた。
「二人共、掛け声はいつものね~~」
「おっしゃ、まかしとけ!」
最初は戸惑っていたバローネだが、ようやく何をすればいいのか理解できてきた。そう、バトルの前の掛け声といったらあれしかない。
「「ゲートオープン解放!!」」
特殊な空間を通ると、いつの間にか姿がバトルフォームになっていた。しかしそれはこの世界のではなくバローネがいつも使っていたものである。
「あれ、バローネさんだけバトルフォーム違くない? なんでだ?」
バトルフィールドの向かい側にいるハジメが話し掛けてくる。
「さあな、特注といったものだろう」
そんなことよりもバローネはこの世界にもバトルフィールドが存在したことに驚いていた。
この3日間仕事の終わりにミカとバトルした時は全部机の上がフィールドだったのだ。
【第1ターン】
「よっしゃ、先攻! 上げてくぜぇーー!!」
ハジメは【オードラン】を二体召喚した。フィールドには二つの赤のシンボルが現れたかと思うと、砕けて二体の小型の竜が召喚される。
「おぉーー、やっぱスピリットが実体化するのは興奮するなーー! ターンエンド」
[ハジメLife]5
[手札]3
[コア]リザーブ〈2〉フィールド〈2〉トラッシュ〈0〉
[スピリット]【オードラン】【オードラン】
【第2ターン】
「スタートステップ」
バローネはドローステップまで終えて手札を確認すると、自分で組み直しただけあってか手札事故はおこしていなかった。
「メインステップ、【ノーザンベアード】、【ザニーガン】をそれぞれレベル1で召喚」
[コア]リザーブ〈5→0〉フィールド〈0→2〉トラッシュ〈0→3〉
白いシンボルが砕けて現れたものは青い線の入った白熊とエビを模した機械。
「アタックステップ、やれ、【ザニーガン】」
【ザニーガン】の背面スラスターから光が漏れた瞬間、一気にジェットを噴射してハジメの方へと突っこんでいく。
「くぅ、ライフで受ける!」
ハジメの眼前に白いバリアが展開し、それを【ザニーガン】が破壊する。
[ハジメLife]5→4
「ターンエンドだ」
[バローネLife]5
[手札]3
[コア]リザーブ〈0〉フィールド〈2〉トラッシュ〈3〉
[スピリット]【ザニーガン】【ノーザンベアード】
【第3ターン】
コア、ドロー、リフレッシュステップを順々にこなしていき、ハジメはメインステップを迎えた。
「メインステップ! バーストをセット!」
「バーストだと……?」
「あれ? バローネさんバースト知らないの?」
するとハジメはバーストについて自慢気に説明してきた。
ハジメの説明からわかったことはバーストとは、フィールドに一枚だけ裏側にセットでき、特定の条件を満たすことで発動できるカードのことらしい。
「なるほど、そんなカードがあったとはな。……面白い、かかってこい」
「言われなくても……ッ 【ワン・ケンゴー】を召喚! そしてそのままアタックステップ!」
[コア]リザーブ〈3→1〉フィールド〈2→3〉トラッシュ〈0→1〉
ハジメは【ワン・ケンゴー】でアタックを仕掛けてきた。額に日本刀のついた犬が遠吠えをすると、バローネに向かって走ってくる。
「【ワン・ケンゴー】の効果! 自分のフィールドにバーストがセットされてる間、このスピリットはLv3として扱う。よって【激突】を持つぜ!」
【ワン・ケンゴー】3/2
〈1〉BP2000
〈3〉BP4000
〈5〉BP6000
Lv1・Lv2・Lv3
自分のフィールドにバーストがセットされてる間、このスピリットはLv3として扱う。
Lv2・Lv3
【激突】『このスピリットのアタック時』
相手は可能ならば必ずブロックする。
「バーストのセットで能力を上げてくるカードか、どうやらバーストをメインに組んでるようだな」
