Battle Spirits ~The hero of moon right~   作:クロコッペ

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8core 激突! 龍の覇王vs月光神龍(中編)

 

 

「燃え上がれ赤き龍!! 熱く!! 激しく!! 魂の雄叫びを今ここに!!  覇王(ヒーロー)Xレア、龍の覇王ジーク・ヤマト・フリードをレベル3で召喚!!」

 

薬師寺アラタ

[Core]Reserve〈7→2〉Field〈2→7〉Trash〈1〉

 

月光龍が【コテツ・ティーガー】の力を借り、削ったライフ。それは古の力を携える龍の覇王の封印を解く引き金になってしまった。

圧倒的な力にねじ伏せられ、月光龍はいともたやすく龍の覇王に破壊される。

これが龍の覇王のバースト効果。

 

【バースト:自分のライフ減少後】

自分のライフが3以下のとき、BP15000以下の相手のスピリット1体を破壊する。

この効果発揮後、このスピリットカードを召喚する。

 

「なんだ、と……我が友が……」

 

月光龍を破壊され、大きく動揺するバローネ。元の世界では馬神弾を最初として、数々の猛者に月光龍を破壊されてきた。

それはいつでも、バローネの心を響かせ、苦しめた。月光龍はバローネにとってのプライドであり一番の相棒なのだ。

破壊されて涼しい顔なんてできるはずがなかった。

 

だからこの世界に来てからはまだ一度も月光龍は破壊されてはいなかった。

それがこのバトルで再び破壊されてしまったのだ。

 

「ふん、そんなにキースピリットの破壊がショックかい? だけどいちいち動揺してるようじゃ俺には勝てないぜ」

 

まだアラタのアタックステップは終わっていない。

アラタは【龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード】のカードを傾けて、

 

「ジーク・ヤマト・フリードでアタックだ! アタック時効果で【コテツ・ティーガー】を指定してアタックする!」

 

ゴオォォォ!! と、龍の覇王の持つ剣が豪炎に包み込まれる。その刃で龍の覇王はコテツ・ティーガーに避ける暇さえ与えず、切り裂いた。

 

 

「どちらも破壊ときたか……」

 

テガマルは表情は変えずそれだけ呟く。

 

「やばいよバローネさん!! フィールドががら空きになっちゃった!!」

 

「まだまだ!! リュザード二体でアタック!!」

 

二匹の竜が息を合わせてバローネに炎を吐く。

今のバローネのフィールドには何もいない。そう、ライフを守るスピリットさえも。

 

「く……ライフで受ける……!」

 

月光のバローネ

[Life]4→2

[Core]Reserve〈1→3〉Trash〈6〉

 

 

「ふう……何にでも倍返しが俺のルールでね。ターンエンド」

 

[EndStep]

 

薬師寺アラタ

[Life]2

[Hand]3

[Core]Reserve〈2〉Field〈7〉Trash〈1〉

[Spirit]【リュザード】【リュザード】【龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード】

[Nexus]なし

[Burst]なし

 

 

【第7ターン】

 

[Start&Core&DrawStep]

 

月光のバローネ

[Life]2

[Hand]2→3

[Core]Reserve〈3→4→10〉Field〈0〉Trash〈6→0〉

[Spirit]なし

[Nexus]【光の聖剣】

[Burst]なし

 

(くそ……手札が悪いな)

 

バローネがドローステップで引いたカードは【突機竜アーケランサー】。

優秀なブレイヴカードだがシンボルがない。つまりはこれでアタックしてもアラタのライフは減らせなかった。

 

[MainStep]

 

バローネは三枚のカードの中から1枚を抜き出し、バーストゾーンにセットした。

続けてのもう1枚は、

 

「ザニーガンをレベル1で召喚する」

 

白いシンボルから現れたのはエビを模した機械の獣。スラスターを回転させ、柔らかく着地した。

 

[Hand]3→1

[Core]Reserve〈10→9〉Field〈0→1〉Trash〈0〉

[Burst]なし→???

 

しばらくバローネは沈黙した。

自分の残りの手札は1枚。この【突機竜アーケランサー】を召喚すれば効果で1枚ドロー出来るが、そこで引き当てたカードがこの場面で全く使えないカードだったらどうする?

