BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】 作:放仮ごdz
「あのデブぶっ殺す」
バスルームに配置された、四人の黒い私でできたオブジェを前にして私がやる気を失っていると、姉さんの殺意が湧いた声が聞こえて顔を上げる。そこには何やら書かれた石板が壁にあって、それを見て怒りが燃え上がったらしい。
「“矢で射る直前に沈めた。沈めたのは吊った後だった。刺したのは最初でも最後でもなかった”…あのデブ、黒いローズたちの死を玩具にしている。絶対許さない、殺す」
「エヴリン、落ち着け。昔のお前になってるぞ。お前実年齢30ぐr」
「イーサンから殺そうか?」
「ぐおおおおっ!?」
父さんにタブー持ち出されて青筋を浮かべながら股間を蹴り上げる姉さん。父さんは急所を押さえて悶える。今のは父さんが悪い。女性の年齢を言い出すのはタブーが過ぎる。
「ちょっと触れたら奥に引っ込んで、適当に触れるとまた戻ってくる。つまり、殺される順番通りに押せってことだと思う。本当に趣味が悪い。石に躓いてあの重そうな体ひっくり返って死ねばいいのに」
「姉さん、ちょっとやさぐれた…?」
「黒領域に包まれた挙句こんなもの見せられたらこんな気持ちにもなるよ。それで多分、この“吊られた”黒いローズが引っ込んだまま戻らないどころかなんか篝火もついてる。多分これが最初」
「…えーと?」
えーと、矢で射った直前に沈めて、沈めたのは吊った後で、刺したのは最初でも最後でもない…それで吊るのが最初だから…。
「吊る、刺す、沈める、射る?」
「多分そう。ほらイーサン!ローズに自分の死んでるところを間近で見せるつもり!起きろ!」
「おまえ。エヴリン、覚えてろお前…」
さっき言ってた通りに文字通り父さんを蹴り起こして、順番に触れて行く姉さんと父さん。するとバスルームの湯船(?)が開いて地下への通路が現れた。無言で頷き、父さんが先導して進み、梯子を降りて行く。下はワインセラーになっていた。妙に鼻に突く匂いがする樽が敷き詰められている。しゃがんで進める壁に開いた通路を進むと、メモが落ちているのを見つけた。
「【一番奥の小部屋。銀の仮面、やっと見つけたのに…】?」
「…この先にあるらしいがなにがあるってんだ」
「…待って。なにかいる」
姉さんのひそひそ声に、物陰に隠れて父さんと共に息を潜める。先を見てみれば、奥の壁の菌根を守るように何かが徘徊していた。あれは…姉さんと父さんが一蹴されていた、巨大な棘付きメイスを持った三つの顔の怪物…!
「ポールハンガーは効かなかったし、ハンドガンが効くようには見えないな…」
「…やっぱりアイツが上の黒い私達を…?」
「…許せない」
「え」
ひそひそ声で話していると、低い声を出して物陰から飛び出す小さな姉に思わず声が漏れる。手を伸ばして止めようとするもダメだ、届かない。姉さんの様子がさっきから何かおかしい。怒りっぽくなっているような…黒領域に包まれていた影響?
「お前が、ローズたちを…!」
「グオオオオアアアアアッ!!」
「遅い!」
メイスによる一撃を、身軽な動きで紙一重で回避、ボディブローを腰に叩き込む姉さん。メイスを持った巨体が揺れる。効いている!?父さんのポールハンガーも効かなかったのに…。
「グオアアアアアッ!」
連続でメイスをでたらめに叩き付け、姉さんを叩き潰そうとする三つ首男。姉さんはバックステップで回避、叩きつけられたメイスに乗ってストレートパンチを叩き込んで怯ませると、振り上げられたメイスから宙返りで飛び降りて鋭い蹴りで膝を打つ。
「三つも顔があって私を追い切れないわけ!」
そう煽ってメイスの大振りを屈んで避けながら引き絞られたバネが解放され跳ね上がる様に跳躍、アッパーカットと膝蹴りを続けざまに顎に叩き込む姉さん。ゲームで見たことがある、昇竜拳だ。
「グオアア…」
「死ね」
頭部が揺れて脳震盪でも起こしたのかふらつく三つ首男。そして冷酷に宣告すると傍のワイン樽を足掛かりにして駆け登り、スカートなのに関わらず大きく脚を開いて太腿で挟み込んだ三つの頭部が一体化した太い首を締め上げる姉さん。ギリギリギリ、と肉を締め上げる音が聞こえる。
「グオアアアアアアッ!」
「させない!」
すると自分の頭諸共に姉さんを潰そうとメイスを振り上げる三つ首男に、姉さんを守ろうと咄嗟に前に出て手をかざし、怯ませてメイスを取りこぼさせると父さんが駆け寄り、メイスを手に取ってフルスイング。胴体を殴りつけてよろめかせる。
「いい武器をありがとな」
「グオアアアッ……」
「これで、終わり!」
ゴキリと音が鳴り、三つ首男の首が折れてだらんと垂れ下がり、その巨体が崩れ落ちて姉さんが片膝と右手を突いて着地する。なんて怪力……やっぱり、姉さんは見た目通りの筋力じゃない気がする。人間離れしていて、まるで………私と同じ、人の姿をした怪物の様な。
「…怪物みたいって思った?」
「え、う、ううん。そんなこと…」
「この世界だと、時々生前の身体能力を発揮できるみたい。今のはコネクションから叩き込まれた技術だけど…うん、いい機会だから断言しとく。ローズは
「姉さん…」
影の差した顔でにやりと笑みを浮かべる姉さんに何も言えなくなる。
「馬鹿野郎。お前たちは怪物なんかじゃない、可愛い可愛い俺の娘たちだよ」
ごつんと、姉さんと一緒に頭をどつかれる。地味に痛いそれを押さえながら見上げると溜め息を吐いている父さんが。
「お前たちはどうしてそう自分を卑下するんだ。まったく……」
「…ごめんなさい」
「ごめん、イーサン」
「謝るな。そう思わせてしまった俺とミアの責任だ。お前たちには…ろくに触れてやることもできなかったからな」
そう言って私達二人を纏めて抱きしめてくる父さん。撫でられるとも違う、温もり。姉さんも驚いた顔から心地よさそうなものに変わる。
「やっぱりちゃんと触れて伝えないとな。ケイナインには文句しかないが、触れるようになったことだけは感謝してやる。…随分と遅れた」
ぎゅうっと優しく抱きしめられる。何も言わなくとも伝わってくる愛情に、顔がほころぶ。…今しか駄目なのだとわかっていても、永遠に感じていたいな。
「!」
「どうした?ローズ」
辺りを見渡すと父さんから心配の声が上がる。どこからか声が聞こえた気がしたが…気のせいだろうか。
「ううん、なんでもない」
ここで私は声の主を見つけなかったことを、後に後悔することになる。
少々グロッキーなローズ。イーサンに年齢を指摘されたからか攻撃的になってるエヴリン。触れられなかった故に足りなかったと感じた愛情を与えるイーサン。三者三様とはこのこと。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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