Battle Spirits ~The hero of moon right~ 作:クロコッペ
「だっーー!! 今日SBだったのすっかり忘れてたーー!!」
地面を思いっきり蹴りあげて走るのは一人の少年、風に揺られその少年の赤いハチマキがゆらゆらと揺れる。
少年の名は陽昇ハジメ。
如月ミカの経営するバトスピショップの常連でもありバローネとも面識がある少年だ。
「せっかくバゼルを手に入れてデッキを組み直したのに……ああもう!!」
第三弾が入荷されて、早速当てた赤のXレア【爆炎の覇王ロードドラゴン・バゼル】。
それを軸にデッキを調整するのに夢中でSBのことを忘れていたのである。
今から行ったって、SBはとっくに終わっているだろうが、それでもフリーバトルくらいならできないかと、僅かな希望にすがってハジメは走り続ける。
駅から降りて数十分走り続けると、ようやくいつものバトスピショップが見えてきた。
「あれ……なんであんなに人が集まってるんだ?」
ようやくついたかと思うとその店は外からも伺えるくらいに中では人が混みあい、蒸し風呂状態だった。
ハジメは人ごみを掻き分け、なんとか店内へと入る。
「おっ、テガマルじゃん! 今日のSBどうだった?」
人だかりの最前列に、三人の少年が立っていた。彼らは『テガマル組』と呼ばれ、このショップでは一目置かれている存在だ。
「オっす、ハジメ。もちろんアニィの優勝だぜ!」
大柄な男、仁霧コブシがテガマルの代わりに答える。
「おお、やっぱすっげーな、テガマルは!! だからこんなに人が集まっているのか!?」
「いいや、違う。 あれを見ろハチマキ」
こんどはキャップを目元まで深くかぶった中性的な顔立ちの少年、日下チヒロが答えた。
チヒロの指差すもの、それは大型のスクリーン。
「いまバトルやってんのか……ええと戦ってる人は……」
そこでハジメは二重に驚いた。
それは世界チャンピオンの薬師寺アラタがこんな田舎のショップで戦っていて、しかもその対戦相手がここの店員の、バローネなのだから。
「ええぇぇぇぇぇぇ!! なんで!? なんで!? チャンピオンがここに!? しかも、なんでバローネさんが戦っているの!?」
「静かにしろ、ハチマキ」
真剣にバトルの行く末を見守るテガマルはそっと口に出した。
「チャンピオンの強さはもちろんのことだが、それに互角にやり合っているあの男、只者ではないな」
「おうよ! バローネさんは超強いんだぜ? ま、俺は勝ったけどな」
バローネとアラタの戦いをハジメは見つめる。
これが、本当の強者の戦い方なんだと胸に刻みながら。
【第1ターン】
「先攻は俺がもらうぞ、スタートステップ!」
月光のバローネ
[Life]5
[Hand]5
[Core]Reserve〈4〉
[Spirit]なし
[Nexus]なし
[Burst]なし
[MainStep]
「【ザニーガン】をレベル2で召喚する」
白のシンボルが弾けて出てきたのは、赤いエビを模した機械。
二門のキャノンを尖らせ、威嚇するように宙を一回転した。
「ターンエンド」
月光のバローネ
[Life]5
[Hand]5→4
[Core]Reserve〈4→0〉Field〈0→3〉Trash〈0→1〉
[Spirit]【ザニーガン】
[Nexus]なし
[Burst]なし
「ふうん、バーストは無し、か……」
「フッ、バーストなど所詮我が友を飾るだけのパーツにすぎん。しかもその役割はブレイヴで十分だ」
「いいねそのスピリットに対する愛、だけどバーストに少しは頼らないと勝てはしないぜ?」
【第2ターン】
「俺のターンだな、ドローステップ!」
薬師寺アラタ
[Life]5
[Hand]5
[Core]Reserve〈5〉
[Spirit]なし
[Nexus]なし
[Burst]なし
[MainStep]
「【リュザード】を2体、片方はレベル2で召喚だ!」
2つの赤のシンボルが弾け、幼竜のような小さな龍が2体フィールドに現れる。
[AttackStep]
「【リュザード】でアタック! 気張ってけよ!」