それなら様子見で温存しておいたほうが……

 

そんなことを考えていた時だ。

 

ドクン。というかすかな鼓動がデッキから、正確にはデッキトップのカードから聞こえてきた。

まるで――――“自分を引け”と言わんばかりに。

 

バローネはフッと静かに笑う。

 

そうだ、自分には“もう一体の友”がいたではないか。

 

バローネから後ろ向きな考えは消えた。もう迷わない、ただ“友”を信じればいいのだ。

手札の最後のカードを抜き取り、ディスプレイにそっと置く。

 

「続けて、【突機竜アーケランサー】を召喚。召喚時効果でデッキから1枚ドローするぞ」

 

[Core]Reserve〈9→6〉Field〈1→2〉Trash〈0→3〉

 

突機竜アーケ・ランサー

Lv1『このブレイヴの召喚時』

自分はデッキから1枚ドローし、相手のネクサス1つを破壊する。

 

そして、バローネが引いたカードは……

 

「―――――――――――闇を照らす銀鱗、」

 

バローネの言葉とともにバトルフィールドの上空は夜の闇に包まれていく。

光の聖剣が照らし出す先には満ちた月。まったく欠くとことなく完璧な円を描く月が現れていた。

 

「―――――――――――夜を統べる高貴なる龍、」

 

ドプッと、まるで水面《みなも》に映し出された月のように、その月は水面を立てて“ある者”を呼び出す。

それは“白き龍”だった。

紫のバイザー越しに光る一対の瞳。研ぎ澄まされた刃のような牙と爪。そして蒼と白のツートンカラーで彩られた鎧は月に照らされ刺々しくも美しく輝く。

 

「――――我が友、月光神龍ルナテック・ストライクヴルム、レベル1で召喚!!」

 

[Core]Reserve〈6→0〉Field〈2→3〉Trash〈3→8〉

 

ザァアアアア!! と砂埃を立ち上げ、バトルフィールドに降り立った月光神龍。

その瞳は目の前にいる龍の覇王を敵と認識したらしく、威嚇混じりの鋭い瞳へと変化する。

 

 

 ◇

 

「おおう!! 月光神龍VS龍の覇王って言ったらあの時と同じだなテガマル!!」

 

「ユーロチャンプとの戦いの時か、だが今回のほうが月光神龍は龍の覇王にとって手強くなるな」

 

「……? どういうことだ?」

 

「見ていればわかる」

 

 ◇

 

 

「今宵は月。合体《ブレイヴ》するにはいい夜だ……」

 

バローネは上空の月を眺めながらそう呟く。そして、突機竜のカードを月光神龍の上に重ねると、

 

「紅く染まれ、月明かりの龍よ。双対の槍と共に! 突起竜アーケランサーを月光神龍ルナテック・ストライクヴルムに合体《ブレイヴ》!」

 

アーケランサーの本体から二本の槍が外れ、それを月光神龍は力強く掴む。そしてアーケランサー本体は月光神龍のバックパックに接続された。唸りのような咆哮がバトルフィールド全体を包み、月光神龍の姿がみるみる紅へと染まっていった。

その姿はまるで数多の鮮血で染まったかのごとく、凶暴で、凶悪で、禍々しい。だがそこには確かに引き込まれるかのような“美”が存在していた。

 

[AttackStep]

 

「来るかい。月の使い手さん!」

 

アラタはこの状況を楽しんでいるかのように笑う。

それに答えるかのようにバローネも笑みを浮かべながら、

 

「もちろんだ。ザニーガンでアタック!」

 

アラタのライフは残り2。バローネのフィールドにはザニーガンと合体スピリットの2体。つまりこのまま何もなければバローネの総アタックで決まる。

 

「甘いな、マジック【絶甲氷盾】を使用! 不足コストは龍の覇王から確保するぜ」

 

アラタの前には虫の複眼のように幾重に折り重ねられた結晶が展開する。

 

「そして、そのアタックはライフで受けるぜ!」

 

ザニーガンは速度を一定に保ちながら、アラタへと直進し、激突した。

バリィィィ! と言う嫌な機械音がアラタの頬をかすめるかのように通り過ぎる。展開された白のバリアは粉々に粉砕され、破片だけが飛び散った。

 

薬師寺アラタ

[Life]2→1

[Hand]3→2

[Core]Reserve〈2→0→1〉Field〈7→5〉Trash〈1→5〉

 

「絶甲氷盾の効果でアタックステップを強制終了されてしまったか。ここはターンエンドしかないな」

 

[EndStep]

 

月光のバローネ

[Life]2

[Hand]0

[Core]Reserve〈1〉Field〈2〉Trash〈8〉

[Spirit]【月光神龍ルナテック・ストライクヴルム(突機竜アーケランサー)】【ザニーガン】

[Nexus]【光の聖剣】

[Burst]???

