BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
今回は最終決戦から16年後のローズの話。楽しんでいただけると幸いです。
ダイブⅠ【16年後】
赤ん坊の私が巻き込まれたという、寒村での父と姉の珍道中から16年後。バスから降りた私が歩く道をふよふよと肩肘ついて(?)寝そべりながらついてくる、私と母親のミア・ウィンターズにしか見えない二人の幽霊(?)がいた。死んだ父親であるイーサン・ウィンターズと、生まれる前に死んでいるらしい姉のエヴリンである。
『……暇だ』
『暇だねえ』
「うるさいし邪魔だよ、父さん姉さん」
目の前でだらけきって視界を塞いでいる父さんと姉さんに溜め息を吐きながら苦言を呈す。正直言って邪魔だ。二人の事は大好きだがそれとこれとは話が別だ。
『邪魔って言われた……』
『イーサン。ローズの言うことなすことでオーバーリアクション取るのやめよう?』
「父さん、うざい」
『ぐっ』
『もうイーサンのライフはゼロだねこれ』
私の言葉にショックを受けて真っ白になり空中でorzの体勢となり項垂れる父さんとぼやく姉さんに、内心ほくそ笑みながら公園に向かうと、ベンチに座っていた待ち人が手を軽く上げたのが見えて駆け寄る。私の保護者、クリス率いるハウンドウルフ隊の一員、チャーリー・グラハムことケイナインだ。
「ケイ、遅くなってごめん」
「大して待ってないさ、大丈夫」
『やいケイナイン。ローズと仲いいからって調子に乗るなよ!』
『聞こえてないぞエヴリン』
「それで、大事な話があるってなんなの?」
とても大事な話があるからと母さんにも内緒でここまで来た。まあ呼び出しの話を聞いてた父さんと姉さんは遠慮なくついて来たんだけど。触れもしないから止めることもできないのどうにかならないかな。二人とも、いわゆる「ボケ」だからふざけだすと母さんに説教されるまで収拾がつかない。
「またクリスが私を組織に入れろって言ってきたとか?絶対ありえないって何度も言ったんだけど」
『必要なのはわかるがクリスと直にOHANASHIしたいな』
『わかる。現実に干渉できたらなあ』
「父さんたち五月蠅い。
「相変わらず君の守護霊は元気そうで何よりだ。まあ、その件じゃない。今日は……お前の話だ」
「私?」
『結婚したいとか言ったらぶっ飛ばす』
『もしそうなら呪ってやるぞー!』
雰囲気を真面目なものに変えるケイに、改めて向き直る。アホなこと言ってる二人は無視だ無視。
「ローズ……その……どうなんだ?学校の方は」
「ええ?そんな話をしにきたわけ?」
『なんでローズに友達ができないのか、永遠の謎だ』
『おっとローズの心は硝子細工だぞ』
「父さんと姉さん、あとで覚えといて。…大丈夫、だよ?」
なんとか取り繕うがケイの表情はすぐれない。隠しごとできないな…。
「またあの嫌な子たちに……絡まれてる?」
「化け物扱いされるかってこと?しつこく絡まれてたけど姉さんが自撮りに割り込んで幽霊写真になったおかげ(?)でちょっと沈静化してる」
『えっへん』
『相変わらず怖がらせるのだけは得意だよな』
『なんだとこらー!』
胸を張ってた姉さんだが父さんに毒づかれ、飛びかかって空中でボコスカと実力行使を始めてしまった。幽霊同士は触れるらしいが某ネコとネズミばりに暴れないでほしい。
「それはよかったが……自分の事を化け物って言うのはやめろ。ちゃんとこっちを見ろ!お前は化け物じゃない!」
「化け物だよ。わかってるでしょ。父さんと姉さんには悪いけど……私の生まれは知っている。普通の人間じゃない。だから学校でもずっと独りなの。ばれないようにって…」
『……ローズ』
『ごめんねローズ…』
争うのをやめて、なにか言いたげな顔の父さんと、あからさまに沈み込む姉さん。二人は悪くない、と言いたいけど……口に出なかった。二人の事は大好きだけど、それとこれとはやっぱり話は別だ。多分、父さんと姉さんと物心ついた時から会話してなかったら二人を恨んでたかもしれない。
「それじゃあ……話せる友達はいないのか?話し相手はいるんだろうけど」
「話すって?何を話すの?人間じゃないって話す?化け物だって告白するの?それとも私は死んだ父さん姉さんと会話できるって?……友達ができたとしても言える訳がない。だけど私は、二人をいないことにできない。無理だよ」
『ローズ…』
『嬉しいけど、やっぱり私達邪魔だよね……』
「そんなことない!父さんと姉さんの存在に私は助けられてる…!」
