BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
イーサンとエヴリン(幻影)の奇妙な日常。楽しんでいただけると幸いです。
俺ことイーサン・ウィンターズは、3年前に妻であるミアを救い出してからあることに悩まされていた。先日念願の我が子が生まれ、幸せの絶頂期だというのに頭痛に苛ませてくる厄介な事象だ。
「――――少女は鏡に閉じ込められてしまいました……あら、寝ちゃったわ」
『こわっ。こんなの赤ちゃんに聞かせる話じゃないよママ……ねえ、パパもそう思うよね?』
「……なあこの話、不気味すぎないか?生まれて半年だぞ?」
自分の故郷に伝わる物語だという、不気味な絵本を我が子ローズマリーに読み聞かせていたミアに文句を垂れ俺に呼びかけてくるのは、俺の眼前でふわふわ浮いている10歳前後の少女。名を、エヴリンという。俺の頭痛の原因だ。無視してミアと会話を進めると、エヴリンは逆さまになりながら語りかけてくるが無視を決め込む。受け答えしたら調子に乗ってどんどん話しかけてくるのだ、たまったものじゃない。ママとかパパとか言っているが断じてエヴリンは俺の娘じゃない。俺の子はローズだけだ…
「私はとっくに吹っ切れてる。あなたは引き摺っているようだけど」
『ねえねえパパ。ママ、なんかおかしくない?いやヒステリックなのもキノコを嫌っているのもいつも通りだけどさ』
「引き摺りもするさ…こんな目の前にいられたら」
「え?」
『え?え?今なんて言った?パパ!もう一度言ってよ、ねえねえ!』
「いや…もういい、悪かった。引き摺ってはないよ、慎重なだけさ」
思わず漏れた失言に顔をしかめるミアを窘めながら、調子に乗って聞き耳を立てて顔を近づけてくるエヴリンを、蚊を掃うふりして押しのける。とはいっても手はエヴリンに触れても擦り抜けてしまうのだが。そう、これは俺だけにしか見えない幻影だ。
エヴリン。3年前、アメリカのルイジアナ州の片田舎に存在した不気味な屋敷「ベイカー家」に、行方不明だったミアを助けに行った際、遭遇した少女。…否、少女の姿をした悪魔。黒髪に黒いワンピース、そして黒いブーツを履いた少女は俺とミアが遭遇した怪奇事件の全ての元凶だ。
『パパー?ねえ、聞いてるの?』
無邪気に俺に問いかけてくる少女の姿からは想像もつかない悪魔の所業を犯したエヴリン。ベイカー家の人間を狂気に陥れて強制的に「家族」にし、訪れた人間を捕らえて家族を増やそうとして何人もの屍を「友達」だと称す怪物に変貌させ、家族ごっこに興じた挙句に、ミアをママと慕っていた彼女はミアを操り俺を襲わせた。ミアを手にかけた嫌な感覚は未だに手に残っている。
ベイカー家の狂気を退け、ふとしたことでエヴリンの出生と弱点を知った俺はエヴリンと直接対決して、勝利。だがその際、あまりに哀れな存在だったエヴリンに同情してしまったからなのかは知らないが……
『イーサーン?イ~サ~ン?ねえ、どう?パパ、似てた?ルーカスの真似ー』
どうしてこうなった。脱出ヘリで休んでいた時に姿を現し、「しーっ。騒いだら狂ってると見なされてママとまた離されちゃうよー?」と言われて黙認せざるを得なかった。それから3年、頭が痛くなるこいつとの不思議な共同生活を続けている。ミアと事に及んでいるときに見物していた時には顔から火が出るかと思ったものだ。空気を読んで引っ込んでくれたが。
「平気だローズ。ママは思い出したくないんだ…そりゃそうさ。俺だってこいつがいなけりゃ忘れたい」
「何か言った?」
「何も。寝かしてくる」
そんなことを思い出しながら、料理の仕上げを始めたミアに言われてローズを抱っこして二階に向かう。そんな俺の肩越しにローズをジーッと眺めて頬に手をやってニヘラと笑みを見せるエヴリン。彼女が妹だと呼ぶローズに対してデレッデレだった。
『あ゛~~~、か゛わ゛い゛い゛な゛あ゛あ゛あ゛』
「汚い声を出すな。ローズに聞こえていたらどうする」
『んー?ローズマリー、私のこと見えてるっぽいもんねー』
そうなのだ。見えているのは俺だけだと思ったが、俺と血が繋がっているからか不思議そうな顔でエヴリンを顔を動かして追いかけるローズにはどうも見えているらしい。だから教育に悪いことはしないでほしい。悪餓鬼に育ったらどうしてくれる。
『悪餓鬼とは失礼なー』
「ナチュラルに俺の頭の中を読むな、顔に手を突っ込むぞ」
『それはやめて。ごめんなさい』
幻影ではあるが自我はある様で、顔に手を突っ込まれて引っ掻き回されるのをえらく嫌がるのが唯一の弱点だ。頭の中まで読み取ってくるこいつに仕返しできる手段でもある。ローズをベッドに寝かせて一階に戻り、ミアの用意した食事が食卓に並んでいた。どうやら引っ越してきたここ、ルーマニアの地元料理らしい。
『いいないいなあ。私の時はあのクッソ不味い死霊の
どう足掻いても食事できないことに文句を垂れるエヴリンの声をBGMに、何気ない会話をしながら食事する。いつもの光景。いつもの日常。これからも、成長したローズを入れて、続いていくと思っていた。それを奪ったのは、一発の銃弾。ミアの肩が、撃ち抜かれていた。
「なんだ!?」
『ママ!?』
「ミア、伏せろ!」
咄嗟に頭を伏せながら声を出すも、照明が消えた瞬間ミアに襲いかかる数多の銃弾。ミアに駆け寄っていたエヴリンも撃ち抜かれ、不快そうにバタバタ手を振り回している。なんだ、なんでだ、なにが起きている!?