リュザードは昇竜の如く空をかける。
「【リュザード】のアタック時効果発動! 赤のスピリットの数だけBPを+1000! よってBP4000だ!」
【リュザード】1(0)/赤/翼竜
<1>Lv1 1000
<2>Lv2 2000
Lv2『このスピリットのアタック時』
自分の赤のスピリット1体につき、このスピリットをBP+1000する。
「【ザニーガン】でブロック……したら、やられるのはこちらか。いいいだろう、ライフで受けてやる」
リュザードは口元から赤い炎を吐き出し、そのままバローネのライフを削った。
月光のバローネ
[Life]5→4
[Reserve]〈0→1〉
「ターンエンドだ!」
薬師寺アラタ
[Life]5
[Hand]3
[Core]Reserve〈5→0〉Field〈3〉Trash〈2〉
[Spirit]【リュザード〈レベル2〉】【リュザード〈レベル1〉】
[Nexus]なし
[Burst]なし
【第3ターン】
月光のバローネ
[Life]4
[Hand]4→5
[Core]Reserve〈1→3〉Field〈3〉Trash〈1→0〉
[Spirit]【ザニーガン】
[Nexus]なし
[Burst]なし
[MainStep]
「さて、この手札……どう動くか……」
バローネの手札は既に【月光龍ストライク・ジークヴルム】のカードが来ていた。
このターンで出すことも可能だが、その場合はレベル1での召喚になる。
もしアラタがBP5000以上の激突持ちのスピリットを召喚した場合、相打ち、又は破壊されてしまう。
「だが、このカードならば……」
そう言って、
「バーストをセットだ」
バローネは1枚のカードをバーストゾーンにセットした。リアルバトルフィールドでのバーストセットはこれが初めてである。
「おお! ついにバローネさんがバーストをセットした!」
「おいハチマキ、あの男はどのようなバーストを使うんだ……?」
テガマルはハジメの方は向かずに質問した。
それはこのバトルから一瞬でも目が離せない様にも見える。
「俺もわかんないけど、バローネさんは白使いだからバーストも白のを使うんじゃないの?」
これで下準備は終了、後は月光龍を呼ぶのみ。
バローネは天高く月光龍のカードを突き上げる。
「闇に映るは蒼白なる月……光を照らすはその眼光」
ズシン! ズシン! とフィールドに連続した振動が伝わる。
その音は徐々に大きく、強くなっていった。
「現れよ、月光の覇者! 【月光龍ストライク・ジークヴルム】をレベル1で召喚! 不足コストは【ザニーガン】から確保だ」
バローネの背後から現れた銀鱗の鎧を纏いし白銀の龍。バトルフィールドの砂を巻き上げ、ゆっくりと着陸する。
「月光龍、か……アントニーを思い出すぜ。いや、あいつは月光神龍のほうだったかな?」
「安心しろ、我が友は月光龍だけではない、月光神龍もそうだ」
「あ、そう……」
[AttackStep]
「行くぞ、我が友よ。【月光龍ストライク・ジークヴルム】でアタック!」
バックパックのスラスターを最大質力で放出して突進する月光龍。
「ライフで受けるぜ!」
上空からアラタの元へと向かって急降下すると両足の爪を剥き、一気に引き裂く。
「う、ぐぁ……!」
薬師寺アラタ
[Life]5→4
[Reserve]〈0→1〉
「ッぁ~~、効いたぜ。流石Xレアの一撃ってとこだな」
「……ターンエンド」
月光のバローネ
[Life]4
[Hand]5→3
[Core]Reserve〈3→0〉Field〈3→1〉Trash〈0→5〉
[Spirit]【月光龍ストライク・ジークヴルム】
[Nexus]なし
[Burst]???
【第4ターン】
薬師寺アラタ
[Life]4
[Hand]3→4
[Core]Reserve〈1→4〉Field〈3〉Trash〈2→0〉
[Spirit]【リュザード〈レベル2〉】【リュザード〈レベル1〉】
[Nexus]なし
[Burst]なし
[MainStep]
「ほいじゃまーー、俺もバーストをセットっと……」
[Burst]なし→???