「まあねーー、ちなみにブレイヴは一枚もいれてないけどね」
「そうか……ならば【ノーザンベアード】でブロック! ブロック時効果発動、ボイドからコア一つを【ノーザンベアード】の上に、よってLv2にアップ」
【ノーザンベアード】3/2
〈1〉Lv1BP3000
〈2〉Lv2BP5000
Lv1・Lv2
『このスピリットのブロック時』
ボイドからコア一個をこのスピリット上に置く。
[コア]フィールド〈2→3〉
「それでもBPは【ワン・ケンゴー】の方が上だぁ! やれっ【ワン・ケンゴー】!!」
【ワン・ケンゴー】は額の日本刀で【ノーザンベアード】を真っ二つに切り裂いた。
「続いて二体の【オードラン】でアタック!」
息ピッたしに二体の【オードラン】が駆けていく。
「総アタックか、どちらもライフで受ける」
片方は口から炎を、もう一体は回転しながら体当りをしてきた。前方の赤いバリアが破壊され、バローネのバトルフォームのコア二つが光る。
――――同時に胸部に衝撃が走った。
「ぐあっ……!」
[バローネLife]5→3
[コア]リザーブ〈2→4〉
「ターンエンド!」
[ハジメLife]4
[手札]3
[コア]リザーブ〈1〉フィールド〈3〉トラッシュ〈1〉
[スピリット]【オードラン】【オードラン】【ワン・ケンゴー】
【第4ターン】
「ドローステップ」
バローネはカードを引く。
(やっかいだな……あのカードは)
今現在であの【ワン・ケンゴー】に勝てるカードを引かなければ、自分のスピリットはどんどんと【激突】されて破壊されるだろう。
引いたカードは――――
「メインステップ、【ザニーガン】をレベル2にアップ。更に【ホーク・ブレイカー】を召喚する」
[コア]リザーブ〈8→1〉フィールド〈1→4〉トラッシュ〈0→4〉
「げっ、おれの嫌いなブレイヴ……」
【ホーク・ブレイカー】5/白2緑2
〈1〉Lv1BP7000
〈0〉合体BP+3000
このブレイヴがスピリット状態の間、自分のスピリット全てに“【重装甲:赤】このスピリットは相手の赤のスピリット/ブレイヴ/ネクサス/マジックの効果を受けない。”
という効果を与える。
【合体時】『このスピリットのブロック時』
バトルしている相手のスピリット一体のシンボル一つにつき、このスピリットのBPを+5000する。
バローネは【ホーク・ブレイカー】をスピリット状態のまま召喚した。つまり現在バローネのスピリット全てには【重装甲:赤】が付与されている。
「アタックステップ、【ザニーガン】攻撃しろ!」
【ザニーガン】の一対のキャノン砲がハジメに向けられる。
「ライフで受けるっ!」
直後、蒼白いビームがハジメのライフを撃ち抜いた。
[ハジメLife]4→3
[コア]リザーブ〈1→2〉
「は、ははっ、キタキタキタァーー!」
いきなり笑いだしたハジメにバローネは少し引く。
(ライフで受けることに快感を感じてるのか……まるで馬神弾、いやそれ以上だな)
そんな風に思考を巡らすバローネだが、ハジメが笑うのはそれ以上の意味があった。
「ライフ減少によりバースト発動!!」
「なっ!?」
ハジメのディスプレイの上で伏せられていたカードが弾き出され、宙をクルクルと舞う。それを素早くキャッチすると
「真っ赤な英雄《ヒーロー》爆裂召喚! 現れよ【英雄龍ロード・ドラゴン】!!」
ハジメは高らかに英雄龍を呼ぶ。
そしてそれに応えるかの様に突如として上空から巨大な桃が現れた。バトルフィールドに桃という一見シュールな光景だが、そんな感情は次に来る光景に洗い流されることとなる。
ザン! ザン! という二振りの刀が十字に桃を切り裂くと、中からその主が姿を現した。
稟とした顔立ちに、桃太郎をモチーフにした様な衣装を羽織る