 

 

【第8ターン】

 

[Start&Core&DrawStep]

 

薬師寺アラタ

[Life]1

[Hand]2→3

[Core]Reserve〈0→1→6〉Field〈5〉Trash〈5→0〉

[Spirit]【リュザード】【リュザード】【龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード】

[Nexus]なし

[Burst]なし

 

「う~~ん、これは厄介だな」

 

アラタは顎に手を当てながら考える。自分の手札には今1枚もバーストがない。それよか召喚できるスピリットがいなかった。

 

[MainStep]

 

「龍の覇王をレベル3にアップ! そして――――」

 

バギン、バキンバギン、バキンバキンバキン!! と、鈍い音が連続してフィールド全体に響き渡る。それはまるで地割れが起きているかのような、地面がぐちゃぐちゃにひしゃげる音。

 

「ネクサス【永久凍土の王都】を配置! さあ市街地戦と行こうぜ」

 

[Hand]3→2

[Core]Reserve〈6→0〉Field〈5→7〉Trash〈0→5〉

 

バトルフィールドの大きさが通常の5倍以上に拡大され、バローネとアラタの距離は更に遠ざかる。

隆起しだした地面から出たきたのは、まさに王都といっても差し支えのない立派な建築物だった。

バトルフィールドの中央にはそびえ立つ王宮、その周囲を取り囲むかのようにして、住宅街が広がる。

 

「またもフィールド全体に影響を及ぼすネクサスか。演出としては最高だな」

 

眼前で凍りつく王都を見ながらバローネは笑う。

手持ちのスピリット達も急に変わった光景に驚いたらしく、辺りをきょろきょろと見渡していた。

 

[AttackStep]

 

「行くぜ相棒! 龍の覇王ジーク・ヤマト・フリードでアタック! アタック時効果でザニーガンを指定だ!!」

 

「仕方ない。ザニーガンでブロックをしよう」

 

両者の間には沢山の建物が並び、それが視界を妨げる。お互いどこから攻撃がされるかわからない状態での探りあいになるのだ。

 

先に仕掛けたのはザニーガンだった。

小柄な体を活かし、建物に隠れながら龍の覇王の動きを伺う。

 

 

そして、隙が出きたとこに――――

 

 

ズドン! という銃声が響いた。狙われたのは龍の覇王の翼、狙った者はザニーガンの一対の砲塔。

 

しかしその攻撃は全く無に等しいものだった。

龍の覇王は、まるで何事もなかった様に、翼をバサバサと揺らし、ゆっくりと後ろを振り返る。

そして、手に握られた剣《つるぎ》からは何千度にも達する炎が一瞬にして燃え上がった。

 

グオォォォォォォ!!!

 

振り返ったと同時に、龍の覇王はザニーガンが隠れていた建物ごと薙ぎ払う。凍りついていたはずの建物は一瞬にして塵と帰り、“永久凍土”なんて言葉が鼻で笑えそうになる。

斜めに切り込みを入れられ、上半分が消滅した建物。そこから逃げ出すようにしてザニーガンは飛び出した。

この圧倒的段違いな戦力差では真正面から挑んでも勝てないと判断したからだ。

だが龍の覇王はそれを決して逃さない。かるく両足を屈折させると、

 

「とどめだ! やっちまいな相棒!」

 

地面をえぐるかのようにして一気に跳躍した。

10メートル以上の高さで飛行しているザニーガンは、そのたった一回の跳躍で追いつかれた。

龍の覇王はその勢いのまま、空中で斬撃を加える。

あまりの早さで振りぬかれた剣はザニーガンの感覚を鈍らせる。ザニーガンがようやく切られたことに気づいたのは、龍の覇王が地面に着地してからだった。

 

激しい爆音が響く。

 

背後の爆音でザニーガンの破壊を確認すると、龍の覇王は刀の錆を落とすかのように軽く剣を振るった。

 

ドローの弱い白にとって、スピリット一体の破壊はなかなかに重い。その為、手札が0の状態ではザニーガンが一体なくなったことでさえもバローネにとっては痛手だった。

しかしバローネからは苦渋の表情は伺えない。と、言うよりもこのタイミングを待っていたかのようだった。

 

「甘いな、スピリット破壊によりバースト発動――――」

 

龍の覇王の勝利はつかの間。破壊されて木っ端微塵になったザニーガンを包み込むようにして巨大な氷の結晶が形成される。

まるで時間を巻き戻すかのようにして、ザニーガンはその結晶の中でで再生されて行く。

 

「マジック【幻影氷結晶】――――。悪いがザニーガンは手札に戻させてもらう」

 