「そして、【カグヅチドラグーン】をレベル2で召喚! 不足コストはレベル2の【リュザード】から確保、よってレベル1にダウンだ」
[Core]Reserve〈4→0〉Field〈3→5〉Trash〈0→2〉
赤のシンボルが弾け中型の竜が召喚される。
炎を纏った翼でその竜は火花をまき散らした。
[AttackStep]
「【カグヅチドラグーン】でアタック! アタック時効果で月光龍には必ずブロックしてもらうぜ!」
【カグヅチドラグーン】
4(2)/赤/古竜
<1>Lv1 3000
<3>Lv2 6000
Lv1・Lv2『このスピリットのアタック時』
自分はデッキから1枚ドローする。
Lv2【激突】『このスピリットのアタック時』
相手は可能ならば必ずブロックする。
薬師寺アラタ
[Hand]2→3
「そうだな……俺はそのアタックを我が友でブロックしなくてはいけない。その場合破壊されるのは俺の我が友の方だ」
ただし、と付け加えて。
「それは
「なにっ!?」
「スピリットのアタックによりバースト発動だ。マジック、【光速三段突】」
カグヅチドラグーンが火炎の翼をはためかせ、月光龍に突進する。
月光龍はそれを右側にいなし、カグヅチドラグーンの腹部を思いっきり蹴りあげて空へと浮かせた。
光・速・三・段・突、という5つの文字がバンバンと現れ、一つ一つが月光龍に取り込まれていく。
すると月光龍の身体がほのかに光に包まれ――――
ザン! ザン! ザン! と空中に浮かぶカグヅチドラグーンに3つの閃光が走った。
それはマジックの力を借り、光に近い早さで三回の攻撃を与えた月光龍であったのは言うまでも無い。
【光速三段突】
6(3)/白
【バースト:相手のスピリットのアタック後】
このターンの間、自分のスピリットすべてをBP+3000する。
「なるほど、そのバーストでBPを上げて返り討ちにしたってわけか、なかなかやるねぇ~ だが、それも読み通りだぜ!」
アラタのセットしたバーストがはじき出され空を舞う。
「相手による自分のスピリットの破壊によりバースト発動! 【双光気弾】!!」
【双光気弾】
3(1)/赤
【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】
自分はデッキから2枚ドローする。その後コストを支払うことで、
このカードのフラッシュ効果を発揮する。
フラッシュ:相手の合体スピリットのブレイヴ1つを破壊する。
または、相手のネクサス1つを破壊する。
薬師寺アラタ
[Hand]3→5
「ここまで読んで来るとは……世界チャンピオンの名は伊達ではないな」
「ははっ、照れるな」
アラタはその後アタックはせず、ターンエンドをした。
薬師寺アラタ
[Life]4
[Hand]5
[Core]Reserve〈0→3〉Field〈5→2〉Trash〈2〉
[Spirit]【リュザード】【リュザード】
[Nexus]なし
[Burst]なし
【第5ターン】
月光のバローネ
[Life]4
[Hand]3→4
[Core]Reserve〈0→6〉Field〈1〉Trash〈5→0〉
[Spirit]【月光龍ストライク・ジークヴルム】
[Nexus]なし
[Burst]なし
[MainStep]
「ネクサス、【光の聖剣】を配置する」
バローネの背後に巨大な剣がそびえ立った。天からはその剣に光が差し、眩いばかりの光を反射させる。
[Hand]4→3
[Core]Reserve〈6→3〉Field〈1〉Trash〈0→3〉
[AttackStep]
「我が友よ、アタックだ」
「あれ? バローネさんリザーブにコアが三個あるのに月光龍に置かなかった……これじゃレベル1のままだ……」
ハジメは頭をかしげる。
これは単なるプレイミスなのか、それとも何か狙いがあってやったことなのか区別がつかないからだ。
「そいつはライフで受けるぜ」
薬師寺アラタ
[Life]4→3
[Core]Reserve〈3→4〉
「ここでターンエンドと行こう」
月光のバローネ
[Life]4
[Hand]3
[Core]Reserve〈3〉Field〈1〉Trash〈3〉
[Spirit]【月光龍ストライク・ジークヴルム】
[Nexus]【光の聖剣】
[Burst]なし
【第6ターン】
薬師寺アラタ
[Life]3
[Hand]5
[Core]Reserve〈4→7〉Field〈2〉Trash〈2→0〉
[Spirit]【リュザード】【リュザード】
[Nexus]なし
[Burst]なし
[MainStep]
「へへ、んじゃ今度はこれだ!」
アラタはまた新しいバーストをセットする。
「そしてお次はワンチャンの登場だ! よろしく頼むぜ」
ワンチャンと言って、召喚したのはまたもや、【激突】持ちのスピリット、【ワン・ケンゴー】である。