すぐ自分を卑下する姉さんに、咄嗟に否定の言葉が出た。私の生まれが呪われているのが父さんと姉さんのせいだとしても、私は恨んだりしない。それだけははっきりしてる。するとケイは私のそんな様子を見て少し黙ってから口を開いた。
「……もしかしたらイーサンとエヴリンと話すことができなくなるかもしれないが、もしその力を……取り除けたらどうする?」
『なんだって?』
『本当!?』
「え、でも、だって……すぐにでも取り除きたいけど、二人と会えなくなるのは嫌だ…」
「もしかしたら、って話だ。だが取り除く手段は見つけた。一度見てから決めてくれ。こっちだ」
そうしてケイに連れてこられたのは公園近くの建物にある実験室だった。
「ミランダと特異菌の事は知っているよな?」
「父さんと姉さんから嘘みたいな冒険譚は聞かされてるよ」
『ノンフィクションだぞ』
『嘘じゃないんだなあ』
暇さえあれば聴かせてくれた信じられない冒険譚。曰く吸血鬼が変身したドラゴンと空中戦を繰り広げただの、巨大な赤ん坊に襲われただの、怪魚から逃走しながら湖を渡っただの、工場長が率いる機械兵団と共に魔女…ミランダと戦っただの、ファンタジーにも程がある話だ。いやまあ、幽霊の二人が見えてる時点でファンタジーなんだけども。
「ミランダは研究に執着して……人体実験までやっていた」
「私とか?」
「そうだ、君も犠牲者の一人だ。ミランダに取り込まれたのがその力に目覚めた原因の一つと言ってもいいだろう。それで最近、ミランダの研究ノートが新たに見つかったんだ。それによると人から特異菌を取り除く……「浄化結晶」を発見したらしい」
「浄化結晶?」
『私一応エヴァの生まれ変わりだけどそれは知らないなあ』
『そんなの見つかったならクリスが言ってくると思うんだけどな?』
「浄化結晶があれば完全とはいかなくてもお前の力を抑え込めるかもしれない。完全ではないからそのままイーサンとエヴリンと会話できる可能性は十二分にある」
「そんな、嘘みたい……ふざけてないよね?」
「もちろん。だがそのノートは未完成だった。でも多分、一つだけ残りの情報を探せる手段がある」
「…一応教えて。どこを探すの?」
「あー…そこだ」
そう言ってケイが指示したのは透明なカプセルと赤い液体に包まれた黒い植物のようなもの。それを見た父さんと姉さんの目の色が変わる。
『これは……菌根!?』
『爆弾で消し飛ばしたはずなのに……残ってたの!?』
「きん、こん……」
「そうだ。それは菌根ってやつだ。その中に死んだ者たちから吸収した記憶が保存されている。つまりミランダの、知識の全てもだ。この意識の中に入れば浄化結晶の謎も解けるはずだ」
「意識の中に入るってどういうこと…?」
『俺が死んだ時と同じか』
『もう一人の私と会った時の?』
「いいか、お前は菌根と深く…繋がっている。だから結晶の…情報を探しだせるはずだ」
『ふざけるな!もういい、ローズ。帰ろう』
『そうだよ!菌根は駄目!危険すぎる!』
怒号を上げる父さんと姉さんにちょっとだけ怯む。こんなに怒っているの始めて見た。
「父さんと姉さんがダメだって…こんなのまともじゃないよ。ケイ、おかしくなったの?」
「ああ、たしかにそうかもな。だが、ローズが化け物呼ばわりされるのを放ってもおけない。俺の仮説が正しければ危険じゃない筈なんだ。他人の記憶を散歩するようなものだ。やってみる価値はある。損はしないだろ?」
『やめろ、ローズ!なにかがおかしい!』
『ケイナイン、本当にどうしたの?菌根の危険さはよく知ってるよね!?』
父さんと姉さんはそう言うが、ケイの私を案じる言葉は本物だと思う。…信じたい。
「じゃあ…どうすればいいの?」
「いや、俺も…よくは、わからないが……菌根に意識を…集中してみろ」
「…わかった。やるわ。やってみる。信じるよ、ケイ」
ケイを信じて菌根に手を翳してみる。そして意識を菌根に向けてみると、引きずり込まれるような感覚がした。
『くそっ、エヴリン!菌根にアクセスできるか!?』
『やってみる!』
まるで深海に沈んでいくように、意識が沈んでいく私に向かって必死に泳ぎながら手を伸ばす大小二つの人影が見えて、私は咄嗟に手を伸ばした。
プロローグでもわちゃわちゃしているイーサンとエヴリン。イーサンもすっかり幽霊ライフに慣れてしまってます。思春期の娘の言葉!効果は抜群だ!ボケ×ボケは止まらないけどシリアスはちゃんとやる。
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