幻影氷結晶

【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】

このバースト発動時に破壊された、自分のトラッシュにあるスピリットカード1枚を手札に戻す。

 

前と何一つ違わない状態まで回復したザニーガンは、そのままバローネの手札へと戻った。

 

「ヒューー。ブレイヴを主にした戦術らしいけど、ちゃっかりバーストも使ってくるんだねぇ。いやぁ抜け目がない」

 

「フッ……さっきも言っただろ? 俺にとってのバーストとブレイヴは我が友を引き立てるためのものでしかない、そこに特にこだわりはない。バーストだろうが有能なものは取り入れるだけだ」

 

「ははっ! 戦っててまったく退屈しないな、あんた! ターンエンド!」

 

 

[EndStep]

 

薬師寺アラタ

[Life]1

[Hand]2

[Core]Reserve〈0〉Field〈7〉Trash〈5〉

[Spirit]【リュザード】【リュザード】【龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード】

[Nexus]【永久凍土の王都】

[Burst]なし

 

 

 

【第9ターン】

 

[Start&Core&DrawStep]

 

月光のバローネ

[Life]2

[Hand]1→2

[Core]Reserve〈2→3→11〉Field〈1〉Trash〈8→0〉

[Spirit]【月光神龍ルナテック・ストライクヴルム(突機竜アーケランサー)】

[Nexus]【光の聖剣】

[Burst]【幻影氷結晶】→なし

 

 

[MainStep]

 

「光の聖剣をレベル2に、我が友をレベル3に、それぞれアップさせる」

 

[Core]Reserve〈11→5〉Field〈1→7〉Trash〈0〉

 

紅《くれない》の月光神龍と、厳粛くなる光りを帯びる光の聖剣は、更に力強い光に包まれフィールドに見えない重圧を張り巡らす。

ダン! と足踏みをして月光神龍は建物の屋上までと上り、見渡しの良い場所へと移った。これから先の標的を――――必ず仕留めるために。

 

「続けて、ザニーガンを召喚。 もちろんレベルは2だ」

 

先程【幻影氷結晶】の効果で手札に戻ったザニーガンが再び召喚される。なお、レベル2からは【重装甲赤】が付随されるのでヤマトの効果も受けない。

再び残り一枚になった手札を横目で確認すると、バローネはためらわずにそれをバーストゾーンへとセットする。

 

[Hand]2→0

[Core]Reserve〈5→1〉Field〈7→10〉Trash〈0〉

[Burst]なし→???

 

「おっ。またしてもバーストか~~。これは厄介だなぁ、うん」

 

一人ぶつぶつと呟くアラタを尻目にバローネはアタックステップに入った。

 

[AttackStep]

 

「行け!勇猛たる我が友よ。最後のライフをその槍で貫け!」

 

バローネがかざす手のひらの先には、アラタが。

そして指示があった瞬間に、月光神龍は大きく飛翔してそこへと突撃する。天にまでとときそうな高さの王宮を避けながら月光神龍は確実にアラタの元へと迫っていく。

 

「リュザード! ブロックを頼んだぞ!」

 

キイと小さな声を漏らし、月光神龍に立ちはだかったのはリュザード。月光神龍は両手に持った槍の両端を接合し、両刃剣へと変える。

 

 

一閃。

 

 

超高速で振り払われた両刃剣はリュザードを二度切りつけた。

同時に、ズズズズズ、というコンクリがこすれ合う乾いた音が聞こえてくる。それはリュザードの背後にあった建物までもが、まるでかまぼこのように3枚におろされた瞬間だった。

 

「さらに、【月光神龍ルナテック・ストライクヴルム】のバトル時効果が発動。BP以下のもう一体の【リュザード】を手札へ戻す!」

 

月光神龍の追撃が続く。

地面に着地した後、月光神龍はそのまま前方へと滑空した。目の前に立ち塞がる建築物と風を斬る音、そしてその姿は破壊の化身を彷彿させるかの容姿。

近くの建築物をほぼ粉々に破壊したあと、そこに隠れていた1体のリュザードが姿を現す。

もう逃げも隠れもできない、そう伝えるかのように、怯えるリュザードとの距離を一歩ずつ詰めていく。そして、月光神龍は足の爪をぎらりと尖らせ、力の限り蹴飛ばした。

まるで、サッカーボールのようにふっ飛ばされたリュザードは壁に何度も激突し、そのまま手札へと帰る。

 

「やれやれ、手札に戻すだけだっつ―のに、随分とあんたのお友達は乱暴だな」

 

弾き出されたリュザードのカードを掴むと、アラタは苦笑い気味に呟いた。

 