[Core]Reserve〈7→5〉Field〈2→3〉Trash〈0→1〉
このカードはハジメとの戦いの時にも対峙したことがあるので効果はよく知っていた。
「こいつは自分のバーストがセットされている間レベル3として扱う。よってBP6000の激突持ちだ!」
【ワン・ケンゴー】3(2)/赤/皇獣
<1>Lv1 2000
<3>Lv2 4000
<5>Lv3 6000
Lv1・Lv2・Lv3
自分のバーストをセットしている間、このスピリットをLv3として扱う。
Lv2・Lv3【激突】『このスピリットのアタック時』
相手は可能ならば必ずブロックする。
[AttackStep]
「【ワン・ケンゴー】でアタック! 今度もまたブロックしてもらうぞ!」
「いいだろう……【月光龍ストライク・ジークヴルム】でブロック!」
「なぁテガマル。今のバトルどう思う?」
「バローネという男は、まだ手を隠しているな。そうでなければ月光龍をレベル3に上げているはずだ」
「だよな……でもマジックの使用ならスピリット上からも取れるし、リザーブに置かないとできないことといったら……あっ!!」
ワン・ケンゴーの額にある日本刀の斬撃をかわし、月光龍は口から紫電を放つ。しかしレベル1ということもあり圧倒的にパワーが不足していた。
ワン・ケンゴーは額の日本刀でその紫電を受け止め、弾き返す。
弾き返された自分の紫電をもろに受け、月光龍は地面に叩き落された。
身動きのとれていない今がチャンスと、ワン・ケンゴーは日本刀を突き立て、月光龍に突進する。
「フラッシュタイミング――――」
その距離は10メートル、6メートル、2メートルとどんどん縮まっていった。
あと僅か1メートル。このままワン・ケンゴーが突進すれば、月光龍はその刀の餌食となる。
はずだった《・・・・・》。
ガギィ!! と金属音が重なって聞こえた。
ワン・ケンゴーが見たのは、自身の日本刀よりもはるかに巨大な刀を口に咥えて競り合っている月光龍の姿。
全身の白を包むようにして、黒い艶のある甲冑が身体を覆っている。
「【コテツ・ティーガー】を神速召喚、そして月光龍に直接合体だ」
むき出しの野生を刃に乗せ、月光龍はそのまま振り切る。
その一撃は、ワン・ケンゴーの刃を完膚なきまでに砕いた。
グォォォオォォォ!!
月光龍の咆哮がフィールド内に勇ましく響く。その音はワン・ケンゴーを竦ませ、動きを封じた。
「なんとも良い雄叫びだ、我が友よ」
聞き惚れるかのようにバローネは目を閉じ満足気に微笑する。
「まさか【神速】を使うとは! さっすがバローネさん! まったく読めないぜ!」
さてフィニッシュだ、とバローネは呟いて。
「切り裂け、合体《ブレイヴ》スピリット」
月光龍の口に加えている刃がバリバリと紫電を纏い火花を散らす。
月光龍は大きく空へと舞い上がった。
高く、どこまでも高く。
そして、ある程度距離をとったところで、今度は一気に急降下する。標的はワン・ケンゴー、ただ一匹。
ザシュウゥゥゥゥゥ!!!
まるで空間を歪ませるかのような激しい斬撃。
ワン・ケンゴーは一瞬でチリに帰り、消えていった。それでも斬撃の余波は続きフィールド全体が震動する。
その振動にのけぞりそうになりながら、アラタは顔を上げる。
そこには、ライフを今にも斬り刻まんとする月光龍がいた。
「【コテツ・ティーガー】の効果発動。ライフを1つもらうぞ」
月光龍はアラタの前に展開されたバリアを一刀両断した。
薬師寺アラタ
[Life]3→2
「残念だったな、薬師寺アラタ。貴様のアタックはまたしても無駄になってしまったぞ?」
今まで沈黙を守り続けてきたアラタはそこでようやく口を開いた。
「いや――――そうでもないぜ?」
「なに?」
フィールドが突如として暗雲に包まれる。薄暗い雲からは激しい雷鳴がなり、豪雨が降り注ぐ。
そしてその雲切り裂くようにして現れた一体の龍。
巨大な体に堅牢な剣を携え、その姿は古代の英雄を彷彿させる。
「見な、これが俺の相棒――――」
その龍は月光龍に向かって斬撃による衝撃波を繰り出す。月光龍はそれをヒラリとかわしてコテツの刃を借り喉元を切りつけようとする。
だが
まるで子供のいたずらをたしなめる親のように、いかにもあっさり、いかにも優しく、いかにも当然のごとく。その龍は手のひら一本だけで月光龍の刃を押さえつけた。
そしてもう一本のあいた手には剣が握り締められている。
首を切断するかのごとく、その龍は動きを封じている月光龍に向けて剣を薙ぎ払った。
激しい雷鳴が響く中、月光龍の生命の鼓動が
止まった。
ドゴオオォォォォォォォォ!!
合体スピリットの破壊により大きな爆炎が上がる。
アラタは笑いながらバーストとしてセットされていたカードを大きく突き出す。
「【龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード】だ!!」