「ミア……どうして……?」
『パパ、無事…?って、え?』
「どうしたエヴリン……クリスだと?なんでお前が……!?」
そこに現れたのは、三年前に俺たちを救助し、戦闘訓練までしてくれた恩人、クリス・レッドフィールドだった。なんでお前が、ミアの命を奪うんだ…!?俺を一瞥しながら倒れたミアを見下ろし、手にしたハンドガンの銃口を向けるクリスに、咄嗟に手を伸ばすが引き金が引かれていて。
「悪いなイーサン」
「やめろ!」
『ママをよくもー!』
五発もの弾丸を撃ちこまれたミアに、どうすることもできない。エヴリンは激怒してクリスに殴りかかるも擦り抜けてしまう。俺は力なく項垂れるしかなかった。いつの間にか、クリスの部下と思われる完全武装の男たちに囲まれる。俺達が、なにをしたって言うんだ……
「そんな……どうして…」
「さっさと歩け!」
『パパから離れろ、離れろー!』
立たされ、玄関まで歩かされる。エヴリンが必死に抵抗しているが、俺にしか見えないのだから意味をなさない。すると二階からまた一人降りてきてその手にした我が子を見て、思わず掴みかかる。
「ローズ…おい、娘に何をする!」
「確保しました。どうぞ」
『ローズマリーを返せこの野郎!』
クリスに受け渡されるローズマリーを取り返すべくエヴリンもクリスに突撃してポカポカ殴るがやはり意味をなさない。
「連れて行け」
「おい、ローズに触るな!」
「イーサン、やめとけ」
『パパ!?しっかりして!』
「ローズ…」
エヴリンのその姿に元気づけられて、俺も殴りかかろうとするも、後ろからクリスの部下に銃で殴られて気を失ってしまう。エヴリンの俺に呼びかける声を聞きつつクリスの部下たちに運び出されながら、無力感とクリスへの怒りに脳裏は支配される。くそっ、俺は父親失格だ……
『起きて!イーサン!イーサン!』
次に目を覚ました時、どこかの森の中にいて。珍しく俺を名前で呼ぶエヴリンの声に頭がガンガン痛みながら立ち上がる。見れば、クリスの部下と思われる武装兵の死体が転がっていて。車も横転していることから事故にあったらしい。
「エヴリン!クリスは、ローズは!?」
『ごめん…私も、イーサンに連動して気を失ってて……目を覚ましたのはこの事故の後なんだ。よく考えてみればイーサンが寝てる間も私、寝てた…』
そうなのか。このエヴリンは俺の意識がある時しか存在できないのか……いや、だが相談相手がいるだけありがたい。
「いや、エヴリンが気に病むことじゃない。それにしても、一体、何があったって言うんだ…?」
『さあ?さっき電話が鳴ってたけどもう壊れちゃったみたいだし、そこの紙にはなんて書いてるの?』
エヴリンに言われて、死んでいるクリスの部下の傍らに落ちていた書類を手に取る。なになに…?
「えっと…【作戦概要】……目標の殺害及び遺体収容、ローズマリー・ウィンターズ、イーサン・ウィンターズ両名確保……俺とローズは検査のためにサイトCってところまで移送するつもりだったようだ。だけど、ここにはローズはいない」
『誰かに連れ去られたってこと?』
「その何者かに襲撃されたって考えた方がよさそうだ」
『じゃあとりあえず、寒いしあったかいところを探さない?』
「お前、寒さ感じたんだな…」
雪が降る中、エヴリンを傍らに浮かばせながら俺は歩き出すのだった。…ミアは救えなかったが、ローズだけは取り戻して見せる。
エヴリンは可愛い。これは真理(特異菌感染者の戯言)
・イーサン・ウィンターズ
7とヴィレッジの主人公。7ラストで倒したはずのエヴリンの幻影に付きまとわれて頭が痛い。3年間も一緒にいるのでもう慣れてしまった。エヴリンと共に娘のローズを取り戻すべく立ち上がる。
・エヴリン
7のラスボスにして元凶。何故かイーサンにしか見えない幻影として復活したが、理由については話そうとしない。物に触れることはできないので時折ちょっかい出して無邪気に自由気ままにイーサンを翻弄する。妹だと呼んでいるローズマリーを溺愛している。
人気が出たら続き書きます。よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。