「月と言うものは、美しさと共に凶暴性も秘めているのでな。だがそこがまた美しさを際立たせる鍵となるのだ……」

 

うっとりと見惚れるかのようにしてバローネは次のカードを傾ける。

 

「さて、これで幕引きだ。ザニーガン……やれ」

 

ブォンというエンジンの起動音が聞こえ、ザニーガンはスラスターから青白い炎と煙を巻き上げ突進する。

ほぼ半壊状態に近い建物はそれほど進行の邪魔にはならなく、スムーズに先へと進ませる。

 

アラタのライフは1。そして月光神龍により2体のリュザードがいなくなった今、フィールドにはザニーガンのアタックを止める者はいなかった。

 

「ヘヘッ。来な! ライフで受けるぜ!」

 

 

 ◇

 

「ええっ!? マジックは!? フラッシュでなんかないの!?」

 

映しだされたディスプレイの前でハジメは驚きの言葉を隠せなかった。なんせ、未だ負けを知らない世界チャンピオンのライフがここで0にされようとしているのだから。

それはつまり、世界チャンピオンの初めての敗北を意味する。今まで誰も辿りつけなかったその場所にバローネが立とうとしているのだ。

 

「いや……よく見てみろハチマキ。チャンピオンの顔はまだ勝負を捨ててなんてない」

 

冷静な口調で戦況を見守るテガマルはハジメにそう指摘した。その隣りにいるチヒロとコブシも頷いて、

 

「ああ……あの目はまだ負けてはいない」

 

「おっす! それよか勝ちへの執念が更に燃え上がってるぜ」

 

3人の言葉を頼りにハジメも画面のチャンピオンの顔をじっと見つめる。

しばらく眺めてハジメはハッとした。

 

「ほんとだ……! チャンピオンは全然負ける顔をしてない!! しかもかなり楽しんでる!!」

 

 

 ◇

 

 

「ほう、ライフで受けるか……? しかもフラッシュはないと?」

 

おう! と強く言葉を返すアラタを見て、バローネは目を瞑《つむ》る。

そして段々とつり上がる口の端からは鋭い犬歯があらわになり、

 

「いい覚悟だ!! 最後のライフを砕け! ザニーガン!!」

 

ギン! とバローネの目が見開かれた。満たされた勝利への欲求に満ちて口元を歪めながら。

 

ザニーガンは高台に着くと、取り付けられたキャノンからアラタを狙撃する。

放たれた3発のビームはそれぞれが折り重なり、1本の太い光線へと変化する。それはただまっすぐに、ただ直線に、ただアラタだけを追って突き抜ける。

 

スガガガガガ!!!! と、アラタの前に展開された白のバリアがそれを受け止め、鈍い音をあげる。度重なる衝撃に対しての悲鳴にも似たその音は、いつもよりも数倍騒がしい。

 

そして、それに同調するかのように胸にはめこまれたアラタの最後のライフが光り始めた。

これはライフが砕ける前兆。線香花火のように、散る間際に最後の煌めきを残すための。

 

 

 

 

パリン。

 

 

 

 

音が、聞こえた。

余りにも呆気無いその音は一回虚空へと消える。

そして――――

 

 

 

 

 

パリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリン!!!!!

 

 

 

 

 

まるで機械のバグのようにその音は何度も連呼するように鳴り響く。気がつけばその音はフィールド全体に広がっていた。

 

「なんだ……これは……?」

 

バローネは目の前の不可解な現象に目を細める。

いまフィールドで起こっているのは、分厚い氷で覆われた建物すべての氷が砕け散っているのだ。

最初に聞こえた音もライフが砕ける音ではなく、凍りついた都市そのものが奏でる音だった。

 

「――――残念だったな! ここで【永久凍土の王都】の効果が発動するぜ!」

 

永久凍土の王都

自分のライフが0になるとき、このネクサスを自分のトラッシュに置くことで、自分のライフは0にならない。

その後、ボイドからコア1個を自分のリザーブに置く。

 

薬師寺アラタ

[Core]Reserve〈0→1〉Field〈7〉Trash〈5〉

 

覆い尽くす氷が完璧に砕け散ったあと、残された王宮はまるで霧のように消えていった。

それによりバトルフィールドの大きさも通常の大きさに戻り、いつものまっさらなフィールドへと戻る。

 

「なるほど……そのネクサスは単なる演出というわけではなかったのだな」

 

チッと軽く舌打ちをして、バローネはターンエンドの宣言をする。

どうも自分は最後の1手に欠くらしい、そんなことを考えながら。

 

 

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